あたし、ツインテールをまもります。   作:シュイダー

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なんか、甘いです。

二〇一四年十二月十日  初稿
二〇一五年十月十六日  修正

お待たせしました。
誠に勝手ながら、内容の大きな変更がないのに再投稿とするのは抵抗がありましたので、上書きで更新させていただきます。
上書き更新の際は、活動報告の方で通知させていただきます。ご了承ください。

3200文字が8300文字に。




1-5 青春の亀 / 青赤交互通行

 脚に力をこめて、高く跳躍する。

 自分でも信じられないほどの高さに飛び上がり、青いツインテールが風に(なび)く。

 変身した愛香は、エレメリアンが現れたところにむかい、建物の屋根から屋根に跳んで移動していた。目的地は、隣町のとある高校。ブルマを、(いま)だに使っているという話である。

 ほどなくして、とある高校と、その校庭にいる異形が、視界に入る。異形は、戦闘員(アルティロイド)たちとともに、その高校の生徒たちを追い回しているようで、よく見ると、案の定、ブルマの少女ばかりだった。

 ブルーは校庭に着地し、異形、タトルギルディにむかって、声を張り上げた。

「そこまでよ!!」

「ぬ!? ――――おまえが、テイルブルーか!」

 こちらの声に反応したタトルギルディが、ヨタヨタと体のむきを変え、ブルーとむかいあったあとに声を上げてきた。亀だけあって、動きは鈍いらしい。

「お、おおっ。テイルブルーよっ」

「なによっ。リザドギルディみたいに、ツインテールを触らせろとか言うわけ?」

 目を輝かせた――そんな雰囲気――タトルギルディに、ブルーは警戒を全開にして言葉を返す。

 ブルーの言葉を否定するように、タトルギルディは(かぶり)を振り、再び口を開いた。

「いや、そうではない。触らせてもらえるなら触りたいが、そうではない」

「じゃあ、なによ?」

「ブルマを穿いてく」

「誰が穿くかああああああああああ!!」

「カメエエエエエエエエエエエエエ!?」

 タトルギルディの変態全開の言葉に、ブルーは顔面への怒りの鉄拳で答える。

 かなり強く殴ったつもりだが、タトルギルディはよろめいてあとずさりこそしたものの、倒れはしない。少なくともタフさに関しては、リザドギルディ以上のようであった。

 嘆くように、タトルギルディが声高く訴えてくる。

「なぜだ!? おまえのその美しい尻ならば、ブルマは間違いなく似合うはずだ! ブルマとは言わば、青春の象徴! おまえが穿いて、それを見せてくれれば、(みな)青春を思い出し、ブルマが復活するはず!」

「どんな理屈だああああああああっ!?」

 似合うと言われても、ある意味下着と似たような感じでもあるので、素直に喜べない。しかし、総二に見せたらどんな反応を、いや、いまはそんなことを考えている場合ではない。

 少し顔が熱くなり、冷ますために頭を振ったところで、そもそも総二がブルマに反応するのか、と冷静になる。

 ため息を吐いてタトルギルディの方を見たところで、声が聞こえた。

「確かに、似合うかも」

「はい?」

 目の前のタトルギルディではなく、遠巻きに見ている高校の生徒たちの方から聞こえた言葉に、ブルーは思わず声を漏らし、そちらに顔をむける。

「似合うわよね。きれいなお尻だし」

「そう考えると、ブルマもアリかも」

 いや、ちょっと待て。なんで、エレメリアンの言葉に賛同してるんだ。

 さらに周りの声を聞いてみると、賛同している声ばかりではないようだが、嬉しくはない。

 学校の外からも、声は聞こえてくる。

「短パンは短パンでいいもんだろ!?」

「いや、スパッツだ!!」

「乳、尻、ふとももーーっ!!」

 なんだ。なんなんだ、これは。エレメリアンよりも、周りの反応に、ブルーは困惑する。

 さっさとタトルギルディを倒して帰ろう。そう心に決め、改めてタトルギルディにむき直る。

 周囲の反応を見ながら、タトルギルディが嬉しさを隠さず、叫んだ。

「やはり、やはりだっ。おまえがブルマを穿いてくれさえすれば、この星は救われるっ。さあ!!」

「色んな意味で救われないわああああああああああああ!!」

「むっ!」

 叫びと同時に殴りかかると、タトルギルディが後方に宙返りを行い、ブルーの拳が宙を切る。

「は!?」

 まるで重力を感じさせない軽やかな動きに、思わず驚愕の声を上げる。それは、ブルーだけでなく、周りの人々も同じだったようで、さっきとは別種のざわめきが聞こえた。

 先ほどの鈍重な動きは、演技だったのだろうか。それとも、タトルギルディの能力によるものだろうか。

 着地したタトルギルディは、どういうわけか、首を甲羅の中に引っこめていた。

 気を取り直して、ブルーが構えをとったところで、強い意思を感じる声をタトルギルディが上げる。首を引っこめたまま。

「テイルブルー。おまえを、倒す。そして、ブルマを穿いてもらうっ。さらに、そのツインテールを我らの手に!」

「首を引っこめたままじゃ恰好つかないでしょうが!」

「行くぞっ!」

 ブルーの言葉に耳を貸さず、タトルギルディは右半身を後ろに引いたあと、こちらにむかって弾丸のように飛び出してくる。それと同時に、首だけでなく、両手、両足、尻尾を甲羅にしまい、そのまま横方向に回転しながら、こちらに突っこんでくる。

「くっ!」

 慌てて横に跳んで躱すと、リボン型パーツを触って槍を呼び出し、むき直った。

 タトルギルディは、手足を甲羅の中から出して一度着地したあと、先ほどと同じ動作から、再び回転しながらこちらに突撃してくる。

 どこの亀の怪獣だ。心の中でそう呟くが、火を吹いたりしているわけではない。勢いよく飛び出してきているとはいえ、あそこまで回転できるものだろうか。そう思ったが、考えている場合ではなさそうだ。

 再び、回転しながらの突撃を躱し、槍を突き出す。

(かた)っ!?」

 槍が()たるが、甲羅の硬さと回転の勢いによって弾かれ、驚きに声が出る。

 ならば、と着地する瞬間を狙おうとタトルギルディの方を見ると、フワリと軌道を変え、ブルーが予想していた場所とは異なる位置に着地し、またも突っこんでくる。着地する時も頭を引っこめたままなのは、着地の隙を狙われないためだろうか。

 こうなると、攻撃の機会はかなり限られてくる。相手の攻撃を躱しながら、チャンスをうかがうしかない。

 そう考えながら突撃を躱すと、着地したタトルギルディが、声を張り上げた。

「これだけではないぞっ!」

「っ!?」

 さっきまでは横方向に回転していたが、どうやったのか、今度は縦、後ろ方向に回転しながら、こちらにむかってくる。

 それに、なんの意味があるんだ。そう考えたところで、タトルギルディの足が甲羅から飛び出した。

「あぶなっ!?」

 ブルーは、上半身を後ろに反らして地面に両手をつく、いわゆるブリッジでその蹴りを躱し、タトルギルディが通過したところですばやく起きあがる。

 ブリッジになったところで歓声が聞こえた気がしたが、いまは放っておく。気にしたら、緊張感が削がれそうな気がした。

 改めて、槍を構えてむき直り、タトルギルディを見据えた。

 

 

 青春。

 ブルマを愛するタトルギルディは、それとともに()る青春も、愛している。

 尻を包む、ピッチピチのブルマ。それを穿いて、友や恩師とともに夢を追いかけ、汗や涙を流す少女たち。長いとも短いとも言える人生の、その中でもわずかといえる、限られた時間。

 その、わずかな時間を精一杯生きる者たちの、なんと美しいことか。

 過ぎ去った時間は、取り戻すことができない。なぜあんなことをしていたのか、と後悔する者もいるだろう。

 だが、それでも思うのだ。それらも含めて、青春とは、美しく、かけがえのないものである、と。

 そして、ピッチピチのブルマも、同じだけ美しく、かけがえのないものだ。

 ブルマが失われていくのは、この世界だけではない。ほかの世界でもブルマは、スパッツや短パンに追われるところが多かった。

 ブルマとは、青春の象徴。それが失われるということは、青春もなくなっていくということではないか。そう考えると、タトルギルディの心は悲しみに引き裂かれそうになる。

 だが、テイルブルーがブルマを穿けば。この見事な尻を、ブルマが包めば。

 皆、ブルマと青春の大切さに気づいてくれるのではないか、とタトルギルディはそう思った。

 そのためにも、負けられない。

「テイルブルー! ブルマと青春を人に還すため、勝たせてもらうぞ!」

「そのあと結局、それを奪うんでしょうが、あんたたちは!!」

 その通りだ。己の愛するものを広めておきながら、それを奪う。そのことに対して、罪の意識は少なからずある。エレメリアンは、みんなそうだ。

 だが、それでも。

「それでも、ブルマと青春のすばらしさを、皆にわかってほしいのだああーーーっ!!」

 回転の速度を上げ、テイルブルーにむかって突撃する。これで、決める。

 タトルギルディの能力は、重力操作。自分の躰の部分部分にそれを使い、回転して攻撃する。

 単純ではあるが、頑強な甲羅の防御力もあって、易々と打ち破れるものではない。

「覚悟っ!!」

 テイルブルーに、迫っていく。回転する視界の中で、彼女が槍を大きく引いたのが、見えた。

「スプラッシュ、スピアアアーーッ!!」

 テイルブルーが吼えると同時に、彼女が踏み出した地面から爆発するかのような音が響き、タトルギルディの躰を、なにかが貫いた。

 

 テイルブルーを逸れたタトルギルディの躰が、そのまま地面に投げ出され、滑っていく。

「カ、メェ」

 力が、入らない。

 なんとかテイルブルーの方を見ると、その美しい尻、いや、なにかを投擲したような後ろ姿が、眼に映った。

 よく見ると、その手から、槍が消えている。

「なん、とっ」

 体の中心を、頭からなにかが貫いたような感覚が、ある。

 あの回転を見切り、槍で撃ち抜いたということか。自然と頭に、それが浮かんだ。

 テイルブルーにブルマを穿かせることができなかった、という口惜しさはある。だが、タトルギルディは信じていた。先ほどの、周りの人々の反応から、ブルマのすばらしさは、この世界に広がっていくだろう、と。

 それを思えば、後悔はない。

「フッ、フフ」

 眼を閉じると、ブルマを穿き、青春を駆ける少女たちが、見えた。その中には、テイルブルーの姿もある。思った通り、いや、思った以上に似合うその姿に、自分の見立ては正しかった、と誇らしい気持ちになる。

 そうだ。俺も、青春を駆け抜けたのだ。

 最期の力で、ただ、笑みを浮かべた。

 

 

 タトルギルディにむかって槍から放った光が、その躰を包む。その次の瞬間、タトルギルディの躰が爆発した。

 タトルギルディを包んでいた光が、膨れあがったかと思うと、爆発とともに消えていく。辺りには、ほとんど被害はない。

「あ、危なかったぁ」

 勝ちを拾えたこともそうだが、『ピラー』というギアの機能によって、タトルギルディの爆発を抑えることができたことに、ブルーは安堵の呟きを漏らした。

 昨日、リザドギルディが爆発した時も、かなりの範囲に衝撃がきた。その爆発を抑えるための機能が、このピラー、らしい。もっとも、爆発を抑えることしかできないらしく、戦闘で使えるものではないようだが、それでもありがたい。

 タトルギルディの爆発したところから、昨日と同じように、光る菱形の石が飛んで来たため、受け止める。

 エレメリアンには核があるらしく、これがそうなのだろう。使い道はないらしいが、あの少女からの言葉もあるので、いちおう持って行く。

 あとは早く帰って、総二を安心させてあげよう。

 そう考えて少しだけ微笑んだところに、高校の女子生徒たちが群がって来た。

「あの、お名前を教えてください、お姉さま!」

「え、ええっと、テイルブルーです。ってなに、お姉さまって」

 顔を赤くし、眼をキラキラさせて聞いてくる女の子の言葉に、ブルーは戸惑いながら答える。

 それを皮切りにほかの子たちも詰めかけ、声をかけてきた。

「すごく、恰好よかったです!」

「あ、ありがとうございます。っ、髪は触らないでっ!」

「あ、ごめんなさい、お姉さま。でもすごいきれいな髪。憧れます!」

「あの、握手してください!」

「あ、わたしも!」

 逃げようにも、強化された筋力で振り払ったら怪我をさせてしまうかもしれないし、こんなふうに寄ってくる人たちを攻撃するわけにはいかない。

 ごめん、そーじ。まだ、帰れそうにないわ。

 いろんなものに対する、諦めに似た思いとともに、心の中で、そう幼馴染みに謝った。

 

 今日も閉店となっているアドレシェンツァの扉を開けて、愛香は店の中に入った。入口に最も近いテーブル席に、総二の姿を見つける。

「ただいま」

「お帰り、愛香。って大丈夫か?」

 元気のない声で挨拶すると、心配そうに声をかけてくる総二の言葉に答える前に、愛香は彼の座っている椅子の隣の席に座り、テーブルに突っ伏す。

「そんなに、強い相手だったのか?」

「いや、強いと言えば強かったけど、問題はそのあとよ」

 総二の言葉になんとか答え、愛香は説明を続けた。

「なんていうか、なんか、みんなちやほやしてきてね。せめて握手してくださいとか言ってきて、すっごく疲れたわ」

「それは、疲れるだろうな」

 ほんとうに、疲れた。同情するような総二の言葉に、心の底からそう思う。

 途中から数えるのをやめたため、全部で何人いたのかはわからない。ほんとうに、何人いたんだろうか。

 次からは、即座に立ち去るようにしよう、と愛香が心に決めたところで、髪が優しくすくい上げられるのを感じた。

「そーじ?」

「こんなことで、愛香の助けになるわけがないけど」

 総二が言葉とともに、優しく愛香の髪を撫でてくる。

 その、手の感触に、不思議と心が安らいでいく。

「そんなことないわよ。ありがと、そーじ」

「ああ」

 感謝の気持ちをこめて愛香が礼を言うと、総二が優しく返事をしてくる。

 少し経ったところで、髪を撫でてくる総二の手から、なにかを感じた気がした。

「ねえ、そーじ」

「ん、どうした、愛香?」

「やっぱりまだ、あたしだけ戦わせてるってこと、気にしてる?」

「っ」

 顔を上げて総二に問いかけると、彼は図星を突かれたかのように動きを止めた。少しして、総二が再び口を開く。

「俺は、愛香を信じるって決めたから。だけど」

 そこで総二は、言葉を止めた。

 辛そうに総二が顔を歪めるのを見て、愛香の胸が痛くなる。

 愛香は身を起こし、総二の眼を見つめて、言葉を紡いだ。

「そーじ。あたしはね、そーじがいるから頑張れるんだよ。そーじがいてくれるから、強くなれるの。だから、そんな辛そうな顔しないで」

 なんの助けにもなってないなんてことは、絶対にない。

 それだけは、わかってほしかった。

 その言葉のあと、少しの間だけ総二はうつむき、再び顔を上げた。

 愛香の気持ちが通じたのか、彼の顔は、さっきより明るくなっていた。

 苦笑しながら、総二が口を開く。

「悪い。また気を遣わせちまった」

「気にしないでいいってば。あたしとあんたの仲でしょ?」

「だったらなおさらだろ。気を遣わせっぱなしじゃいたくない。なにか、俺にしてほしいことってないか?」

「そ、そーじにしてほしいことっ?」

 少しでも総二の気を晴らすことができたのなら、それだけでも自分はうれしい。そう思っての言葉に返された総二の言葉に、胸が高鳴り、愛香の顔が熱くなる。

 モジモジとしながら、愛香は言葉を紡ぐ。

「そ、その、髪を触るだけじゃなくて、あ、頭撫でたりっ、だ、抱き締めたりとかっ」

「え、えっ?」

「あっ、う、嘘々、じょ、冗談よっ」

「そ、そう、か」

 愛香の言葉を聞いた総二が固まったのを見て、慌てて発言を撤回する。彼は、どことなくがっかりしたように見えた。おそらく気のせいだと思うが。

 素直に想いを伝えるにしても、心の準備がいる。頭を撫でてもらったり、抱き締めてもらえれば確かに嬉しいが、気絶してしまうかもしれない。

 頭がぼんやりとしてきたが、もうひとつだけ伝えたいことがある。微笑んで、言葉を紡ぐ。

「あたしは、そーじがしてくれることなら、なんでもうれしいから、変な気を遣わなくても大丈夫よ」

「そ、そうなのか」

 総二の顔が、赤くなった気がした。

 なにか恥ずかしいことを言ってしまった気がするが、疲れで頭が回らない。

 焦点が合わなくなってきたところで、総二が再び髪を撫ではじめた。

「んぅ」

 さっきより、不思議と気持ちがいい。疲労と心地よさに負け、愛香は眼を閉じた。

 

 

「愛香?」

 フラッと体を傾かせた愛香を、総二は抱き留める。

 もしやと思い、顔を覗きこむと、彼女は穏やかな表情で、瞳を閉じていた。

「眠っちまったのか」

 小さな声で呟き、ホッと安堵する。

 このまま抱いていようかと思ったが、どうにも落ち着かない。愛香の体を優しくテーブルに預けると、総二は上着を脱いで、彼女の肩にかけた。

「こんなに、小さいんだよな」

 自分も、それほど体が大きいわけではないが、平均的な女子程度の体格である愛香は、当然ながらそれより小さかった。こんな小さな体のどこに、あんな強さを持っているのだろう。そう思った。

 改めて椅子に座り、愛香のツインテールを撫ではじめる。

「愛香」

 なんとなく、名前を呟く。

 昨日から、どこか自分がおかしいと総二は感じていた。

 ツインテールがどうとかではなく、愛香を見ていると、時々落ち着かなくなるのだ。

 いまも、可愛らしく寝息をたてている愛香を見ていると、不思議と鼓動が早くなる時がある。さっき抱き留めていた時も、なぜかどんどん自分の体が熱くなり、その体の熱と、強くなる鼓動で、愛香が起きてしまうのではないかと思ったために、テーブルに預けることにしたのだ。

 愛香のツインテールを撫でていた手が、いつの間にか止まっていた。総二はそのまま、手に持ったツインテールを見つめる。

 愛香のツインテールに、キスがしたい。そう思った。

 愛香は、家族同然の幼馴染みで、親友だろう。そう自分に言い聞かせても、躰が止まらない。鼓動が、さらに激しくなる。

 ツインテールに唇が、触れる――。

「そー、じ」

「っ」

 触れようとする瞬間、愛香の声が聞こえ、総二の体が硬直する。

 恐る恐る、愛香の顔に視線をむける。

「――――」

 寝言か。

 そのまま数秒ほど経っても、変わらず寝息をたてる愛香を見て、安堵する。

 そして、いま自分がやろうとしていたことを思い出し、総二は身悶えた。

 

 俺の夢を、見てくれているんだろうか。

 愛香を起こさないように静かに悶えたあと、彼女の寝言から、総二はそう思った。なぜかはわからないが、不思議な嬉しさが湧きあがる。綺麗なツインテールを見た時とも違う、胸が温かくなるような、そんな感覚だった。

「ん?」

 なんとなく視線を感じたような気がして、厨房の方に眼をむける。

 眼が、合った。

 正確には、ビデオカメラのレンズと、眼が合った。視線を感じるなどという、そんな生易しいものではなかった。

「なにしてるんだ、母さん」

 愛香を起こさないように声を抑え、ビデオカメラ越しにこちらを見ている母にむかって、総二は呆れて昨日と同じ問いかけを行った。

「決まってるじゃない。総ちゃんと愛香ちゃんの、イチャイチャシーンを撮ってるのよ」

「イ、イチャッ!?」

 ビデオカメラをこちらにむけたまま、楽しそうに返してきた母の言葉に、総二の顔が不思議と熱くなった。

「あら。あらあらあら~?」

 未春がとても嬉しそうな声を出し、なぜか、顔がさらに熱くなるのを感じた。

 なんとなく恥ずかしくなった総二は、ゴホンと咳払いをし、口を開く。

「イ、イチャイチャって。愛香は幼馴染みで、親友、だろ」

 さっきも、抱き締めたりといった言葉は冗談と言っていたし、と総二は思った。

「っ」

 なぜか、胸が痛むのを感じた。顔を歪ませて、手を自分の胸に当てる。昼休みから、愛香のことを考えると、時々こうなるようになっていた。

 愛香を『彼女』と言われた時、なぜか胸が高鳴るような感覚があった。だがそのあとの、愛想を尽かされたら、ツインテールをやめられてしまうかもしれないな、と言われ、胸が締めつけられるように痛くなった。愛香がアルティメギルに敗れ、ツインテールを奪われたら、という心配とは違う。

 もし、ほんとうに、愛香に愛想を尽かされて、ツインテールをやめられたら。あるいは、彼女が自分のそばから離れていったら。そう考えると、目の前が真っ暗になるようだった。

 どちらとも、いままで考えたことすらなかった。愛香はずっと、ツインテールで、自分のそばに居てくれるものだと、そう思っていた。

 学校から帰る時、なぜ、ツインテールで、一緒に居てくれるのかふと気になり、聞こうと思った。だが、なぜか、軽はずみに聞いてはいけないことなのではないか、という思いが頭をよぎり、聞くことができなかったのだ。同時に、自分で気づかなければならないことなのではないか、とも不思議と思った。

 総二の顔を見て、また嬉しそうな表情になった未春が、語りかけてきた。どこか、優しい声に聞こえた。

「ふふ、青春ね~。精一杯楽しみなさい、総ちゃん」

「楽しむって、なにをだよ?」

「言ったでしょ、青春をよ!」

 母の言葉に総二が戸惑いながら問いかけると、彼女は嬉しそうに答え、厨房の方に去っていく。今夜はお赤飯かしら~、という声が聞こえた気がした。

 母がいなくなってから総二は、自分の手を見つめたあと、再び愛香のツインテールを手に取った。

 夕飯になったら起こそう。そう考えると、また愛香のツインテールを優しく撫ではじめた。

 






アイアン・ディスカス。
以前は途中で書くのをやめたタトルギルディ戦。考えてみれば、ブルマの似合いそうな尻に反応してくれるのでは? ということで加筆。タトルギルディの能力、重力操作に関しては、体操服属性が重力操作なのでという安直なものです。亀の怪人、怪獣が行う攻撃と言えば、まあこれになるよなと。
ピラーに関しては、オーラピラーの『爆発を最小限に抑える』効果のみのもの。これも考えてみれば必要だった、と。
あとは、二人のイチャイチャを。
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