レック達がアークボルトでガルシア達と対決をした翌日、今度はバーバラ、求司、アモス、スラリン、ホイミンが現地にやってきた。
入り口にはホリディが立っており、バーバラからの要望を聞いた彼は(レックの時と同じように)勝負をして勝ち越したら出入り自由になることを話した後、一緒に中に入っていった。
しかし、この時点でガルシアは両手がひどい筋肉痛に襲われており、スコットは精神的に勝負出来る状態ではなく、サラは踊りの練習をしているため、欠場が決まっていた。
そのため、出場可能な人達はブラスト、ホリディの他にサマルトリアの兄妹であるクッキーとマカロンしかいなかったため、ブラストが2回出場することになった。
「というわけで、今から抽選と勝負の内容を決めることにします。」
「分かりました。では、僕からいきます。」
求司はガルシアが用意したくじを迷うことなく引いた結果、そこに書かれていた数字は2だった。
その後はバーバラ、ホイミン、アモスが順番に引いていき、組み合わせと勝負の内容は次の通りになった。
1回戦:ホリディ vs. バーバラ (ダンス対決)
2回戦:マカロン vs. 求司 (アーチェリー対決)
3回戦:ブラスト vs. ホイミン (通常対決)
4回戦:クッキー vs. スラリン (通常対決)
5回戦:ブラスト vs. アモス (通常対決)
「では、今から1回戦を始めます。両者、こちらに来て、何を踊るか決めてください。」
ガルシアはホリディとバーバラに声をかけると、彼らに一覧表を見せた。
そこに書かれていた演目は次の通りだった。
・誘う踊り
・不思議な踊り
・メダパニダンス
・マホトラ踊り
・ハッスルダンス
・カツ丼音頭
・オオカミダンス
・コッコロビン音頭
・ダンシング・ヒロイン
・A.U.S.ダンス
(あっ、この中にあたしが知っているものがある!)
バーバラは表情こそ変えないものの、自分が選べるのであればこれにしようと決めた。
一方のホリディは「何でもいいから任せる。」と言ってきたため、バーバラは迷うことなくメダパニダンスを選んだ。
「それじゃ、今からお手本タイムです。サラ、どうぞ!」
「はーい!ガルシアさん!」
サラはまるでバーバラそっくりの口調で答えると弾む足取りで姿を現し、元気よく踊りを披露した。
(これ、まさしくキュウジが見せてくれたものとそっくりだわ。チャンスね、これは!)
バーバラは心の中で笑いが止まらずにいたが、それを懸命にこらえていた。
その後、両者はサラからアドバイスを受けながら練習をした後、彼女のコイントスで先攻になったホリディが姿を現した。
しかし、彼はいきなり振り上げる手を間違えたため、左右が逆転する形になってしまった。
(うわあっ!やってしまった!と、とにかくここから立て直さなければ!)
ホリディは焦りながらも何とか踊り続けたが、その後もミスを連発し、明らかに大失敗になってしまった。
それを受けて、彼は顔を青くしながら仲間のところに向かっていった。
次に姿を現したバーバラはもはや勝つだけなら余裕の状況だったが、それでも一切なめプをせず、ノリノリで踊った。
結果、サラは文句なしで「勝者、バーバラさん!」と宣言した。
「わーい!勝ったわ!やったやったあっ!」
バーバラは飛び上がりながら喜び、求司達とハイタッチを交わした。
1回戦が終わると役割を終えたサラは持ち場に戻っていき、会場にはバーバラとホリディの手によってアーチェリー用の道具と的が準備された。
その的は円形をしており、得点は外側の円から順に10点、20点、30点、40点、50点、100点となっていた。
(うわあ、100点は直径が10cm程度しかないのか。果たして当たるかなあ…。)
求司は弓の練習こそしていたものの、勝負は初めてのため、緊張しっぱなしだった。
「頑張れよ!お兄ちゃん、お前のこと応援しているからな!」
「うんっ!絶対に勝ってみせるからね!」
クッキーとマカロンは準備が整うまでの間、楽しく会話をしていた。
数分後、いよいよガルシアから号令がかかると、2人は向かい合ってお辞儀をした。
そしてコイントスの結果、マカロンが先攻、求司が後攻となり、交互に3回矢を放って点数を競うことになった。
「では、あたしがまず高得点を取って、QGという名前の相手にプレッシャーをかけてやるわ!」
マカロンは気合を入れると左手に弓を持ち、右手で持った矢を放つと、その矢は10点のゾーンに命中した。
「あーーーっ!やっちゃったわ!今のナシナシ!」
彼女は思わず顔をしかめながら首をブンブンと横に振った。
「ダメです!やり直しは許しません!」
ガルシアが厳しい表情で言い放つと、マカロンは小声で「はーい…。」と言って反省した。
(※的に当たった矢はバーバラが引き抜きました。)
後攻の求司は精神集中をすると、彼女と逆の利き手で構え、力いっぱい矢を放った。
すると、その矢は30点のゾーンに当たったため、まずは彼がリードを奪った。
2回目はマカロンが40点と50点の境界付近に当てたが、結果的に50点という判定になり、一気に立場を逆転させた。
(しっかりと立て直してきたか。でも、ここで動揺してはいけない。僕が30点以上を取ればいいだけだ。落ち着け。)
求司はプレッシャーを感じながらも再び気持ちを集中させて、2本目に挑んだ。
すると、矢は20点と30点の境目に命中したため、みんなで検証が行われることになった。
(お願い!低い点数にして!あたし、絶対に負けたくないから!)
(せめて30点になってくれ。その10点の差が後で響く気がするから。)
マカロンと求司は口にこそ出さないが、祈るような気持ちで結果を待ち続けた。
一方で、判定に関わった人達は何度協議を重ねても結論を出すことが出来なかったため、特例として25点を与えることになった。
(うーーん、追いつけなかったか。まあ、最後の一本にかけることにしよう。)
求司は渋い表情をしながら的に背を向けて、次の出番を待つことにした。
(彼は中心こそ外しているけれど、大崩れもしなさそうね。だったら、ど真ん中に当ててやるわ!)
マカロンは自分が有利な状況に持っていくために、今まで以上に気合を入れながら矢を構えた。
(さあ、どうなる。)
求司が目を閉じたまま待機していると矢が当たる音が響き、次の瞬間、会場で一斉に大きな歓声が沸き起こった。
(えっ?何が起きたんだ?まさか、…じゃないよな。」
彼が目を開けて的の方を見ると、そこには一番恐れていた結果が待っていた。
「わーいわーい!本当にど真ん中に当てたわ!これで勝ち確ね!」
マカロンは100点の部分に命中した矢に向かって駆け寄っていくと、ピースサインをしながら喜んだ。
「お見事!それでこそ、僕の妹だ!やったね!」
クッキーは彼女のところにやってくると一緒にピースをして、まるで自分のことのように喜んだ。
一方の求司は160対55でコールド負けしてしまったことがなかなか受け入れられず、その場に呆然とするばかりだった。
3回戦に登場したホイミンは勝利にリーチをかけようと全力で勝負に挑んでいった。
しかし、こちらのメラミの威力を半減された上に、ブラストのしんくうはが強烈だったため、彼はベホイミでの回復を余儀なくされた。
幸い、そのターンでブラストはルカナンを唱えてきたため、ダメージは免れたものの、次のターンではやぶさぎりを浴びせてきたため、ホイミンはまたも回復をせざるを得ない状況になった。
結局、彼はブラストの攻撃に耐えられなくなったため、とうとう降参を宣言してしまった。
1勝2敗で後がなくなった状況の中、次はスラリンがクッキーと勝負をすることになった。
「お兄ちゃーん、頑張ってーっ!」
「ああ、頑張るよ。絶対に勝つからね。」
マカロンに後押しされたクッキーは、あいさつをすると大きく深呼吸をした。
勝負が始まるとスラリンは素早く受け流しの体制に入ったが失敗してしまい、通常攻撃を受けてHPを半分以上削られてしまった。
「それじゃ、これで勝負をつけてやりますよ!」
勢いづいたクッキーはさらに通常攻撃を仕掛けてきた。
(お願いします!今度はうまくいってください!)
スラリンが祈るような気持ちでもう一度受け流しをすると今度は成功し、クッキーは自分でダメージを受けた。
次のターンでスラリンはメラミをヒットさせて、さらにHPを削った。
(こっ、これはまずいです!とにかく回復をしなければ!)
クッキーは大急ぎでベホイミを唱え、とりあえずメラミのダメージをリセットさせたが、再び同じ呪文を受けたために回復に追われるようになり、全然攻撃が出来なかった。
(幸い僕は追加ダメージは受けていませんが、回復も出来ません。それに堂々巡りのせいでMPもどんどん減っているし、呪文が唱えられなくなったらまずいですね。)
スラリンはメラミを放ちながら、次なる手を考えていた。
そして残りMPが7になると、彼は一か八かラリホーを唱えた。
「うっ!こっ、これはっ!ね、眠ってはいけません!」
クッキーは意識がもうろうとするなか、懸命に眠りをこらえた。
しかし、結果的に行動を1回スキップしてしまったため、スラリンはその隙を見逃さず、メラミを唱えて決着をつけた。
「勝者はスラリンです!両者、礼!」
「ありがとうございました!」
「ど、どうも…。」
審判のガルシアの号令に続いて、スラリンは元気よく、一方のクッキーは肩を落としながらあいさつをした。
「お兄ちゃん、相手がスライムだからって、なめプしたでしょう!」
「してない!してないってば!本当にあのスライム、強かったんだってば!」
「ふうん。でも、上げて落とされた感じで、カッコ悪いわね。」
「仕方なかったんだよ!受け流しとメラミのコンボはメチャ強力だったんだから!」
マカロンとクッキーが会話をしている一方、何とかタイに持ち込んだスラリンはほっとしながらアモスに全てを託すことにした。
「では、最終対決いきます。ブラスト隊長とアモスさん、どうぞ。」
「かしこまりました。」
「よろしくお願いします。」
2人は向かい合ってあいさつをすると、深呼吸をして気合を入れた。
「では、よーい、始め!」
ガルシアの合図によって勝負が始まると、両者はノーガードの打ち合いになった。
その中でブラストはしんくうは→ルカナン→はやぶさぎりを繰り出し、アモスはきあいため→通常攻撃→しっぷう突きで対抗した。
(この者、なかなかタフな上に、攻撃力もありそうだ。だが、隊長である私が負けるわけにはいかない!)
(まずいですね。そろそろ回復をしたいのですが、私には呪文がホイミしかありません。こうなったら!)
徐々に押せ押せになりつつあるブラストに対し、焦ったアモスはアモールの水でHPを回復させたが、直後に攻撃を受けたため、結果的にあまり意味はなかった。
(困りましたねえ。ホイミでは受けるダメージに追いつきませんし、アモールの水も残り2つしかありません。もし切らしてしまえば、後はなす術なくやられてしまうでしょう。こうなったら、アレに賭けるしか!)
彼は腹をくくると、とっさに変身を選択し、モンストラーの姿になった。
「わーーーっ!!!」
「キャーーーッ!!!」
「ええーーーっ!!?」
クッキー、マカロン、ガルシアをはじめ、その場に居合わせたみんなはその姿を初めて見ただけに、思わず叫んでしまった。
(うおっ!この手に打って出たか。これは強そうだ。しかし、私は負けるわけにはいかぬ!)
ブラストは心の中ではビックリ仰天だったために1ターン行動出来なかったが、それを声には出さなかった。
一方のアモスは「キバ攻撃!ツメ攻撃!」とばかりに反撃をした。
するとここで彼のお腹がゴロゴロと鳴った。
(あっ、こっ、こんなところでガスが…。)
彼は一瞬、発射をしてしまおうとしたが、とりあえず我慢をしてそのまま勝負を続けることにした。
しかし、ブラストの攻撃を受けるとそうも言っていられなくなった。
(もっ、もはやここまでになりそうです!みなさん、どうかお許しください!)
アモスはとうとう腹をくくり、お尻に込めていた力を抜いた。
そして次の瞬間…。
「あたし、冗談抜き、マジで気持ち悪いわ…。」
「まるでスカンクも気絶しそうな匂いですね。」
「夕べ、にんにくチャーハン作ったのが失敗だった…。」
「うp主、まさかこんなオチを用意するなんて…。」
リレミトで外に脱出してきたバーバラ、スラリン、求司、ホイミンの顔は真っ青になっていた。
それから間もなく、クッキーとマカロンもリレミトで脱出してきて、彼らはそれまで息をせずにいたのか、酸欠になりそうな状態だった。
「す、すみません…。いつもより余計に臭くて…。」
「………。」
アモスが平謝りするのに対し、ブラストは絶望的な表情をしながら気絶してしまった。
「と、というわけで…、た、隊長がこんな状態なので…、しょ、勝者、アモス…。」
ガルシアはそう宣言すると、ホリディとともに気を失ってしまった。
「ど、どうもありがとうございます。」
元の姿に戻ったアモスは顔をゆがめながらお辞儀をした後、1人ずつ引きずりながら闘技場の外に運び出していった。
何はともあれ、勝負は3勝2敗で求司達に軍配が上がったため、彼らは以降、フリーパスでアークボルトに入れるようになった。