初めまして、初投稿です
なんかもう…主人公がやりたい放題してる…
一話 Goodbye My Wish.
__昔々、あるところに心優しい『怪物』がおりました。
彼は夢見ました、いつかこの高い高い壁を壊すことを。
彼は願いました、数多の人々に光を届けた『お星様』が、はるか昔の決意を取り戻すことを。
彼は祈りました、毒林檎によって眠りについた『白雪姫』が、いつかお城へと羽ばたくことを。
彼は願います、いつまでもいつまでも。
__願うことしか、できないから。
☆
「__いや、『何もない』って実在したんだな」
壁も天井も存在するのかも危うい真っ白い『虚無』、そんな場所になんらかの原因により転移してしまったと気づいた瞬間、俺の口からこぼれた第一声がこれだった。
何もないが実在する、矛盾極まりない言葉だが、今の状況をなんとかして明るくポジティブにとらえようと努力した結果がこれだ。これでもずいぶん焦っているのだ、俺は。
そのせいで、無意識にポケットに手を添えてしまう。
スマホ、財布、百均で買ったワイヤレスイヤフォン、あとは今手にしている、かなり甘めのカフェオレ。持ち物がそっくりそのまま俺の手にあり、尚且つ手足も自由という面から拉致誘拐などではない可能性が高い。
では、もう遅いとは思うがこういうシチュエーションではお馴染みのアレを。
「__いや、ここ何処だよ!!!」
__ふむ、なんだか順序を間違えてしまった感が拭えないがまあいい、そもそも今はそんな場合ではないしな。
さて、これからどうするか。
大声で叫んで助けを呼ぶ?
だが見渡す限り何もない、こんな無機質な場所に都合よく人間が居るか?
仮にいたとしてそいつが敵か味方かも分からない。
スマホで助けを呼ぶ?助けを呼ぶ人もいないのに?
いや、そもそも俺
「もういっその事、この場所から帰れないのもまたいっきょ__」
「いらっしゃい、天岩望くん」
「__ダレデスカ?」
はい、一カメ
引き攣った笑いが滲み出ている俺の顔面ドアップ。
ニカメ
突如現れた薄水色のショートカットの少女ドアップ。
三カメ
三人称視点による俺と少女の一場面ズームアウト。
___what⁇⁇
「だれって…私のこと、知らないの?」
そう言って、目の前の少女は困ったように首を傾げた。
いや、なんで俺がお前のことを知ってる前提なんだよ。
こちとら初対面なんですが??
そもそもなんで俺の名前知ってるの???何、ストーカー???
___おっと、いけないいけない。
クールキャラという俺のアイデンティティにヒビが入るところだった。
「うん、知らない」
「そ、っか……」
そう言って下を向き悲しそうにする少女(推定年齢15歳ほど)
待て、この状況だと俺が年下の女子泣かせたみたいになってるんだが。
え、俺たち初対面だよね、It's my first time meeting her. OK???
「まあいいや、じゃあ自己紹介するね」
回復したのか、少女は俯いていた顔をあげ、口を開く。
「私の名前は初音ミク、まぁVOCALOID
そう言って、ミクと名乗った少女はにこりと無機質に微笑んだ。
☆
「___いやおかしいだろ」
「何が?」
「『何が?』じゃねえよ!ミクって言ったらあれだろ?ツインテール!!お前どう見たってショートじゃねえか!!!」
そう、そうなのだ。
初音ミクといえばミントグリーンの長い髪をサイドで二つ結びしたツインテールでお馴染みだ。
しかし、この自称初音ミクは薄水色の髪をバッサリ肩ぐらいで切りそろえた言わば「ショートカット」だ。
それに、着ている服は真っ白なドレスシャツ、襟元にはきっちりネクタイをつけている。そんなフォーマルな上半身とは逆に、下には穴が空いたダメージジーンズ、靴はくたびれた空色の運動靴。ベージュ色のフォーマルコートを上から羽織ったチグハグな姿は、いくらなんでも俺の知っている初音ミクとは違いすぎる。
「まあまあ細かいことはいいじゃん」
「よくねぇしそもそもここ何処だよ!!」
「あれ、言わなかったっけ?」
「いってねぇ!!!」
なんだこいつ、相手しててめっちゃ疲れる。
なんかさっきからニヤニヤしていて気持ち悪いし、こいつ絶対性悪だろ。
「ここはね、セカイだよ」
そうして始まった自称初音ミクの説明をまとめると。
曰く、人々の『想い』が形になって生まれた別空間を『セカイ』という。
曰く、『セカイ』にいるバーチャルシンガーは、想いの持ち主のの『想い』を探す手伝いをしなければならない。
曰く、『セカイ』にはいるには音楽ファイルの中にある、『untitled』を再生し、帰る時は『untitled』を止めれば元の世界に戻れる。
ということらしい。
長々と十五分ほど聞かされた俺の身にもなってくれ。要約しろよ、要約。
「はあ、お前が言いたいことはわかった、ってことは今までの話から推測すると、このセカイは『想い』とやらでできてる、つまりここに招かれた以上、俺がこのセカイの『想いの持ち主』ってわけか」
「そうそう、物分かりが良くて助かるよ」
頷きながら自称初音ミク___長いからもうミクでいいや___は嬉しそうに答え、俺に向かって手を差し伸べた。
「さぁ、天岩望くん、君の想いを____」
「断る」
「___へぇ、今までのデータ史上、私達『初音ミク』の言葉を聞かずに即答し、しかも拒絶の言葉を吐いたのは君が初めてだよ」
なんだよこいつ、随分生意気だな。
20分前まで俯いて悲しそうにしていたのは演技か?
「拒絶も何も、俺のことなんて俺が一番知っている。そもそも、会って数十分のガキにプライベートなことを任せるわけないだろ普通」
「ふーん…まあいいよ、今はそれで」
いじけたように空を蹴るミクを横目で一瞥し、俺はスマホで音楽再生アプリを開く。
「もう帰るの?」
「もう話は終わっただろ、俺が作ったんだから、いつ帰ろうが俺の勝手だろ?」
「それもそっか」
納得したよな表情で腕を組み、頷くミクをスルーし、『untitled』の停止マークを押す。
「じゃあまた会おう、空虚なる、なり損ないのアリス様」
視界が白に塗りつぶされる寸前、ミクが何かを呟いた気がした。
☆
「あ、そういえば私望くんと歌、歌ってない…」
主人である望が去ったセカイ、空虚なる果てなき空間に、ポツリと声が落ちた。
先ほどの威勢は何処へいったのか、肩を窄めて俯く彼女はとても寂しそうだった。
「うん、でも頑張らなきゃ。望くんと関わるんだから、こんなところでいじけてちゃ、いけないもん」
そう自分に言い聞かせて、ミクは空虚を舞うように歩く。
「でも、望くんがあんなにやさぐれるのも、仕方がないよね」
「だって、望くんの想いは」
「決して、叶うことはないもの」
歌姫は静かにそういい、長い長い彼女の独り言は、あっけなく終幕を迎えた。
透明文字のところ、なんて書いてあるか挑戦してみてください。
ところで望くん
君ちょっと話ぶった斬りすぎてない???
話ちゃんと聞こう??
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ここまで読んでいただきありがとうございます!!!