You're my hero   作:地球の星

35 / 35
35. ありがとう、ゲームの世界

 洗礼の洞くつでのボス3連戦を終えたレック達は、魔法のカギをもらうためにリレミトで地上に出てきて、ルーラでホルストックに戻ることになった。

 その際、求司は自分が同行出来るのはここまでであることをはっきりと打ち明けた。

「えっ?じゃあ、キュウジは…。」

 バーバラは心の中では覚悟していたとはいえ、彼の発言とその吹っ切れた表情を見て、腕が震え始めた。

「ごめんね。僕だって離れるのはつらいけれど、アンをいつまでも待たせるわけにはいかない。早く戻らないと日本に帰れなくなる可能性がある以上、行かなければ…。」

「うん、でも…。」

 バーバラは胸が張り裂けそうなほどの気持ちになってしまい、なかなか現実を受け入れられなかった。

「とにかく、ホルストックに行きましょう。そして、カギをもらったらチャモロ、アモスさん、ターニアに会って、あと少しだけ楽しく過ごしたいと思いますが、それでいいでしょうか?」

「分かりました。僕達にとっては短い間でしたが、一緒にいられたことは忘れません。」

 レックはみんなを代表してお礼を言うと、早速ルーラを唱えて飛び立っていった。

 

 ホルコッタ王から魔法のカギをもらった後、一行はチャモロ達に合流し、求司はいよいよこの世界を離れることを伝えた。

「結局私は一緒に冒険出来ませんでしたね。それが心残りです。」

 チャモロはジャミラス戦以降はほとんどゲントの村で過ごしていたため、悔しさを隠せなかった。

「でも、君はすでに魔法使いの熟練度が7ですし、あと一息ですよ。それをマスターすれば以降は戦闘に耐えられる職業に就けますから、ベホマと攻撃呪文できっと活躍出来ます。頑張ってくださいね。」

「はい。呪文なら誰にも負けない自信はありますし、セリーナさん達から了解をもらって、必ず戦力として頑張ります。」

 チャモロは悔しさを取り返そうと気合を入れた。

 

「私は結構長い付き合いになりましたね。だからこそ、別れが余計につらいものになってしまいますが、どうか元気でいてください。そして、炎のツメを買い戻してくれて本当にありがとうございます。この恩は忘れません。」

「アモスさん、どういたしまして。思えばバーバラやスラリンがまだ成長途上だった時に、エースアタッカーになってくれて本当にありがとうございます。そして、これからもバーバラをはじめ、みんなのことをよろしくお願いします。」

「分かりました。私は最初、上位職しか考えていなかったので、戦士を極めた後、武闘家か魔法使いで悩んでいましたが、盗賊や商人で金策をするのも悪くないと思ったので、しばらくその職業で行きたいと思います。」

「では、ぜひお願いします。これからもきっとお金が必要になると思いますので、頑張ってくださいね。」

「もちろんです。」

 彼らは名残惜しそうに会話をした後、固く握手を交わした。

 

「私はろくに呪文も唱えられず、通常攻撃も特技もダメでしたが、それでもしっかりと戦力として考えていただき、本当にありがとうございます。特にターンの最後に行動するというのは驚きましたが、確かな手ごたえを感じることが出来ました。」

「どういたしまして。君は足止めと金策を中心にで活躍してくれましたし、それにバーバラと一番最初に仲直りしてくれましたから、十分役に立ってくれましたよ。」

「ありがとうございます。でも、私は新たな呪文もなかなか覚えられませんし、立場がどんどん厳しくなってきていますので、戦闘に関わるのはここまでになりそうですけれど…。」

「そんな申し訳なさそうな顔をしないでください。それも立派な決断です。僕の所属している駅伝部でも、選手だった人が裏方にまわってチームを支えてくれるおかげで選手は競技を頑張れていますし、僕も彼らへの感謝の気持ちは忘れないようにしています。ですから、どうか胸を張ってください。」

「はい。分かりました。では、そういった形で精いっぱい貢献したいと思います。」

 ターニアは表情を引き締めると、今後は戦闘には直接関わらず、代わりにホイミタンクや金策、そしてお使いやグランマーズからの伝令、宿屋の予約、お料理当番として活動することにした。

 

 その後、彼らはルーラでダーマ神殿に飛んでいき、宿屋の前にやってきた。

 求司が寝泊まりしていた部屋はすでにきれいに整理されており、荷物もしっかりとまとめられていたため、後はそれらを持って外に出るだけの状態だった。

(今まで本当にありがとう。最初は松葉杖状態だったけれど、僕はここまで元気になりました。これからは別の人が使用することになるけれど、どうかその人の安らぎの場になってほしいです。)

 彼は部屋を見渡しながら心の中で語り掛けると、スマートフォンで写真を何枚も撮った。

 そしてカバンや松葉杖などの荷物を持つと、ペコリとお辞儀をして部屋を後にしていき、チェックアウトを済ませてみんなと合流した。

 彼らが宿屋の外に出てくると、求司は思い出深そうな表情をしながら何度も建物に向かってお辞儀をして、バーバラのルーラでその場所に別れを告げた。

 

 彼らの次の、そして求司にとっては最後の目的地はマーズの館で、中に入っていくとそこにはグランマーズが料理の食材をそろえていた。

「おお、お前さん達、よく来たのう。そしてキュウジよ。思い残すことは無くなったかの?」

「はい。足も完治しましたし、バーバラが立派に成長してみんなと仲直り出来たので、これで安心して自分の世界に帰れます。でも、もう少しだけここにいさせてほしいんですが、よろしいでしょうか?」

「もちろんじゃ。わしもそう言うだろうと思って、ここでバーベキューパーティーをしたいと思っておるが、食べていってくれるかの?」

「もちろんです。ありがたくいただいていきます。でもその前に、1つお願いをしてもいいでしょうか?」

「何じゃ?」

「グランマーズさんを含めてみなさんの写真を撮ってもいいでしょうか?僕の記念に残しておきたいので。」

「おお、そうか。それでは、個人で見て楽しむという形なら許可することにしよう。決してお前さん達の世界で流行しているSNSというものに利用するでないぞ。」

「はい。約束します。」

「分かった。では、みんなにも協力してもらうことにしよう。」

 グランマーズはそう言うと、自分を含めて全員が横2列に並ぶことを要請した。

 

 話し合いの結果、並び順は前列右(撮影をする求司にとっては左)から順にホイミン、スラリン、バーバラ、グランマーズ、チャモロ、そして後列はハッサン、ミレーユ、レック、ターニア、アモスという形で整列をした。

「みなさん、どうもありがとうございます。それでは今から2回撮ります。動かないで、そして笑ってください。はい、チーズ。」

 求司はシャッター部分を指でタップし、続けざまに撮影をした。

 彼はその場で画像を確認すると「どうもありがとうございます。」とお礼を言った。

 するとみんなは緊張から解き放たれたこともあって、安どの表情になった。

 

 その後、グランマーズが調理に取り掛かるとそこにターニアとミレーユも加わった。

「あの、僕も野菜を切るくらいのことは手伝いたいんですが、よろしいでしょうか?」

「いや、3人で十分じゃ。お前さんはみんなと残された時間を楽しんでほしい。特にバーバラは少しでも長く一緒にいたいじゃろうからのう。」

「えっ、えっと…。わ、分かりました…。」

 グランマーズにツッコまれた求司は顔を赤らめながらも納得し、みんなと色々会話をしながら屋外でバーベキューをするための火をおこした。

 

 館から食材が運び出されてくると、求司をはじめ、みんなは協力をしながら肉や野菜を火であぶっていった。

 そして焼きあがると塩や(グランマーズがドラクエ3の世界から取り寄せた)黒コショウで味をつけて食べ始めた。

「キュウジ、どう?おいしい?」

「もちろん。生産者の方々が頑張って作ってくれた食材だから、感謝をしながらおいしく食べているよ。」

「それなら良かった。あたしもアンが作ってくれた手巻き寿司、おいしく食べたから。」

 バーバラはお寿司を食べる時に箸が使えず、丸かじりになってしまったが、それでも安奈の気持ちに感謝をしながら食べていたことを思い出していた。

 かたわらではハッサンとアモスが一発芸とばかりにマッチョマンをアピールしているかのような踊りを披露し始めた。

 それは一見するとムサい光景ではあったが、求司は手拍子をしながら盛り上がっていた。

 

 次はバーバラが即興でスカートをヒラヒラさせながら「少しだけよ~」を披露し、スラリンとホイミンを誘ってきた。

 しかし、彼らは至近距離まで来た時にバーバラから(素手で)ビシッと一発を浴びてしまったため、「ハメたな!」と言わんばかりに抗議し始めた。

「ごめんねえ~。それで、君達、見た?」

「えっ?ええっ!?」

「そ、それは、その…。」

 スラリンとホイミンは思わず顔を赤らめ、メダパニ状態になってしまった。

 そして混乱しながら暴れまわった後、事故のような形でAをしてしまった。

「き、気持ち悪い…。」

「頭クラクラする…。」

 正気に戻った彼らは思わず顔が青ざめてしまった(※元から青いですが…)。

「キャハハハ。君達、面白ーい!」

 バーバラは思わず大笑いしながら喜んでいた。

(あれはまさにバーバラの1ミリと言える状況だった。まさにナイスアングル…。)

 求司はまだ目を大きく見開きながらドキドキの状態だった。

 

 続いての出番はレック、ターニア、ミレーユで、レックがギターを弾きながら女性2人が歌を披露という形になった。

 その美しい声にみんなは思わずうっとりしながら聞き入ってしまった。

「おおっ!何だか踊り疲れた俺達も元気になってきたぞおっ!」

「これは多分やすらぎの歌という形で役立ちそうですね。」

 踊り疲れていたハッサンとアモスはうれしそうにマッチョマンのポーズをした。

 さらにスラリンとホイミンのHPも回復したため、これを機にターニアはホイミタンクと合わせて移動中の回復役としての立場を一層確かなものにしていくことになった。

(※やすらぎの歌は6にはない上に、戦闘中にしか使えないというツッコミは受け付けません。あしからず。)

 

 次はチャモロが帽子を取って頭をさらし、「天○飯、技を借りるぜ!」と言わんばかりに太○拳の物まねをした。

 しかしすでに夕方ということもあってか日差しは弱くなっており、誰の目もくらまなかったため、本人にとっては不本意な結果になってしまった。

 

 最後の出番は求司で、彼はスマートフォンの画面を見せながら、高校1年の時に野球の大会に代打で出場したシーンの完コピをした。

 そして初球をバントしてファールになってしまい、悔しがった。

 その後、2球目、3球目をバットを引いて見逃すと、4球目をバスターして打球をたたきつけ、1塁の方向に全力疾走していった。

「キャハハハ。ホントそっくりーっ!よく覚えているわね!」

 画面を見ながらチャンステーマであるアメアメコイコイを踊っていたバーバラは思わず興奮していた。

 

 バーベキューパーティーはとても楽しいものだったが、無情にも次第に辺りは暗くなってきた。

「キュウジよ。まだまだみんなと一緒にいたいとは思うが、もうこの世界で泊まるところがない以上、いよいよ帰る時がやってきたな。」

「グランマーズさん…。そうですね…。覚悟していたとはいえ、やっぱりつらいです。それに…。」

「それに何じゃ?」

「もとの世界に戻ったらこの足がどうなるか心配なんです。確かにバーバラをはじめ、みなさんが呪文を唱えて治してくれましたが、もしその効果が無くなったら、また歩けない状態になってしまうんじゃないかと思えてきまして…。だから、なかなか帰る勇気が持てなくて…。」

「そうか。その世界では呪文の効果が無いから、そればかりはどうしようも出来んのう。じゃが、今日中に送り届けることだけはしなければならん。どうかこれだけは守ってほしいがのう。」

「はい…。」

 さっきまで明るかった求司の表情はどんどん変化していき、両腕はブルブル震えていた。

 すると、ここでバーバラが意を決したのか求司とグランマーズのところに歩み寄ってきた。

「あの、おばあちゃん。あたしも一緒に行っていいかしら?」

「ええっ?」

「何じゃと!?」

 2人は思いもよらないことを聞いて、思わずビックリした。

「お願い!あたしも一緒に行きたいの。」

「でも、バーバラ。僕にもしものことがあってもベホマどころかホイミも唱えられなくなるから、出来ることが無くなってしまうし、それに君はパスポートがない以上、遠くないうちにまた離れ離れになるんだよ。それにその間、経験値や熟練度を得られなくなるから、みんなから遅れを取ることになってしまうし…。」

「でも、一緒に行きたい。たとえ、出来ることが無くてもいい。遅れを取ったっていい。たとえみんなから仲間外れにされようと怖くない。だから、お願い!」

 バーバラは覚悟を決めているのか、引き下がらなかった。 

 すると求司はレック達を見て、彼らに判断を要請した。

「分かったわ。何も気にせずに行ってきていいわよ。」

「ミレーユ、いいの?」

「ええ。私も一旦離脱して復帰した身だから。」

「たとえ僕達からレベル的に遅れを取っても、君をもうあんな目には合わせないから。」

「ああ。だから、キュウジを支えてやってくれ。その間は俺達が何とかするぜ。」

「では、私もベホマやイオラ、ラリホーマで戦闘に関われるようにお願いしてきます。」

 レック、ハッサン、チャモロも覚悟を決めたのか、ミレーユに同意をしてくれた。

 その気持ちはアモス、スラリン、ホイミン、ターニアも同じで、彼らもまたバーバラ不在の穴を埋めるために気合を入れていた。

「分かったわ。みんな、ありがとう。」

 バーバラはみんなの気持ちを受け止めると、深々とお辞儀をしながら感謝をした。

「では、キュウジ。今から世界を移動するためのアイテムを渡すから、バーバラと一緒に行くがよい。このアイテムはあと1往復しか使えんから、お前さんはもう後戻り出来ん。それだけは忘れるでないぞ。」

「はい、分かりました。みなさん、本当にありがとうございます。この世界で過ごした日々は決して忘れません。今までお世話になりました。」

 アイテムを受け取った求司の顔は今にもくしゃくしゃになりそうな状態だった。

「それじゃキュウジ、行きましょう。もし何かあった場合、治療は出来なくても、心の支えになるから。」

「うん、ありがとう。じゃあ、一緒に行こう。」

 求司はバーバラの要求を受け入れると、レック達一同の顔を見た。

(みなさん、お世話になりました。そして、ありがとう、ゲームの世界。決して忘れないからね。)

 彼は足のことを不安に思いながらも、意を決してアイテムを使用した。

 すると、そこから光が満ち溢れていき、彼とバーバラを包み込んでいった。

 その様子をレック達は手を振りながらじっと見つめていた。

 

 果たして求司の足は…。




 次回が最終回です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ドラクエ4のバルザックに転生した(作者:葛轍偲刳)(原作:ドラゴンクエスト)

本文は「AIのべりすと(言語モデル:すぴこさま Ultra)」で生成されています。AI生成物に嫌悪感をお持ちの方はお戻り下さい。▼[ジャンル:ファンタジーゲーム世界転生]▼[舞台:ドラゴンクエスト4]▼[キーワード:原作改変、独自設定、原作キャラ生存、進化の秘法、錬金術師、モンバーバラの姉妹]▼以上の点を許容できるという奇特な御方のみ、どうぞご笑覧ください。…


総合評価:539/評価:7.45/連載:64話/更新日時:2026年07月08日(水) 09:31 小説情報

メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー(作者:斎藤 晃)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

彼女は親子の形を知らぬまま死ぬはずだった。▼彼は母親を知らずして成長するはずだった。▼運命のいたずらにより、不治の病を克服した彼女は、子供たちとともにオラリオでお菓子屋を開いている。▼これは、そんな彼女と子供たちの物語である。▼タイトルロゴをGeminiで作りました。(上部のキャラの影絵は適当です)▼【挿絵表示】▼主人公の1人、メーテリア・クラネルの姿をGe…


総合評価:811/評価:8.4/連載:30話/更新日時:2026年07月06日(月) 09:09 小説情報

うちの庭めっちゃ猫くる。(作者:じゅに)(原作:ポケットモンスター)

シンオウ地方きってのド田舎カンナギタウンで毎日をぼーっと過ごすわたしの家には、でかい庭がある。最近、見慣れないポケモンがくるようになった。


総合評価:4519/評価:8.45/完結:9話/更新日時:2026年04月16日(木) 11:11 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>