転生したらCパルス変異波形だったので、ガンダムを作ります。 作:コレクトマン
◆──記録開始。
惑星封鎖機構・監視拠点E-13。観測データログNo.431。
《ALMA:観測モード移行完了。周囲Cパルス濃度……0.03%上昇。誤差範囲外。再確認を要請》
「……おい、またノイズか?」
監視室の端、ヘルマン少尉がモニタへ身を乗り出した。
砂塵で霞んだルビコン北半球の映像が、モニタの奥で揺らめいている。
「ノイズってレベルじゃありません、少尉。ここ数時間、Cパルスの波形が一定周期で跳ねてます」
隣の解析官、リィナ・ハートフィールドが淡々と答える。
彼女の指先が端末を滑るたび、数値グラフが踊った。
「ALMA、異常波形の特定を」
《ALMA:検索中……通常コーラル発振とは非一致。波形構造、位相反転を伴う。識別不能》
「識別不能だと?」
「つまり、“コーラルっぽいけどコーラルじゃない”ってことですよ」
《ALMA:補足——波形分類、仮定ラベル【Cパルス変異波形】を登録》
「……また新種か。封鎖機構が“変異”のラベル付ける時って、いつもろくでもないな」
「前回の“ルビコン幻像現象”もそれでしたね。データだけ残って、実体は誰も確認できなかった」
ヘルマンは椅子を回し、背後の隊員たちに声を張った。
「おい、全監視ドローンの補正レンズを更新しろ。異常波形の中心座標は?」
「北緯22.3、東経114.7。旧工業地帯群“セクタ・グレイ”」
リィナの声に、ヘルマンの眉がぴくりと動いた。
「あの場所は……十年前に閉鎖された旧製造ライン跡地か。まだ電力が生きてたとはな」
《ALMA:補足報告。セクタ・グレイ地下に微弱な電磁活動を検知。人為反応の可能性──27%》
「人為? 誰がだ。ルビコンの地上に人なんていないだろう」
《ALMA:確証なし。該当波形、通常生体波形と部分的に一致》
室内が静まった。
砂嵐が通信アンテナを叩く音だけが響く。
「まさか……幽霊、か?」
若い通信兵がぽつりと呟いた。
「幽霊波形ってやつか。実体がないのに、反応だけ残る……」
リィナは笑いもせず、グラフを見つめたまま答えた。
「でも、感情波みたいなゆらぎがあるのよね。……まるで“思考”してるみたいに」
「やめろ、気味が悪い」
ヘルマンは肩を鳴らし、通信チャンネルを開いた。
「コード47──監視レベルを第二階層へ引き上げろ。映像フィード優先。地表観測班、索敵を開始」
《ALMA:コード47受領。監視モード強制遷移。観測ドローン、稼働率83%》
十数基のドローンが曇った空を渡り、旧工業地帯の上空を旋回する。
錆びた鉄骨群の間で、赤外線がちらついた。
「……映ったわ。熱源、ひとつ。形状……人型?」
リィナの声がわずかに震えた。
画面には、砂の海をゆっくり進む白い影。
全身を光が縁取り、金属の反射では説明のつかない“光の膜”が揺れていた。
《ALMA:解析中。反射波・放射波ともに通常金属比率を逸脱。材質推定不能》
「おい、今のは何だ。LCの新型か?」
「違います。ID応答ゼロ、IFF不明。周波数帯も軍規格外」
「コード21発令、交戦規定Bへ移行。警告信号を発信」
《ALMA:了解。音声送信開始……》
──警告。識別信号を送れ。
──この区域は封鎖機構の監視下にある。
──応答なき場合は、敵性とみなす。
返答はなかった。
代わりに、モニタの奥で“白い閃光”が弾けた。
数百メートル先の砂丘が吹き飛び、観測ドローンの一基が回線ごと消える。
「熱反応急上昇! 出力値、LCの標準兵装を超えてます!」
「何っ!? ALMA、分析!」
《ALMA:光学特性より判断──エネルギー兵装。ビームライフル類似》
「そんな……封鎖圏内に稼働兵器が?」
「おい、今度は空間歪み検知だ! 波形が分裂してる!」
映像の中で“白”が滑るように動いた。
スラスター痕跡なし。砂塵が揺れるたび、残光が尾を引く。
「おい、あれは……幻影か?」
「わからん、でも確かに“存在”してる!」
《ALMA:観測確認。該当体、物理的干渉あり。識別ラベルを更新》
《新規識別コード:WHITE GHOST
発行者:戦術解析AI “ALMA”
承認者:E-13司令ヘルマン少尉》
警報が鳴り響く。
通信兵が震える声で叫ぶ。
「センサー反応、消失! ホワイト・ゴースト、消えました!」
「消えた? 退避したのか?」
《ALMA:否。観測不能——周囲磁場、突発的上昇。未知の粒子反応を確認。該当データ無し》
静寂。
全員が息を呑む。
ヘルマンが、ぼそりと呟いた。
「……幽霊、だと。本当に、幽霊がいるというのか?」
リィナは端末を閉じ、短く息を吐いた。
「“幻影兵器”の方が、まだ可愛い呼び名かもね」
《ALMA:報告締結。
記録名:“ホワイト・ゴースト”。
活動目的:不明。
次回観測時は迎撃準備を推奨。
封鎖維持を継続──End of Log》
赤い空に、再び砂嵐が吹き荒れた。
観測塔の光が沈む頃、遠い地平線で一瞬だけ“白い閃光”が灯る。
それは、ルビコン1における“異端”の第一報だった。
──数時間後。
惑星封鎖機構のE-13基地では、「ホワイト・ゴースト」の再捕捉指令が発令されていた。
その頃、セクタ・グレイでは“幽霊”と呼ばれた者たちが、再び立ち上がろうとしていた——。
◇◆◇
──稼働音。
機械の唸りと、鉄の焼ける匂い。
ファクトリー12の中央炉心が再点火してから、三ヶ月が経過していた。
無数の赤点が行き交う。
実体のない日本兵たちが、幽霊のように制御盤を操作し、無線回線で連携を取っている。
彼らは肉体を失ってもなお、“職人”としての矜持を手放してはいなかった。
【溶接温度安定。接合強度、設計値比で一二〇%】
【右肩装甲の内部配線、エネルギーライン再調整完了】
【センサー群、ノイズゼロ。よし、司令。これで“目”が開くぞ】
【了解。──全班、最終点検に入れ】
レイの声が響く。
天井クレーンが動き、巨大な影が吊り上げられた。
真新しい白の装甲、青の胸部、赤の顎、黄色のダクト。
その塗装はどこか“理想的な均整”を思わせ、金属とは思えないほど滑らかだった。
額のV字アンテナが光を受け、
装甲の継ぎ目からは微弱なコーラル光が滲み出す。
それはまるで、“呼吸”する巨人のようだった。
──RX-78F/AC。
その外装を構成するのは、高密度ガンダリウム合金。
ルビコンのあらゆる兵器素材を凌駕する強度を誇る、新時代の金属だった。
どの時代の兵器にも分類されず、既存ACの規格すら逸脱した異端機。
人間の形を模しながらも、構造は全て再構築された“魂の器”。
【……まるで神話の戦士だな】
【これが、俺たちの身体か】
レイは小さく頷いた。
【違う。これは過去の模倣じゃない。俺たちが“生きるために作った現在”だ】
外装が照明を反射し、白い巨体がゆっくりと顔を上げる。
日本兵たちの赤い光点が一斉に揺れ、歓声が上がった。
【やったぁ! ついに我らの機体が立った!】
【これぞ白き巨人! 鋼の英霊よ!】
【(^q^)ワー、いいれす】
【静粛に!】
【もう少し静かにできんか!】
【ダメだ!】【ダメだ!】【ダメだ!】
【不可能です!】
【喧しくてかなわん!】
【ほんとそれな……】
レイは思わず笑った。
喧しいが、どこか懐かしい──人の温もりがそこにあった。
大本営は満足げに頷き、白い機体を見上げた。
【まるで鬼神だな。一騎当千を目的として作られた最強の機体だ】
【ああ、後は武装試験を終えれば完成だ】
レイはガンダムACの武装リストを確認する。
ビームライフル×1
ハイパーバズーカ×2
ガンダリウム合金製実体シールド×1
ビームサーベル×2
頭部バルカン×2
【これからが本番だ。……武装試験を開始する】
右手のビームライフルを構える。
銃身がチャージ光を帯び、桃色の粒子が空気を震わせた。
【目標、距離二百。旧装甲車両群】
【発射許可、いつでも】
【発射──!】
轟音。
直線状に放たれた光が標的群を貫き、爆炎が巻き上がる。
【命中。熱出力良好。エネルギー損失率、わずか三%】
【ビームサーベルの展開確認】
背部からビームサーベルを抜き、桃色の刃が生まれる。
レイは仮想コースを歩み、切断動作を繰り返した。
光の軌跡が空を裂き、鉄骨を真っ二つにする。
【司令、出力上昇中! 共鳴が暴走します!】
【わかってる、調整値維持!】
安定確認を終えた瞬間、警報音。
ファクトリー全体が赤光に包まれる。
【な、何だ何事だ!?】
【敵襲! 敵襲でーす!】
【何だと!? 何故その程度、察知できんのだ!】
【すみません!】
【言ってる場合じゃない! 管制班、識別と所属は!】
【識別コード──封鎖機構LC部隊! 目標接近中!】
管制スクリーンに映る複数の影。
砂嵐を切り裂くように、五機の飛行兵器が迫っていた。
◇◆◇
◇◆◇ 惑星封鎖機構・E-13監視ログ ◇◆◇
「コード23、現着した」
《ALMA:観測報告。セクタ・グレイ上空に異常光源。照度値、一二〇〇倍。波長、Cパルス域と一致》
「こちらLC-03、視認確認。白いヒトガタの機影を発見」
「サイズは通常ACの一・五倍以上……何だあれは?」
《ALMA:識別不能。AC規格外。構造設計:人型形態。コード21発令、敵性確認を優先せよ》
「了解。全機攻撃態勢へ! コード21、実行!」
「SENTRY部隊、散開! 奴を包囲する!」
◇◆◇
敵封鎖機構のLC、SENTRYの混成部隊がガンダムACを包囲しようと散開した。
【敵機数、五。SENTRY三、LC二! 高度二百から侵入中!】
【司令、こちらで射撃統制システムを担当します!】
【たのむ! RX-78F/AC、バトルオペレーション起動!】
《メインシステム、戦闘モード起動》
COMがメインシステムの戦闘モードを告げると同時に背部スラスターが唸り、白い巨体が砂を吹き上げて地を蹴った。執行部隊のLC二機がミサイルを発射。
【敵弾接近!】
対地ミサイルが降り注ぐ。
レイは頭部バルカンでミサイルの一部を迎撃し、残りのミサイルは盾を前に出して受け止める。
ミサイルによる爆炎を弾き返し、煙の中を突き抜けてビームライフルを構えた。
【反撃──!】
【狙い撃つ!】
光弾が閃き、SENTRYの一機が爆ぜた。
「直撃!? SENTRY-02、損傷90%! 制御不能です!」
「な、なんだこの火力は!? 装甲が蒸発してる!」
《ALMA:敵兵装、未知の高エネルギービーム。対処不能。退避を推奨》
「くっ──コード78! 増援を要請!」
《ALMA:ネガティブ、要請を却下。退避を推奨》
【逃がすか!】
退避命令が響く間に、レイがビームサーベルを引き抜き、もう一機を両断した。
その動きは、もはや“機械”ではなく、“生物”そのもの。
「攻撃続行! 弾幕を張れ!」
「LC-01、再装填急げ!」
【LC二機、包囲行動を開始!】
【高度差を取る気か!】
赤い機体が両翼を広げ、光の網を展開する。
だがレイは冷静だった。
【……見える。遅い】
地を滑るように左へ跳躍、反転、腰撃ち。
放たれた光弾がLCの腹を貫いた。
「LC-02沈黙! 全ユニット、撤退! 繰り返す、撤退せよ!」
《ALMA:通信ログ——“未登録人型体”再確認。被害甚大。退避を推奨》
「くそ、あれは人間の動きじゃない……!」
「撤退コード発令! コード73、全機帰還!」
撤退する敵影を見送り、日本兵たちは歓声を上げた。
【敵最後の一機、撤退を開始!】
【追うか?】
【いや、必要ない。これ以上は場所を晒すだけだ】
レイはビームサーベルを収めた。
肩の装甲が焼け焦げ、左脚部のガンダリウム合金が露出していた。
それでも、機体は堂々と立っていた。
【全システム、稼働率七二%。問題なし。司令、初陣は成功です!】
【……ああ。だが油断はできない。封鎖機構に見つかった以上、奴らはすぐに強化部隊を送る】
【(^q^)ヤツガニゲテイクゾ! センメツ―!】
【いやっ、殲滅しちゃだめから! 場所を晒す気か!?】
【(^q^)ワー! チクショウ!】
ツッコミを入れるレイ。
その下で、日本兵たちが笑い、勝利を分かち合っていた。
【敵がそそくさと逃げていくぞ!】
【不味い飯が恋しいと、お袋に伝えとけーっ!】
【みんな、よくやった! 勝利を握ったぞ!】
【よくやった、大日本帝国にとって輝かしい勝利である!】
歓声の中で、レイはふと呟く。
【……敵を倒しても、何も感じなかった。俺たちはもう人間じゃない。けど、倒した相手は覚えておこう。“人間”を忘れないために】
白い巨体がゆっくりと振り返る。
その双眸が、ファクトリー12を見つめていた。
吹き荒れる砂塵の中、
白い閃光が一度だけ、確かに地上を照らす。
封鎖機構はその記録を“第二種戦闘異常”として残す。
だが彼らは知らない──
この“未登録人型体”が、まだ“目覚め”たばかりだということを。
◇◆◇
惑星封鎖機構の襲撃から九年……
──ルビコン1、北半球。
風は相変わらず鉄と油の匂いを運び、空は今日も赤く濁っていた。
その空の下で、ファクトリー12は静かに──いや、騒がしく稼働していた。
巨大な溶鉱炉が唸り、鋳造ラインの振動が床を揺らす。
溶けたガンダリウムが冷却槽に落ち、白い蒸気が爆ぜた。
電磁クレーンが唸りを上げ、十メートル級の骨格パーツを吊り上げる。
【圧延ラインA、異常ナシ!】
【温度計見ろ! 一三〇〇超えたらまた爆ぜるぞ!】
【了解っ! だが司令! 汗を拭う手がないであります!】
【そもそもお前ら幽霊だろ! 汗も出ねぇよ!】
……そのやり取りに、上層デッキのレイは思わず額を押さえた。
幽霊の日本兵たちは、まるで戦時工場の再現VTRのように騒がしい。
【うおぉっ、クラフトチェンバーの電磁炉が鳴ってるぞ!】
【黙れ、バカ者! 音を聴け、音を! 金属が泣いておる!】
【泣いてるのは司令の胃ですよ……】
万歳エディション特有のハイテンションは健在だった。
“肉体”を失っても、“ノリ”はそのままだ。
ある者は機械油に敬礼し、ある者はコンプレッサーの前で祈りを捧げる。
【戦時下では一滴の油も血と同じ!】
【補給線を軽んじる者は、腹を切る覚悟で臨め!】
【ちょっ……腹はもう無いでしょアンタら!?】
レイは深くため息をついた。
この騒がしさの中で冷静を保てるのは、もはや彼だけかもしれない。
◇◆◇
現在ファクトリーではガンダムシリーズの量産機をACサイズにダウンサイジングしたAC版量産機を製造していた。
格納庫にはガンダムSEEDの量産機”M1アストレイ”が並んでいた。
【M1アストレイ第十五号、装甲組付け完了!】
【対艦刀『村雨』装備試験、準備よし!】
何やら日本兵たちがM1アストレイ用の装備を追加開発しているようだった。その装備は対艦刀だった。
【おいおい……対艦刀って、確かに装備としてはあるけど、なんでその兵装を造ったんだよ……】
【武士の魂であります!】
【いや、どっちかっていうと私情だろ、それ!】
【いーえ、私情ではなく戦術です司令! 魂で切ります!】
金属の甲高い音が鳴る。
天井クレーンが“村雨”の黒鞘を吊り上げた。
漆黒の刃身は、Cパルスを吸い込むように淡く脈動している。
【冶金班、刃厚2.8センチ確認! 硬度は……HRC・不明!?】
【数値が計測不能です! これ以上固いと計器が割れます!】
【それでいい! 浪漫だ!】
【いや、浪漫で整備すんな!?】
M1アストレイの腰側のアタッチメント部分に対艦刀を納める鞘を付け、対艦刀を鞘に収納されていく。
まるで“鎧武者”のようなシルエットだった。
【おい見ろ、アストレイがまるで新撰組だぞ!】
【司令! 命名を!】
【……“壱番機、近藤”でどうだ】
【いい名だぁぁ!】【ありがたや!】【(^q^)ワー!】
……どうやらこの工場は今日も平和だ。この時にレイはため息をついた。
【もういっその事、AC専用の刀でも作るか……?】
もはや投げやりだった。
別ラインでは、量産型AC “GAT-01A1 ダガー”のフレームが整然と並んでいた。
鋼の躯体、均一なセンサー、無駄のない兵装。
整然と動くオートマトン群の中で、日本兵たちが指示を飛ばす。
【第12小隊、出力テスト開始!】
【エネルギーフィード安定!】
【コーラル干渉ゼロ! 流石だ、我が工場の誇りよ!】
【いやお前ら工場じゃなくて工員だろ……】
ダガー部隊の稼働テストが始まる。
整備班がスラスター点火を確認し、電磁脚が地を蹴る。
小型のジェネレーターが低く唸り、排気熱が風を切る。
ハードミリタリーらしい鋼鉄のリズム。
だが音の合間に、確かに“魂の掛け声”が混じっていた。
【ダガー十二号、起動確認!】
【諸君、試運転ではあるが——】
【バンザーイッ!】
【まだ言ってねぇ!!】
鉄の工場に、笑いが広がる。
機械と幽霊が混ざり合うこの音は、もはや生命の鼓動に近かった。
その喧騒の中、大本営——かつての“閣下”が静かに現れる。
背筋の通ったその姿は、軍人というより一国の象徴のようだ。
【司令、順調のようだな】
【……まあ、彼らなりには、ですね】
【ふむ。見ろ、この光景を】
閣下は手を広げる。
彼の視線の先には、動く機械と笑う幽霊が共存する工場。
鋼鉄の中で人の声が響く、奇妙で美しい世界。
【我々は、戦争の亡霊ではない。滅びた“国”の名を掲げるが、創っているのは未来だ】
【未来、ですか】
【そうだ。たとえ人の姿を失っても、志があれば国家は存在する。そして国家とは、戦いではなく“生産”によって続くのだ】
レイは言葉を失った。
彼らは確かに死者だ。だが今ここで、生者以上に生きている。
◇◆◇
休憩室にてレイはくたびれていた。主な原因は日本兵たちのテンションの高さであった。
【司令、休憩をとられては?】
【とりたいよ。主にお前たちのテンションの高さで休みたくても休めねえよ……】
【すまん! 悪かった!】
【ならば茶を淹れます!】
【いや、飲めねぇだろお前ら!】
【いーえ! 香りだけでリラックスできます!】
【お前ら嗅覚すら無いのに……】
【(^q^)ワー! 精神で嗅ぐ!】
【誰かこのノリ止めろ……】
整備班の一角では、どこからか“湯呑み”の幻影が出現していた。
彼ら曰く、Cパルスの濃度を高めると幻の茶を再現できるらしい。
レイはもう止める気も失せていた。
【司令、香りだけでもどうぞ】
【……ありがと】
気づけば本当に、湯気のような波が立ち上っていた。
日本兵が淹れた茶は、なぜか暖かかった。
◇◆◇
そうして日本兵たちの肉体になる量産機の製造が軌道に乗った。
【ダガー、総計五十六機! M1アストレイ十八機!】
【すげぇな……ついに軍になっちまった】
【司令! これで我々は正式に“幽魂帝国陸軍”であります!】
【そんな名前いつ決まった!?】
【閣下が決めました!】
【(^q^)ハイ! いいれす!】
【まじか閣下……】
【気にするな。名前ぐらいは必要だろう】
工場全体に歓声が広がった。
高所に掲げられた古びた旗が、赤い風にたなびく。
白地に赤円、その上に描かれた新たな紋章。
──大日本幽魂連隊・ファクトリー12部隊。
日本兵たちは整列し、見えぬ手で敬礼した。
誰一人、血肉は持たない。
だがその姿勢は、誇りと熱で満ちていた。
【閣下! 次の目標は!?】
【次は……生産拠点の拡張だ。この世界に、“もう一つの帝都”を築く】
【おおっ!】
【おおおおっ!!】
【【【バンザーイッ!!】】】
【酒はどうだ? ──今なら飲めるぞ!】
【うっひょー!】
【(^q^)いいれす!】
【だらしのない奴らだ!】
轟く歓声が、天井の鉄骨を震わせた。
ファクトリー12は今日も生きている。
血も肉もない、けれど魂だけで動く“国”。
その音は、戦場ではなく──創造の音だった