バーバラが待望のベホマを覚え、求司の治療にあたった翌日。2人はいよいよレック達に会うために、ルーラでゲントの村にやってきた。
入り口にはターニアがおり、金策中の彼女はちょうど薬草、毒消し草、毛皮のフードに加えて小銭を手に入れたところだった。
「おはようございます。」
「ターニア、元気?」
求司とバーバラは彼女を見かけると、即座に声をかけた。
「あっ、おはようございます。キュウジさん、足はもう大丈夫なんですか?」
「昨日よりもさらに良くなりました。もう日常生活は問題ないですし、トレーニングも再開しています。」
「それは良かったです。それで、今日はどのような用件で来たんですか?」
「実はレック達に会って、バーバラのベホマで治療をしたいんです。」
「えっ?お兄ちゃん達に直接会うんですか?」
「うんっ!そのつもりよ。」
「あの、大丈夫なんでしょうか?お兄ちゃん達が動揺しなければいいけれど。」
「あたしは大丈夫よ。もうレック達の気持ちは理解したし、キュウジのおかげで迷いが無くなったから。」
求司とバーバラはまじめに彼らと対面するつもりでいた。
「分かりました。では、私がこれからお兄ちゃん達のところに案内しますが、よろしいでしょうか?」
「もちろんよ!」
「分かりました。」
バーバラの同意を得て、ターニアは迷いを吹っ切り、3人で村に入り、ある建物の扉を開けて入っていった。
「それじゃ、お兄ちゃんは今この部屋の中にいます。まず、私が話をしてもいいですか?」
「いいわよ。あたしはここで楽しみに待っているわね。」
「分かりました。」
ターニアはコクっとうなずくと、扉を開けて中に入っていった。
待っている間、バーバラは何を言おうかじっと考え込んでいたが、求司はなるようになるという感じでなだめていた。
数分後、ターニアが出てきて、レックが会うことに同意したことを伝えた。
それを受けて、求司とバーバラも室内に入っていった。
「こんにちは。」
「おっはーっ!」
あいさつをした2人の視線の先には、右肩、右ひじ、右手首に加えて左腕に包帯が巻かれているレックの姿があった。
「バーバラ…。」
レックはケガがなかなか治らずにいることに加えて、これまでのことが自責の念になって襲い掛かってきたため、途端に泣きそうになりながらうつむいてしまった。
「レック、これはかなり重症ね。早速ベホマを唱えてあげるわね。」
「本当にいいの…?だって、僕は…、君を…。」
「もう過去は気にしないわ。さあ、いくわよ。」
バーバラは彼のところに足早に歩み寄ると、早速呪文を唱えた。
「ごめん…。僕…、君にあんなことをしたのに、君は…。」
治療をしてもらいながら、レックは未だに自責の念にさいなまれていた。
するとそこに求司がやってきて、「レックさん、初めまして。僕は野星求司です。」と自己紹介をした。
「君がキュウジさんですか。」
「はい、そうです。でも、さん付けはいいです。キュウジでいいですよ。」
「分かりました。では、僕もレックと呼んでください。君のことはアモスさんやターニアから色々聞いています。本当に、バーバラを成長させてくれて、ありがとうございます。」
「いえ、監督として、当然のことをしたまでです。それに、彼女のおかげで僕は松葉杖状態からここまで回復しましたし、彼女には本当に感謝をしています。」
2人が会話をしている中で、バーバラはレックの患部に手を当てながらうれしそうにベホマを唱え続けた。
その後、彼女は本当にMPを使い切るまで呪文を唱え続けた。
その時にはレックの症状もいくらかやわらぎ、比較的軽症だった左腕は日常生活に支障がない程度にまで回復した。
「どう?ベホマの効果はあったかしら?」
「うん、十分にあったよ。本当にありがとう。そして、本当にごめん…。僕…。」
「もういいってば。だから泣きそうな顔になるのはやめてよ。確かに悔しい思いもしたけれど、キュウジのおかげで立ち直れたし、それにあたし達は仲間なんだから。」
「うん…。」
「それに、これからも旅は続いていくんだから、みんなで仲良くしていきましょう。あたしは現時点で最強の武器であるはがねのムチを装備しているし、メラミ、かまいたち、そしてラリホー、マホトーン、ベホイミ、ベホマがあるから、状況にあわせて攻撃、補助、回復と色々担当出来るわよ。」
「うん…。」
レックはバーバラの話を聞いているうちにとうとうこらえきれなくなり、目からは涙が流れだした。
「ちょ、ちょっと…。そんなに泣くほどのことなの?」
「それでも僕は、君を戦力外にして見捨てた人だから…。」
「見捨てたなんて言わないでよ。あたしまで悲しくなるじゃないの。ねえ、笑ってよ。」
「出来ないよ、そんなの…。」
バーバラの忠告を受けても、レックは自責の念にさいなまれ続けていた。
それを見た求司は2人の間に入って彼らをなだめた。
「とにかく、君達が仲直り出来て良かったです。過去は変えられませんが、これから未来が待っています。元気になったらみんなで力を合わせて頑張りましょう。もし悩みがあるのなら僕に遠慮なく相談してください。力になりますよ。」
「はい、分かりました。」
「うんっ!そうしましょう!」
「それじゃ、レック。僕達はこれからハッサンとチャモロにも会いに行くつもりなので、これで一旦失礼してもよろしいでしょうか?」
「はい。分かりました。あっ、それからキュウジ。」
「何ですか?」
「この度は、僕のために炎のツメを買うお金をねん出してくれて、本当にありがとうございます。」
レックはそう言うと、左手でその武器を求司に見せた。
「あっ、無事に手に入ったんですね。それは良かったです。あと、レック達もバーバラのためにお金を用意してくれて、本当にありがとうございます。彼女はそのおかげで待望の魔法の盾を手に入れましたし、レックもぜひ炎のツメを役立ててください。」
「はい。絶対に役立ててみせます。本当にありがとうございます!」
「どういたしまして。では、僕達はこれで。」
「じゃあね。レック、早く元気になってね!」
求司とバーバラは笑顔でレックの顔を見つめた後、部屋を後にしていった。
そして、廊下でじっと待機していたターニアと合流し、ハッサンとチャモロのいる部屋に向かっていった。
「バーバラ!お前を戦力外にしちまって、本当にすまねえ!許してくれ!」
「私もあの時、みなさんを説得出来なくて、本当にごめんなさい。」
鼻の痛みとたたかいながらフェイスガードを作っているハッサンと、毒によって引き起こされた頭痛やめまいのためにベッドに横になっているチャモロは、バーバラを見るなり、ひたすら謝り続けた。
しかし、彼女はレックの時と同様に一切怒ったりはせず、笑顔で彼らを許してあげた。
それを受けて、彼らの自責の念も少しずつ和らいでいき、やがてターニアも含めて和やかな雰囲気になっていった。
彼らの気持ちが落ち着いた後、求司はまずフェイスガードの製作状況をチェックした。
「だいぶいい感じで出来上がってきていますね。きっと役に立つと思いますよ。」
「でもよ、これじゃカッコよさダダ下がりじゃねえか。正直、恥ずかしいんだけれどよ。」
「それは最初だけだと思います。僕はスポーツの試合でそのマスクをつけた選手が試合に出場した時、『コウモリマン』と呼ばれながらも堂々とプレーしている姿に魅了されましたから。」
「本当か?間違っても笑いものにされたりしねえよな。」
「まあ、モンスターがどう思うかは分かりませんが、ハッサンに見とれたりしてこっちに有利になればいいんじゃないですか?」
「何だそりゃ!」
「とにかく、早く復帰出来るといいですね。それから、レックが炎のツメを手に入れたことでバトルアックスが空きましたので、これからそれを装備してはいかがですか?」
「おっ、そうか。それなら早速そうさせてもらうぜ。」
「分かりました。じゃあターニア。レックのところに行ってもらってもいいかな?」
「はい。では、行ってきます。」
彼女は求司の要求を受け入れると、一旦部屋を後にしていった。
一方、バーバラはマホトラでハッサンや求司からMPを補充した後、チャモロにキアリーやベホマを繰り返し唱えた。
しかし、思ったよりも症状は回復せず、彼はベッドに横になったままだった。
「困ったわね。呪文だけではダメなのかしら。」
「そうかもしれないです。昨日もホイミンさん達が頑張って治療をしてくれましたが、まだこんな調子なんです。それに私は集中攻撃の対象になりやすい上に、強敵と戦うたびに大ケガをしてしまいましたから、セリーナさんから『このままではお前を旅に送り出せない!』と言われてしまったんです。」
「そうなの。それは大変ね。」
「はい。本当にごめんなさい。」
「謝ることはないわ。あたしもベホマを覚えた以上、そうなる可能性は考えられるし、チャモロの二の舞にならないように対策を練ることにするわ。」
2人が会話をしていると、部屋の扉が開き、ターニアに加えてスラリンがやってきた。
「ハッサンさん。お兄ちゃんから了解を得て、バトルアックスを持ってきましたよ。」
「あのな!さん付けはいいって言ってるだろ!」
「えっ?でも…。」
ハッサンから強い口調で言われてしまい、ターニアは思わずビクッとしてしまった。
「そういう言い方はやめなさい!チームワークを乱しますよ。」
さっきまで明るかった求司の表情は一気に険しくなった。
「えっ?でもよ、俺は彼女より年上だし。」
「ダメです。僕のいとこの蕨監督も学年や年齢による上下関係を撤廃しましたし、僕もチームの監督として、そういった行為は許しません!チームの弱体化につながります!」
「わ、分かったぜ…。」
ハッサンは思わぬ状況に委縮してしまったのか、それ以上は何も言わなかった。
それを受けてターニアは改めてバトルアックスを彼に手渡した。
「ありがとよ。大事に使わせてもらうぜ。」
「ぜひそうしてください。お願いします。」
さっきまで委縮していたターニアは改めて笑顔になった。
そして、求司はハッサンが使っていた鋼の剣を引き取った。
すると、スラリンが「みなさん、こんにちは。」と言いながら部屋に入ってきて、早速仲間モンスターから分けてもらった色々な薬草を取り出した。
「これらはなあに?チャモロの治療に役立つの?」
バーバラをはじめ、その場に居合わせた人達は興味津々だった。
「確信は持てませんが、どれかは効くんじゃないかと思います。スミスやツンツン、さらにようじゅつしのおじさんは戦闘でケガをしたり、病気になったり、食中毒になった時に、これらの植物で治療をしてきたそうですから。」
「ふうん、そうなの。じゃあ、手あたり次第にチャモロに与えてみたら、どれか効くかもしれないわね。」
「はい。僕もそれを期待しているんです。」
「じゃあ、早速実行してみましょう。」
バーバラはそれらをわしづかみにすると、その場でちぎってチャモロに飲ませようとした。
するとそれを見た求司が「ちょっと待って!」と言って止めに入った。
「どうしたの?キュウジ。」
「もしかしたら何か害になる成分が含まれている可能性もあるから、水につけるといった前処理をした方がいいと思うよ。」
「あら、そうなの?」
「うん。僕の世界では食べられる野草と間違えて食べてしまい、食中毒を起こしたというニュースを度々聞くから。」
「分かったわ。でも、その前処理ってのがよく分かんないけれど、どうすればいいのかしら。」
「それなら私にやらせてください。」
バーバラが首をかしげていると、そこにターニアが名乗りをあげた。
「えっ?あんたに出来るの?」
「はい。私は山育ちですから、こういったことには慣れています。それにお料理に少しずつ加える形でチャモロさんに食べさせてみたいと思います。」
「そうなの。じゃあ、頼んだわね。」
「僕からもどうかお願いします。」
「どうかチャモロさんを助けてあげてください。」
「任せてください。頑張ります!」
バーバラ、求司、スラリンの後押しを受けて、ターニアは全身に気合を入れながら、薬草一式を持って調理場に向かっていった。
なお、これらの中に入っていた薬草の中にパデキアが含まれていたが、この時は病をたちまち治してしまうほどの効果はなく、これを品種改良したものが後の世界でクリフトを救うことにつながった。
今回は編集が不十分なまま投稿したため、手直しが何度か発生してしまいました。
どうもすみま1000ゴールド…、じゃなくて、すみません。