ありふれた職業で世界最強に転生したと思ったら檜山だった件(再投稿版) 作:ホームズの弟子
恥かしながら戻ってきました。
皆様の暇つぶしにでもなれたら幸いです。
突然ですが、皆さんは「転生物」という、ライトノベルのジャンルはご存知ですか。
この作品の醍醐味は、第二の人生は上手くやるぞ!だったり、可愛い、カッコイイキャラクター達のとの出会いであったり、アンチキャラに対する勧善懲悪の展開であると思う。
昨今のラノベのトレンドの様なこの言葉だが、私は嫌いではなく、むしろ作品や二次創作を見る事自体も嫌いではない。
しかし、そんな自分が転生した世界が……いや転生したのがあの『アンチキャラ』だったなんて……
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目を覚ますと、独特な消毒液の匂いが鼻についた。
さっきまで、仕事をしていたはずなんだが?
確か、工程の打ち合わせを現場で業者の方たちとしてたら、足場材が……ダメだ、頭がまだクラクラするせいでしっかりと思い出せない。
周りの状況を確かめようと体を起こすと、鋭い痛みが頭を襲った。
「痛ってぇ」
おでこを触ると少したんこぶが出来ているみたいだな。
自分の言葉が聞こえたのか、目の前のカーテンが開き、白衣を着た40代ぐらいの女性が現れた。
「檜山君起きた?男の子だから危ない事するなって言う方が無理なんでしょうけど、これに懲りたらもう無茶な事はしない事。いいわね」
「……ヒヤマ君?」
まるで子供を窘める様な優しい口調で、問いかけてくるが、一番気になってしまった単語が口から洩れてしまった。
自分の様子がおかしいと思ったのか、白衣の女性が不安そうにこちらを見つめ
「檜山、檜山大介君でしょ?君の名前」
「ヒヤマダイスケ?それって誰ですか?」
「誰って……もしかして記憶喪失?」
女性は自分のほほに手を置き、不安そうに呟いたが、記憶喪失?ヒヤマダイスケ?一体この人は何を言っているんだ?
大体自分の名前ぐらい言える。
自分の名前は、佐藤……あれ?
おかしい、まるで自分の名前の部分だけすっぽりと抜け落ちた様に記憶がない、と言うよりまるで初めから自分に名前の部分だけ無い様な異質な感覚に襲われる。
しかし、少なくとも檜山なんて苗字じゃないし、自分の家族の名前は覚えているし、住所だって言える。
そこで白衣の女性に、自分の苗字を伝え、何をしていたのか、職場の名前を伝えたのだが、
「……また先生を困らせたいのね。新しい悪戯?」
「いや!悪戯なんかじゃなくて、自分は本当の事しか言ってな「はいはい。頭の怪我の事もあるし、今日はもう帰りなさい。えっと君は確か、4年生でクラスは確か―――」
白衣の女性は、俺の訴えを子供の悪戯の様に、あっけらかんと流し、そそくさとカーテンの外へと出ていく。
俺はベッドから降り、女性の後を追おうとした時に違和感を覚え、その正体が掴めぬまま、カーテンを開け、目の前の風景が目に入った瞬間にその違和感が増した。
ファイルや書類が置かれている事務机に椅子が一つ、長身計や秤の付いた体重計、壁のコルクボードには『学校だより』と書かれた紙が貼られている。
病院と言うよりも、そこはまるで、小学校の保健室の様であり、キョロキョロと周りを見渡しながら歩いていると、いつの間にか鏡の前に立っており、そこで、小学生ぐらいの目付きの悪い男の子が立っていた。
「……誰?」
俺は呟くと同じように口を動かす鏡の中の少年。
先程までの頭に靄がかかって様な感覚がなくなり、俺は思い出した。
自分が仕事中に、足場材が倒れてきて、事故に遭った事を。
ゆっくりと鏡に近づき、鏡に手をつけ、俺は悟ってしまった。
「これっていわゆる転生ってやつ?」
どうやら、小説や漫画にしかないと思っていた世界に来てしまったらしい。
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雨の中、一人歩きながら今の状況を確認していく。
この世界での俺の名前は『檜山大介』
両親は共働きで、兄弟は無し
自分が死ぬ前に居た、日本と何も変わらないごく普通の世界だ。
魔法なんて物も無く、男女比が狂っているわけでもない。
スマホもあれば、車だって普通に走っている。
しかし、自分は転生はしたと確信した物が、ランドセルの中に入っていた。
「まさか前世の財布が入っているとはな」
見間違う訳がない。
就職が決まった時に、父親が買ってくれた、財布がそこに入っていた。
もっと親孝行しておくべきだったな……おっといかんいかん、あんまりしんみりしても仕方がない。
財布を開けてみたが、カードから何から何まで前世のまんまあったが、キャッシュカードはこの世界でも使えるのか?
そこそこ貯金はしていたが使えると何かと役に立つと思うから後でコンビニか何処かで試してみてみるか
命の危険が常にあるような世界でも一安心だな。
担任の先生から教えてもらった住所に向かっていると、雨の中傘もささずに、川べりに立つボブカットの少女が目に入った。
「どうしたんだあの子傘もささずに?」
不思議に思っていると、その子は川へ向かってゆっくりだが、少しずつ確実に歩くのが見えた。
まさかと思い俺はとっさに傘を捨て、少女へ走り、川と反対方向に腕を引っ張り、二人して川べりの草むらに倒れこんだ。
「馬鹿野郎!死にたいのか!」
「……」
俺は少女に、怒鳴るが、うつむいたまま何も話さない女の子。
雨に濡れているせいか、髪の毛が女の子の顔を隠し、表情がよく見えない。
「何があったか知らないが、お父さんとお母さんが悲しむぞ」
「僕が死んでも誰も悲しまないよ!放っておいて!」
自殺を思いとどめようと、ありきたりなセリフを言ってしまったがこれがかえって良くなかったらしい。
先程まで、髪の毛に隠れてよく見えなかった女の子の表情が俺の眼前にある。
怒り、悲しみ、絶望、まるで負の感情を集めたような何とも言えない、暗い表情をしている。
すると女の子は、起き上がりこの場から離れようとするが俺はその腕を掴んでこう言った。
「君、腹空かない?」
「……は?」
突然の俺の言葉に面を食らったようだが、これは、俺の前世の処世術、『人と親睦を深めるならメシに誘え』だ!
このまま帰すのは、絶対良くない事だろうし、メシを食べたらポロっと原因が探れるかもしれないしな。
「俺は腹減っているんだよね」
「……だから」
「だから一緒に行こうぜ!」
「なんで?」
「君のやる事の邪魔したんだったらさ、そのお詫びをさせてよ!」
「別にそんなのいいから、もう放っ「さあ行こう!」って、ちょっと!」
女の子の言い分を無視して、その手を繋ぎ、傘を拾い、町へと歩き出す。
雨も弱まってきたのは幸いだな。
濡れている携帯が無事に動くのを確認し、マップアプリで近くのファストフード店を調べそこへと向かう。
女の子も初めは抵抗していたが、観念したのか、俺に手をつながれ一緒に歩いていく。
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途中でコンビニに寄り、タオルを買うついでにキャッシュカードが使えたのは良かったが、まさかカードの名前部分がモザイクがかかったみたいに読めなくなっているとは思わなかった。
まあ、前世の貯金がそのまま残っていたのはご都合主義だがまあ役に立つからいいか。
女の子にもタオルを渡し、そのままハンバーガーチェーン店に入り、あまり人目に着かない席へ待ってもらい、ホットミルクティーとシェア出来るポテトやナゲットなどを注文し、席へと座る。
「いっただきまーす」
俺は、特に何も聞こうとはせずに、ポテトやナゲットを摘まむ。
すると女の子の方から、俺を不思議そうな顔で見ながら話しかけてきた。
「どうして助けたの?」
「どうしてって、そりゃ目の前で川に飛び込もうとしている子がいたら誰でもああするとおもうけどな?そんなことより、冷めないうちに食べようぜ。ポテトって湿気ると美味しくなくなるぞ」
俺がポテトを進める、女の子は、ポテトを一口二口食べていくと、ポロポロと涙を流し始めた。
そして、何があったかをぽつぽつと途切れ途切れだが話してくれた。
父親の事、母親の事、母親が連れて来た人の事
「大変だったんだな」
「知った風に言わないで」
「そりゃ、俺は君と今日初めて会ったんだ。そんな事情があったなんて知らなかったさ」
「だったらもう僕と関わ」
「でも」
女の子が、紡ぐ言葉を止め、目を合わせて告げる。
「俺と友達になってよ」
「……ふっ、なんでそうなるのよ」
「ようやく笑ってくれたな」
「えっ……」
女の子は、自分が笑っていた事に驚いたのか、目を少し大きく開き俺を見てきた。
転生して、初めてする事が女の子を救う。
ベタだが嫌いじゃない。
「きっとこうして、君と会えたのは運命って奴なのかもしれないだろ?」
「運命って自分で言ってて恥ずかしくないの」
「運命が恥ずかしいなら、神様の思し召しでもいいさ。ともかく、これからよろしくな。俺は佐藤……じゃなかった檜山大介。君は?」
自分でもクサいセリフなのは十分承知だが、せっかく転生したんだ、今世は悔いなく生きてぬいてやるただそれだけだ。
「変な奴。……僕は、中村恵里」
「中村だな!よろし……中村恵里?」
「ん?僕の名前がどうかしたの?」
中村恵里と言う少女……なんだこの既視感?
不思議そうに俺を見てくる少女の顔を見ると何かを思い出しそうになる。
俺の名前は檜山大介、目の前女の子の名前は中村恵里……おいおい噓だろ!?
なってこったい!何が命の危険が無い世界だ!
まさか俺が転生した世界って……ありふれた職業で世界最強なのか?
確かこんな感じの内容だったよ……ね?