ありふれた職業で世界最強に転生したと思ったら檜山だった件(再投稿版) 作:ホームズの弟子
ちょっと閑話が増えると思います。
許して下さいなんでもしますから
南雲家のある一室
勉強机に本棚、テレビとゲーム機器、流行のトレーディングカードと絵に描いたような年頃男子の部屋。
夕暮れ迫り、辺りが薄暗くなる中、いつもなら一つしかない影が、今日は二つあった。
「ハジメ君」
少女は、目の前の少年の名を告げ、同じベッドに座っていた少年を優しく押し倒す。
彼女の黒く長い髪がカーテンになり、少年は目の前の少女しか見えない。
まるで世界に二人だけになってしまったと錯覚してしまう光景に、少年は目の前の少女に今まで味わった事の無い感覚が芽生えた。
それが抱く劣情だとは少年にまだわからなかった。
「白﨑さん……」
「だめ、私の名前は白﨑じゃないよハジメ君?」
「……香織」
名前を呼ぶが否定される。
私の名を言って。
そうお願いされた少年は、まるで魔法にかけられたように彼女の名前が口からこぼれた。
そしてなぜこんな状況になっていたのかを思い出していた。
―――
――
―
(檜山に背中を押してもらったのはいいけど、女の子を誘うなんて人生で初めてだぞ)
南雲ハジメは、人生で初めて気になっている女の子を遊びに誘う為に思考を巡らせていた。
友人……親友と言っても過言ではない存在に、背中を押してもらい、勇気を出したのだが、如何せん女性の誘い方が分からない。
親に相談する訳にはいかず、どうしたものかと考えていた時、南雲ハジメは天啓得た。
(そうだ!僕には、白﨑さん共通の女の子の友達がいるじゃないか!)
南雲は早速、携帯で共通の友達、中村恵里へ連絡をする。
『そうだね……まずは南雲の家で遊ぶのがいいんじゃないかな』
「えっ?流石に初めて誘うのに、僕の家はまずくない?」
『大丈夫だよ。香織ちゃんって人込み苦手みたいだし、二人でゆっくり出来る方がいいよ』
「な、なるほど」
『それと僕からのアドバイスだと床に座らせたらダメだよ』
「座布団用意するしそれでいいんじゃないの?」
『何言ってるの!女の子がスカートで来てたらどうするの?南雲は香織ちゃんのパンツ見たいかもしれないけど、香織ちゃんは見られたくないんだよ』
「た、確かに……いやいや僕も白﨑さんのパンツが見たいなんて思ってなんか!」
『はいはいそういう事にしとくね。そうだね……南雲ってベッド?』
「そうだけど?」
『ならベッドに座らせるのが吉かな』
「ベッドに座らせるには流石に……僕は椅子に座っておけばいいか」
『違うよ南雲。女の子はね、気になっている男の子が自分と違う場所に座るなんてされたら悲しくなっちゃうよ』
「そうなの?」
『それに、南雲のお母さんの漫画を見てみたいって言ってたから、ベッドなら一緒に読めて一石二鳥じゃん』
「なるほど。確かに一理あるかも」
『それと着替えはバレない所に入れる事。棚の下の方入れる事、香織ちゃんワンピースをよく着るみたいだから屈む所に入れておけばバレる事なし』
「ちょっと待って!メモ取るからちょっと待って!」
男には分からない話ばかりだった。
中村恵里の口から次々と出てくる女の子はこんな風に思っている、こうして欲しい、男が気を付けておくべきポイントを的確に教えてくれる。
白﨑香織の趣味、好きなジャンルの漫画、好きなミュージシャン――今、南雲が欲しい情報のオンパレードだった。
青天の霹靂、驚天動地とはこの事だと南雲ハジメは感じ、中村の話を聞き洩らさない為に、ノートにどんどんとメモを取っていく。
『まあこんなものかな?僕も応援してるよ南雲。そのかわり香織ちゃん泣かしたらぜっったいにダメだよ』
「はい!ありがとう中村さん……いや!中村先生!僕頑張ります!」
電話を切ると南雲は早速準備に取り掛かる。
彼女に嫌われない様にそして、出来る事なら
(これをきっかけに白﨑さんと、もっと仲を深められたらいいな……中村さん本当にありがとう!)
しかし、彼は知らなかった。
この世の中が善意だけで出来ていると思ってはいけない事を。
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相手に気付かれず真綿の紐で体を徐々に絡めて抜け出せない様にする人もいる事を。
『もしもし、香織ちゃん?実はさっき南雲からね――』
気付いた時には……いや、彼はきっと気付く事が無いだろう。
何故ならこの真綿の紐は、善意と好意とちょっとの独占欲で構成されているこの世で最も厄介で、決してちぎる事も、ほどく事も出来ない紐であるから。
――――
「お邪魔しまーす」
「ど……どうぞ白﨑さん、ここ、ここに座っててね。飲み物もってくるから」
「ありがとう南雲君……えーい!」
「白﨑さん!?何してるの!?」
「こんな軟らかそうなベッド飛び込まずにはいられないよ!」
「洗濯はしてもらってるけど、臭いでしょ?」
「そんな事無いよ」
そう言うと、白﨑は南雲の枕を抱きかかえると、顔を埋めスーッと息を吸い込み笑顔を浮かべ
「お日様の匂いだね」
(今日は絶対に寝れないな……)
南雲ハジメは早速行動を起こした。
白﨑香織にメールを送り、家に誘う事に成功し、部屋に招き入れ、少々どもりながらベッドを指し座る様に促す。
本来男が女性にこんな事言うのは中々に下心丸出しの誘い文句だが、これは中村からの入れ知恵の一つである。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
南雲が窓の外を見るとさっきまで明るかったと思っていたが、いつの間にか夕暮れが迫っていた。
「もうこんな時間か。白﨑さん今日は楽しめたかな?」
「楽しかったよ南雲君……ううん違うね」
「えっ?」
―――
――
―
そして冒頭へと戻る。
優しく押し倒された南雲は、自分の心の中にあった彼女の思いを口にした。
「香織……君と会って、長い時間じゃないけど君の人となりに触れて思ったんだ」
「うん」
「僕君の事が好きなんだ」
「本当?」
「本当だよ。噓じゃない」
「嬉しい。私もハジメ君が好き。人の為に行動できる貴方が好き」
「香織…」
「ハジメ君…」
二つあった影が一つになる。
「……私の初めてあげちゃった」
(キスって本当甘いんだ……)
◇◇
「でもまあ、白﨑さんと付き合える様になったのも檜山と中村さんのおかげだよね。ありがとう檜山!」
僕の告白された時の思い出を檜山に伝えたら、檜山は頭を抱えて唸っている。
すると徐に口を開いた檜山は、必死の形相で僕の肩を掴み。
「南雲よ……恵里から言われた事をぜっっったいに他の女の子にするなよ!約束しろ!」
「ど…どうしたんだよ檜山?」
「いいから約束しろ!お前の命の為を思って言っていやる!それが当てはまるのは白﨑だけだとな!」
「えっ?」