求司とバーバラの仲間に加わったスラリンは、屋外でメダパニダンスの練習を繰り返し行った。
彼はまだレベルも低く、HPもかなり少ないため、戦力としては厳しい状況だったが、求司は彼が努力する姿をじっと見守り続けた。
一方、バーバラは武闘家に転職し、氷のやいばでのグループ攻撃の試験に望んでいた。
そして、ついに合格をもらえた彼女は僧侶に復帰し、新たに覚えつつあるベホイミで求司の治療にあたった。
「どう?効果はあるかしら。」
「うん、あるよ。やっと松葉杖無しでも歩けるようになったから。」
「本当?良かったあっ!でも、まだベホイミの消費MPが7だから、もう少し減らさないといけないわね。」
「確かに、消費MPを5にしないと合格がもらえないからね。でも、回復量は基準を満たしているし、あと少しだよ。」
「そうね。もう少し頑張ってみるわ。」
バーバラは呪文を唱え終わると、求司から提案された練習メニューに従ってスラリンとジョギングに出かけていった。
求司は1人になると、事前にフォズに用意してもらったメタルハンターの弓を使ってアーチェリーの練習をすることにした。
(今の僕はどうにか歩けるようになったとはいえ、接近戦では到底戦えない。だったら、せめて遠距離攻撃で何とかしよう。戦力になれるかは分からないけれど、やってみるしかない。)
彼は右手でにぎりを、左手で矢と弦(つる)を持って近くの木を狙った。
しかし、放った矢は狙いからかなり外れてしまった。
(うーーん、最初からうまくはいかないか…。)
彼は顔をしかめながらもゆっくりと歩いて矢を拾いに行き、また弓の練習をした。
それから1時間後。練習を終えた求司が椅子に座ってくつろいでいると、バーバラとスラリンが息を切らしながら戻ってきた。
すると、それから間もなく、1人の男性が後に続いてやってきた。
「キュウジ、おまたせーっ!もう名前を知っているかもしれないけれど、紹介するわね。アモスさんよ。」
「あ、あの、初めまして…、でしょうか?と、とにかく、わ、私はアモスと申します。」
彼は緊張しているのか、声も体も震えていた。
「初めまして。僕は野星求司。キュウジと呼んでください。年齢は20歳なので、少し年の差はありますが、それについては考えずに仲良くしていきましょう。」
彼は自己紹介に続いて、自分がバーバラと出会った経緯や、この世界に来るまでのいきさつを話した。
「というわけでね、彼はあたしが別世界にやってきて、失意の底でさまよっていた時に出会ったの。そして、一緒にこっちの世界にやってきて、毎日回復呪文を唱えて治療をしているのよ。」
「そ、そうですか。で、では、私もホイミが使えますし、い、今から、唱えることにしましょう。」
アモスはまだ緊張しながらも、ホイミを繰り返し唱えてくれた。
一方、スラリンはまだ使える呪文が無い状態だったが、メダパニダンスをマスターするために頑張っていることを話した。
次に、今度はアモスが自分のことを話すことになった。
彼はモンストルの町でハッサンに真実を打ち明けられてしまい、徐々に自責の念に襲われるようになっていった。
そして、その気持ちに耐えきれなくなってひそかに町を後にし、自分で北の山に向かうことにした。
苦難の旅の末に、どうにか理性のタネを手に入れた彼はその場でそれを服用し、ようやく変身を制御出来るようになった。
しかし、帰る場所を失ったため、あてもなくダーマ神殿の近くにやってくると、偶然トレーニング中のバーバラとスラリンに出会い、話をしているうちにいつしか意気投合したことを話した。
「というわけでね、アモスさん、言っていることがKYで面白いのよ。あたし、思わず吹き出しちゃったわ。」
「そ、それを言うなら、バーバラさんも同じです。まさしく、ムードメーカーという言葉がぴったりです。」
2人は笑いながらお互いのことを話した。
それを聞いているうちに求司もスラリンもつられて笑顔になっていき、彼らはいつの間にかそろって意気投合していた。
「これからみんなで力を合わせて頑張りましょう。」
「うんっ!それじゃあキュウジ、このチームの監督になってくれる?」
「えっ?監督?僕が?」
「あたしはぴったりだと思うけれどなあ。キュウジはあたしを元気づけてくれた上に金策のアイデアを教えてくれて、さらに色々なトレーニングメニューを考えてくれたから。」
バーバラは彼のおかげで自分がここまで這い上がれたことを話した。
「僕も今よりもっと強くなりたいですし、監督さん、よろしくお願いします。」
「わ、私は、キュウジさんよりも10歳年上ですが、か、監督さんのもとで、精いっぱい、が、頑張ります。」
スラリンとアモスもすでに監督という言葉を受け入れている状況だった。
「分かりました。では、今日から僕が監督になります!僕自身も含めてみんなに強くなってもらうために色々努力をしますので、信じてついてきてください!」
「ぜひお願いします!僕はいつまでも弱いモンスターだなんて言われたくありません!」
「わ、私も精いっぱいついていきます。そ、そして、トレーニング後は会話で盛り上がりましょう。」
「あたしもキュウジの治療を頑張るわ!そしてベホイミを、いずれはベホマをマスターしてみせるからね!」
スラリン、アモス、バーバラは喜んで賛成をしてくれた。
それを受けて求司は次の練習メニューを提案し、バーバラとスラリンはベホイミとメダパニダンスの特訓を再開した。
「では、アモスさん。今から僕の住んでいた世界で人気の技を教えてみたいと思います。」
「何でしょうか?」
「はあああっ!界○拳、2倍!」
彼は身構えると、商人の力ために該当する特技を見せた。
「そ、それは面白そうですね。では、私もマネをしてみたいと思います。」
アモスは早速戦士に転職した気になって気合をためた。
しかし、いきなりやってもうまくいかなかったため、彼は戦士に転職するために神殿に向かっていった。
(とにかく、即戦力間違いなしのアモスさんが加わったのは心強いな。とはいえ、うちには炎のツメも無いし、星降る腕輪もはやてのリングも無い。金策をしたとはいえ、まだ予算も少ない。僕のバイトでは生活は成り立つけれど貯金が出来ないし、次なる手を打たなければ…。)
求司は本当に欲しい装備品をそろえるために、自分で書いたメモ用紙を見ながら色々考えた。
そして、みんながそろうと今度は月鏡の塔に行き、そこで金策をすることにした。
翌日。求司は事前に痛み止めの薬を飲み、左足をテーピングでグルグル巻きにした状態で職業を解除した。
そして、毛皮のマント、うろこの盾、木の帽子を身に付けた後、バーバラ、スラリン、アモスと一緒に塔にやってきた。
しかし、着地時の衝撃で顔をゆがませたため、バーバラがベホイミ(消費MP6)を、アモスがホイミを唱えて痛み止めをしてくれた。
彼らがラーの鏡のあった中央の建物の入り口にやってくると、扉の前には「注意!ヘルホーネット増殖中!駆除してくれればお礼をします。ホイミンより」という貼り紙があった。
「これってあたしが以前戦った、あのハチのことかしらねえ。」
「ホーネット(スズメバチ)ってことは間違いないだろうな。」
「貼り紙があるってことは、よほどのことなんでしょうね。」
「とにかく刺されないように気をつけたいですね。」
バーバラ、求司、アモス、スラリンは不安を抱えながらも、思い切って扉を開けた。
すると、内部ではあちこちにハチの巣があり、多くのハチが動き回っていた。
そして、ハチの群れは求司達に気が付くと、まるで「侵入者だ!かかれ!」と言わんばかりにまず4匹が戦闘態勢に入った。
最初に行動したのはバーバラで、彼女は氷のやいばでグループ攻撃をしたが、相手が浮遊系のためかCとDしかヒットしなかった。
次にスラリンがまだ未完成ながらもメダパニダンスを披露してそのCとDを混乱させ、残ったAとBがそれぞれスラリンとアモスに通常攻撃をしてきたが、スラリンはうまく攻撃をかわした。
(この世界で敵と戦うのは初めてだけれど、やるしかない!当たってくれ!)
求司は祈るような気持ちで弓をひき、Cにヒットさせた。
最後に行動したアモスは通常攻撃でDを倒し、残りはAとBの2匹になった。
「うーん、飛んでいると当てにくいわね。」
「それならヒャダルコはどう?」
「あっ、そうね。やってみるわ。」
「頼んだよ。」
バーバラと求司は素早く次のターンの行動について話し合った。
そして彼女は早速氷のやいばを道具使用し、まるでハチ撃退用スプレーを噴射したかのように、一切の反撃を許すことなく戦闘を終了させてしまった。
「すごーい!これなら最初から使っておくべきだったわ!」
「ねえ、次は僕にその武器を使わせてください!」
「いいわよ。じゃあ、頼んだわね、スラリン君。」
「はいっ!」
スラリンは彼女から武器を受け取ると、早速自分に向かってきたハチ3匹めがけて道具使用した。
すると一瞬で戦闘が終了してしまい、彼もまた自身の活躍に大喜びだった。
その後はアモス→求司→バーバラ→スラリンの順番で道具使用することになり、さらにもし仕留め損ねた時に備えて他の誰かが破邪の剣でギラを放つことになった。
その結果、彼らは無事にヘルホーネットの駆除を達成した。
すると、ちょうどそこにホイミスライムのホイミンがやってきたため、スラリンは満面の笑みで成果を報告した。
「おおっ!本当に退治してくれたんですか!これはうれしいです!ありがとうございます!」
ホイミンは以前、駆除にやってきた仲間のホイミスライム達がヘルホーネットの毒にやられて治療中ということもあり、すがる気持ちだったため、深々と頭を下げてお礼を言った。
「では、さらなるお願いになってしまって恐縮なんですが、実は西側の塔でもヘルホーネットが増殖しているんです。もし迷惑でなければ引き受けてくれませんか?」
「分かりました。僕達も経験値や熟練度を稼ぎたいですし、行きましょう。」
求司は迷うことなくホイミンの頼みを受け入れた。
そして彼らは塔の中に入っていき、戦闘になる度にホイミンも含めてローテーションでヒャダルコ(保険としてギラ。バーバラはベギラマ)をぶっ放していった。
しかし、途中で痛み止めが切れかかってきた求司が足を気にするようになり、階段を上るのをためらったため、彼はバーバラのリレミトとルーラで一緒にダーマ神殿に戻っていった。
(※その後、バーバラは僧侶の熟練度試験を受けて、正式にマホトーン、キアリク、ベホイミをマスターしました。)
残った一行は宝探しをしながら見事に役割を果たし、時を同じくして、スラリンはメダパニダンスを、アモスは気合いためをマスターした。
そして、アモス達はホイミンの仲間であるホイムン、ホイラン、ホイロン(ホイランはメス)達のアジトに招待されて、お礼として金一封に加えてアイテムを手に入れた。
彼らが宝探しと合わせて手に入れたものは次の通りだった。
・毒消し草5個
・鉄の杖2本
・こん棒2本
・布の服
・どくがのナイフ
・とがったホネ
・魔法の聖水
・鉄のむねあて(後に求司が装備)
・不思議な木の実(スラリンが使用)
この中で、鉄の杖からとがったホネまでのアイテムに加えて、求司が装備していた毛皮のマント、バーバラが装備していた皮のドレス、スラリンが装備していた鉄のツメは店で売却された。
「これだけあれば欲しかった身かわしの服が手に入るわ!」
バーバラは喜びながら神殿にいる仲間モンスターのところに行き、3000ゴールドを支払おうとした。
すると、彼らは連日の狩りでアイテムが有り余っており、大盤振る舞いをしてくれたため、何と1200ゴールドで服とバンダナを1つずつ手に入れた。
「わーい!ありがとう!これならさらに買い物が出来るわね。他にも色々なものを買ってこようっと!」
バーバラはビアンカにゲントの村に連れていってもらうと、そこで毛皮のフードを下取りする形で銀の髪飾りを購入して戻ってきた。
彼女は次にスラリンとアモスを連れて町を回り、鉄かぶと2つと金のブレスレット、やいばのブーメランを1つずつ買った。
その結果、みんなの装備は次のようになった。
・求司 … 弓とこん棒、鉄のむねあて、うろこの盾、鉄かぶと、金のブレスレット
・バーバラ … 氷のやいば、身かわしの服、銀の髪飾り、金のブレスレット
・スラリン … やいばのブーメラン、スライムの服、鉄仮面、おしゃれなバンダナ
・アモス … 破邪の剣、鋼の鎧、鉄の盾、鉄かぶと
(※スラリンはアモスから鉄仮面を譲ってもらいました。)
「これでかなり装備が充実してきたわね!」
「僕も戦力になるめどが立ちそうです。」
「私も前線に立って頑張りますので、Yo Low Sick!」
バーバラ、スラリン、アモスが喜んでいる中で、求司はアークボルトに行けばさらにいい武器や防具が売っている反面、それらを買いそろえようとすると膨大なお金が必要になることを知っているだけに、早速次なる金策を考えていた。
なお、スラリンはこの時点で職業解除での最大MPが19のため、本来なら魔法使いと僧侶になるためのMPがあと1つ少なかったが、特例で僧侶に就かせてもらえることになった。
「ありがとうございます!これで僕もキュウジさんの治療にも貢献出来ます!」
彼は早速勉強に励んでその日のうちにホイミをマスターし、MPが無くなるまで求司に呪文を唱え続けてくれた。
「どうもありがとう。本当に助かったよ。」
「どういたしまして。監督さんの役に立てて、うれしいです。」
すると、アモスとバーバラもわざわざ魔法使いに転職した状態でやってきて、やはりMPを使い果たすまで呪文を唱え続けてくれた。
そのおかげで求司はこれまで以上に足の回復を実感していた。
ドラクエ6の味方キャラが装備する武器に弓はありませんが、求司の足の状態や、僕が弓を描いてみたかったこともあって、登場させることにしました。
今回登場したホイミスライムの仲間達は「映画 ドラゴンクエストⅣ オモシロ場面集」に出てきたキャラの使いまわしです。
僕は仲間モンスターの中で、ホイミスライムが一番お気に入りです。