転生したらCパルス変異波形だったので、ガンダムを作ります。   作:コレクトマン

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今回は少し短めです


壁越えの裏側、自由対戦闘狂

 中央ベリウス地方──

 赤霧が風に流れ、壁の巨影がゆらりと揺れた。

 

 砂丘から吹き上がる熱波がフリーダムの装甲を叩き、レイは高度を落としながら壁の外周へ滑り込む。巨大なコンクリート壁は地平線まで延び、まるで“国境”を象徴する墓標のように静まり返っていた。

 だが、静けさとは裏腹に……センサーには絶えずノイズが混じっている。

 

 ──不自然な反応。

 まるで壁の向こうで何かが蠢いているかのようだ。

 

 ヘッドセットに通信が入る。ノイズ混じりの砂嵐を切り裂く、鋭い女性の声だった。

 

『レイ、聞こえているな? 現在アーキバスが中央ベリウス地方に戦力を集結させているとの情報が入った』

 

「アーキバスの壁越えか」

 

『そうだ。お前にはアーキバスの戦力を削ってもらう』

 

 セレンの声は抑制されていたが、裏には明確な緊張があった。あの冷静な独立傭兵でさえ、この戦場の“異質さ”を感じ取っている。

 レイは深く息をつき、フリーダムの翼をわずかに広げた。

 

 壁上に近づくにつれ、複数の火花が視界の端をかすめる。装甲を纏った解放戦線の兵士たちが、慌ただしく持ち場を固めているのが見えた。

 

「おいっ見ろ!」

 

「あれは……青き翼の天使か?」

 

「本物か? 揶揄うのはよせ!」

 

「いやっ本物だ! 俺たち勝てるぞ!」

 

 歓声がわき起こり、兵士たちが一斉にこちらを向く。

 赤い霧の向こう、青い光を纏って降りてくる機影──青翼の天使。

 この地ではすでに“象徴”になりつつある呼び名だ。

 

 レイは着地し、肩から砂を払うように機体を揺らした。

 

「状況はどうなっている?」

 

 周囲の緊張の中、一人の兵士が駆け寄ってきて、壁越しに伸びる遠方を示した。

 

「ああ、現在アーキバスの戦力がこの壁の向こうの数百メートル先に集まっている」

 

 その声には恐怖よりも、敵の動きを読もうとする冷静さがあった。

 彼らは生き残る術を知っている。

 だからこそ、レイに頼らざるを得ない。

 

「恐らく正面の戦力は本命を引き出すための囮だろう。恐らく壁の裏側から強襲してくる可能性がある」

 

 レイは壁を見上げた。

 高すぎる壁、死角だらけの構造。

 裏側を取られれば一気に崩壊する防衛線。

 

「そこで俺に裏側から強襲してくるアーキバスの本命を抑えてくれ……という事か」

 

「アーキバスが貴方のことを警戒している可能性も捨てきれない。どうかアーキバスの強襲を阻止してくれ」

 

 兵士たちの顔にはわずかな安堵が浮かんでいた。

 この壁は、彼らの故郷、家族、仲間の最後の盾。

 フリーダムが来てくれた事実だけで、希望が生まれる。

 

「可能な限りやろう」

 

 その一言で、兵士の顔に迷いのない決意が戻る。

 

「では頼んだぞ。行くぞ同士諸君。コーラルよ、ルビコンと共にあれ」

 

 雄叫びと共に解放戦線の兵士たちが散っていく。

 壁の上には再び緊張した空気が戻り、遠くではアーキバス機の推進音が微かに響いていた。

 

 レイはゆっくりとフリーダムの翼を広げる。

 

 ──壁の裏側。

 そこに待つのは、ただの企業兵器ではない。

 

 嫌な予感が、胸奥を冷たく撫でた。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 中央ベリウスの壁の上空──

 吹きすさぶ砂煙の向こうで、レイが戦場の空気を読むように翼を震わせたその頃。

 

 遠く離れた解放戦線の一角とは対照的に、アーキバスの戦術管制室は静寂そのものだった。

 白く冷たい照明が並び、幾層ものホログラムが浮遊し、各部隊の位置情報が精密に描き出されている。

 

 その中枢に立つのは、ヴェスパー第二隊長──スネイル。

 表情は読めず、視線は常に“数字と効率”の先だけを見ているようだった。

 

 そこへ、強制接続の通信が割り込む。

 ホログラムが一瞬揺らぎ、黒い影のような男のシルエットが現れる。

 

『あなたですか? ”レイヴン”とか言う独立傭兵の代理人は』

 

 スネイルの声音は冷たく、敵意も興味もない──ただの“業務”的な声。

 

 影の男。

 ウォルターが、淡く息を吐くように答えた。

 

『ヴェスパー第二隊長”スネイル”。知己を得て光栄だ』

 

 その声音には礼儀はあるが、従属はない。

 スネイルは眉一つ動かさず、淡々と続ける。

 

『”壁越え”に参画したいという事でしたね? 技研の遺産を潰したそうですが、それが何だというのです?』

 

 薄い光がスネイルの眼を照らし、わずかに反射する。

 挑発でも怒りでもなく、ただ本気で“どうでもいい”といった表情。

 

『”駄犬”の飼い主如きが厚かましいにも程がある……お断り……と言いたいのですが。ちょうど独立傭兵を探してたところです』

 

 ウォルターの瞳が、ほんの僅かに揺れた。

 スネイルの声色には“侮蔑”と“必要性”が同居している。

 

『今回も第一隊長が出ると聞いているが……』

 

 ウォルターが静かに問うと、スネイルはゆっくりと顎に手を添えた。

 

『ええ。あなたも耳にしているでしょう? 解放戦線の天使の存在を。あれにはフロイトをぶつけさせて捕獲、あるいは破壊してその天使を確保するつもりです』

 

 “天使”。

 青き翼を持つAC──フリーダムのことだ。

 

 ウォルターは短く息を吐く。

 

『頼れる人材が他にいないとは……不幸なことだ』

 

 皮肉とも、ただの感想ともつかない声。

 スネイルは受け流すように肩を揺らす。

 

『ええ、その為の独立傭兵です。今回はフロイト以外にもV.Ⅳも出ることですし。あれも調子に乗っているようだ……併せてお手並み拝見としましょう』

 

 アーキバスの戦力は今、壁越えの準備で着実に集結していた。

 強襲MT、機動部隊、そしてヴェスパー──

 その中心に、アムロチャレンジを突破した怪物、フロイトがいる。

 

 通信の隅で、別の声が小さく割り込む。

 

《ウォルター、今の通信……》

 

『621、聞いてたのか。心配するな、お前はいつも通りに仕事をこなせ』

 

 ウォルターの声は静かだが、奥に“焦り”を秘めていた。

 

『今回の作戦は621だけで行う。617はC兵器を相手に機体にかなりの負担があったようだ。オーバーホールが終わるまでこの作戦には参加できない。わかったな、617』

 

 後方の整備ハンガーで、617がわずかに目を伏せた。

 

《ん……分かった》

 

 その声に、ウォルターは短くうなずく。

 

 赤い霧が外殻を叩き、戦場の空気がひりつき始める。

 

 ウォルターがスネイルとの通信を閉じた瞬間──

 壁の向こう側から、重い振動が伝わってきた。

 

 アーキバスの“壁越え”作戦が、ついに動き始めたのである。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 中央ベリウスの壁前──

 コーラル混じりの風が砂を巻き上げ、視界の奥に赤と白の閃光が交錯していた。

 

 アーキバスの前進部隊が一斉に動き出す。

 重装甲MTが地響きを立て、機動型MTは壁面の死角へ散開していく。

 その後方では、独立傭兵たちがそれぞれのアセンに乗り込み、戦場の混乱を読み取っていた。

 

「各部隊、前進!」

 

 管制の怒号が跳ね返り、突撃部隊が一斉に加速した。

 壁の上では解放戦線の砲台が点灯し、複数の照準レーザーが赤霧の中を貫く。

 

「正面に砲台複数確認!」

 

「MT部隊は真正面から挑もうとするな!独立傭兵が砲台を片付けるまで気を引きつけろ!」

 

 無数の弾幕が交差し、壁前は瞬く間に火線の網へと変わる。

 アーキバス兵たちの連携は精密で、無駄のない配置で前線を押し上げていた。

 

 しかし──

 この作戦の成否は、前線の火力では決まらない。

 

 壁の裏側。

 その影に潜む“切り札”が、今ゆっくりと目を開く。

 

 金属の脚部がわずかに軋み、コーラルの薄い光が装甲の隙間から漏れた。

 ヴェスパー第一隊長──V.Ⅰ “フロイト”。

 

 その周囲には他の隊員がおらず、まるで猛獣の檻の中に一人放たれたような光景だった。

 

『フロイト、あなたの作戦は分かっていますね?』

 

 スネイルの静かな声が、薄闇に落ちる。

 

「ああ。メーテルリンクが交戦したあの天使を倒せばいいのだろう?」

 

 フロイトの声は楽しげで、微かに震えている。

 恐怖ではなく──期待。

 狩人が獲物を見つけたときの、純粋な戦意。

 

『可能なら捕獲する前提で動いてほしいのですが、貴方の場合は倒せばそれでいいという考えなのでしょう』

 

「あの天使と殺り合えるんだ。これを楽しまずにいられない」

 

 赤霧の中で、フロイトの機体“ロックスミス”がゆっくりと頭部を上げる。

 その挙動には人間味がない。

 しかし、声だけはどこか“熱”を帯びている。

 

 スネイルは冷たく応じた。

 

『まあ……いいでしょう。貴方はアムロチャレンジレベル1をクリアし、レベル2に食い込むことができた逸材です』

 

「それはシミュレーションの話だ。あの天使はシミュレーション以上であることは確実だからな」

 

 フロイトの瞳孔のようなセンサーが、わずかに収縮した。

 彼の認識はすでに戦場の先──

 壁の裏へと向かっている。

 

『そうですか……ではフロイト、予定通り壁の裏側に待機してください。解放戦線の考えなら壁の裏側に強襲部隊を差し向けると考えているでしょう。そこに例の天使が向かうはずです』

 

「了解した、スネイル。……楽しみだ」

 

 最後の言葉は、静かに、だが確かに“興奮”を帯びていた。

 

 ロックスミスの脚部が砂を噛み、壁裏の深い影へゆっくりと進んでいく。

 まるで“獲物を待つ蜘蛛”のように。

 

 その頃、壁上ではレイがフリーダムの翼を広げ──

 裏側へ続く戦場へと、静かに足を踏み入れようとしていた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 中央ベリウスの壁裏側──

 静寂が、不自然なほど濃かった。

 

 赤霧が低く漂い、巨大構造物の影が幾重にも重なって地表に落ちている。

 フリーダムが滑り込むと、砂が巻き上がり、薄いコーラル光が翼の縁を照らした。

 

「さて、裏側に着いたのはいいが……」

 

 レイはモニターの奥、地平線へ目を細めた。

 壁の表側とは違い、こちらには弾幕も、砲火もない。

 ……静かすぎる。

 

「レーダーではアーキバスのMTらしき気配はないな。それとヴェスパーの機体も……ん?」

 

 センサーに微細なノイズ。

 通常MTでは起こらない“脈動”。

 コーラルと人工演算波形が混じったような、不気味な反応。

 

「接近する機影……この識別は」

 

 言い終わるより早く──

 視界の霧を裂くように、蒼い光が跳ねた。

 

「フリーダム、やっと会えたな。噂に聞いて、ずっとお前に会いたかったぞ!」

 

 ロックスミスが姿を現す。

 白い閃光のような動きでレイの視界に割り込み、フリーダムの装甲に照準光を落とすその姿は──

 まさしく“戦いの鬼”。

 

「げっ!よりによってヴェスパーの戦闘狂かよ!?」

 

 レイのぼやきが終わると同時、

 フロイトの機体が赤霧を蹴り散らして飛び込んできた。

 

 初撃からして速すぎる。

 読めない軌道、二段加速、そこからの急制動──

 完全に人間の反射を超えている。

 

「くそっ!V.Ⅰの名は伊達じゃないってか!?」

 

 レイの咄嗟の回避がなければ、胸部ユニットが吹き飛んでいた。

 

 フロイトの機体は獣のようにしなりながら迫り、

 異常な反応速度でフリーダムの動きを追う。

 

「いいな、その動き! 鳥? いや天使? 俺の知らない動きだ!」

 

「どういう感性してんだよお前は!?というか、明らかに反射神経が良すぎだろ!?お前、いったい何をやったらそうなった!」

 

 フロイトの笑い声が混じる。

 

「アムロチャレンジをやってこの技術を身に着けた。お前その動きもアムロチャレンジを受けたようだな? なら俺の知らない動きがあるはずだ、もっと俺に見せてみろ!」

 

「やっぱアムロチャレンジの影響が反映されていやがった!?」

 

 フロイトのロックスミスが旋回。

 瞬時に加速してフリーダムの死角から刺し込む。

 

 軌道のすべてが“予測不能”。

 反撃しようとした瞬間には、もう別の位置にいる。

 

 レイは息を呑みながらブーストをフル稼働。

 

「くそっ!やっぱ案の定フロイトにとって劇薬だったよ、アムロチャレンジは!金田は後でアムロチャレンジレベル1クリアするまで絞り込んでやる!」

 

アムロチャレンジのデータを流出させた張本人にそう叫ぶレイ。この激闘は互いに一進一退の戦いが続いた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

(その頃、日本帝国・旗艦ミレニアム)

 

 平和なはずのデータバンク室で──

 

金田「へっくし!?」

 

日本兵「どうした、急にくしゃみなんかして」

 

金田「いや、なんか誰かが俺のことを噂しているような感じでな?それも嫌な方の噂だが……」

 

 ミレニアムの艦内に、妙な寒気が走った。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 壁裏の赤霧は、すでに戦場の熱で揺れていた。

 フリーダムとロックスミス、その二機がぶつかるたびに、金属と光の火花が霧を裂く。

 

 ロックスミスが跳ねるように後退し、装甲表面に走った亀裂から白煙が吹き出す。

 フロイトが低く笑った。

 

「リペアキットは今ので尽きたか……やはりいいな、お前!」

 

 その声には、損傷など“喜び”に変換してしまう異常な熱がこもっていた。

 

「俺はお前を楽しませるためにいるんじゃないんだよ、こっちは!」

 

 レイは吐き捨てながら、フリーダムのブースターを逆噴射。

 至近で撃ち込まれたレーザーブレードを紙一重でかわし、砂煙の向こうへ跳ぶ。

 

 しかしフロイトは──追う。必ず追ってくる。

 まるで背後に糸でも繋がっているかのように、フリーダムの軌跡を正確にトレースする。

 

「どうでもいい。もっと俺を楽しませろ!」

 

「ふざけんな!この戦闘狂め!!」

 

 返した叫びも虚しく、ロックスミスはすぐそこにいた。

 センサーの警告が鳴るより早く、旋回する刃が肩部装甲をえぐる。

 

 レイが舌打ちと共に体勢を立て直すと──

 

『フリーダム、聞こえるか!』

 

 解放戦線の焦った声が通信に割り込んだ。

 

「どうした!こっちは戦闘狂と交戦しているんだが!?」

 

 レイが回避軌道を描きながら叫ぶと、通信が重く続く。

 

『すまない、我々が保有する重装機動砲台ジャガーノートが独立傭兵レイヴンとV.Ⅳに破壊された。これ以上の戦闘は意味がない』

 

 レイは思わず息を呑む。

 

 ──621とV.Ⅳが壁越えに成功した。

 歴史通り、いや……それ以上の速度で。

 

 フロイトの視線がこちらへ刺さる。

 レイの意識の揺れを見逃すような男ではない。

 

『こちらは既に撤退準備は終えた。あとはフリーダムだけだ。急いでその場から離脱してくれ!』

 

 解放戦線の声には、退避経路を確保したという確信がこもっていた。

 

 レイは深く息を吐き──短く答える。

 

「……分かった」

 

 次の瞬間、フリーダムの翼が大きく展開。

 蒼い残光が霧を切り裂き、後方へ飛んだ。

 

 フロイトも追撃姿勢に入る。

 刹那、ロックスミスが一歩踏み込む──

 が、その動きは止まった。

 

 霧の向こうへ消えていく蒼光を眺めながら、フロイトがひとつ息を吐いた。

 

「逃げられたか……」

 

 その声に悔しさはない。

 むしろ、次を楽しみにしている狩人の声音だった。

 

 蒼い翼が、壁裏の深い影へ消えていく。

 ロックスミスはしばらくその方向を見つめ、そして静かに姿勢を戻した。

 

 ──この戦いは、まだ始まりにすぎない。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 中央ベリウスの戦場が静まり返った頃──

 アーキバス後方拠点、その冷たい格納庫に重い着地音が響いた。

 

 ロックスミスの脚部が地面を叩き、ガスの抜ける音と共にコーラルの残光が散る。

 整備員たちが距離を保ちながら近づくが、誰もフロイトの機体には安易に触れようとしない。

 “彼がまだ戦闘状態でいる”と、全員が理解していたからだ。

 

 ロックスミスのコックピットが開き、フロイトがゆっくり降り立つ。

 

「スネイル、戻った」

 

 無機質な照明の下、スネイルは振り返ることなく答えた。

 まるでそれすら予期していたような冷静さで。

 

「その様ですね。全く……フリーダムを取り逃すとは。……ですが、収穫は無かった訳ではありませんね?」

 

 フロイトは苦笑し、胸の端末を軽く叩いた。

 

「ああ、お前が欲してたフリーダムの戦闘データだ」

 

 端末から投影されたデータがホログラム化し、蒼い軌跡と不可解な演算波形が空中に散る。

 それは“人間では理解しきれない戦闘思考”の輪郭を描いていた。

 

 スネイルはそのデータを細かく閲覧しながら呟く。

 

「……あのフリーダムは可能な限り我々の手中に抑える必要があります。

 あの異常な技術力は足立重工特有の代物なのは明白です。

 あの機体を捕獲してリバースエンジニアリングすれば、我がアーキバスの技術力が飛躍的に進歩するでしょう」

 

 言葉は淡々としているが、瞳の奥には明確な“欲”が灯っていた。

 フリーダムはただの敵機ではない。

 アーキバスの未来を握る“鍵”だ。

 

 だが──フロイトにとってはそんなことは瑣末だった。

 

「俺としては奴とまた殺り合えるならそれで良い」

 

 その言葉にスネイルの口元がわずかに歪む。

 

「フロイト……あなたはV.Ⅰとしての自覚を持ちなさい」

 

 冷たい叱責のようであり、同時に期待の滲む声音。

 フロイトは肩をすくめながらも素直に応じた。

 

「分かってるさ、第二隊長殿」

 

 フロイトの回答に皮肉も反抗もない。

 あくまで“戦いがあれば満足”というだけの、純粋すぎる狂気。

 

 それが逆にスネイルを苛立たせる。

 

 背を向けたまま、スネイルが低く吐き捨てるように呟いた。

 

「……どいつもこいつも、この私を苛立たせる……!」

 

 冷たい格納庫に、その声だけが鋭く響いた。

 

 アーキバスはフリーダムの影を追い、

 フロイトは再戦を渇望し、

 スネイルは“利用価値”を見定め続ける。

 

 そしてルビコンの戦場は、さらに深い混沌へと沈んでいく──。

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