You're my hero   作:地球の星

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10. 日本にミレーユとチャモロ来たーっ!(後編)

 ムドーにかけられた呪いを解いてもらった後、次なる治療を受けるために日本にやってきたミレーユとチャモロは、近くを通りかかった大学生の風口志朗に出会った。

 そして、彼に案内されて蕨丈二監督の家にやってきて、寝泊まりすることにした。

 

 翌日。検査入院を終えて病院から帰宅した丈二は、ゲームの世界からやってきた2人に会った。

「初めまして。僕は蕨丈二。昨日、君達が画面越しにお世話になった安奈の兄です。よろしくお願いします。」

「あの、初めまして。ミレーユと申します。この度はこの家に泊めていただき、ありがとうございます。」

「私はチャモロです。目がこんな状態のため、お顔を拝見出来なくて恐縮ですが、よろしくお願いします。」

 3人は自己紹介をした後、お互いのことについて色々なことを話した。

 その様子を見ていた志朗は、次第に2人を丈二に任せても大丈夫と実感するようになった。

「というわけで、ジョーさん。僕は以前から母さんに会って直接話をしたいと思っていたので、これから家族のもとに向かってもよろしいですか?」

「おお、そうか。思えば君は競技に集中していて家族に会えず、直接顔を見たのも、あの駅伝大会でお前が7区の500m地点を通過した時や、市町村対抗駅伝のゴール手前付近だったからな。確か、母親は車いすを使わずに観戦していたと思うが、そこまで元気になったのか?」

「はい。4年前に母さんが倒れた時は、介護のために失意の底で高校中退も考えるほど追い込まれましたが、アンが手を差しのべてくれたおかげで窮地を乗り切り、彼女に加えてジョーさん。赴任を取りやめて帰ってきた父さん。そして、求司をはじめ多くの人達の協力のおかげで、応援に駆け付けられるまでに回復しました。僕はこれまで競技のために我慢して頑張り続けていましたが、やっと時間が出来たので、会って安心させてあげたいんです。」

「そうか。分かった。では、ミレーユとチャモロのことは僕に任せて、君は何も心配せずに行ってきなさい。」

「ありがとうございます!」

 志朗はお礼を言うと、ミレーユとチャモロにもお辞儀をして、家を後にしていった。

 

 彼の姿が見えなくなった後、丈二はミレーユとチャモロの状態をチェックし、治すためには手術が必要だと判断した。

「お願いします。この腕が動くようにしてください。」

「私は物がしっかりと見えるようになりたいです。」

「分かった。君達は保険が効かないからかなりの費用がかかりそうだが、お金のことは何とかしよう。」

「本当ですか?」

「お願いします。」

 ミレーユとチャモロはすがるように頭を下げた。

 それを見た丈二は早速彼らを病院に連れていくことにした。

 その際、ミレーユは安奈の帽子をかぶり、チャモロは自分の帽子を取った上で、志朗が7区を走った時に使用したサングラスをかけ、さらに2人はマスクと上着を身に着けて、他の人達にバレないようにした。

 

 2人は車に乗り込む時点ですでに緊張しており、病院についてからはすっかり雰囲気にのまれていた。

 それでも丈二はうまくフォローを入れながら症状について説明をし、何とか今後の治療法について教えてもらうことが出来た。

 そして、ミレーユは右肩が比較的簡易的な手術で済みそうだったため、早速この後、手続きをすることになった。

 しかし、左肩がかなりの重症だったため、こちらは後日、時間をかけて手術を受けることになった。

 一方、チャモロは片目ずつ治すか、両目を一気に治すかの選択を迫られたが、考えた末にまず全く見えない右目を治すことを選び、こちらも即座に手続きをした。

 

 この日の夜。手術を終えた2人は病院を後にし、丈二と一緒に家に戻ってきた。

「丈二さん、かなりの費用になってしまって恐縮ですが、本当にありがとうございます。」

「手術は怖かったですが、おかげで少しだけ目が良くなりました。この場を借りてお礼を申し上げます。」

 2人は費用を肩代わりしてくれた彼に頭が上がらなかった。

「大丈夫です。僕はこれまでに稼いだお金がありますし、たとえお金は使っても働けば戻ってきますから。君達はケガを治すことを考えてください。」

 丈二は優しい言葉をかけて彼らを励ました。

 そして、パソコンを立ち上げて、動画を見ながらゆっくりと過ごしてもらうことにした。

「でも、私達は一体何を見ればいいんでしょうか?」

「バーバラさんは歌で盛り上がっていましたけれど。」

「そうですね。では、君達が出演しているゲームの動画でも見てみますか?」

 丈二は入院中に通話可能エリアで安奈におすすめの作品について聞き、返事をもらっていたため、早速その動画を再生した。

 それはドラクエ6の考察に関するもので、霊○と魔○○が解説をしていた。

 

『今回は、商人が熟練度5で覚える「おたけび」について解説をしていきます。』

『商人はあまり有用な職業ではないから、そもそもなったことないし、この特技も使ったことないな。』

『うまく使えば、すごく役に立つわよ。それでは早速説明していくわね。』

『よろしく頼んだぜ。それじゃ、』

2人『ゆっくりしていってねー。』

『メンバーは主人公、ハッサン、ミレーユ、バーバラの4人で、ミレーユがおたけびを覚えた状態で星降る腕輪を装備させておくわね。』

『ふむ。何でミレーユなんだ?』

『彼女ならほとんど確定で先制おたけびが出来るからね。』

『確かに彼女は最も素早いキャラだからな。それで、ようじゅつし3人と出会ったな。確かこの敵は強耐性が多くて厄介な敵だったが。』

『でも実はおたけびに無耐性なのよ。だから、ミレーユに先制でおたけびを使わせると、ほら、このとおり。』

『おっ!全員すくんだな。つまりこのターンではノーダメージが確定したってことか?』

『そのとおりよ。ただし効果は1ターンだけだから彼女は毎回おたけびということになるわ。』

『声が枯れそうだな。大丈夫か?』

『それは気にしてはいけないことよ。そしてバーバラはマホトラでMPを補充。主人公はジワジワと攻撃。ハッサンはゲントの杖でHPを回復させていくわ。』

『おっ!ダメージを与えながらMPとHPが回復したな。』

『やることが済んだら3人で総攻撃よ。ほら、これでほとんど攻撃を受けることなく撃破したわ。』

『楽勝だな。こんなのがまかり通ったら戦闘バランスが壊れそうだな。』

『でも、先にこれを覚えておけば魔法使いに転職しても一軍で出せるようになるわ。』

『確かに、攻撃されなければHPが低くても関係ないもんな。』

『今回の敵は無耐性だったけれど、たとえ強耐性を持っていたとしても、集団で出てくれば誰かは効くでしょうから、相手からの攻撃を減らすことが出来るわ。だから、覚えてしまえばガンガン使っていけるわよ。』

『そうだな。私も早速誰かを商人に転職させてみることにするぜ。』

『というわけで、今回はおたけびの有用性について解説したわ。それではみなさん、』

2人『まったねえーっ。』

 

 丈二はその作品が終わると、今度は主人公とバーバラが魔法使いでしばらく粘り続けてイオラを覚え、その後、うp主が「主バの愛の力」と命名して2人でぶっ放す作品を流した。

(なるほど。イオラはかなり有用な呪文ですね。大幅な弱体化はネックですが、私もぜひ覚えてみたいです。)

 丈二から解説を聞いていたチャモロは、ダーマ神殿に行ったら迷わずこの職業に就くことを決意した。

 その後、ミレーユとチャモロは、転職が可能になるとすぐに全員にメラミ、ラリホー、ホイミ、ニフラムを覚えさせて、これらを組み合わせるやり方を視聴した。

(全員これらが使えるだけでも大幅強化になりそうね。でも、こんな体では呪文自体が唱えられないし、他の人にお願いすることにして、おたけびに専念しようかしら。)

 ミレーユが考え事をしていると『ご視聴、ありがとうございました。』のメッセージが表示された後に作品が終わり、まもなく次の動画が始まった。

 その内容はラリホー(マ)、おたけび、メダパニ(ダンス)、やけつく息を駆使して徹底的に相手の動きを封じ、イオラ、まわしげり、せいけん突き、はやぶさぎり、(お金があれば)軍隊呼びなどで滅多打ちにするという、ひでぶなものだった。

 そのため、コメント欄には「そんな、ひどい…。」、「うp主そこまでするか!」、「こんなの絶対怒られるぞ!」と書き込まれていた。

 その後、彼らはゲームの動画に疲れたため、今度は音楽を聞くことにし、丈二は「You're my hero」と「ドラクエ バーバラのテーマ」を流すことにした。

 これらの2曲はメロディーも似ており、ミレーユとチャモロは聞き比べながら何度も再生をしていた。

 

 後日。3人は再度病院に行き、ミレーユは左肩、チャモロは左目の手術を受けた。

 退院した時点でミレーユは左腕を三角巾で吊り上げており、チャモロはメガネをかけても視力検査で0.1が答えられなかったが、以前よりも状態は良くなった。

「丈二さん。私達のためにここまでしてくださって、本当にありがとうございます。」

「あとはゲームの世界に戻ってベホマを唱え続ければ治せると思います。」

 2人は完治こそしていないものの、表情は以前よりも明らかに明るくなった。

「それは良かった。僕としても、君達の役に立てて本当に良かった。後は、君達がいつ帰るかですね。」

「はい。出来ることなら、この世界でバーバラに謝ってから帰りたかったのですが…。」

「ミレーユさん、それはもうやめましょう。いくら悔やんでも過去は変えられません。ですが、未来は変えられます。絶対に変えていきましょう。」

「私もあの時、レックさん達に加担する形になってしまったことが悔やまれますが、これからはバーバラさんの仲介役になって、お互い仲直りしたいと思います。だからミレーユさん、これ以上落ち込まないでください。」

「ありがとう、丈二さん、チャモロ。私もバーバラともう一度やり直せるように頑張るからね。」

 2人の気持ちには未来に向けての意気込みがあふれていた。

 

 その後。ミレーユは右腕がかなり動かせるようになり、普通にスプーンを持ったり、自分で歯磨きが出来るようになった。

 一方のチャモロは丈二がオートフォーカスのメガネを用意してくれたため、日常生活への支障は少なくなった。

 そして2人が再びゲームの世界に戻ることを決意すると、彼らは丈二に直接伝えることにした。

「丈二さん、これまで本当にお世話になりました。ここで色々学びながら過ごしたことは決して忘れません。」

「志朗さんと安奈さんに会えないのが残念ですが、私もミレーユさんも感謝をしていることを伝えてください。」

「分かりました。僕も君達に会えて本当にうれしかったです。そして、これからはバーバラを含めてみんなで仲良く過ごしてください。さらに、向こうの世界にいる求司をよろしくお願いします。」

「はい。約束します。」

「必ず彼をお守りします。」

 3人が名残惜しそうに会話をしていると、そこに志朗が急ぎ足で玄関の扉を開けて、家の中に入ってきた。

「あっ、まだいたんですね。良かった。間に合った。」

 彼はほっと一息つくと、早速カバンから袋を取り出して、ミレーユに差し出してきた。

「これをミレーユに差し上げたかったんです。」

「これは何ですか?」

「ホイッスルです。アンがこれを道具使用すればおたけびに近い効果を得られるんじゃないかと言っていたので、戻ってくる前に買いに行っていたんです。試しに使ってみてくれませんか?」

「そうですね。では早速使わせていただきます。」

 ミレーユは袋を開けて中身を取り出すと、早速口にくわえて吹いてみた。

 すると辺りには「ピーーーッ!」という甲高い音が鳴り響いた。

「す、すごい音ですね。」

「私もビックリだわ。」

 その音は思った以上に大きかったため、2人は思わず驚いてしまったが、確かに相手をひるませる効果が期待出来そうだった。

「志朗、ありがとうございます。では、遠慮なく使わせていただきます。そして、アイテム使用で戦力になろうと思います。」

「私はこの特性メガネがあるとはいえ、通常攻撃や特技では苦しいですが、それを呪文で補うことにします。そして立派な賢者になりたいと思います。」

「その調子ですよ。君はベホマタンクにもなれますし、移動中は非常に大切な存在です。ぜひみんなの役に立ってください。」

「志朗さん、ありがとうございます。バーバラさんに会って、仲間に復帰してくれたのであれば、彼女を守りながら率先して回復することにします。そして、みんなで協力しながら頑張ります。」

「頼んだよ。アンのショート動画で見たとおり、彼女は本来すごく明るくて、面白くて、話していて楽しくなる人だから、ぜひそんな彼女を取り戻してあげてください。」

「はい。約束します。今までありがとうございました。」

 チャモロがそう言って右手を差し出すと、志朗もそれに続くように右手を差し出し、お互い握手を交わした。

 すると、ミレーユと丈二も握手をして、さらに4人で手を重ねた。

 

 それから10分後。4人が外に出ると、チャモロはミレーユと並んで立ちながら異世界に移動するアイテムを使用した。

「お元気で。そして、機会があればまたこの世界に戻ってきてください。」

「僕が実業団で走る姿を、ぜひバーバラを加えたみんなで見に来てください。」

「ありがとうございます。チャモロ達と力を合わせて頑張ります。」

「戦いが終わったらきっと戻ってきます。待っていてください。」

 4人が言葉を交わすと光は段々強くなっていき、完全にミレーユとチャモロの体を包み込んだ。

 その様子を丈二と志朗は手を振りながら、光が消えてなくなるまで見守り続けた。

 

 マーズの館の前に降り立ったミレーユとチャモロは、新たな闘志を燃やしながら館に入っていった。

 そしてグランマーズからゲントの杖、星のかけら、星降る腕輪、はやてのリングを受け取ると、彼女のルーラでダーマ神殿へと向かっていき、ミレーユは商人に、チャモロは魔法使いに転職した。




 今回、ミレーユ、チャモロ達が「You're my hero」とセットで聞いていた曲の歌詞は次の通りです。
 「You're my hero」はゲーム「Hector○○」のBGMに歌詞をつけたものですが、それに対抗する形で「ボンバー○○○」にも歌詞をつけてみました。



タイトル:ドラクエ バーバラのテーマ


能力アップは はるかな夢
悔しい気持ちを 力に変えて
みんなに 負けないバワー 身につけるため
行く手をはばむバリア 乗り越えていく

傷つける 言葉を浴びても
あきらめない きっと はい上がってみせる

Go for break out
Go for break out 風よりも速く
駆け抜けろ 駆け破れ バーバラ

輝きなくした この心
希望を忘れて 馬車で過ごす日々   
飛び出せ 未来の道 切り開くため
新たな 自分になる 走り続ける

よみがえる トラウマを超えて
みんなを越える 生まれ変わっていく

Go for break out
Go for break out 誰よりも速く
駆け抜けろ 駆け破れ バーバラ
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