You're my hero   作:地球の星

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32. 思い出の場所めぐり

 求司がもうゲームの世界に長くはいられないことを知った翌日、彼はバーバラと一緒に思い出の場所をまわることにした。

 最初にやってきたのはマーズの館だったが、レック達は熟練度上げに出かけた後だった。

 そのため、求司はグランマーズに会い、この世界でやることを済ませたら送ってもらえるようにお願いをして、現地を後にしていった。

 

 次に訪れたのはアークボルトで、城の入り口には「人間対モンスターによる格闘大会本日開催!」という貼り紙があった。

 そして2人は見張りのガルシアに内容を教えてもらった上で城内に入っていき、格闘場へと向かっていった。

 するとそこには複数の人間とモンスターが集まっており、各自で準備をしていた。

 しかし、モンスターチームの中でいどまじんが宙ぶらりんの状態だったため、責任審判のブラストはスコットの代わりにバーバラに飛び入り参加を勧めてきた。

「えっ?あたしは戦うつもりじゃなかったんだけれど…。」

「でも、必ず参加賞がもらえますし、さらに勝てばゴールドに加えて相手の持っているアイテムをもらえますよ。」

「うーーーん…。」

 彼女はなかなか決断出来なかったため、求司の方を向いて意見を求めた。

 すると彼は自分が参加することを宣言した。

「えっ?本当に?」

「大丈夫。」

「でも、ここでケガはしてほしくないんだけれど…。」

 バーバラは思わずちゅうちょしてしまったが、彼が出した盗塁サインを見て納得し、さらに自分も参加することにした。

「分かりました。というわけで、いどまじんの相手はキュウジとバーバラのタッグチームとなります。なお、1対2では不公平なので、2人同時での参加は禁止しますが、キュウジ君、よろしいですか?」

「はい。僕は構わないです。」

 求司はその場でラ○オ体操をして準備を整えた。

 一方のバーバラは向こうの世界で覚えたマ○ケン体操をしながら、作戦がうまくいくことを願っていた。

「では両者、勝負開始!」

 ブラストが合図をすると求司は遊びの熟練度2と称して財布を取り出し、「ヘイヘイ、この銭っこでこんろんの玉でも買いな。」と言って100ゴールドをばらまいた。(←新桃と間違えてね?)

 すると、いどまじんは他のものには目もくれずにお金を拾い出した。

「ちょっと、おい!」

「なんじゃそりゃ!」

「そんなのアリか!」

 ブラストに加えて副審のスコットとホリディは思わずあっけにとられてしまった。

「ねえ、キュウジ。ここであたしと交代してもいい?」

「えっ?どうして?」

「せいけん突きの練習にちょうどいいと思ったのよ。だから、後はあたしに任せて。」

「分かった。じゃあ、交代しよう。」

「うんっ!」

 バーバラの要望を受け入れた求司はブラストに交代を告げると、ハイタッチをして入れ替わった。

 するとバーバラは即座にせいけん突きを叩き込んだが、まだ未完成だったため、ほとんど単体の通常攻撃と変わらなかった。

(うーん、これじゃかえって損するわね。まだハッサンのようにはいかないわね。)

 納得のいかない彼女はその後、かまいたちを浴びせていった。

「よおし!やっと拾い終えたぜ。さあ、反撃だ!」

「君ねえ、もう勝負ありなんだけれど…。」

「ええっ?審判、マジで!?」

「はい。そもそもダメージを受けていることに気づかなかったのか?」

「すみません。お金を拾うのに夢中だったので…。でも、そう言えば何だか体が痛くなってきましたけど…。」

「今更かい!」

 いどまじんとブラストのやりとりはコントにしか見えないものだったため、他の人間やモンスター達はみんな大笑いだった。

 何はともあれ、勝負は求司とバーバラの勝利となったため、2人は172ゴールド(求司がばらまいた分を含む)に加えておしゃれなバンダナを2つ手に入れた。

 

 次の対戦はセリーナ対ようじゅつしだったが、ようじゅつしが常に距離を取っている上にメラミが強力だったため、セリーナはほぼ一方的にHPを減らされてしまった。

(くそっ。薬草でHPを回復させてもメラミでそれ以上に削られてしまう。勝負が長引けば不利になるだけだ。やつに近づきさえすれば一気に倒せるのに。何か近づく方法は!?)

 彼女が焦りの表情を浮かべていると、ふと脳裏に男性の声がよぎった。

『セリーナさん。』

(えっ?チャモロか?来ていたのか?)

『強くなってください。もっと強く……。』

(分かったぜ。)

 彼の声に後押しされたセリーナは体にみるみる力がみなぎってきた。

「うおおおおおーっっっ!!!」

 まるでスーパーサ○ヤ人のような状態になった彼女は相手のメラミでダメージを受けながらも突撃していき、ジ○スパークのような一撃を浴びせた。

「ぐあああああっ!」

 それまで圧倒的に有利な状況だったようじゅつしはまさかの大ダメージを受けてしまい、その場に倒れ込んでしまった。

 一方のセリーナは体中がボロボロになりながらも立っていたため、勝負は彼女に軍配が上がった。

「む、無念じゃ…。こんな超大逆転負けをするとは…。」

 ショックで起き上がれないようじゅつしは娘のアリアに治療をしてもらった後、彼女経由で92ゴールドと不思議な木の実を2つ渡した。

「ありがとよ…。正直…、私がこんな実を食べても意味ねえが、ありがたくもらっておくぜ…。」

 セリーナはアリアからお金とアイテムを受け取るとバーバラにベホマを唱えてもらい、人間チームに合流した。

(※ちなみに会場にチャモロは来ていません。)

 

 次の対戦はカンダタと子分3人対スラリン、ホイミン、ピエール(能力はドラクエ5)だった。

「お前達、俺様達に勝てると思うのか?せめてハンデとして俺様は1ターン待ってやるぜ。お前達、さっさとやっちまいな!」

 カンダタはマスク越しにニヤニヤしながら挑発をしてきたが、3匹は動じず、勝負が始まるとスラリンは火炎の息、ホイミンとピエールはイオラをぶっ放した。

「半端ないって!火炎の息とダブルイオラ半端ないって!」

「グループ分けお構いなしの全体攻撃なんだもん!」

「HP106のうちらじゃ、そんなん耐えられへんもん!」

 予想外の大ダメージを受けた子分達はたった1ターンで降参してしまった。

「なめプしたら痛い目にあう典型的な例ですね。」

「さあ、どうします?勝負を続けますか?」

「こっちは3対1でも一切手を抜きませんよ。」

 スラリン、ホイミン、ピエールは鬼のような形相でカンダタをにらみつけた。

「わ、分かった。まいった。俺達の負けだ。オノとヤリと金のかんむりを渡すから、許してくれよ。な、な。」

「分かりました。受け取りましょう。」

 スラリンはまだ警戒しながらも、結果的にだまし討ちを受けることもなく賞品を受け取った。

 

 次の対戦はテリー対ドランゴで、お互いはやぶさぎりをはじめとする特技を駆使しながらガチのバトルを繰り広げた。

 最大HPはドランゴの方が上だったが、テリーは素早い動きで攻撃を回避したため、勝負は接戦のまま次のターンにゆだねられた。

 するとここでテリーはしっぷう突きを仕掛けて先制攻撃し、見事ギリギリで相手のHPを削り切ったため、彼に軍配が上がった。

「私…、まいった…。お前…、強い…。私…、一緒に…行きたい…。ギルルルン…。」

 ドランゴは持っていたお金と武器を差し出すことにし、さらにテリーに同行を申し出てきた。

「フンッ!俺は誰の助けも受けん。ここでおとなしくしていろ。」

「そんな、ひどい…。私、一緒に…行きたい…。ギルルルン…。」

「ダメだ。すっこんでろ。お前がいなくても問題ない。」

「そんな、ひどい…。私、一緒に…行きたい…。ギルルルン…。」

「嫌だね。俺は次の目的地に行く。」

「そんな、ひどい…。私、一緒に…行きたい…。ギルルルン…。」

 ドランゴはあきらめずに何度も粘ったが、一方のテリーはついにしびれを切らしてしまい、ブラストから一足先に参加賞をもらうとリレミトで会場から脱出していった。

「そんな、ひどい…。」

 その場に取り残されたドランゴは、ホイミンに回復をしてもらいながらその場に立ち尽くしていた。

 

 最後の対戦はアモス対試練その1だった。

「私はアモスと申します。よろしくお願いします。」

「私はフウと申します。全力で勝負させていただきます。」

 彼らが礼を交わした後、いよいよ勝負が始まり、アモスは大きく息を吸い込んだ。

 一方のフウはギラを唱えたが、魔法の盾の軽減効果により、ほとんどダメージをかき消されてしまった。

 すると次のターンでアモスは覚えたばかりのまじんぎりを繰り出したが、運悪く外れてしまった。

(これはダメだ!通常攻撃をしなければいけないーーっ!どうしたんだアモス!何のための気合ためだ!これはいけませーーーん!!!)

 求司は声こそ出さなかったが、心の中で思い切りツッコミを入れていた。

 勝負はその後、フウが例のアレを繰り出したためにアモスが混乱してしまい、彼は何も出来ないまま呪文でジワジワ攻撃されるハメになった。

「おーい、あまり時間をかけんなよ。」

「激しい炎でさっさとカタをつけろ。」

「分かりました。では、解禁します。」

 観客として来ていた試練その2とその3(名前はそれぞれドルマとパラル)からヤジを飛ばされたフウはここで作戦を変更し、一気に勝負を決めた。

 結果、アモスはそれまで愛用していた炎のツメを取られたため、魂が抜けたような表情でチームに戻ってきた。

 勝負は以上で終了となり、参加した人間(テリーを除く)やモンスター達は参加費やお弁当、お茶をもらい、勝者は力の種、賢さの種、守りの種、命の木の実のどれか1つをもらえることになった。

(ちなみにバーバラは命の木の実を選びました。)

 

 食事を済ませた後、求司とバーバラはアモス、スラリン、ホイミンと一緒に城の外に出てきた。

 その際、求司は自身が持っていたはがねの剣をアモスに差し出した。

「えっ?キュウジさん、いいんですか?あなたが丸腰になってしまいますよ。」

「いいんです。遠慮なく受け取ってください。」

「分かりました。」

 アモスは剣を受け取ると即座に理由について問いかけ、回答をしてもらった。

「そうなんですか?何だか急ですね。」

「僕達とせっかく仲良くなれたのに。」

「もっと一緒に過ごしたかったです。」

 アモスに加えてスラリンとホイミンもショックを受け、途端に寂し気な表情になった。

「本当にごめんなさい。でも、これから行くことになる洗礼の洞くつまでは付き合うから、どうか残された時間を有意義に過ごしましょう。」

 求司は自身も寂しい表情になりながらも、何とかアモス達を元気づけた。

 

 彼らが次に訪れたのはモンストルの町だった。

「ここって、確かキュウジがスマートフォンで1ターン休みを連発したところよね。」

「そうですね。そのおかげで僕達はダメージをあまり受けることなく熟練度を稼ぎましたね。」

「あの時、キュウジさんにベホイミを何度も唱え続けたのも、何だか懐かしいですね。」

 バーバラ、スラリン、ホイミンはそこでの出来事について話し合う一方、求司は何も言わずに思い出に浸っており、アモスは町の人に会って会話をしていた。

 

 次に彼らはゲントの村にやってきて、求司はチャモロに会ってあいさつをした。

「そうですか。これから寂しくなりますね。せめて私がイオラやベギラゴンを放つ姿をお見せしたかったんですが…。」

「でも、バーバラが復帰してくれたので、僕としては役割と果たせたと思っています。どうか彼女と仲良くしてくださいね。」

「はい。約束します。でも、もしかしたら私は洗礼の洞くつに同行出来ない可能性が有りますので、私の装備品を持っていってください。」

「えっ?いいんですか?」

「いいんです。私の分まで頑張ってください。よろしくお願いします。」

「分かりました。」

 求司は要望を受け入れ、チャモロが所持していたいかずちの杖と金のブレスレットを受け取った。

 

 村を後にすると今度は月鏡の塔に行き、一行はすっかり静かになった内部を歩いて回りながら、バーバラがレック達と出会った思い出の場所にやってきた。

(その後、あたしはつらいことも悔しいことも経験したけれど、やっとそれも思い出として考えられるようになったわ。レック、ハッサン、ミレーユ。あたしを仲間に加えてくれて本当にありがとう。)

 その場所を懐かしそうにじっと見つめている彼女の姿を、求司達は優しいまなざしで見ていた。

 

 そして求司とバーバラはアモス、スラリン、ホイミンと一緒に再びマーズの館にやってきて、今度こそレック、ハッサン、ミレーユ、ターニアに会った。

 彼らはすでに求司のことをミレーユ経由で知っているため、特に動揺することもなく、彼らはどのタイミングで洗礼の洞くつに行くのかについて話し合いを始めた。

「私がアンから聞いた話では、そこではボス3匹に加えて、色々な種類のモンスターが出るそうだから、こちらも色々準備を整える必要がありそうね。」

「そうですか。なら、今からみんなで金策をしたり、装備を整えた上で、全員戦力になれる状態で現地に行くことにしましょう。」

 ミレーユの情報を聞いて、求司はなるべく多くのメンバーに盗賊になることを提案した。

 そして、バーバラとホイミンに加えてアモスが名乗り出たため、求司を加えて盗賊が4人そろうことになった。

(レックは武闘家、ハッサンは踊り子、ミレーユは魔法使い、スラリンはまもの使い、ターニアは商人。)

 転職を終えた後、一行はまずカルカドに向かっていき、踊り子の服のドロップ率が高いスーパーテンツクをメインに呼び出すことにした。

 その結果、アイテムやお金に加えて、熟練度もある程度たまったため、今度は地底魔城に行き、みんなで一斉に宝探しをした。

 彼らが食事の時間も惜しんで粘り続けた結果、お金に加えて絹のローブや鉄の杖、どくがのナイフ、石のオノに加えて命の木の実、守りの種、素早さの種を手に入れた。

「じゃあ、実と種はバーバラが食べてくれる?」

「えっ?レック、いいの?」

「うん。ぜひとも君に強くなってほしいから。」

「でも、全部だとみんなに悪い気もするんだけれど…。」

 バーバラは恐れ多い気持ちでいっぱいだったが、ハッサンとミレーユもせめてもの罪滅ぼしとばかりに勧めてきたため、ありがたくいただくことにした。

(これだけのお金とアイテムがそろえば、月のおうぎが買えそうだ。魔法の盾も欲しいけれど、まずは武器を優先しよう。)

 求司は多少ながらステータスを上昇させたバーバラを見ながら、次なる作戦を考えていた。

 そして、金策を終えると地底魔城から外に出ていき、一行はルーラで夜空の中をダーマ神殿に向けて飛び立っていった。 




名前の由来

・フウ、ドルマ、パラル
 1986年発売のRPG「ディープダンジョン」に登場した魔法の名前です。
 フウは敵にダメージを与える、ドルマは敵を眠らせる、パラルは敵をマヒさせる効果があります。
 このゲームには他にアン(敵の魔法を封じ込める)とブラスト(敵に大ダメージ)の魔法が登場するため、それを受けてこれらを採用してみました。

 今回はテリーとドランゴをどうしても出したいという理由から、アークボルトでの格闘シーンを出しました。
(※今作でテリーが出てくるのはこれが最後です。)
 そうしたら色々アイデアが浮かんできたため、その場面が長くなりました。
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