遊び人をようやく卒業し、ホイミとニフラムを覚えた上で踊り子になったハッサンと、金策のために武闘家を一旦中断して盗賊になったバーバラは、転職を済ませると風の帽子でホルストックへと飛び立っていった。
城の周辺では求司、レック、アモス、ターニアの4人が協力しながら穴掘りなどの作業をしており、2人はすぐに加わった。
しかし、思ったほどいい収穫が得られずにいたため、しびれを切らした求司は口笛を解禁することにし、ユニコーンやヘルゼーエン、くものきょじんなどを呼び出すことにした。
その際、相手の数が少なければハッサンの捨て身やアモスのしっぷう突き(+炎のツメの追加攻撃)、はやてのリングを装備したレックのメラミとかまいたちで即座に決着をつけ、数が多ければターンの最初と最後に1ターン休みやラリホー攻めなどで相手の行動を制限して対処をした。
そして、戦闘が終わってノーサイド状態になると求司とバーバラがアイテム交渉をしたり、ターニアが「長靴をはいた○○」のようなつぶらな瞳を見せながら値段交渉をした。
その結果、最終的に1500ゴールドのお金に加えて身かわしの服、くさりがま(2つ)、パデキアの葉に加えて一番欲しかった風の帽子を手に入れた。
(※僕の作品では生き返らせるNGなので、世界樹の葉をパデキアの葉に変更します。)
「ねえ、その帽子はターニアが装備してくれる?」
「えっ?バーバラさん、いいんですか?」
「うんっ!それがあればキメラの翼を買う必要もなくなるから。」
「そうなればターニアにお使いを頼むことも出来るし、便利になるね。」
バーバラに続いて、レックも彼女に装備を依頼した。
「分かりました。では、頭用の防具としてだけでなく、お使いの役割を果たす意味でも、ありがたく使わせていただきます。」
ターニアはお礼を言うと、早速頭にかぶった。
「それじゃ、あの青い服を着たガキが売却していった帽子を買いに行こうぜ。」
「でも、辺りはすでに暗くなってきていますし、閉店時間が気になりますね。」
ハッサンとアモスの発言を受けて、ターニアはお使いに行くことを申し出た。
「それじゃ、私が急いでアークボルトの武器屋に行ってきます。」
「ありがとう。頼んだよ。」
「分かりました!」
ターニアはお金が入った財布と袋を持ちながらルーラを発動させて、飛び立っていった。
一方、バーバラもとうとうMPを使いきってしまい、これ以上戦力になるのは厳しいと判断したため、風の帽子で求司と一緒にダーマ神殿に向けて飛び立っていった。
残った3人はターニアの帰りを待ちながらハッサンの口笛でモンスターを呼び出すことにした。
すると現れたのは何故かこうもりはくしゃくの連中で、彼らはフェイスガードをしたハッサンを「こうもりマン」と呼び、結果的にお互い意気投合してしまったため、一行は暗闇の中で熟練度稼ぎをすることになった。
翌日。求司と武闘家に復帰したバーバラは今後のことについてグランマーズに相談するために、マーズの館に行くことにした。
神殿からルーラで館の前に降り立った彼らは扉をノックし、求司が「こんにちは。」と声をかけた。
すると中から『お客さんですか?今、まいります。』という声がして、しばらくすると扉が開き、金髪の女性が姿を現した。
「こんにちは。どんな用件で…。」
求司に声をかけた女性は隣に赤毛の少女が立っているのを見て、突然ハッとした。
「ミレーユ?ミレーユなのよね?この世界に帰っていたの!?」
「え、ええ…。そうよ…。バーバラ…なのね…。」
ミレーユは動揺が静まらなくなり、わなわなと震え始め、目がウルウルになっていった。
「ごめんなさい…。本当にごめんなさい…。私…、ムドー討伐に行く前に…、あなたにひどいことを…。」
「それはもういいってば!確かにあの時はあたしも役に立てなくて悔しかったけれど、キュウジのアドバイスを受けながら成長したし、それにレック達とはすでに仲直り出来たから。だから、泣かないでよ。ミレーユだけ許さないとかそんなことしないから!」
「それでも私は…。本当にごめんなさい…。」
バーバラは懸命になだめたが、ミレーユはその場に崩れ落ちるように座り込んでしまった。
一方の求司も今回ばかりは何を言えばいいのか分からず、ただただじっと2人を見つめるしかなかった。
するとここでグランマーズが仕事を中断して3人のところにやってきた。
そして、彼女はミレーユがムドー戦で両肩を負傷した上に呪いをかけられてしまい、世界を移動しながら治療の日々を送っていたことや、通常攻撃も特技も呪文も使えないハンデを抱えながら、ホイッスルでの1ターン休みで何とかチームに貢献してきたものの、地底魔城でそれが効かない敵に出会ってショックを受けてしまい、さらに相手の攻撃で再び肩の状態が悪化したことを話した。
「ミレーユよ。お前さんにはつらいことじゃが、この2人に事情をしっかりと理解してもらおうと思って話してしまったが、よかったかの?」
「ええ。そして、そこからは私が自分で話すことにするわ。私、ただでさえホイッスルしか出来ないことに劣等感を抱えていたし、さらに肩が悪化したことで自分で言った『役に立たない、戦力外』という言葉に自分が打ちのめされてしまったの。それでもレック達の前では我慢していたけれど、アークボルトでホリディさんと勝負した後、とうとう気持ちが限界になってしまって…。」
「そうじゃ。わしもそんな状態の彼女を見るのは本当につらくてのう。それでキュウジの世界に行くことを勧めたんじゃ。もっともミレーユは当初『みんなから遅れを取りたくない。バーバラへの償いをするためにも戦力になりたい。ならなきゃいけない!』と言っていたが、今無理をすれば本当に取り返しのつかないことになると思ったから、懸命に説得して行かせたんじゃよ。」
「そう…。ミレーユはミレーユでつらかったのね。」
「うむ。じゃが、向こうの世界でお世話になった人達のおかげでケガも治り、ようやく精神的にも立ち直ってくれた。それでもやってしまったことは変えられんが、どうか彼女を許してやってはくれんか?」
「そりゃ、さっきも言ったけれど、ミレーユだけ許さないなんてことはしないわ。それにキュウジの言葉を借りるなら、過去は変えられないけれど、未来があたし達を待っているから。」
バーバラは迷うことなく即答した。
「本当に?こんな私を許してくれるのね?」
「うんっ!これから一緒に協力していきましょう。」
「バーバラ…。あなたって人は…。本当に心の広い人なのね…。ありがとう…。」
一方のミレーユは再び泣き出してしまったが、それは悲し涙ではなく、うれし涙に変わっていた。
求司とバーバラは何も言わずにその様子をじっと見つめていた。
そして、グランマーズはもう大丈夫と確信し、仕事場へと戻っていった。
その後。ようやく泣き止んだミレーユは、求司の世界で過ごした日々について話してくれた。
「ミレーユは僕のいとこであるアンに会って、今後の攻略法について色々教えてもらったんですね。」
「はい。私はこれまで相手の足止めしか出来ないことを悔やんでいたけれど、彼女にそれをつなぎの役割としてしっかりと評価してもらえて、本当に励みになったわ。」
「それは僕でも分かります。アンや彼女の兄の蕨丈二監督はたとえ短所があっても、長所をしっかりと見てくれる人ですし、『この人はこうだ』という固定観念で判断しません。それに、駅伝は長距離区間ばかりが注目されるけれど、最短区間にもつなぎとして大事な役割があるから誇りを持てと言われましたから。」
さらに求司は元々競技が違っていたため、当初は大学に入っていきなり駅伝で活躍出来るわけがないと言われたこともあったが、彼の性格をよく知っている監督や素質やクセを見抜くのがうまい外場みか子さんのおかげで頭角を現し、2年間をかけて駅伝大会の6区に起用されるまでに成長したことを話した。
「大会本番ではあんなことになりましたが、それでも彼らの采配なしにはその舞台に立つことなど不可能だったと思います。そして、そこで学んだことをバーバラの成長につなげられましたので、彼らや風口先輩をはじめとする部員のみんな、最強大学の永島田監督、そして僕を見守ってくれた家族には本当に感謝をしています。」
「そうなの。あなたは本当にいい人達に巡りあったのね。バーバラに秘められた素質や可能性に気づかないまま、彼女を追い出してしまった私達とは大違いだわ。」
「そんなこと言わないでください。どうかもうこれ以上自分を責めないでください。アンに色々情報を授けてもらったのであれば、きっとそれを駆使して活躍が出来るはずです。だから、胸を張ってください。」
「そうですね。これからはキュウジを参考にしながら頑張って、バーバラと仲良くやっていくことを約束するわ。」
「うんっ!約束しましょう!あたしももう過去のことは気にしていないし、仲良くしましょうね。」
「そうね。2人とも、よろしくお願いします。」
ミレーユは深々と頭を下げて、仲間に復帰してくれた。
そして自身が離脱している間、誰も使うことなく保管されていた破邪の剣と身かわしの服に加えて、安奈に買ってもらったフライパンのフタとアークボルトでレック達が購入した風の帽子を装備した。
すると求司がミレーユの状態を確認するために、剣での素振りや反復横跳びなどを依頼した。
その結果、現時点では通常攻撃こそまだ控えた方がいいものの、素早さは問題ないことや、呪文はしっかりと唱えられることを確認した。
「キュウジ。私にお勧めの転職って何かあるかしら?」
「何よりまず魔法使いになって、メラミを覚えてほしいですね。ハッキリ言ってこの呪文だけでも戦力になれますから。」
「分かったわ。それを覚えたら、次は何に就こうかしら?」
「そうですね…。時間をかけてベホマを覚えるつもりなら僧侶がお勧めですが、なるべく早く戦力になるなら武闘家、僕のように金策を担当するなら盗賊という選択肢もありますね。」
「そうなのね。アンはもし自分がゲームの世界にやってきたら絶対に賢者になりたいと言っていたから、私もそうなろうかと考えていたけれど、どうしようかしらね。」
「じゃあ、しばらく魔法使いで粘ってみますか?HPは大きく減りますので戦力としては苦しくなりますが、イオラを覚えれば立場が大きく変わりますから。」
「うん、そうね。それに今旅に同行出来るメンバーの中で、ベホイミ以上の回復呪文を唱えられるのはあたししかいないから、移動中の回復役として貴重な存在よ。」
「では、そうさせていただきます。そして、必要に応じて色々転職していくことにするわね。」
求司とバーバラのアドバイスを受けてミレーユは考えがまとまり、それを受けて彼女は風の帽子で飛び立っていった。
魔法使いの状態で戻ってきたミレーユはその後、求司とバーバラと一緒にトレーニングをしながら過ごし、少しずつ熟練度を稼いだ。
トレーニングが終わった後、求司はここに来た時、MPが少なすぎた上に足の故障のため、就ける職業が商人しかなかったことや、何とかバーバラに活躍してほしい一心で色々な作戦を考えたことを話した。
「というわけで、僕は自分でホイミを覚えられなかったことが悔しかったですが、バーバラ達から監督という立場を与えてもらいましたし、バーバラが頑張ってベホイミやベホマを覚えようとする姿を見て、自分も金策と足止め作戦に誇りをもって頑張ろうという気になったんです。」
「あたしもそんなキュウジの姿がすごく輝いて見えたの。それが励みになったし、彼の1ターン休みやスラリンのメダパニダンスのおかげであまり攻撃されずに済んだから、僧侶になってHPが低下しても、倒されてしまうことはなかったわよ。本当にキュウジがいてくれて良かったわ。」
2人は特徴こそ全く違うものの、その違いを利用して見事な連携を披露し、お互い成長出来たことを話した。
「そう。それは良かったわね。それを聞いてますます自信がわいてきたわ。」
「うん、その調子よ。ミレーユもメラミやホイッスル、そしてベホイミで活躍してね。期待しているから。」
「僕も監督として、ミレーユを出来る限り積極的に起用していくつもりです。よろしくお願いします。」
バーバラと求司はすでにミレーユとすっかり仲良くなり、会話も色々弾むようになった。
するとその時、館からグランマーズが手に何かを持ちながら出てきた。
「ミレーユや。せっかく仲直り出来たところで悪いんじゃが、そろそろキュウジにこの手紙を渡した方がいいんじゃないかの?」
「えっ?今ですか?」
「そうじゃ。いずれはやらねばならんことだし、それならば早い方がいいと思ってのう。」
「…分かりました。おばあちゃんがそう言うのなら…。」
グランマーズの忠告を受けて、それまで明るかったミレーユの表情は途端に曇りだした。