あたし、ツインテールをまもります。   作:シュイダー

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またもお待たせしてしまいました。
ダイジェストに肉付けしていったらまた大幅に増えたため、上下に分割して投稿させていただきます。

八月八日に新作の短編を投稿しております。またも俺ツイです。短編というより小ネタのようなものですが、よろしければご覧ください。
 


2-2-上 双房部設立

 教室を目指して、愛香とともに学校の廊下を静かに進む。すでに一時間目の授業がはじまっているためだ。なるべく大きな音を立てないように、しかし早足で急ぐ。少しして、総二たちの教室に着いた。

 当然のことながら、中からは授業をしている教師の声が聞こえた。この雰囲気のなか扉を開けて入るのは、正直なところかなり抵抗があった。総二は朝に弱く、寝坊する時もあったが、そんな時は愛香に起こされていたため、遅刻したことはなかったのだ。

 ふり返って愛香と頷き合うと、覚悟を決めて扉にかけた手に力をこめ、あまり音が立たないようにゆっくりと扉を開ける。

「し、失礼します」

「ち、遅刻してすいません」

 二人でそう言いながら教室に入ると、中に居た全員の視線がこちらにむいた。珍しいものを見るような視線の群れに少したじろぐが扉を閉め、授業をしていた樽井教諭のそばに近づく。なぜか女子たちは全員、愉しそうにニヤニヤしていた。

 いつも通りの間延びした声で、樽井教諭が声をかけてきた。

「遅刻ですよ、二人とも~」

『す、すいません』

「ま~、いいですけどね~。今後は気をつけるようにしてくださいね~」

「は、はい」

「き、気をつけます」

 総二と愛香が同時に謝り、返ってきた樽井教諭の言葉にホッとひと息つく。

「それで~、どうして遅刻したんですか?」

「えっ」

「あ、えっと」

 当然といえば当然の質問だろうが、アルティメギルと戦っていました、などと言えるわけがない。適当な理由を考えていなかったことに気づき、総二が声を漏らしたところで、愛香が慌てて声を上げた。

「その、ですね」

 上げるが、なぜか愛香は途中で顔を赤らめ、モジモジしながら総二の顔を見る。可愛いな、と場違いなことを総二が考えたところで、男子の何割かがなにかに気づいた様子を見せ、女子勢はさらにニヤニヤと笑みを深くした。

 なんなんだ、と総二が思ったところで、朝の出来事がふと頭をよぎった。アルティメギルと戦ったことではなくその前の、愛香に告白しようとしたことだ。

「っ」

 顔が熱くなり、口元を手で隠す。愛香が赤くなっているのも、同じことを考えてしまったからかもしれないと総二は思った。

「ああ~、わかりました。それじゃ~、二人とも席についてください~」

「えっ?」

「い、いいんですか?」

「あー、はい。だいたいわかりましたから」

『へっ?』

 樽井教諭の言葉に、総二が愛香と同時に間の抜けた声を漏らすと、彼女は教壇から、席に着いた生徒たちを見渡した。

「え~とですね~。皆さんも高校生になったことですし、異性に興味を持つお年頃だと思います。ただですね~、節度あるお付き合いをするように心がけてくださいね~。なにかあると面倒なので~」

『ちょっ!?』

 樽井教諭の言葉に、総二が愛香とともに慌てて声を上げるが、やはり彼女はどこ吹く風であった。樽井教諭はそのまま言葉を続ける。

「不純異性交遊は駄目ですからね~」

「ふ、不純じゃないですよ!」

「そ、そーじっ?」

「はっ!?」

「ま~、なんでもいいですけど~、席に着いてくださいね~」

 反射的に言い返してしまったところで、総二は我に返った。さっきよりも顔を赤くしながらも嬉しそうな愛香に、おおー、と感心するような声を上げる男子生徒たち、そしてなにやら親指を立て、サムズアップしてくる女子たちの姿が眼に入る。

 あとでからかわれるんだろうな、といろいろ複雑な気持ちになりながら、総二は愛香とともにそれぞれの席にむかった。

 

 ふう、と総二は息を吐いた。いまはもう放課後である。

 総二には友だちと言えるほど仲のいいクラスメイトはいないため、積極的になにかを言ってくる者はいなかったが、ツインテール部設立の手続きや、部室予定の部屋の掃除など、休み時間のたびに愛香と行動していたこともあって、ニヤニヤとからかうような笑みを浮かべてくる者はいた。愛香の方は、友だちから普通にからかわれ、恥ずかしそうではあったが、やはり嬉しそうに応答していた。

 総二も、愛香との仲をからかわれること自体は嫌ではない。ただ、恥ずかしくはあった。

「じゃあねー、愛香」

「うん。じゃあ、またね」

「観束君もバイバーイ」

「あ、ああ。さよなら」

「じゃあなー、観束」

「お、おう」

「観束君。これからワクワクもんだねっ?」

「先生が言ってた通り、ほどほどにしときなさいよ?」

「そうそう、節度は守れよー」

「やりすぎるなよー?」

「爆発しろ」

「砕けろ」

「神罰です」

「いっぺん死んでこいっ!」

「調子こいてんじゃねーぞコラァ!」

「ブルゥアァァァァァァァァァ!!」

「言っとくけど誤解だからな!?」

 時々からかっていく生徒もいるが、次々とクラスメイトたちが教室から去っていく。からかうと言っていいのかわからない言葉を残していく者もいたがそれはともかくとして、しばらく経ったところで、教室に居るのは総二と愛香だけになった。

 これからツインテール部の部室にむかうわけだが、トゥアールも学校内の見学を兼ねて合流する予定だった。しかし、どこで合流するかは決めていなかった。そういえば、やるべきことがあると言っていたが、なんなのだろうか。

 帰りのホームルームが終わる時間は伝えてあるため、何事もなければこちらに来ているはずなのだが。

「とりあえず、トゥアールを待つ?」

「うーん。そうだな、一旦玄関に行ってみるか?」

「そ、その必要は、ありません」

「ん、トゥアール、来てたのか。――――ん?」

 現れたトゥアールは、教室の扉にしがみつくような姿だった。どこか元気が無いように見えた。

「どうしたの。なんかふらついて、っ!?」

「トゥアール!?」

 愛香の言葉の途中でトゥアールが、扉にもたれかかるようにしてゆっくりと倒れた。慌てて駆け寄り、抱き起こす。

「トゥアール、どうし、っ!?」

 手が、冷たかった。まるですべての生命力を吸い取られたかのように、生気が感じられなかった。

 いったいなにが、彼女の身に起こったというのか。

 トゥアールが、力のない声を漏らした。

「総二様、愛香さん」

「トゥアール、しっかりしろ!」

「なにがあったの、トゥアール!?」

「流し斬りが完全にはいったのに」

「マジでなにがあった!?」

「――――グフッ」

「トゥアールッ!?」

「トゥアールーーーーーーッ!!」

 力をなくしたトゥアールの手が、総二の手からこぼれ落ちた。

 

 ひとつの部屋の前で、立ち止まった。

「この部屋ですか、総二様?」

「ああ。ここがツインテール部の部室だよ、トゥアール」

 トゥアールからの質問に、総二は頷いて返した。

 あのあと少ししてから、トゥアールが例のごとく何事もなかったかのように復活し、三人でここに来たのだ。なにがあったのか訊きはしたのだが、ア、ウ、オ、とだけしか答えてくれないこともあって、追求はあきらめた。知らなくていい理由が返ってきそうな気がしたというのもあるが。

 あんなふらついていて誰かに止められなかったのか、とトゥアールに尋ねたが、来る途中は、認識攪乱装置(イマジンチャフ)を使ったうえでダンボール箱を被っていたため、特に見咎められることはなかった、という答えが返ってきた。ダンボールはむしろ目立つだろうとちょっと思ったが、なぜか有無を言わさぬ説得力を感じ、不思議と納得してしまった。

「とりあえず、あれ付けてみたら、そーじ?」

「おう、そうだな」

 愛香に答えると、総二は鞄から『ツインテール部』という文字が書かれたプレートを取り出した。昼休みに技術工作室を利用して、総二が自作したプレートだ。

 プレートに彫られた『ツインテール部』という文字をなんとなく指でなぞると、不思議と高揚感のようなものが湧いてくるのを感じた。明朝体で描かれたその文字は、思わず姿勢を正してしまいそうな、厳かな雰囲気を醸し出しているように思えた。

 ゴシック体で『ツインテール部』と書かれていたら、むしろ可愛らしさを感じるんだろうな、などととりとめもないことを考えながら、掛かっていた無地のルームプレートと差し替える。不思議と、感慨深いものが総二の胸に湧き上がった。

 扉を開け、中に入る。

 へえ、と感心するようなトゥアールの声が、総二の耳に届いた。

「ピカピカですねー」

「休み時間のたびに、愛香と二人で掃除してたからな」

 続いて入ってきたトゥアールの言葉に答え、窓の近くに移動すると、ふりむいて部屋の中を見渡す。

 ホワイトボード、スチールの本棚、長テーブルに折り畳み式のパイプ椅子、ロッカーという文化部として必要最低限の設備ぐらいだが、壁や床と併せて、ピカピカである。

「ツインテールを守り、世界を守る。これが俺たち、『ツインテール部』の活動だ。二人とも、一緒にがんばろうぜ」

「頼りにしてるからね、そーじ。それと、トゥアールもね」

「ええ。私自身が戦うことはできませんが、お二人が全力で戦えるよう、精一杯サポートさせていただきます」

 決意を新たに三人で頷き合う。総二の戦う理由は、愛香を守るというものもあるが、それはここで出すことではないと思うため、あえて言わない。

 それはそうと、今後のためにやっておかなければならないことがあった。

「トゥアール。頼みたいことがあるんだけど、いいかな?」

「わかりました。世界を守るために私、脱ぎます!!」

 なにやら悲痛さと悦びがないまぜになったような声を上げるトゥアールの手を愛香が取り、流れるような動きで彼女を床に叩きつけた。ダンボール箱を被り、バンダナと眼帯をつけた男の姿がなぜか見えた気がした。

「頼みってなに、そーじ?」

「とりあえず愛香は、もう少し落ち着いて生きてくれないか?」

「も、もっと、言ってやって、ください。自分の胸のように、慎ましく、平穏に生きろ、と」

 シンプルな投げ技ではあったが、ダメージはかなりのものだったのか、トゥアールがピクピクと痙攣しながら賛同した。

 ふう、と総二は息を吐き、立ち上がったトゥアールにさっきの話の続きを行う。

「えーと。それでさ、トゥアール。この部室を、うちの地下基地みたいに改造できないかな。基地に直行できる転送装置とか、ほかにもいろいろと必要になると思うんだ。あと、床をもう少し柔らかい素材にしておいた方がいいと思う」

 トゥアールの命に関わる問題だ。彼女のタフネスを考えれば必要ないような気がしないでもないが、やっておくに越したことはないだろう。

「そうですねっ。お心遣いありがとうございます、総二様。防犯設備の重要性を強く認識したところです。対蛮族用の地雷なども作っておきましょう!」

「そこで攻撃も考えるのか」

 防御だけにとどまらず反撃も考えるあたり、愛香と一緒で負けず嫌いだよなあと、互いに不敵な笑みを浮かべる愛香とトゥアールを見ながら、総二は思った。

 

 愛香と一緒に廊下の壁にもたれかかり、トゥアールによる部室の改装、もとい改造工事が終わるのを待つ。一時間もかからずに終わるらしい。

 そのくらいでいいのか、と総二はちょっと思ったが、あの地下基地をひと晩で完成させたのだ。朝、少しだけ説明してもらったのだが、あの規模のものがひと晩で終わるのなら、部屋ひとつぐらい簡単なものなのだろう、と考え直した。

 問題は、中には決して入らないでください、覗き見もいけません、と釘を刺されたことだった。

 まさかと思ったが、昨晩と同様に奇妙な、音というか声のようなものが、しばらくしてから響いてきた。

 ――ぐろろーっ。

 ――ふんーっ。

 ――つあーっ。

 ――もがーっ。

 ――てははーっ。

 ――はわーっ。

 ――しゃばばーっ。

 ――ぎらぎらーっ。

 ――からからーっ。

 ――にゃがーっ。

 ――エ・ゾ・ゲ・マ・ツ~。

「最後のなに!?」

「なんだろうなあ」

 気になるのは最後のだけではないが、ほかのと比べて浮いていたためだろう、愛香が声を上げた。総二も答えを知ってるわけではないため、なんとなく遠くを見ながら静かに答える。数十億年に渡って完璧を目指し鍛え続けた超人たちが作業しているのだろうか、などとよくわからないことが思い浮かんだ。最後のは、世界のどこかに生息しているという謎の植物の鳴き声かもしれない、とさらにわけのわからないことが浮かんだが。

 愛香が壁から離れ、扉に手をかけようとした。慌てて声をかける。

「愛香、覗くなって言われたろ?」

「だって、そーじは気にならないの?」

「いや、まあ、気にはなるけどさ。世の中、知らなくていいことはあると思う」

 不服そうな顔をむけてくる愛香と見つめ合うと、ふう、と同時にため息を吐き、再び壁にもたれかかる。愛香が、ふと思いついたように口を開いた。

「そーいえばさ。こんな時期なのに、よくこんな立派な部室が残ってたわね」

「あー」

 陽月学園はマンモス校ではあるが、敷地が無限にあるわけではない。五月も目前で、しかもたった三人だけの新設部だというのに、こんないい部室を宛てがわれれば疑問にも思うだろう。

 言っていいものかどうか迷うのだが、なにかしら起こるかもしれないことを考えれば、伝えておいたほうがいいだろう、と観念するような心持ちで総二は口を開く。

「いや、なんかこの部屋、『出る』らしいんだよ」

「は?」

「幽霊の目撃情報が絶えなかったらしくてさ、いままで閉鎖されてたんだと。女子生徒が昔自殺したとか、いろいろ噂はあるらしいけど」

「はじめて聞いたわよ、そんな話!? なんでそんないわくつき物件がいまさら解放されたのよ!?」

「あー、そのな。部員に愛香がいることを確認した先生が、津辺さんがいるなら大丈夫ですね~、って」

「あの担任、あたしをなんだと思ってんのよ!?」

 マイペースで細かいことを気にしないため、頼み事の類に関してはいろいろな意味で助かる樽井教諭を思い出し、答える。教師としてどうなんだ、それ、と思わなくもないが。

 樽井教諭の言葉を聞き、愛香をなんだと思ってるんだ、と思うと同時に納得してしまったがそれはともかく、怒りの声を上げた愛香を説得するため、言葉を紡ぐ。

「愛香。エレメリアンってのは、心の力が実体化した存在だよな?」

「なによ、いきなり?」

 総二の言葉に唐突なものを感じたのだろう、愛香が訝しんだ。ちょっと無理があるかもなあ、と思いつつも言葉を続ける。

「幽霊っていうのも、心やら魂やらが残って出てくるものって言われてるだろ。そう考えれば、エレメリアンも幽霊のお仲間みたいなもんだ。そいつらと戦ってる俺たちが、いまさらなにを怖がる必要があるんだよ」

「エレメリアンはぶん殴れるけど、幽霊は殴れないでしょーが」

「――――そこが問題なのか?」

「殴れるんならどうにかできるかもしれないけど、殴れなかったらどうしようもないでしょ?」

「まあ、そう、かな?」

 間違ってはいないかもしれないが、拳で解決できれば問題ないという理屈を女の子が言うのはどうなんだろうかと思わなくもない。そういえば、愛香がいままでなにかに怖がっていることがあっただろうか。

 そう考えたところで、フォクスギルディとの戦いがあった日のことがふと頭に浮かんだ。総二に嫌われてしまうんじゃないか、と愛香は怖がっていたではないか。

「そーじ」

「っ?」

 それを思い出したところで、顔を赤らめた愛香が上目遣いにこちらを見つめていた。鼓動が跳ね上がり、自分の顔が熱くなったのを総二は感じた。

「えっと、幽霊が出たら、守ってよね」

「お、おう。任せ」

「完成しましたよー」

 総二の言葉が、扉越しのトゥアールの声に遮られた。あらゆる意味でタイミングが悪かった。

 ふう、と二人で揃ってため息を吐き、部室に入る。

「これで、カモフラージュは完璧です!」

 得意げなトゥアールの言葉を聞き、改めて室内を見渡す。

 ホワイトボード、スチールの本棚、長テーブルに折り畳み式のパイプ椅子、ロッカーに、ピカピカの床と壁。さっきまでとなんら変わりないように見えるが、すべてトゥアールの超科学で改造したということだった。

「なんで、改造してるとこ見せてくれなかったのよ?」

「それは、秘密です」

 不服そうな愛香の言葉にトゥアールが、人差し指をピンと立ててウインクしながら返した。おかっぱ頭の男の姿が見えた気がしたのはなぜだろうか。

 その仕草が気に障ったのか、愛香が顔を顰めた。とはいえ、さすがに殴ったりすることはなく、またもため息を吐く。

「代わりと言ってはなんですが、この部屋の機能をひとつお見せします。愛香さん、その椅子に座ってみてください」

「これ?」

「はい」

 トゥアールの示す、肘掛け付きの椅子に愛香が座ったところで、トゥアールが自身のブラウスのボタンを外し、胸の谷間からリモコンを取り出した。

「なんで、普通にポケットに入れないんだ?」

「基本ですから」

「――――そうか」

 なんの基本なんだ。そう思わなくもないが、求める答えは返ってきそうにないため、総二はそれで自分を納得させる。愛香は、殺気にも似た気を放っているようにも見えたが、椅子から立つことはしなかった。いまは好奇心の方が勝っているのかもしれない。

 カチッというリモコンを操作した音が聞こえたところで、プロジェクターで投影されるように壁に映像が現れた。映像には、砂漠らしきところとピラミッドのようなものが映っていた。

「あ、間違えました」

「えっ」

「ちょっ」

 トゥアールがリモコンを操作し、映像を消す。なにやらピラミッドの半分が崩れはじめていた気がしたため、やたら気になるのだが。

 総二たちの反応を気に留めず、再びトゥアールがリモコンを操作する。その直後、愛香の座っていた椅子の脚が、床から出てきたトラバサミのようなもので固定された。同時に、肘掛けの横側からせり出してきた手枷に愛香の手首が拘束され、天井から降ってきた首輪が、意思を持っているかのように動いて彼女の首に嵌まった。首輪からは、鎖らしきものが天井にむかって伸びていた。

 愛香が眉を顰め、冷めた視線をトゥアールにむけた。

「なんのつもり、トゥアール?」

「かーっかっかっかっかっかっ!」

 愛香の冷たい声に、腕組みをしたトゥアールが高笑いを上げた。トゥアールに顔が三面あったら、みんな笑い面になってたかもしれない、などと意味のわからないことが思い浮かぶ。

「好奇心は猫を殺すとはよく言ったものですね。油断大敵ですよ、愛香さん。いまのあなたは、蜘蛛の巣に捕らえられたようなもの。その状態では脱出など不可能でしょう。これがアンチアイカシステム二号、アイカトラエールです!」

「二号?」

「はい、二号です、総二様。一号は、この熱線銃です!」

 なんとなく気になったことを総二が問いかけると、トゥアールが言葉とともに白衣のポケットから拳銃らしきものを取り出した。それは胸からじゃないんだな、などと頭に浮かんだが、とにかく愛香を助けるために動こうとしたところで、その愛香から視線をむけられ、総二は動きを止めた。手出し無用と言われた気がしたからだ。それを肯定するかのように、愛香が深く息を吸いはじめた。

 トゥアールが、銃を持たない方の手を愛香にむけた。掌を上にむけた手とか彼女の仕草やポーズは、どこか優雅さを感じるものがあり、なぜかどこかのプリンセスを思わせた。

「さあ、お覚悟決め」

「ふんっ!!」

「なさ、い?」

 トゥアールの言葉の途中で愛香が気合の声を上げ、両手を胸の前で交差させるように振り抜く。頑丈そうに見えた手枷が、椅子の肘掛けから引きちぎられるかたちで、たやすく破壊されていた。トゥアールは呆然と言葉を止める。

 愛香が自分の首に嵌められた首輪に手をかけ、トゥアールが慌てた様子で声を上げた。

「そ、その首輪は引きちぎれませんよっ。この鍵がなければ」

「はああああああーっ!」

 少し手こずったようだったが、さっき以上の気合の声を上げた愛香によって、首輪が引きちぎられた。鎖で繋がれた若き女獅子は、自力でそれを解き放ったようだった。変身しなかったのは、愛香自身のポリシーとかプライドといったものなのだろう。

 白衣のポケットから鍵らしきものを取り出していたトゥアールは、顔を引きつらせていた。

 愛香が立ち上がり、トゥアールに笑顔をむける。眼が笑っていない。手首に残っていた手枷を愛香が無言で引きちぎり、床に放り捨てた。

 恐怖に負けたのか、トゥアールが銃を愛香に突きつけた。

「ファ、ファイヤー!」

「なにこれ弱い」

「ゲェーッ!? 片手で受け止めたーっ!?」

「はぁっ!」

ANGYAAAAH(アンギャアアアアー)!?」

 愛香が間髪入れず放った手刀によって熱線もろとも銃まで切り裂かれ、トゥアールが驚愕の叫びを上げた。

 ふん、と愛香が鼻を鳴らした。

「おっぱいの谷間から取り出したリモコンなんかで、あたしを捕らえられると思ってたの?」

 愛香の視線が、トゥアールの胸の谷間に集中していた。その眼には、憎しみだとか渇望だとか、いろいろと複雑な感情があるように思えた。

 愛香の視線に気づいたのか、トゥアールが胸元を隠して恥ずかしそうに横をむく。

 そして躰をくねらせたトゥアールが、顔だけ愛香の方にむけた。

「んもう。愛香さん、エッチだぞっ」

 軽い調子で言葉を放ったトゥアールの顔面に愛香から両の拳が叩きこまれ、トゥアールは盛大に打ち上げられた。

 

 少し経って回復したトゥアールが、宅配ピザくらいの大きさの箱を白衣のポケットから取り出した。どうやって入れていたんだと思わなくもないが、いままでもいろいろと取り出していたため、特にツッコミはしない。

 さすがにそのサイズだと胸の谷間に挟めないようね、となぜか勝ち誇る愛香に、負け犬おっぱいの言葉を優しく受け止めるのも、胸の大きな者の務めだとトゥアールが軽くいなし、そのあと彼女の口から出た高貴なる乳の義務(ノブレス・オブリージュ)なる言葉に総二がなんとなく感心し、同時に愛香が悔しそうに唇から血を流していたが、それは置いておく。

 その箱から取り出されたのは、スマートフォンを思わせる長方形のガジェット。赤、青、白がひとつずつの計三つ。ツインテイルズ用のツールで、三人分用意したとのことだった。

 三人揃ってツインテイルズだ、と総二が言った言葉を憶えてくれていたのだろうか。トゥアールの言葉にそう考え、嬉しくなったところで、トゥアールの説明が続けられる。

 高性能通信端末、その名はトゥアルフォン。

 自分の名前を付けて恥ずかしくないのか、という愛香の言葉に、まったく全然これっぽっちも、と言葉通りまったく恥じる様子を見せないトゥアールの答えに愛香が押し黙った。アンチアイカ、トゥアルフォンときたことから、そのうち総二の名前を冠したなにかも作られるのだろうかとちょっと思ったがそれはともかく、地下、深海、宇宙、あらゆるところでも圏外にならず、変声機能、成分分析機能、そのほかにもさまざまな機能を持ち、さらに機能を追加する予定だという。

 テイルギアといい、なんで宇宙での使用を想定しているのだろうかと思ったが、基本ですから、という答えあたりが返ってきそうな気がしたため、やはりツッコミはしなかった。とりあえず、ツインテール力学に(もと)づいて、宇宙空間におけるツインテールの動きでも空想(シミュレート)してみようか、などと総二は思った。

 白いトゥアルフォンを手に取ったトゥアールが、その機能のひとつを説明しはじめる。さっき話した変声機能のことだった。

 テイルブレスを介しての通信は、周りに人がいるところでは怪しまれる可能性がある。トゥアルフォンの変声機能とは、認識攪乱装置(イマジンチャフ)の穴のひとつであった『声』をカバーする機能であり、リアルタイムで通話内容を暗号化することができるというものだった。

「それはすごいな」

「えっと、どういうこと?」

 機械が苦手な愛香が首を傾げ、トゥアールが口を開く。

「簡単に言えばですね、周りの人たちには別の言葉に聞こえるんですよ。例えばトゥアルフォンを使って総二様が、アルティメギルが現れたって? と言ったとします。その声は、トゥアルフォンで受ける私たちにはちゃんと届きますが、周りの人たちには、今日の夕飯なに? といったように聞こえるんです」

「へえー」

 馬鹿にした様子はなく、どこか楽しそうに行われるトゥアールの説明に、愛香も素直に感心する。昨日も、テイルギアの説明をしてる時のトゥアールは不思議と楽しそうだった。こういった、なにかを説明するという行為が好きなのかもしれない、と総二はなんとなく思った。

 それはそうと、これは非常に助かる機能だった。極端なことを言えば、人ごみの中でもツインテイルズとしての連絡ができるということなのだから。

「助かるよ、トゥアール」

「その機能ってどうやって使うの?」

「百聞は一見に如かず。実演してみましょうか。といいましても、通話の基本操作は普通のスマフォと同じです。総二様、私にかけてくれますか?」

「あ、ああ。じゃあ、かけるよ?」

「はいっ。たっ~ぷりかけてください!」

「あんたねぇ」

 変な色気を感じるトゥアールの声に総二が戸惑いながら返すと、彼女は嬉々として答えてくる。愛香がどこか苛立ったように反応したことから、彼女も妙なものを感じたのかもしれない。下手にツッコむと藪蛇になりそうな気がしたため、そのまま続ける。

 アルティメギルが出たって、と総二が問いかけ、トゥアールからは、急いで出撃してください、と返してもらう。それが愛香にどう聞こえるか。

 結果は、なんと言っていいものか悩むものだった。トゥアルフォンからではなく、トゥアールの方から聞こえてきた音声が、控えめに言っても痴女のものであり、愛香に教えてもらった総二の音声が、ツインテールツインテールツインテールとくり返すという、愛香曰く古代ツインテール語だったからだ。

 大学などにそういったものがあれば、総二としては専攻してみたいものであるがそれはそれとして、トゥアールのものも含め、これでは逆に周囲の注目を集めてしまうだろうと思わざるを得ない。トゥアールが言うには、個人の属性やこだわりが反映され、その人が言っても違和感がない言葉が出てくるとのことだった。違和感がないことが、注目を集めないこととイコールではないという好例と言えた。

 続けて、総二から愛香にかけることにした。違和感のない言葉が出てくるというのであれば、愛香が使ったら、そーじ大好き、とか出てきてくれるのだろうか、などとふと思い浮かび、恥ずかしくなると同時に密かに期待する自分がいた。

 結果は、いろいろヒドかった。蛮族だった。ビッチだった。

「バッチリです。違和感なく再現されてます!」

 いや、違和感しかないだろ、愛香は一途だろ、と総二は思った。しかしこの音声を教えたら、再び惨劇が幕を開けるのではないだろうか。

「ほう、どれどれ」

「えっ」

「ん?」

 愛香が自分の携帯を取り出し、操作しはじめた。ふと総二は、前に愛香から録音機能の使い方を訊かれたことを思い出した。

「あの、愛香さん。なにを」

『ゲハハハハハ! 生肉が食いてええええええ! 生がいいんだよ、生がぁーっ! 生が好きなのさ、あたしはぁっ! なんでってぇ? ビッチだからぁっ!』

「うりゃあああーーーっ!!」

「トゥアルフォーーンッ!?」

 携帯から再生された音声を聞いて、愛香がトゥアルフォンを全力でぶん投げた。壁にトゥアルフォンが激突し、大きな音が室内に響く。

「バージョンアップし続けることで、いつかテイルブレスと連動して変身携帯になるはずだったのにーっ!」

「なにが変身携帯よっ、略してヘンタイじゃない!」

「その発言はいろいろ問題だと思うぞ、愛香」

 言いながら、床に転がったトゥアルフォンを拾い上げる。少し操作してみるが、普通に動くようだった。図らずも、部屋とトゥアルフォンの耐久テストができたのかもしれない。

「っていっても、せっかく作ってもらった物に対する扱いじゃないだろ、愛香。音声変換のところだけ変えてもらえばいいじゃないか」

「あんたは自分の好きな言語だからそう言えるのよ。あたしの聞いたでしょ?」

「愛香がビッチなんかじゃないことは、俺が一番知ってる」

「えっ?」

「あっ」

 愛香が顔を赤らめ、総二も気恥ずかしさを覚えた。

 しまったーっ、とトゥアールが頭を抱えて声を上げているが、とりあえず放っておく。トゥアルフォンを愛香に渡し、口を開こうとしたところで、緩やかになにかが躰を貫くような感覚が総二を襲った。

 

 

 口を開きかけた総二が、なにかに気づいたように扉の方にむき直った。

「誰かが近づいてくる?」

「えっ?」

 総二の呟きに、愛香も意識を集中する。こちらに近づいてくる気配が二つ、そう遠くないところにあった。

 少し前までは、ここまで感じ取ることはできなかった。ひとりで戦い続けてきたことで、感覚が研ぎ澄まされていったのだろうと思う。そのことにいろいろと複雑な気持ちはあるものの、いまはそれより総二のことだ。

 総二は、愛香よりも先に気配に気づいた。彼には、気配を察知することはできなかったはずだ。自分以上だと愛香が見ていた総二の武術の才が、戦いはじめたことで開花しはじめたのかもしれない。

「そーじ。あんたも」

「ツインテールの気配だ」

「け、――――、――――、――――はい?」

「え?」

 気配を察知できるようになったの、と訊こうとしたところで耳にした総二の呟きに、愛香の動きが止まった。彼の呟きを反芻し、思わず聞き返すと、総二が不思議そうに愛香の顔を見た。二、三度ほど瞬きし、口を開く。

「いや、なにエレメリアンみたいなこと言ってんのよ?」

「おまえにだけは言われたくねーよ!」

「はぁ!? なんであたしには言われたくないのよ!?」

「人の気配を察知するなんてことできるやつが言えたことか!?」

「ツインテールの気配を察知する方がよっぽどでしょーが! だいたい、それぐらいだったら修行すればできるようになるわよ!」

「ならねーよ! だったらツインテールの気配を探ることだって!」

「いや、さすがにそれは無理だと思うわよ?」

「――――」

 思わず真顔で言うと、彼は力なく項垂(うなだ)れた。

『っ!』

 ノックの音が聞こえた。扉の方に二人でむき直る。

『生徒会長の神堂慧理那ですわ。入ってもよろしくて?』

『ええぇ!?』

 愛香は、ほんとうにツインテールの持ち主が来たことに、総二はおそらく予想していなかった人物が来たことにだろう、同時に驚き、トゥアールも含めて三人で慌てる。

「ちょ、ちょっと待ってくださーい!」

 総二が扉の外の慧理那に呼びかけ、室内を見渡す。なにか見られてマズいものがないかと、愛香も同じように室内を見渡したところで、総二がトゥアールに問いかけた。

「トゥアール、なにか隠さないといけない物とかあるか!?」

「いえ、これだけです!」

 トゥアールが指し示したのは、愛香だった。とりあえずトゥアールの顔面に全体重を乗せた肘打ちを叩きこみ、よろけた彼女の顎を愛香の肩口に押しつけると、そのまま尻餅をついてトゥアールの顎を痛めつける。スタナーという技である。どうでもいいが。

 ふらつくトゥアールは放っておき、もう一度周りを見渡したところで、総二が扉の外に声をかけた。

「ど、どうぞ!」

『お邪魔しますわ』

 呼びかけに答えたあと、扉が開く。慧理那と彼女のお付きのメイドが、室内に入ってきた。

「――――」

 慧理那を、いや、おそらく慧理那のツインテールを見たことでだろう、総二が感嘆の吐息を漏らした。その反応に愛香の気持ちが少し沈むが、すぐに気を取り直す。いまはそのことを気にしている場合ではない。

 トゥアールに視線を留めた慧理那が、今日編入届を出した生徒かと問いかけてきた。全校生徒の名前を暗記しているぐらいである。編入生のこともしっかり聞いていたのだろう。

 慧理那の問いに、総二の親戚という設定でトゥアールのことを説明する。部外者であることを咎められるかと内心恐々としていたのだが、笑顔で歓迎されることとなり、愛香は総二とともにホッと安堵の息を吐いた。

 慧理那に席をすすめ、机を挟んでむかい合うように愛香たちも席に着く。メイドは、主と同じ席に着くのは恐れ多いということだろうか、慧理那の後ろにつくようにして立ったままだった。

 神堂家のメイドは護衛も兼ねているという話を聞いたことがあるが、確かに佇まいが素人のものではなかった。むしろ、かなりの強さだと感じた。警戒してる様子はなく自然体ではあるが、隙がほとんど見当たらなかった。

 慧理那が、手に持っていた書類に眼を落とした。表情が一転して引き締まり、全校生徒の上に立つ生徒会長のものとなった、はずなのだが、その幼い容姿のためか、どこか子どもが背伸びしているような印象を受けてしまう。

 そんな、いささか失礼なことを愛香が考えたところで、慧理那が顔を上げた。

「申請のあった新設部の書類を見て、少し気になりまして。直接確かめさせていただこうと思い、こちらへ伺いました」

「わ、わざわざすみません」

 総二が、一瞬口ごもりながらも応答する。

「部活内容は、ツインテールを研究し、見守ることとありますが、間違いありませんか?」

「間違いありません」

 間違いないのか、というか、なんだその部活内容。

 いまはじめて聞いた活動内容と、総二の力強い表情と声に、愛香の頭がいろいろな意味でクラクラした。いや、総二の引き締まった顔はとても恰好いいのだが。

「観束君。あなたは、ツインテールが好きなのですか?」

「大好きです」

「なぜ、ツインテールが好きなのです? それも、部活にするほど」

「ツインテールを好きになるのに、理由が要りますか?」

「っ」

 なんだ、この会話。慧理那の質問と、なんの迷いもなく即答する総二の答えに、愛香はなんとなく疲れるものを感じた。呼吸や食事と同レベルか、と思わなくもないが、ツインテールが世界から無くなったら、確かに総二は死んでしまいそうな気がする。いまさらだが。

 慧理那が動揺したように見えたのが気になったが、こんな答えが返ってくれば動揺もするか、と愛香は思った。

「――――?」

 ふと、総二の視線が気になった。慧理那の眼を見て話しているのかと思ったが、なにか違う気がした。

 そして、気づく。

 ツインテールを見ている。それも、なんかとんでもなく眼に力をこめて。気のせいであって欲しいが、おそらく間違いないだろう。

 薄々感じてはいたが、総二のツインテール馬鹿が加速している気がする。そもそもツインテールの気配を察知することなど、いままでできなかったはずだ。それで気配を察知できるようになるかはわからないが、実際に総二が見せた以上、できるのだろう。いろいろと認め(がた)いことではあるが。

 加速した理由は、ツインテールへの愛によって戦う力を得ることができたからだろう、と愛香は思った。もう自分のツインテール馬鹿を恥とは思わない。これからもツインテールを愛し続けるとも言っていた。

 ドラグギルディにむかって啖呵を切った時や、戦っている時の総二の姿はとても恰好よかったし、そのおかげで愛香も守ってもらえたことを考えれば、文句を言うことではないと思う。思うのだが、なんとなくもの悲しいものを感じなくはない。

 いろいろと切ない気持ちになった愛香の耳に、慧理那の声が届いた。

「そうですか。ええ、わかりましたわ」

 納得したようではあるが、どこか含みがあるように聞こえた。総二と視線を交わし、愛香の方から問いかける。

「あの、活動内容が問題でしょうか?」

「いえ、問題ありませんわ。ツインテールを愛する部活なら、テイルブルー、いえツインテイルズへの応援にも繋がると思いますし」

 問題ないのか、この内容で。一瞬そう思ったが、そのあとの言葉を聞いて納得する。総二が口を開いた。

「会長、ツインテイルズのことを?」

「はい。ニュースで見ましたわ。ほんとうによかったです。テイルブルーはもうひとりじゃないから心配しないで、とテイルレッドが言ってくれた気がして、嬉しかったです」

「そーじ」

「ああ」

 喜んでくれている慧理那の言葉に、愛香も嬉しくなった。ありがとう、という気持ちもこめて総二に微笑みかけると、総二も笑顔を返してくる。

「尻餅をついて悲鳴を上げるほど怖くても、そのあと再び立ち上がって剣を構えたテイルレッドはとても健気で」

「え、そこ?」

「あー」

 慧理那から出てきた言葉に、総二は呆然として小さく呟き、愛香はいろいろと納得する。そういえば、午後の授業がはじまる前に教室へ戻ってきた時、騒いでいる生徒たちがいたが、ツインテイルズのニュースを見たのかもしれない。

 なにやらウットリしたようにテイルレッドのことを語った慧理那が、ハッとした様子で口を閉じた。恥ずかしそうにしながらも、微笑んで言葉を続ける。

「でも、かっこよかったと思いますわ」

「ええ。あたしもそう思います」

「少しでも彼女たちの力になれるように、いままで以上に応援に力を入れませんと」

 愛香と慧理那の言葉に、総二がかすかに顔を赤くした。少し口ごもりながら、総二が応答した。

「そ、そうですね」

「がんばりましょう、会長」

「ええ!」

「お嬢様、そろそろお時間です」

「ええ、わかりましたわ」

 控えていたメイドが、慧理那に声をかけた。慧理那は小さく頷き、立ち上がる。

「それでは、ツインテール部のこれからの躍進を期待していますわ、皆さん」

 なにをどう躍進するんだろうか、と思ったが気にすることではないだろう。

 部室から出ていく彼女たちを、総二たちも廊下まで出て見送る。メイドがふり返り、微笑みながら口を開いた。

「時間を取らせてすまなかったな。ところで君、さっきはいい眼をしていた。真剣さが伝わってきたぞ」

「ありがとうございます」

 ツインテールを見ていたようなんですが。愛香はそう言いそうになったが我慢した。

 廊下を歩って行く二人の姿が小さくなっていく。部室内に戻ると、三人揃って椅子に腰を下ろし、大きく息を吐いた。

「あー、びっくりした」

「まさか会長が直々に来るとは思わなかったわ」

「だな」

 安堵する総二に愛香も同意した。

「ウヘヘ、イイですねぇ、合法ロリ」

『――――』

 なにか、欲望に満ちた声が聞こえた気がした。総二とともに、その声の方に顔をむける。

 トゥアールが、キリッとした顔をむけていた。

「どうかしましたか、総二様、愛香さん?」

「――――トゥアール、涎垂れてるわよ」

「はっ!?」

 愛香による物理的な注意で、その日の部活は終了した。

 

 




 
某所で総愛のイラスト見ていろいろ滾ってきました。

ネタいろいろ。古いもの最近のものいろいろです。
ロマサガのBGMは本気で名曲揃いだと思う。
 
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