過去のわだかまりを吹っ切り、レック達のもとに向かうことを決意したバーバラは、求司とターニアとともにアークボルトに行き、現地でガルシア、スコット、ホリディ、ブラストを加えた。
そこで準備を整えるとターニアはキメラの翼を使い、いよいよジャミラスの居城に向かっていった。
(お兄ちゃん、みんな。どうか無事でいて。)
(待っていてね。もう過去は気にしないから。)
飛んでいる間、ターニアは特例で装備させてもらったどくばりを、バーバラははがねのムチを握りながら、祈るような気持ちだった。
そして氷のやいばを持っている求司はみんなにジャミラスの特徴を伝え、自身はヒャダルコを使うつもりでいることを話した。
(僕はとにかく攻撃一筋でいこう。魔法の盾を貸してくれたサラのために、絶対勝ってみせる!)
(俺はバイキルトで攻撃役をする人達の攻撃力を上げながら、ベホマラーで回復が適任ですね。)
(私はお嬢ちゃん達やキュウジ君を守ることに専念しよう。彼らを痛い目にあわせたくはないからな。)
(私は複数相手ならしんくうは、ボス単体ならバイキルト状態でせいけん突きとはやぶさぎりでいこう。)
ガルシア、スコット、ホリディ、ブラストはこちらが展開を有利に進められるように、それぞれの役割を確認した。
城の前に到着すると求司はスマートフォンで内部のマップが記載されたページを開いた。
(本来ならばまだジョギングしか出来ない状態なのに、いきなり全力疾走なんかして大丈夫なんだろうか。普段の練習だったらそんなことは絶対にしないけれど、今はそんなことを言っている場合じゃない。繰り上げスタートの恐怖と闘った挙げ句、故障してしまった借りを返すためにも、今度は目的地にたどり着いてみせる!)
彼は自分の足が無事であることを祈りながら、道筋を頭に叩き込んだ。
内部に入ってすぐの場所では、まるで門番のようにスーパーテンツク、女性のようじゅつし、バーニングブレスが立っていた。
その中で、ようじゅつしは首飾りを、残りの2匹は腰にベルトを身につけていた。
彼らは憎しみに燃えるような表情をしており、問答無用で攻撃してきた。
「ここは僕に任せろ!」
「私が身代わりをいたす!」
ガルシアとホリディは自ら求司達の身代わりになってダメージを受けた。
「やったわね!はがねのムチでお返しをしてやるわ!」
「僕のヒャダルコを受けてみろ!」
バーバラと求司はとっさに攻撃のモーションに入った。
すると彼らの姿を見たターニアが手を伸ばし、「待って!」と叫びながら立ちはだかった。
「えっ?ターニア、どうして止めるの?」
「バーバラさん、私、彼らに見覚えがあるの。」
「ということは、仲間モンスターなの?」
「ええ。一度は勝負になったけれど、それを通じて分かりあい、最終的に鉄仮面をくれたのよ。」
「じゃあ、どうすれば…。」
彼女達が話し合っている中で、求司は彼らが身につけているものが気になった。
(あれはもしかしてドラクエ1の死の首飾りと呪いのベルト?ということは、彼らはあれで操られているわけか。だったら!)
彼は即座にそれらのアイテムを外すか、壊すように提案をした。
「分かった。やってみよう。」
「私もそれに協力するぞ!」
「みんな!どうか正気に戻って!」
スコット、ブラスト、バーバラはそれぞれスーパーテンツク、バーニングブレス、ようじゅつしに向かって攻撃をした。
「バチーン!」
「バチーン!」
「カチーン!」
ベルトと首飾りは音を立てて切れてしまい、そのまま地面に落ちていった。
するとそれらのアイテムはあっという間に消滅し、モンスター達の目つきや表情が元の状態に戻っていった。
「あれ?僕達これまで何を?」
「どうしてこんなところに?」
「一体何をしていたのかしら?」
まだ現実を把握出来ていない彼らは、きょとんとしたままだった。
するとターニアが近寄ってきて、うれしそうに「良かった。正気に戻ったのね!」と声をかけた。
「えっ?君はもしや、カルカドで出会った…。」
「そう、ターニアよ。あなたは確かツンツン君?」
「はい、そうです。」
ターニアとツンツンが会話をした後、今度はアリアとバブルが経緯を話しだした。
それによると、彼らはこれまでムドーの思想について教育され、人間は倒すべき敵であることや、その人間といかに戦って勝つかということを叩き込まれてきた。
しかし、そのムドーがいなくなり、徐々にその考えに疑問を持つモンスターが現れるようになったため、彼らはこれからどうすればいいのか問いかけるようになった。
そんな中でバブルとアリアはスラリンに出会い、彼が人間と仲良くなって協力していることを知った。
一方で未だにムドーの熱狂的な支持者のモンスターもおり、自分達の揺れ動く気持ちを察知されると懲罰という形でとらえられ、じごくのたまねぎから甘い息を吹きかけられてしまった。
彼らはその後、はっきりとした記憶が無く、気が付いたらこうなっていたことを打ち明けた。
「ということは、あなた達はムドーの残党達につかまった後、呪いのアイテムをつけられて洗脳されていたのね。」
「そう…でしょうね。そうとしか考えられません…。」
ツンツン達は操られていたとはいえ、このようなことをしてしまったことを謝った。
「大丈夫。私は気にしていないわ。元に戻ってくれてよかった。」
ターニアは全く気にせず、ニッコリとほほ笑んだ。
「本当に、こんな僕達を許してくれるんですね。」
「ありがとうございます!この恩は忘れません。」
「パパの言う通り、人間にもいい人達が大勢いるのね。」
彼女の笑顔を見てツンツン、バブル、アリアはすっかり心を開いてくれた。
気持ちが落ち着いた後、バーバラは彼らにこれからどうするのか問いかけた。
「出来ることなら、僕達をこんな目にあわせた奴らに一泡吹かせてやりたいです。」
「でも、今頃パパも心配しているし、あたしとしては早く安心させてあげたいわね。」
「それに、僕達は戦っても足手まといになって迷惑をかけてしまう気がしますし…。」
ツンツンは仲間に加わりたい一方、アリアとバブルは難色を示したため、意見は真っ二つに分かれてしまった。
しかし、今のツンツンはレベルも高くなく、ガルシア達には明らかに能力で劣るため、結果的に彼らは同行しないことになった。
「じゃあ、早くカルカドに戻った方がいいわ。ここは入り口の近くだからリレミトも必要ないし、ルーラがあれば一気に帰れるわよ。」
「分かったわ。じゃああたしがルーラを使えるから、外に出たら君達はカルカドに行き、それからあたしはパパのもとに向かうということでいいかしら?」
「はい、賛成です。」
「では、お願いします。」
ツンツンとバブルの同意を得て、アリアは一緒に出口へと向かっていった。
彼らと別れた後、求司は達は聖水を使いながら城の奥へと向かっていった。
しかし、完全にエンカウントを防ぐことは出来ず、一行はツンツン達の因縁の相手であるじごくのたまねぎ2匹に出くわした。
彼らは甘い息を吐いてきたが、アークボルトの兵士達が守ってくれた。
すると、バーバラはメラミをAに当て、求司はスマートフォンのライトをオンにして相手をひるませた。
次に行動したターニアはBにどくばりを当てた。
「うおおおっ!大当たりいーーっ!!!」
痛いところをつかれたBはその場にのびてしまい、残りはAのみになった。
そして、次にバーバラがかまいたちを浴びせて戦闘は終了した。
すると、今度は以前旅人の洞くつで勝負をしたホラーウォーカーとかくとうパンサーが立ちはだかってきた。
「そこにいる20歳くらいの青年と赤毛の嬢ちゃん、また会えるとはな!」
「以前はメタい説教にはめられて敗北したが、今度はそうはいかんぞ!」
彼らは求司とバーバラの顔を見るなり、メラメラと雪辱に燃えだした。
そして戦闘になると彼らは即座にばくだん岩を5匹呼び出してきた。
「フハハハ!まずは前座を用意させてもらったぞ。」
「こいつらと戦って、もし無事だったら俺達と勝負だ。」
彼らは倒せるものなら倒してみろと言わんばかりに余裕を見せてきた。
(くっ!これは厄介な敵を用意したわね。)
バーバラが顔をしかめていると、そばにいた求司が声をかけ、自身が野球部で使っていた送りバントのサインを出した。
(えっ?ほんとに?)
(うん。)
(分かったわ。)
バーバラは求司の指示を信じてニフラムを唱えてみた。
するとばくだんいわは一瞬にして全員退場してしまい、あっさりと前座が終了してしまった。
「そ、そんな!うそだろオイ!」
「バ、バカな。こんなはずでは…。」
ホラーウォーカーとかくとうパンサーがあっけにとられていると、求司はすかさず「とんだ計算違いだったな。こっちが相手の弱点を調べずにいると思ったか!」と言い返した。
これが結果的に1ターン休みの効果を発揮し、相手はすっかり隙だらけになってしまったため、ガルシア達はチャンスとばかりに総攻撃を開始した。
そしてホリディは次のターンでしっぷう突きを使ってホラーウォーカーを、バーバラと求司がそれぞれ通常攻撃とヒャダルコでかくとうパンサーをKOさせたため、結果的に求司達は無傷で勝利を収めた。
(その際、身かわしの服を手に入れました。)
少し進むと今度は操られたカルカドの人達に出くわしたが、求司の「1球待て」のサインに反応したバーバラがラリホーを唱え、眠った隙にみんなは逃げ出していった。
(この2人、すごく息が合っているわね。)
ターニアは求司とバーバラの見事な連携ぶりに驚いていた。
彼らが次に出会ったのは見覚えのあるスライムだった。
「あれ?もしかして君はスラリン?」
「あっ、キュウジさん、それにみなさん。こんにちは。はい、そうです。スラリンです。」
「どうしてこんなところに来ているの?」
「実は、僕とホイミンもこの件について役に立ちたかったので、助っ人を要請したんです。」
「助っ人って誰?」
「それは…。」
スラリンはテリーに加えて、協力してくれたキャラの名前を伝えた。
「ええっ?まさか、本当にそれが加わったの?」
「はい、そうです。すごいでしょ。」
求司はすでに名前を知っていることもあってビックリしたものの、他の人達はまだその存在自体を知らないため、思わずキョトンとしてしまった。
「と言うわけで、そのキャラは攻撃役で、ホイミンは回復役で参加したんですが、僕はテリーさんから力不足と言われて、メンバーから外されてしまったんです。」
「そうだったのか。でも、こんなモンスターが徘徊している中で、無事でよかったよ。」
「はい。でも、やっぱりこのまま引き返すのは悔しいので、僕をキュウジさん達の仲間に加えてもらえませんか?」
「こたえーーはっ!イエーーーーッス!」
「本当ですか?」
「そのとおり。君は僕達の仲間だから。」
「ありがとうございます!」
さっきまで落ち込んでいたスラリンの目は途端にキラキラと輝き、彼は喜んで同行してくれることになった。
「では、僕が持っているこの氷のやいばを君に渡すよ。」
「えっ?いいんですか?」
「うん。僕は1ターン休みと盗賊の特技で何とかなるし、この武器は君の方が役に立つと思うから、遠慮なく受け取ってくれ。」
「キュウジさん、そこまで…。本当にありがとうございます!絶対に戦力になってみせます!」
スラリンは武器を受け取ると、メラメラと闘志をみなぎらせた。
そして彼らはジャミラスのもとへと駆け出していった。
しかし、しばらくすると、求司の表情が次第にゆがんでいった。
「どうしたんですか?」
「何かあったんですか?」
スラリンとターニアは心配そうに声をかけたが、求司は何も言おうとはしなかった。
(あともう少しだ。バーバラのためにも、何としてもレック達のいるところまで到達しなければ。)
彼は駅伝大会での苦い過去を背負っているだけに、何としてもその借りを返したい気持ちだった。
しかし、彼のスピードはどんどん落ちていき、みんなから遅れを取っていった。
(キュウジ、まさか…。)
彼のところに駆け寄ったバーバラは、以前安奈に動画を見せてもらった時のことを思い出した。
『野星求司、中継所まではあと800mほどです。左足を気にしているのか、非常に苦しそうな表情をしながら走っています。』
『えっ?安奈さん、どうして(動画を)止めるの?』
『この後、衝撃的なことが起きるから、その点だけは覚悟してね。』
『えっ?一体何が起きるの?まさか…。』
『そうよ。私も見るのがつらいけれど、しっかりと理解してもらうために見せることにするわ。』
『わ、分かったわ。』
『さあ、繰り上げまで残り20秒を切りました。今、後方に一人選手の姿が見えてきました。野星求司です。風口君が祈るように見つめています。って、ああっと!ここで野星君が倒れた!中継所を目の前にして倒れてしまった!これはアクシデントだ!そして…、ここで無念の号砲だーーーっ!!』
(もし、あんなことになってしまったら…。そんなのイヤ。そんなの耐えられない。あたしのMPはどうなってもいい。あたしが何とかしなければ…。)
彼女はとっさにベホイミを唱えたが、ほとんど効果を発揮せず、求司の表情はさらにゆがむばかりだった。
それを見たバーバラは即座に覚悟を決め、「みんな、後は頼んだわ!」と声をかけた。
「えっ?どうしてですか?」
「何をするつもりですか?」
「いいから行って!絶対に勝ってね!」
バーバラはターニアとスラリン達に声をかけると、大声で「リレミト」と叫んだ。
そして…。
今回、テリーとホイミンに同行し、求司が「本当にそれが加わったの?」とビックリしたキャラは、当初は今回発表するつもりでした。
しかし、書いていくうちにどんどん長くなっていき、1話の上限の目安にしている7000字をオーバーしたため、ここで区切ることになりました。
というわけで、どのキャラなのかは次回をお楽しみに。