「いいよ。確かに僕達の方が年上だけれど、その方が親近感を感じるから。」
「じゃあ、私はニックネームである『アン』って呼んでもらってもいい?」
「いいわよ。じゃあ、早速そうするわ。」
というわけで、読者のみなさん、よろしくお願いします。
バーバラが求司の世界にやってきた翌日。彼女は安奈から服を借りて着た後、タブレットPCの操作方法を教えてもらった。
そしてやり方を覚えると早速動画を開き、その中から10分程度のコメディー作品「そんな、ひどい…」を選んで見始めた。
「キャハハハ。この無限ループ、超面白ーい!思わず笑っちゃうわ!」」
「それは良かったわね。それを見て安心したわ。じゃあ、私は今から出かけるから、求司と留守番お願いね。」
「はーい!分かりました!」
バーバラは仕事に出かける安奈を見送った後、再びPCの前に戻ってきた。
そして勇者とお姫様の不毛な(?)やり取りをもう一度見直し、お腹を抱えて笑っていた。
彼女が次に見たのは映画「ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち」で、オープニングでライアン、アリーナ&クリフト(そしてブライ)、トルネコ、マーニャ&ミネアのショートストーリーが流れた後、女主人公であるソフィアが住む山奥の村のシーンになった。
そして村がピサロ率いるモンスターの部隊に襲撃されてしまい、幼なじみのシンシアがソフィアに変身して「やあやあ、我こそは勇者、ソフィアなり!」と叫びながら単身で戦いに挑んでいく姿が映し出された。
「そんな、ひどい…。シンシアが…。何の罪もない村人達が…。」
バーバラは思わず涙ぐみそうになったが、その後、ソフィアがシンシアのはねぼうしを胸に、炎よりも熱い闘志を燃やしながら村を後にするシーンを見て、今度は胸が熱くなった。
そして、仲間達が集結して頑張る姿を見るうちに「みんな頑張って!」、「ガンガンいくわよ!」、「ここは命を大事にしてね!」と叫びながらすっかり興奮していた。
その頃、求司は別の部屋におり、大学の勉強をしていた。
(バーバラ、ゲームの姿もかわいいけれど、アンの私服を着て普通の女の子として過ごすのもかわいいな。思えば彼女はこれまで戦ってばかりだったから、ここでゆっくりと過ごして体も心も元気になってくれればなあ…。)
彼はここに来て以降、安奈が出かけてしまうと1人ぼっちだったため、聞こえてくるバーバラの声が心のいやしになっていた。
後日。この日は安奈が休みだったため、彼女はレンタカーに乗って家にやってきた。
そして、求司とバーバラと一緒にドライブに出かけることにした。
バーバラは車に乗ること自体が初めてで、最初は乗り方すらも分からずにいたが、求司に教えてもらいながら助手席に座り、安奈にシートベルトの締め方を教えてもらった。
そして求司が後部座席に乗り込むと、安奈は「Here we go!」と言って気合を入れながら車を発進させた。
出発してしばらくの間は町の景色が続いていたが、時間がたつにつれて段々家がまばらになっていった。
やがて、交差点では信号機の代わりにラウンドアバウトの方が目立つようになっていき、日本ではなかなか見られない広々とした景色が広がるようになっていった。
(わあっ!これ、あたしがこれまで住んでいた世界の草原地帯に似ているわね。思えば、このようなところをレック達と一緒に旅してきたっけなあ。)
(アンから話は聞いていたけれど、本当に心が洗われるな。これを見るだけでもここに来た意味があったな。)
バーバラと求司がその光景にすっかり見とれている中、安奈はどこまでも続く一本道をひたすら走り続けた。
やがて高台から海が見える場所にやってくると、安奈は空き地を見つけて車を止めた。
「それじゃ、ちょうどいいところまで来たから、外に出てみる?」
「ここってモンスター出てきたりしないわよね。あたし、聖水持っていないんだけれど。」
「大丈夫よ。ここはゲームの世界とは違うから。」
「本当に?」
「本当よ。」
「じゃあ、何か出てきても、戦わないことにするわ。」
バーバラはまだ半信半疑の状態だったが、素直に安奈に従うことにした。
3人は外に出ると、風に当たりながら海や森、そして集落をじっと見つめていた。
その間、特に大した会話もせず、ただ時間だけが経過している状態だったが、それでも彼らにとっては心休まるひとときだった。
その後、3人は持ってきた昼食を食べた後、再び車に乗り込んであちこち走り回った後、帰り道につくことになった。
その中で、後部座席に並んで座っているバーバラは求司と色々と会話をした。
「あたし、こんなにのんびりとした気分になったの、もしかしたら初めてかもしれない。」
「えっ?本当に?」
「うん。これまで町の外を歩いていれば、いつモンスターとの戦闘になるか分からなかったから、いつも緊張感を持っていたの。それに、戦闘になればみんなと比較されては足手まといになっちゃって、冷たい目で見られたことが何度もあったから、本当に精神的にしんどかったわ。」
「そうか。大変だったんだね。でも、ここは平和な国だし、僕達は君の味方だから、安心してね。」
「ありがとう。そう言ってくれて本当にうれしいわ。」
バーバラはそう言ってにっこりとほほ笑んだ。
すると、求司は思わずドキッとして顔を赤らめた。
一方、運転席にいる安奈は後方にいる2人の会話を聞きながら、うれしそうに運転を続けていた。
夕方。家に到着すると安奈は車を返却しに行き、求司とバーバラは中に入っていくと、再び動画を見ながら過ごすことにした。
その中でバーバラは「キラーマジンガが倒せない」というタイトルの作品に興味を持ったため、それを流すことにした。
すると、求司がその曲を歌いだし、バーバラがつられるように手拍子をしながら盛り上がった。
曲が終わると、今度は求司がそれに対抗するかのように「テドンのボスが倒せない」という曲を流して歌詞を覚えだした。
その後、安奈が夕飯を持って家に戻ってくると、3人はそれらを含む色々な曲を順番に流して盛り上がりながら食事をした。
その日の夜。バーバラは布団の中で横になりながら、色々考え事をしていた。
(これからゲームの世界に戻ったら、どういう転職をしていこうかしら。あたしは元々魔法使いのタイプだから、最初は魔法使いで行こうかと思ったけれど、アンの話ではあたしはメラミの後はイオラを覚えるまでの間、ただステータスが大きく下がるだけになってしまうし…。それよりは求司の治療のために、僧侶一直線で行った方がいいのかしら。)
彼女はすでに眠りに入っている安奈を見た後、そっと目を閉じてゆっくりと眠りに落ちていった。
一方、別の部屋ではやはりベッドで横になっている求司が考え事をしていた。
(もし、僕がゲームの世界に行って僧侶になったら、本当にホイミを習得出来るのかな?そして、この足を治して、再び走れる体になれるかな?でも、ゲームの世界に行ったらモンスターとの真剣勝負もあるだろうから、何か身を守る方法を身につけないとな…。でも、こんな状態では通常攻撃も特技も出来ないし、どうすればいいんだろう…。)
彼は戦闘への不安を感じながらも、家族や安奈、丈二、志朗をはじめとするチームメイトのために、そして自分を気遣ってくれた優勝チームの監督や選手達に元気な姿を見せるために、何としてももう一度走れる体になりたいと考え続けていた。
翌日。3人が朝食をとっている時、バーバラはグランマーズからもらったアイテムを見せて、ゲームの世界に行きたいことを告げた。
「本当に行くつもりなの?」
「うん…。今のままではやっぱり悔しいし、絶対に強くなってあたしを戦力外にしたみんなを見返したいけれど、ここにいるままでは遅れを取るばかりだから。」
「そう…。ちょっと寂しいけれど、あなたはゲームの世界の人である以上、いつまでもここにいるわけにはいかないものね。」
「それにしても、君はいつでも戻れる状態だったにも関わらず、今までそれを使わずにいたんだね。」
「うん。この世界は平和だし、アンも求司も優しいから、ここで普通の女の子として過ごすのもいいなって思っていたの。でも、この世界では呪文を覚えることも、呪文を唱えることも出来ないから、足を治すには求司も一緒にあたしの世界に行かなければいけないし、どうすればいいのかずっと考えていたのよ。」
「君は本当にホイミを覚えて、僕の役に立ちたいんだね。」
「だって、求司がいなかったら、あたしはあのまま行き倒れになっていたような気がするから。だから、何とかして恩返しをしたいって思っているの。でも、ケガをしている求司をあたしの世界に連れていって、危険な目にあわせるわけにもいかないし…。」
「確かに、僕はとても戦闘で役に立てる状態ではないから、ゲームの世界に行っても足を引っ張りそうな気がしているんだよね。」
「それなら、これから一緒に対策を考えていきましょう。転職解禁後は色々な呪文や特技を身に着けられるから、工夫次第できっと役に立てるわよ。」
安奈はバーバラと求司に笑顔で声をかけた。
それを受けて、3人はみんなで情報集めをしていくことにした。
その後、求司はインターネットなどで集めた情報を片っ端にスマートフォンにダウンロードしていき、バーバラは荷物を色々まとめてリュックに詰め込んでいった。
一方、安奈は仕事帰りにシリアルバーをはじめとする携帯食料に加えて、太陽光でスマートフォンを充電するためのモバイルバッテリーを買ってきてくれた。
「これだけ準備をすれば、ひとまず何とかなりそうね。後はお金や住む場所を確保しなければならないけれど、それはバーバラにお願いしてもいい?」
「うんっ!あたしはすでに色んな場所に行ったことがあるから、その点は何とかするわ。」
「そう。それを聞いて安心したわ。どうか、求司をお願いね。彼が元気な姿になって無事に戻ってくることを願っているわ。」
「任せといて。アンもどうか元気に過ごしてね。そして志朗っていうボーイフレンドの人と仲良くやり取りしてね。」
「コラッ!こんなところで雰囲気を壊さないの!」
バーバラのツッコミを受けて、安奈は思わず赤面した。
そしてその後、いよいよバーバラが求司を連れてゲームの世界に行く時がやってきた。
2人は玄関から外に出ると、先に外に出ていた安奈にあいさつをした。
「アン、これまであたしに色々なことを教えてくれてありがとう。必ず強くなって、求司の役に立ってみせるからね。」
「僕もアンをはじめ、家族や監督、風口先輩をはじめとするチームメイトのみんなから教わったことを思い出して、頑張ります。」
「頑張ってね。私も君達のことを応援しているから。そしてバーバラ、どうか求司を守ってあげてね。約束よ。」
「分かったわ。必ず約束を守ってみせるから。そして、求司を無事にこの世界に送り届けるから、心配しないで。」
「じゃあ、指切りしましょ。」
「そうしましょっ!」
すっかり親友の関係になっていた安奈とバーバラは、お互い笑顔を見せながら指切りをした。
(さあ、いよいよ僕が本当にゲームの世界に行くんだ。正直、自分のMPがどれくらいあるのかも分からないけれど、何としてもホイミを覚えて、この足を治してやる。仮に向こうの世界で足が治ったとしてもここに戻ってきたらどうなるのかは分からないけれど、やってみるしかない!)
求司は不安や緊張感とたたかいながら、懸命に自分に気合を入れた。
そしてバーバラはいよいよ袋から異世界移動するためのアイテムを取り出すと、求司のすぐ横で高く掲げた。
するとそのアイテムは彼女の気持ちに呼応したかのように輝きだし、2人を光で包み込んだ。
(求司、きっと無事に戻ってきてね。たとえ足が治らなかったとしても、ここに帰ってきてくれることが一番の喜びなんだから。)
安奈は光が消えて、2人の姿が完全に見えなくなるまで、じっと一点を見つめ続けた。
そして彼らがゲームの世界に移動していった後、気持ちを切り替えて仕事へと向かっていった。
作中でバーバラ達が聞いていた「キラーマジンガが倒せない」と「テドンのボスが倒せない」の歌詞は次の通りです。
キラーマジンガが倒せない
気が付いたら 同じ面ばかりプレイ
そして いつも同じ敵にKO
あきらめずに 海底宝物庫に挑戦するけど
すぐに 返り討ちになる
グリンガムのムチがあれば バーバラを強化できるけど
何回やっても 何回やっても
キラーマジンガが倒せないよ
あの攻撃 何回受けても 半端ない
職業解除で 木の実を食べても ワンパンされて OH NO!
せいけん突きも試してみたけど 先制されては 意味が無い
だから 次は絶対勝つために 僕はカルベローナに まずは行っておく
気が付いたら 伝説の装備がそろった
そして次は ヘルクラウド城に行く
あきらめずに デュランに面会しに行くけれども
アレを見るたび ビビる
最初のバトルを勝てば 楽に次の相手に勝てるけど
何回やっても 何回やっても
あのコンビが倒せないよ
あの攻撃 何回受けても 半端ない
スクルトで こちらは応戦するけど ワンパンされて OH NO!
星降る腕輪で マダンテしたけど 身代わりされたら 意味が無い
だから 次は絶対勝つために 僕はメダパニダンスを まずは使用する
グリンガムのムチがあれば バーバラを強化できるけど
何回やっても 何回やっても
キラーマジンガが倒せないよ
あの攻撃 何回受けても 半端ない
仁王立ちで 仲間を守ってみたけど ワンパンされて OH NO!
きせきの剣と 力のルビーも 一体だけでは 意味が無い
だから 次は絶対勝つために 僕は主バの愛の力で 挑んでく
ギガスラッシューーーッ!!!
くらえ マダンテーーーッ!!!
テドンのボスが倒せない
気が付いたら 最後のカギを入手だ
そして 夜に テドンへと向かう
あきらめずに グリーンオーブをもらいに行くけど
やっぱり戦闘になる
攻略サイトを見れば 何が弱点なのか分かるけど
何回やっても 何回やっても
テドンのボスが倒せないよ
よみのばんにん ブリザード似てて マジ怖い
HP高いし 眠らせてくるし ザキに バギマに かまいたち
グループ攻撃 試してみたけど 単体だけでは意味がない
だから 次は絶対勝つために まもの使いの特技をガンガン使ってく
気が付いたら 動ける仲間が減ってく
そして セーブしたところから Try Again
あきらめずに イオラやハメ攻撃 試してみるけど
高耐性に引っ掛かる
ネクロゴンドの前に 5つのオーブ ほしいけど
何回やっても 何回やっても
テドンのボスが倒せないよ
あのファントム 小さい割に タフネス
イオに マヒに 不気味な光に こいつも仲間を呼び出す
バイキルトも試してみたけど ザキ マヒかかれば意味がない
だから 次は絶対勝つために 命の石と キアリク準備する
攻略サイトを見れば 何が弱点なのか分かるけど
何回やっても 何回やっても
テドンのボスが倒せないよ
よみのばんにん ブリザード似てて マジ怖い
HP高いし 眠らせてくるし ザキに バギマに かまいたち
やっとの思いで数を減らせど 仲間を呼ばれりゃ意味がない
だから 次は絶対勝つために ここは被害者覚悟で 根性プレイする
倒せないよ