足の治療のためにゲームの世界にやってきた求司は、バーバラに金策のためのアイデアを提示した。
それを受けて、彼女はビアンカやテリー、仲間モンスターと一緒にレイドックの井戸に入っていき、氷のやいばとおしゃれなバンダナに加えて、ある程度のお金を手に入れた。
それを受けて、翌日彼女はバンダナを売却した後、買い物をして求司のところに戻ってきた。
「たっだいま~。」
「あっ、お帰り。どうだった?いい物が買えた?」
「まあね。ルーラで色々な町を回った結果、皮のドレス、毛皮のフード、金のブレスレットを手に入れたわ。これで守備面も何とかなりそうね。」
「それは良かったね。」
「これもキュウジがレイドックの井戸を勧めてくれたおかげよ。ありがとう。」
「ど、どういたしまして…。あそこはある意味危険な場所だから、出来るだけ避けたかったんだけれど、無事で良かったよ。」
「それもみんなのおかげよ。それでね、あそこ以外に金策やアイテム探しにおすすめの場所ってある?」
「えっ?どうして?」
「実は、昨日の出来事をビアンカが口コミで広めたみたいで、ゴレムス、ゲレゲレの他にオークキングのオークス、スライムナイトのピエールがレイドックの井戸に行ったの。でも、その時にはもぬけの殻になってしまったみたいで、何も手に入らなかったのよ。」
「ああ、なるほど。あれだけコテンパンにされたら、確かに撤退するだろうね。」
「そういうわけなの。だから、他の場所教えて!」
「うーーん…。」
「お願い!何としてもお金をためて、身かわしの服を買いたいの!」
「分かった。じゃあ、今から一覧表を作るから、1時間ほど待ってくれる?」
「OK!じゃああたし、武闘家に転職して氷のやいばでグループ攻撃が出来るように特訓しておくわね。」
バーバラは満面の笑みを見せると、部屋を飛び出して神殿に向かっていった。
その後、求司は度々あくびをしながらスマートフォンにダウンロードしておいた情報を見たり、安奈の体験談を思い出しながら表を作り上げ、僧侶になって戻ってきたバーバラに見せた。
書いてある内容は次の通りだった。
この度、金策に役立つと思われる情報を一覧表にしました。
左からモンスターの名前、ドロップアイテム、確率、売値、出現場所です。
・はなまどう 鉄の杖 64分の1 637G アモール北の洞くつ、月鏡の塔
・ビッグフェイス うろこの盾 64分の1 135G 夢見の洞くつ
・スライムナイト 銅の剣 64分の1 202G アモール北の洞くつ、夢見の洞くつ
・フェアリードラゴン 絹のローブ 64分の1 450G 地底魔城、ゲントの村周辺
・ケダモン 毛皮のフード 32分の1 300G ゲントの村周辺
・はねせんにん 鉄の杖 64分の1 637G 地底魔城
・ちんもくのひつじ 鉄のツメ 128分の1 525G アモール北の洞くつ、月鏡の塔、地底魔城
・デスファレーナ どくがのナイフ128分の1 712G 月鏡の塔、地底魔城
・メタルスライム ブーメラン 128分の1 315G 夢見の洞くつ、アモール北の洞くつ、地底魔城
・くものきょじん 身かわしの服 128分の1 2250G 北の山
・カメレオンマン くさりがま 64分の1 825G 北の山
おまけ
・フレイムマン 命の木の実 256分の1 地底魔城
・オークマン 力の種 256分の1 北の山
・悪魔のカガミ 不思議な木の実 256分の1 月鏡の塔
・ようじゅつし 不思議な木の実 256分の1 ゲントの村周辺
「わあっ!すごーい!こんなのが手に入れば、かなりの金策になりそうね。」
「うん。すでに行ったことのある場所なら僧侶のバーバラでも勝てると思うし、お金もアイテムも手に入ると思うよ。」
「じゃああたし、今度はこれらの場所に行ってみることにするわ!」
バーバラが喜びながら気合を入れていると、求司はまたあくびをしてしまった。
「あら、キュウジ、どうしたの?眠いの?」
「実は、フローラの家庭教師をしていて、緊張しっぱなしで疲れちゃったんだ。」
「その状態で一覧表を作っていたの?何だか悪いことしちゃったかしら。」
「大丈夫。誰かのためなら頑張れるから。」
「それなら良かったわ。それで、この後キュウジはどうするの?」
「とりあえず、少しでも体を動かそうと思っているんだけれど。」
「そんなことをして大丈夫?そもそも歩けるの?」
「呪文のおかげか、少しの距離なら松葉杖無しで歩けるようになったから、大丈夫だよ。」
求司はそれを証明するために椅子から立ち上がって歩き始めた。
しかし、見るからにヨロヨロだった上に、顔をしかめたため、バーバラは「あっ!無理をしないで。」と言ってすぐに止めさせ、求司は再び椅子に座った。
「イタタタ…。」
「あたし、今からホイミを唱えてあげるからね。」
彼女は即座にホイミを20回唱えてくれた。
「どうもありがとう。」
「どういたしましてよ。それじゃあキュウジ。あたし出かけるから、その紙、貸してくれる?」
「いいよ。なくさないように大事に使ってね。」
「うんっ!ありがとう!」
「気を付けてね。そして、決して無理をしないでね。」
「分かったわ。じゃあ、行ってきまーす!」
バーバラは元気よく返事をすると、駆け出すように部屋を後にしていった。
求司は部屋で1人になると近くに置いてあったこん棒を拾い上げ、椅子に座りながら素振りを始めた。
一方、バーバラはダーマ神殿にいたビアンカに声をかけ、金策メンバーをつのることにした。
その結果、テリー、ビアンカ、ゲレゲレ、ゴレムス、オークス、ピエールに加えてゼシカ、ヤンガス、ゲルダが名乗り出たため、バーバラの提案で2つのチームに分けることにした。
そしてビアンカ達(要はドラクエ5のメンバー)とテリーはゲントの村周辺に、バーバラとドラクエ8のメンバーは夢見の洞くつに向かっていった。
「さあ、おとなしくアイテムをあたし達に渡してもらおうか!」
「あっしらも出来ることなら傷はつけたくないでがす!」
ゲルダとヤンガスは相手モンスター、特にビッグフェイス、スライムナイト(※ピエールではありません)、メタルスライムに出会うたびに交渉を持ち掛けた。
しかし、彼らにとってゲルダ達は侵入者同然の存在だったため、答えはNOの一点張りで、メタルスライムはすぐに逃げてしまう一方、他の者達は無謀と分かっていても歯向かおうとしてきた。
「ちょっ、ちょっと待って!ちょっとだけよ~。」
「私達はただ、金策をしにきただけだっちゅーの!」
バーバラとゼシカは慌てて間に入ると、それぞれフリを交えてアピールをした。
その見えそうで見えないナイスアングルにモンスター達は思わず見とれてしまったため、戦闘は危ういところで回避出来た。
するとそこにスライムが騒ぎを聞きつけて、駆け足(?)でやってきた。
「どうしたんですか?侵入者ですか?」
「あっ、スラリン。こいつら、ひどいんですよ!」
「いきなりやってきて、アイテムゲッツですよ!」
ビッグフェイスとスライムナイトは怒ったような口調で言い放った。
「そんな、ひどい…。これじゃ私達が悪役になっちゃうじゃないのよ!」
「あっしらはうろこの盾や銅の剣といったアイテムがほしいだけでがす。」
「おとなしく渡してくれればすぐにでも撤退するんだけれどねえ。」
ゼシカ、ヤンガス、ゲルダは予想外の展開に戸惑ってしまった。
するとここでスラリンがバーバラの顔を見て、思わず目を大きく見開いた。
「あれ?あの、間違っていたらすみません。あなたはあの時の…。」
「えっ?君、あたしとどこかで会ったかしら?」
「ほら!僕が以前仲間に加えてほしいとお願いした時に、ただ1人賛成票を入れてくれた女の人ですよね?」
「ええっと…、あっ、思い出したわ!レック達と一緒にいた時に出会った、あのスライムだったのね!」
「そうです。あの時は寂しそうに立ち去るしかなかったんですが、改めてお願いします。ボクを仲間に入れてくれますか?」
「いいえ。」
「そんな、ひどい…。あの時は賛成票を入れてくれたのに…。」
「キャハハハ。冗談よ。喜んで迎えてあげるわ。あたしバーバラ。よろしくね。」
「ありがとうございます!ボクはスラリンです!これからよろしくお願いします!」
スラリンは満面の笑みでお辞儀をすると、うれしそうにバーバラのそばにやってきて、仲間に加わった。
「じゃあ、あたしはこれで満足したから、潔く撤退するわ。じゃあね。」
バーバラは笑顔でモンスター達に手を振ると、リレミトを唱えてスラリンを加えた全員で洞くつを後にしていった。
一方、洞くつ内部では…。
「あっ!うろこの盾が無い!」
「私の銅の剣、どこに行ったんですか?」
「230Gの入った財布スられた!」
「薬草と魔法の聖水返してくれ!」
モンスター達はバーバラとスラリンが会話をしている間にやられたため、怒り心頭だった。
そんなことを気にも留めてないバーバラ達は、次にアモール北の洞くつに行き、手分けをしながら宝探しをした。
その結果、お金に加えて新たに鉄の杖と銅の剣(2つずつ)、薬草(4つ)、聖水、鉄のツメ、とがったホネ、命の木の実、不思議な木の実を手に入れ、スラリンは鉄のツメを装備することにした。
「ねえ、命の木の実はあたしが食べてもいい?」
「僕は不思議な木の実を食べたいです。」
「いいわよ。君達は少しでもステータスアップをしたいでしょうから。」
「わーい!やったあっ!」
「ありがとうございます!」
ゼシカの許可を得てバーバラとスラリンはそれらを食べ、それぞれ(無職に換算した状態で)最大HPを6、最大MPを5上げた。
その後、洞くつを後にした彼らは、ダーマ神殿のお店でアイテムを売ってお金を手に入れた。
「それじゃ、僕はこのお金でスライムの服ととんがり帽子を買うことにします。」
スラリンは迷うことなくそれらを購入して装備した。
一方、バーバラは身かわしの服を買うために、この日の買い物を我慢した。
彼女はゼシカ達と別れた後、求司の部屋にやってきてその日の成果を報告した。
「というわけでね、今回はスラリンが仲間に加わったの。」
「ああ、あの、ドラクエに詳しくない人でも知っているマスコット的キャラだね。」
「そうよ。彼はHPも低いし、MPも1桁だから魔法使いや僧侶にはなれないけれど、仲良く付き合っていきたいと思っているの。ねえ、一緒に行動してもいいでしょ?」
「もちろん。それで、MPで思い出したんだけれど、フローラから家庭教師のお礼として不思議な木の実をもらったから、これをスラリンにあげてもいいかな?」
「えっ?キュウジは使わないの?」
「僕はいいから、彼に役立ててほしいんだ。だから、これを渡してくれる?」
「分かったわ。」
2人が会話をしていると、踊り子に転職したスラリンが誘う踊りを覚えた状態でやってきたため、彼は早速最大MPをさらに4(無職だと5)上げた。
「キュウジさん、ありがとうございます。それで、戦闘で何か役に立つ踊りがあればいいんですけれど、何かいいアイデアありますか?」
「それなら、ちょうどいい踊りがあるよ。」
「えっ?何ですか?」
「ちょっと待ってて。今、動画を出すから。」
求司はスマートフォンを取り出すと、過去に撮影した作品を開いた。
それは、大学の休日を利用して志朗とボーリングにやってきた時のものだった。
『求司、行けえっ!』
『せーの、どりゃあっ!』
求司が左手で投げたボールは1番ピンに当たると、連鎖的にバタバタと倒していき、ストライクを獲得した。
『よっしゃーーーっ!やったぜ!』
『求司、ストライクパフォーマンスだ!』
『じゃあ、メダパニダンス、メダパニダンス、踊れ~。』
『おおっ!?何だか頭が混乱してきたぞおっ!』
「あっ、この踊り、あたしが映画ドラゴンクエストⅣを見た時に、マーニャがステージ上で踊っていたものと同じだわ!」
「えっ?そう?」
「うんっ!あたし、何だか気に入っちゃったから、そのシーンを何度も見て覚えちゃったのよ。確か、こんな感じだったかしらね。」
バーバラはそう言うと即座に踊りだした。
それを見てスラリンも興味を持ち、自分も踊りたいと言い出した。
「いいわよ。一緒に踊りましょっ!」
「はいよろこんで。」
バーバラの了解を得て、スラリンは早速自分も彼女のマネをしながら踊りだした。
そして求司は手拍子をしながら一緒に盛り上がっていた。
一方、時間をさかのぼってゲントの村周辺では…。
「お の れ あいつらーーーっ!」
「私達の大切なお金とアイテムを…。」
「なす術なくやられて、悔しいです!」
「やられたらやり返す。倍返しだ!」
「私、このまま終わらないので。」
ビアンカやテリー達にコテンパンにやられた挙句、お金やアイテムをごっそりと持っていかれたモンスター達は、ダークホビットに薬草で治療をしてもらいながら、雪辱に燃えていた。
そんなことを知る由もないビアンカ達は、次に北の山に入っていった。
「お前ら、俺達に会ったのが運の尽きだったな。」
「こちらは強力な助っ人に来てもらったんだ。」
「今から全員返り討ちにしてやるからな!」
現地に定住しているくものきょじん、カメレオンマン、オークマン達は不気味な笑みを浮かべながら仲間を呼び、アイアンタートル、ストロングアニマル、フロストギズモを加えた。
「みなさん、あいつらを木っ端みじんにしてください!」
「ついでに、お金とアイテムもごっそりともらいましょう!」
「これは豊作ですよ!今夜はパーッと盛り上がりましょうぜ!」
くものきょじん達が自信満々で刺客を差し向けると、アイアンタートル達は見覚えのあるキャラがいることに気が付いた。
「きっ、君達はっ!?」
「まさか、あの井戸で?」
「しかも人数増えているし!」
彼らは過去にレイドックの井戸でコテンパンにされたため、テリーやゴレムス達を見るなり、「ぎいやあああっ!」と叫びながら氷のやいばとカメのこうらを落として逃げていった。
「こらあっ!逃げるな!」
「何でそうなるの!」
「ちょっと!ちょっと、ちょっと!」
取り残されたくものきょじん、カメレオンマン、オークマンは思わず呆然としてしまった。
すると、彼らは背後からイヤ~なオーラを感じ取るようになった。
それは第3者が見ると「し○らーっ!後ろーっ!」と言いたくなる状況だった。
「いやー、今回も結構豊作でしたね。」
「身かわしの服が手に入って、うれしーっ!」
「ガルルル、ガルルル!(氷のやいば、ゲットだぜ!)」
「オレ、コノ種デ、サラニチカラ、上ゲル。」
「明日もぜひ狩りをしに来てえぜ。」
「あの赤毛の魔女、かわいいフリしてわりとやるじゃねえか。」
ピエール、ビアンカ、ゲレゲレ、ゴレムス、オークス、テリーは笑いが止まらない状態で北の山を後にしていった。
というわけで、タイトルにもある通り、スライムのスラリンが仲間になりました。
6のリメイク版では仲間になりませんが、僕自身、外国の人とドラクエの話をしていた時「そのゲームはよく知らないけれど、Blue Slimeがマスコットなのは知っている。」と言われたことがあり、それを受けて仲間に加えることにしました。
ついでに言いますと、求司がボーリングをしている時のパフォーマンスは、僕が実際にやったことです。
まあ、完全耐性だったのか、誰も混乱しませんでしたが(笑)。