カルカドでの情報を聞いたレック達は、これまでに2回ジャミラスの居城に乗り込んでいった。
しかし、1回目ではリレミトやベホマを唱えられる人がいなかったため、あえなく撤退になり、メンバーをターニアからチャモロに入れ替えて望んでいった2回目では、前座戦で消耗してしまったため、再度撤退を余儀なくされた。
「こうなったら、道中の回復は僕とアモスさんが担当するから、チャモロは何としてもMPを温存してくれ。」
「確かにそうですね。私としては申し訳ない気持ちもありますが、ボス戦で全力を出すためにそうさせていただきます。」
「それから、アモスさんは確かラリホーが使えますよね?」
「はい。以前、キュウジさんからこれとメラミを覚えておくように勧められたので、マスターしておきました。」
「それなら、もし今度操られたカルカドの人達に出会ったら、それを使ってくれませんか?」
「私がですか?敵でもない人達に使うのは何だか気が引けるんですが。」
「もちろん、戦うためではありません。あくまでも戦闘を避けるためです。眠っていれば確実に逃げられますから。」
「分かりました。では、勇気を振りしぼって使うことにします。」
レック、チャモロ、アモスはお互い話し合いを重ねて、しっかりと役割分担をした。
一方、ハッサンは一切呪文が使えない上に武器がいまだにはがねの剣で、さらに肝心な場面での無駄行動が目立ってきたため、あまり期待してもらえず、ある意味カヤの外になりつつあった。
(かつてバーバラをディスっていた俺が、まさかこんな立場になるなんて…。思えば以前、親から自分の行いは巡り巡って自分に返ってくると言われたことがあるけれど、まさに今がそれだな…。)
彼は今更ながら、過去のバーバラに対する態度を心の底から悔やんでいた。
城内に再び挑んでいくと、彼らはまたまた操られたカルカドの人達に出くわした。
しかし、はやてのリングを装備したアモスがラリホーを唱えて彼らを眠らせ、その隙に4人は逃げ出していった。
さらに進むと、今度は偵察の役割を果たしているウインドマージ2匹に遭遇した。
彼らは素早さが高いこともあって先制で行動し、ダブルでバギマを浴びせてきた。
(こっ、これはMP節約などと言っていられません!)
腹をくくったチャモロはとっさにイオラを唱えてHPを3分の1程度削った。
続いてレックはグループ攻撃、アモスはもろばぎりをAに浴びせてKOさせ、追加ダメージをBに与えた。
そしてハッサンはまた下手くそな歌声を披露したが、ウインドマージBは素早く耳をふさいで対応したため、またしても無駄行動になってしまった。
次のターンでチャモロはニフラムを唱えて運よく成功したため、戦闘はそこで終了になった。
「レックさん、すみません。MPを節約するって言ったのに…。」
「大丈夫。戦闘を早く終わらせたんだから、十分だよ。」
レックはチャモロを決して責めたりはせず、さらに自身のホイミで全員のHPを回復させた。
その後もモンスターや住人達と何度も遭遇したが、4人は全逃げを選択した。
(※その中にはスーパーテンツク、女性ようじゅつし、バーニングブレスもいました。)
その際、何度か失敗して相手からダメージを受けることもあったが、レックとアモスが移動中のホイミタンクを担当した。
再度ジャミラスのもとにたどり着いたレック達は、またしても彼の氷のように冷酷なオーラと、高らかな笑いを目の当たりにした。
「ケーッ、ケッケッケッ!部下の攻撃にビビッて、俺様と戦うこともなく撤退した腰抜けのクズ人間どもよ。よくぞ再びここまで来ようと思えたものだ。その勇気だけはほめてやる!だが、お前らのような虫けらどもは今度こそ、ここでズタズタに切りさかれてケシズミになるのだ!俺様のこの手でな!そして、町の者達と一緒にゆっくりと休むがよい。永遠に目を開けずにな。ケーッ、ケッケッケッ!ケーッ、ケッケッケッ!!ケーッ、ケッケッケッ!!!」
レックははらわたが煮えくり返るほど挑発されて、心の底から怒りが込み上げてきた。
「お前は許さない。お前を、倒す!」
「貴様らがこの俺を、倒す!?」
「ああ、倒してみせる!絶対に!!」
「面白い。レックよ、怒り狂え!そしてかかってこい!いさぎよく逃げていれば助かったはずの命を無駄にし、無様な最期を遂げるためにな!さあ、きりさきピエロよ!俺とともに戦え!!」
「かしこまりました。ジャミラス様の仰せのままに。」
「必ずムドー様のリベンジを果たしてみせます!」
彼らはムドーの城から撤退して以降、ジャミラスに拾われ、厳しい修行で鍛え上げられたこともあって、ステータスも上がっており、本気でかたきを討つ気満々だった。
その不気味な予感を感じ取ったチャモロは真っ先にスクルトを唱えて守備力を上げ、レックとアモスは大きく息を吸い込んだ。
するとジャミラスときりさきピエロは一斉にチャモロを集中攻撃してきた。
その結果、彼は本来であれば一発KOになりそうなほどのダメージを受けたが、スクルトの効果に加えてハッサンが間一髪で薬草を使ったおかげで、かろうじて踏みとどまった。
(なるほど。奴らはまず回復役をつぶしにかかってきたわけか。だったら、俺が何とか役に立ってみせるぜ!)
彼は腹をくくると、次のターンで仁王立ちを選択した。
「ハッサン、私のためにすみません。」
チャモロは申し訳なさを抱えながらも自分にベホマを唱え、ダメージをリセットさせた。
次にレックとアモスはきりさきピエロAとBにそれぞれ強烈なもろばぎりと通常攻撃(と追加攻撃)を当てた。
「そ、そんなバカな。たった一撃で…。」
「俺達以上にこいつらが強くなるなんて…。」
予想外の大ダメージを受けた彼らはあえなくKOになってしまった。
するとジャミラスはもう用無しと判断したのか、彼らを踏みつけながら歩み寄ってくると、ハッサンをわしづかみした上に火炎の息4発分のダメージを与えた。
「ぐあああああっ!!」
幸いスクルトと鉄の盾の軽減効果もあって、ハッサンはHPが1桁になりながらも踏みとどまったが、足取りがフラフラになってしまった。
それを見たチャモロは素早くベホマを唱え、彼のダメージを一気にリセットさせた。
「おのれ!このベホマ使いめ!かくなる上は誰よりも早く、貴様を始末してやる!」
怒りに燃えたジャミラスは仲間を呼び、ユニコーンとレッサーデーモンが1匹ずつ現れた。
しかし、彼はそれに1ターンを費やしたため、その隙にレックは再び大きく息を吸い込み、アモスはゲントの杖でレックのHPを回復、チャモロはスクルトをもう一度唱え、ハッサンはせいけん突きを叩き込んだ。
すると、ユニコーンはホイミでジャミラスのHPを回復させ、レッサーデーモンはルカナンでスクルトを打ち消してきた。
それに続いてレックとアモスはそろってジャミラスにもろばぎりと通常攻撃を決めて、大きなダメージを与えた。
「くっ!下等な人間ごときに俺様がやられてたまるか!」
ジャミラスは顔をしかめた後、チャモロに通常攻撃とメラミをヒットさせて、HPを大きく削った。
そしてハッサンは再度せいけん突きを仕掛けたが、今度は運悪く外れてしまった。
この時点でチャモロとレックはHPが大きく減っているため、彼らはそれぞれ自身のベホマとアモスのゲントの杖で回復をした。
その合間をぬってレックとハッサンはレッサーデーモンにもろばぎりとせいけん突きをヒットさせてKOさせた。
一方、ユニコーンは再度ホイミを唱えて、ジャミラスのHPをさらに回復させた。
そしてジャミラスはまだスクルトの効き目が1回分残っていることを考慮して、火炎の息を吐きながらチャモロにメラミを放ってきた。
(また私ですか。回復役だから仕方ないとはいえ、私にとってはきついです。)
チャモロがベホマを唱えるためのモーションを起こすと、ユニコーンはホイミをキャンセルして突進してきた。
それに気づくのが一瞬遅れたチャモロはツノ攻撃をまともに受けてしまい、その場に倒れ込んでしまった。
「ぐああああああっ!!!」
のたうち回る彼の服は徐々に赤くなっていき、もはや戦闘どころではなくなってしまった。
「大丈夫ですか?今治療をします!」
アモスは攻撃を取りやめて即座にゲントの杖を使用した。
(よりによって貴重な回復役を欠く形になるなんて!)
(こうなったら少しでも大ダメージを与えてやるぜ!)
レックとハッサンはそれぞれ会心の一撃と通常攻撃をユニコーンにヒットさせ、再び相手をジャミラスのみにした。
するとジャミラスはターンをまたぐ形で続けざまに行動し、ハッサンをわしづかみした後、連続攻撃をしてきた。
「ぐあああああっ!」
鉄仮面の鼻の部分が破損してしまうほどの衝撃を受けた彼は、鼻血をダラダラ流しながらその場に倒れ込んでしまった。
「そんな!チャモロに続いてハッサンまで…。どうすればいいんだ…。」
戦闘前は怒りに燃えていたレックの顔はみるみるうちに青ざめていき、そのためか、ジャミラスは彼の通常攻撃を簡単にかわしてしまった。
(レックさんのあんな絶望的な表情、初めて見ました。これはほぼ負け確同然じゃないですか…。こんな状況で一体私は何をすればいいのでしょうか…。)
アモスが倒れている2人を前にどうすればいいのか迷っていると、チャモロが弱々しい声で自分にベホマをかけることを伝えた。
「えっ?でも…。」
「私は…自分で…何とか…しますから…。」
「分かりました。頼みましたよ。」
アモスは後ろ髪をひかれる思いを抱えながらも彼の意見を受け入れ、ハッサンの治療にあたることにした。
「ケーッ、ケッケッケッ!勇者レックよ!その絶望感、とても似合っているぞ。まさに今日が命日になることを確信した表情だ。さあ、苦しいか?悔しいか?だが、安心しろ。今楽にしてやる!お前の持つ希望を全て食い尽くしてやるぞ!そして今からゆっくり休むのだ。永遠に目を開けずにな。ケーッ、ケッケッケッ!ケーッ、ケッケッケッ!!ケーッ、ケッケッケッ!!!」
もはや血も涙も心もない、冷酷な悪魔としか言いようのないジャミラスの姿を、レックは身動きも出来ないまま呆然と見つめることしか出来なかった。
(僕は過去に、ムドーを大苦戦の末に倒した。でも、その裏で取り返しのつかない過ちを犯してしまった…。もし、バーバラを戦力外にしていなければ…。ハッサンを違う職業に就かせることが出来ていれば…。ミレーユが肩に爆弾を抱えた状態で同行させなければ…。ごめんね、みんな…。そしてターニア…。君をしっかりと戦力に出来なくて、本当にごめん…。出来れば、もう一度君の顔を見たかった…。)
彼は深い後悔の念を抱えたまま、観念したかのようにジャミラスの顔を見つめた。
するとその時、誰かが足早にやってきて炎のツメを奪い取っていった。
「誰だ!?俺様の大事な武器を盗む奴は!」
それまで冷酷な笑みを浮かべていた彼の表情は、一瞬にして険しいものになった。
そして、ウインドマージとダークホーンに犯人をここに連れてくるように命じた。
(えっ?誰かが助けにきたのか?一体誰なんだ?ターニア?バーバラ?いや、そんなはずはない。2人とも僕がメンバーから外してしまったし…。でも、もし誰かが助けにきてくれたのなら、誰でもいいから僕達を助けてほしい…。たとえ、レベル1になってもかまわない。お願いだ。どうか助けてくれ…。)
レックがすがるようにお願いをしていると、ジャミラスはとどめをさすためにわしづかみのモーションに入りながら、火炎の息を吐くために大きく息を吸い込んだ。
すると、次の瞬間…!
今作でのジャミラスは、新桃太郎伝説のカルラをモデルにしました。
このキャラは言動が本当に腹立たしく、さらに血も涙もないことをするため、はっきり言って大嫌いでした。
でも、その氷のような冷酷さが強烈なインパクトとなって今も心に残っており、さらにジャミラスをYou Are There以上の存在にするために、今回参考にさせていただきました。