地底魔城での件も済み、メンバーの治療を終えたレック、ハッサン、ミレーユ、チャモロ、ターニアはこの日、アークボルトにやってきた。
5人は城の入り口でガルシアに会い、レックはみんなを代表して中に入れてもらえるように頼み込んだ。
「おお、そうか。分かった。だが、ただで内部に通すわけにはゆかぬ。通るためには、それにふさわしい実力を持ち合わせていなければな。」
「では、どうすればいいんですか?」
「ここでの習わしとして、そなた達の腕を見せてほしい。」
「腕ですか?」
「そうだ。」
「なら、俺が好きなだけ見せてやるぜ!」
ハッサンは会話に割り込み、両腕を見せつけた。
「あのね…、君…。」
「オラオラ!俺の腕、ムキムキでカッコいいだろ!」
「僕はそういう意味で言ったわけでは…。第一、近い近い!」
ガルシアは冷や汗をかきながら至近距離でその腕を見ていたが、レックがハッサンを引き留めると話を本題に戻し、1対1で5回勝負をして、先に3勝することを条件にしてきた。
「勝負ですか?」
「その通り。では、今から一緒に闘技場に行き、仲間達に君達が来たことを伝えることにしよう。」
「そうですか。分かりました。よろしくお願いします。」
レックが了解した後、5人は緊張しながらその場所へと向かっていった。
闘技場では男女を合わせて何人もの人達がおり、ガルシアは彼らに声をかけて、自分の他に誰か勝負に挑んでくれる人がいないか声をかけてみた。
すると、3人の男性と1人の女性が名乗りをあげた。
「というわけで、今から自己紹介をさせていただきます。僕はガルシア。そして隣にいる人から順番にスコット、ホリディ、サラ、そして隊長のブラストになります。」
彼から名前を紹介されると、4人は順番に自分の名前を名乗ってあいさつをした。
(※サラは僕の過去作「You Are There」の第12話以降に登場する小説オリジナルキャラで、ガルシアのガールフレンドという設定です。装備ははがねのムチ、みかわしの服、魔法の盾、銀の髪飾りとなっています。)
「では、今から誰と誰が順番に当たるのかと、勝負する方法を決めていくことにします。」
ガルシアはそう言うと早速くじを用意して、順番に引いていった結果、次のような組み合わせと内容になった。
1回戦:ガルシア vs. レック (腕相撲)
2回戦:サラ vs. チャモロ (通常対決)
3回戦:スコット vs. ハッサン (通常対決)
4回戦:ホリディ vs. ミレーユ (あっち向いてホイ)
5回戦:ブラスト vs. ターニア (通常対決)
(※先に3勝した時点で終了。途中で装備品やアイテムの受け渡しは禁止。)
(こういう順番になったのか。正直、ターニアは勝負に不慣れだから僕が代わってあげたいけれど、それが無理ならその前に3勝してしまおう。)
トップバッターのレックは深呼吸をしながら気合を入れた。
「それでは、早速1回戦を行います。両者、前に出てきてください。」
「分かりました。」
「よろしくお願いします。」
ブラストの指示を受けて、ガルシアとレックは向かい合ってお辞儀をした後、お互いの右ひじをテーブルの上に置き、右手をしっかりと握った。
「それでは両者、いいですか?」
「はい!」×2
「では、レディー…ゴーッ!」
勝負が始まると2人は顔をゆがませながら右手に精いっぱいの力を込めた。
少しすると、ガルシアが一旦有利な状況になったが、レックはしぶとく耐えた後、もろばぎりのような形でHPをじわじわ削りながら盛り返してきた。
それからは両者がこう着状態になり、なかなか決着がつかなかったため、とうとう腕が悲鳴を上げそうな状況になってきた。
その結果、見かねたブラストはここで待ったをかけて勝負を中断させた。
「あー、マジでしんどかった…。」
「血管が切れるかと思った…。」
レックとガルシアはいかにもつらそうな表情をしながら腕を何度も振った。
そしてレックは自分でホイミを唱え、ガルシアはサラに同じ呪文を唱えてもらった。
「どうしますか?このまま引き分けにしますか?」
「いえ。どうしても決着をつけたいです。」
「今度は左手でレック君と勝負したいです。」
「分かりました。ではそのような形で勝負を再開します。」
2人の要望に同意したブラストは準備が整うと、再び「レディー…ゴーッ!」と叫んで勝負を再開させた。
すると今度はレックが優勢に持っていき、ガルシアが耐える状態になった。
(あと少しだ!絶対に勝ってやる!!)
レックは大きく息を吸い込んで気合をためた後、HPを削りながら一気に力を放出した。
するとガルシアはとうとう耐えられなくなり、手の甲をテーブルに着けてしまったため、勝負はレックの勝利となった。
「ありがとうございました…。」
「こちらこそ…、どうも…。」
レックとガルシアは肩で息をしながらお辞儀をした後、顔をしかめた状態でお互いのチームに合流した。
次はサラとチャモロが向かい合って「お願いします。」と言葉を交わした後、ブラストの「始め!」という声に続いて勝負が始まった。
先に動いたのは素早さで勝るサラで、彼女はスカラで守備力を一気に上げた。
しかし、チャモロは賢者路線ということもあって、転職解禁後は通常攻撃や特技を使っていないため、大した影響はなかった。
そして彼はメラミで攻撃し、魔法の盾で軽減されながらもサラのHPを半分以上削った。
(私は最大HPが100未満だし、もう一度受けたらまずいわね。だったら!)
次のターンでも再びメラミで攻撃をしてくると読んだサラはマホトーンを唱え、呪文を封じ込めた。
「えっ?えっ!?そんな!」
チャモロは大きく動揺しながらもゲントの杖で通常攻撃をしたが、簡単にかわされてしまった。
「しめたわ!これならベホイミでダメージをリセット出来るわね。」
サラはとっさに呪文を唱え、HPを満タンにした。
一方のチャモロはもう一度通常攻撃をしてきたが、やはり簡単にかわされた挙句、反撃を受けてしまった。
(ぐわっ!この武器、結構痛いじゃないですか!)
はがねのムチの攻撃力を目の当たりにしたチャモロは思った以上のダメージを受けた上に、弾みでメガネを落としてしまった。
「ちょっ、ちょっと!そのオートフォーカスのメガネが無いと、私は前がほとんど見えません!」
彼はタンマをかけるジェスチャーをすると、勝負そっちのけでメガネを探し始めた。
しかし、運悪く反対方向を向いており、しかもこのままでは踏みつぶしてしまいかねない状況だったため、サラはとっさにメガネを拾い上げて手渡そうとした。
すると、それを見たブラストが血相を変えて「君!今は勝負の最中だぞ!」と言い出したため、サラはビクッと反応した。
「えっ?でも…。」
「でもじゃない!チャンスだぞ!即座にやっつけてしまえ!」
「それは嫌です!私、こんな勝ち方はしたくありません!」
「相手がモンスターだったら、やられるのはお前になるんだぞ!」
「チャモロ君はモンスターではありません!」
ブラストとサラはお互い引き下がらなかったため、勝負が完全に中断してしまった。
するとここでチャモロが「やめてください!」と言い出し、自ら負けを宣言した。
「えっ?いいの?」
「はい。私の負けです。確かにこれがモンスターとの戦闘だったら、私は滅多打ちにされ、今頃戦闘不能になっていたでしょう。」
彼はガックリと肩を落としながら、呪文とゲントの杖だけで行けると思っていたことを反省した。
勝負がつくとサラはメガネをチャモロの顔にはめて、ホイミを唱えてくれた。
「ごめんなさい。こんな勝ち方になってしまって…。」
「気にしないでください。そして自分を責めないでください。私は今回のことをいい教訓にしますから。」
「ありがとう。そう言ってくれて良かったわ。」
両者はしっかりと握手をした後、向かい合って礼をした。
1勝1敗で迎えた第3戦はスコットとハッサンで、ハッサンは勝負が始まると捨て身でダメージを与えてきた。
一方、スコットはこの時点で攻撃をすればダメージが2倍になったが、思わずルカナンを唱えてしまい、しかも失敗したため、もったいないことをしてしまった。
次のターンはスコットがバイキルトを唱えた一方、ハッサンは何を考えたのか、な○○○しを仕掛けてきた(結果は失敗)。
(こ、こいつ、どういう攻撃をするんだ!?正直、気持ち悪いぞ!)
スコットは言いたいことを我慢しながら次のターンで捨て身攻撃したが、かわされてしまった。
すると、ハッサンはお返しとばかりに8.2.8.2.で応戦した。
(こっ、これはっ…。悪夢だ…。吐きそうだ…。寒気がする…。)
物理的なダメージよりも精神面で大ダメージを受けたスコットは頭の中でかの有名なデロデロ音を響かせていた。
(※この後の展開はうp主の判断により、カットさせていただきます。まあ、後でちょっとだけ書きましたが…。)
勝負はスコットが顔を青くしながらエクトプラズム状態で倒れてしまい、継続不可能になったため、ハッサンの勝利になった。
一方、スコットはあいさつも出来ないままサラとチャモロに引きずられて会場を後にし、医務室に向かっていった。
(ああああ…。俺は一体何をしてしまったんだ…。これが遊び人の呪いなのか…。こんな職業、早くマスターして別のやつに就きたいぜ…。)
勝負には勝ったものの、自責の念にさいなまれるハッサンは、穴があったら入りたい気持ちだった。
第4戦はホリディとミレーユによるあっち向いてホイ3回勝負だった。
2人はまるでリズムに乗るような感じで「ジャンケンポン!あっち向いてホイ!」と言いながら勝負をした。
そして1回目はホリディの勝利、2回目はミレーユの勝利で迎えた3回目はあいこが3回続いた後、ミレーユがじゃんけんで勝った。
「あっち向いてホイ!」
彼女が右手で上を指すと、ホリディもつられるかのように上を向いてしまったため、この時点で勝負が決した。
「やったやった!これで最終戦を待たずに勝ったぞーっ!」
「ミレーユ、ナイスだったぜ!よく決めてくれた!」
「私の分を取り返してくれて、ありがとうございます!」
「私がもしブラストさんと勝負したら、100%勝ち目はなかったでしょうから、本当に良かったわ。ミレーユさん、ありがとうございます。」
レック、ハッサン、チャモロが喜んでいる一方、ターニアはまるで体中の力が抜けたかのようにほっとしていた。
「君達、見事だった。というわけで、これから君達はここをフリーパスで通ることを許可する。そして、武器屋、防具屋、道具屋なども自由に見て回ってよいぞ。」
「ブラストさん、分かりました。そうさせていただきます。でも、その前に一つお聞きしたいことがあるのですが、いいでしょうか?」
「何かね?」
「実は…。」
レックは以前、バーバラに陰で失礼なことを言ってしまい、彼女を自暴自棄にさせて離脱させてしまったことをブラストに話した。
「そうか。ムドーは倒したが、そんなことがあったのか。」
「はい。結果的に彼女に取り返しのつかないことをしてしまい、僕達は本当に反省をしているんです。そして謝罪をしたいんです。」
「私からもお願いします。もうあんな失礼なことは2度としません。そして、出来ることならもう一度一緒にやり直したいと思っているんです。」
「そのために私達、バーバラさんのために色々金策をしたんです。もし彼女が来たら、これを渡して装備を整えてほしいんです。」
レックとミレーユが涙ぐみそうになりながら話した後、ターニアは手紙と3000ゴールドの入った袋を差し出した。
彼らの気持ちを理解したブラストはその袋を受け取ると、バーバラにこれを渡した上で、気持ちを伝えておくことを約束してくれた。
「本当ですか?」
「ああ。彼女が許してくれるかは分からんが、出来るだけのことはしよう。」
「ありがとうございます!」
レックは精一杯感謝の言葉を言うと、深々とお礼をした。
そして、5人は闘技場を後にすると、お店を見て回ることにした。
一方、その頃、医務室のベッドで横になっているスコットは…。
「あいつめ!よくも俺の人生初Aをおおおぉぉぉっ!!!」
「大丈夫か?気を確かに持つんだ!」
「じ、地獄だ!悪夢だ!絶望だ!いいかガルシア!今後、あのゴリマッチョと絶対に勝負するんじゃないぞ!俺のような被害者をこれ以上出さないためにもな!」
「分かった。分かったから、どうか落ち着いてくれ。」
「これが落ち着けるかってんだ!第一、サラというガールフレンドがいるお前に俺の気持ちが分かるものかあああぁぁぁっ!!」
スコットはその後も鳴りやまないデロデロ音のせいで、夜も眠れない状態になってしまったそうな…。
次回はバーバラや求司達がアークボルトにやってきます。
今回、レック達は3勝1敗で勝ち抜けましたが、下書きではレックが勝った後、チャモロ、ハッサン、ターニアが3連敗してしまい、敗退するという内容でした。
しかし、時間がたつにつれて彼らが何だかかわいそうに思えてきましたし、ターニアが負けるシーンにどうしても抵抗を感じたため、かなり変更をしました。
それでも負けたチャモロには申し訳ないことをしたと思っています。
ちなみに負けた罰ゲームとして、誰か2人が服を交換することを考えましたが、
ハッサン「じゃあ、俺はミレーユの…。」
「バカーーーーーッ!!!」
となったため、結局ボツになりました。