転生したらCパルス変異波形だったので、ガンダムを作ります。   作:コレクトマン

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chapter.02
RaDの派手な歓迎は火傷に注意


 LYNXの整備を終えたレイは、コックピット内で静かに息を整えながら、カーラから送られてきたメッセージの内容を確認していた。

 

『ビジター。このメッセージを見ているということは準備はできたようだね?』

 

 軽い調子の文面とは裏腹に、その内容が意味するところは重い。

 

『内容は、グリッド086を拠点にしているRaD本拠点を目指すことだ。まあ、うちの部下たちが手厚い歓迎が待っているだろうけど、何とか突破しな』

 

 メッセージ内の表示が切り替わり、グリッド086のマップが展開される。

 入り組んだ構造、無数のルート、そしてその奥──ひときわ異質な存在感を放つ、ある機械の画像が映し出された。

 

『最終目的は、RaD本拠点の最奥にあるスマート・クリーナーの撃破だ。私らのことを知っているなら、こいつの性能も知っているだろう?』

 

 巨大な処理機構。

 RaDの象徴とも言える存在であり、正面から相手取れば無事では済まない代物だ。

 

『ビジター、アンタの実力を見定めさせてもらうよ』

 

 通信が切れ、コックピット内に静寂が戻る。

 

「こりゃ……かなり骨が折れそうだな」

 

 思わず零れた本音に、すぐ隣でエアの声が重なる。

 

「しかし……貴方なら出来ると信じてます。私はここで交信し、貴方をサポートします」

 

「分かってるさ。整備班、LYNXの最終確認を頼むぞ!」

 

「了解です!」

 

 外部で忙しく動く整備班の気配が、機体越しにも伝わってくる。

 

「整備班、終了しました。いつでも出られます」

 

 その報告とほぼ同時に、プライベートチャンネルが開いた。

 

《レイ……気を付けて》

 

 617の声。

 短い言葉に込められた感情を、レイは確かに受け取った。

 

「ああ、大丈夫さ」

 

 そう答え、LYNXを起動させる。

 重低音と共に各系統が立ち上がり、機体はゆっくりとカタパルトへと移送されていく。

 

「グリッドへの侵入方法はお任せください。システム解析や改竄には多少の心得があります」

 

「期待してるよ、エア」

 

 エアの自信に満ちた声を背に、最終チェックが進む。

 

「LYNX、発進よろし!」

 

「了解! ……LINX、出るぞ!」

 

 次の瞬間、カタパルトが火を噴き、機体は勢いよく射出された。

 空間を切り裂きながら、LINXはグリッド086へと向かって飛翔していく。

 

 ──RaDの“派手な歓迎”が待つ場所へ。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 グリッド086の入り口付近まで到達したレイは、巨大な構造物を見上げながら操縦桿を握り直した。

 錆びついたレール群と無秩序に増設された設備群が、RaDらしい混沌をそのまま体現している。

 

『これよりグリッド086に侵入します。前方にある垂直カタパルトを使用しましょう』

「……あれだな」

 

 視界に映る、縦方向に伸びた異様な射出装置。

 通常の進入経路を想定していない、RaDならではの荒っぽい構造だ。

 

『システムにバックドアを作成……垂直カタパルト、ロック解除』

「射出準備OKだ、いつでも!」

 

『スチームシリンダー接続。……射出します』

 

 次の瞬間、垂直方向へと叩き出される衝撃。

 LINXは一気に上昇し、グリッド086へと続くレールへ正確に飛び移った。

 

「さてと……ここからが本番だな」

『さあレイ、行きましょう。カーラから信用を勝ち取るために』

 

 スラスターを吹かし、レイは目的地へと機体を進める。

 その動きを待っていたかのように、早速RaDのMTがミサイルやキャノン砲を放ち、LYNXを狙い撃ちにしてきた。

 

『敵の砲撃が来ます!』

「見えてる!」

 

 砲火を紙一重で躱しながら、レイはMTを相手取ることなく、エアが送信したマーカー情報の地点へと一直線に向かう。

 そこに待ち構えていたのは、RaDの番人──“インビジブル・ラミー”が搭乗するAC、マッドスタンプだった。

 

「なんだあ? 見ねえツラだな……ここが誰のシマだが分かってんのか?」

「知ってるさ。カーラやRaDの本拠点だろ? ここは」

 

 会敵と同時に、マッドスタンプの左腕に装着されたチェーンソーが唸りを上げ、LYNXを引き裂こうと振るわれる。

 だが、レイは余裕すら感じさせる動きでそれを回避した。

 

「ボス、見ててくださいよお。この“無敵”のラミーが客人をもてなしてやりますんで!」

 

 威勢のいい言葉とは裏腹に、ラミーの動きは単調だった。

 近づいて殴る、振るう、それだけ。

 そもそも、マッドスタンプのアセンブル自体が時代遅れもいいところだった。

 

『アリーナ登録情報から機体名“マッドスタンプ”と識別。ランキング、最下位です』

「うん、知ってる。こいつの機体のアセンがかなりひどい」

 

 武装はRaD製の特殊ショットガンとチェーンソーのみ。

 それで“番人”を名乗るには、あまりにも心許ない。

 

「俺とマッドスタンプに勝てるもんかよ」

「悪いが、雑魚に付き合っている時間はないんでな!」

 

 レイはガトリングを叩き込み、マッドスタンプのスタッガーを一気に稼いでいく。

 確実に、確実にダメージが蓄積していった。

 

「クソッ……ビジターにしちゃあ、やるな「ダメ押しに連発!」……は?」

 

 その瞬間、LYNXが一気に距離を詰めた。

 そして──蹴る。

 一発ではない。

 まるで足踏みをするかのように、連続で、執拗に蹴りを叩き込む。

 

 それは、本来のACの仕様を逸脱した動きだった。

 

「ヤクに溺れ、いきり立った者をぶち込む!」

「ちょ……まっ……でっ……ぎっ……ぐっ……ばぁっ!?」

 

 怒涛の連続蹴りに、マッドスタンプの装甲が悲鳴を上げ、徐々に歪んでいく。

 

「激しい猛襲! 角度を変えて、ぶち込む!」

 

 踊るように距離を取り、そのまま炸薬弾投射機で爆雷をばら撒く。

 爆風がマッドスタンプを包み込み、APがみるみる削られていった。

 

「う、嘘だろ!? 何だその動きはぁ!?」

「さらに、激しい多重撃!」

 

 追い打ちに右肩の6連ミサイルが突き刺さり、スタッガーとAPが限界に達する。

 

「最後の一撃!」

 

 本命──左肩の連装グレネードランチャー、SONGBIRDS。

 直撃。

 

「おっ俺のマッドスタンプがあーっ!?」

 

 爆散する機体。

 脱出装置が作動したのか、ラミーだけは辛うじて生き延びていた。

 

「少し、遊びすぎたか?」

『……』

 

 僅かな沈黙の後、エアが口を開く。

 

『レイ、一つよろしいでしょうか?』

「ん? どうした」

 

『今のやり方は、日本帝国から教わったのですか?』

「いや、俺独自の操作なんだが……」

 

 なお、この一連の戦闘はカーラだけでなく、621たちにも中継されていた。

 カーラは腹を抱えて笑い出し、621たちはACがあんな動きをする光景に呆然と口を開けたまま固まっていた。

 そして主任は主任で、レイの動きに意味深な笑みを浮かべていた。

 ──いろんな意味で。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 ラミーのマッドスタンプを撃破した直後、グリッド086全域に設置された広域放送用スピーカーから、聞き覚えのある声が響き渡った。

 

『ビジター! こっちが招待したとはいえ、好き放題やってくれているようだね』

 

「一応言うが、RaDの被害はマッドスタンプだけだ。他は全部無視した」

 

 淡々とそう返すレイに、カーラは楽しげに笑う。

 

『だろうね。私らRaDは来る者は拒まないのがモットーだ。せいぜい歓迎しようじゃないか』

「出来れば火傷しない歓迎だといいんだが……」

 

 皮肉を込めたその言葉に、エアが小さく分析を挟む。

 

『……なるほど。せっかくです、招待に応じましょうか、レイ』

 

 エアが乗り気である一方、レイは警戒を解かず、進路上に現れるRaDのMTを必要最低限で撃破しながら進んでいく。

 そして下層区画最奥へと続くゲートを開こうとした、その瞬間──。

 

『待ってたよ、ビジター。約束どおり歓迎しよう』

 

 レイの背後から、複数のRaD製MTと共に、異様な存在感を放つ重MTが降下してきた。

 “おもちゃ箱”の名に違わぬ、トンチキ極まりない変形機構を備えた重MT──トイボックス。

 装甲に包まれた車輪と思われた部分が次々とパージされ、機体は三脚型へと変形する。

 取り巻きのMTがミサイルで援護し、トイボックスは腹部の銃口から容赦のない弾幕を張った。

 

『RaDの多重攻撃、来ます!』

「かなり大胆な歓迎だな!?」

 

 軽口を叩きながらも、レイはクイックブーストで攻撃を躱し、SONGBIRDSのグレネード弾による爆風と炸薬弾投射機の爆雷を巧みにばら撒く。

 爆炎と衝撃が重なり、トイボックスと取り巻きのMTは次々と沈黙した。

 

『へぇ……やるじゃないか』

『ゲートが開きました。先に進みましょう』

 

 エアの報告に従い、レイはさらに奥へと進む。

 辿り着いた先は、巨大な溶鉱炉らしき区画。

 レイは、この場所に“アイツ”がいることを、直感ではなく確信として理解していた。

 

「カーラ、一つ聞いていいか?」

『何だい急に?』

『レイ?』

 

「もしもRaDの本拠点に他の独立傭兵が隠れてたら、そいつの処遇はこっちで任せていいか?」

『別に構いやしないが、どうしたんだ?』

 

「何……ちょっとここで隠れている借金王を捕まえようとな」

『借金王……?』

 

 レイはACが通れるサイズの溶鉱パイプへと機体を滑り込ませ、そのまま進行しながらスキャンモードを起動する。

 周囲を精査した結果、反応は一つ。

 

「ビンゴ。やはりいたようだな」

 

 先手必勝と言わんばかりに、SONGBIRDSを叩き込む。

 それに気づいた独立傭兵ノーザークは、AC“ビタープロミス”を巧みに操作して回避した。

 

「くっ! やはり感づいていたか、取り立て屋! 君たちに返済する道理はない、死んでもらおう!」

 

 ビタープロミスのレーザーハンドガンとBAWS製バーストライフルが、LYNXへと襲いかかる。

 

『確認しました。アリーナランク26位AC“ビタープロミス”、パイロットはノーザーク』

「別名“借金王”だ。それはそうと……」

 

 レイは一呼吸置き、そして唐突に叫んだ。

 

「うらあああ!! 何時まで家賃滞納しとんじゃあ!!」

『!? レイ!?』

『ブッフォwww!!』

「な……何だこいつ!?」

 

 豹変したレイの態度に、エアもノーザークも完全に面食らう。

 だがレイは止まらない。

 まるで家賃を取り立てに来た大家の如く、ノーザークへと迫る。

 

「ウダウダ言ってねえで耳揃えて家賃払えっつってんだろうがぁ!!」

「くっ……どうして分からない……! 借りた金をなぜ返す必要がある!? ある金は活かすべきだ! なぜ理解しない!!」

 

 人としての倫理観が完全に崩壊したその主張に、レイは即座に応じた。

 

「知るかボケェェェ!! 金がねーなら腎臓でもタマキンでも売って金作らんかいおんどりゃー!!」

 

 SONGBIRDSと炸薬弾投射機による多段攻撃が炸裂し、ビタープロミスは無残に撃破される。

 ノーザークは脱出装置によって生き延びていたが、その口からはなおも呟きが漏れていた。

 

「ある金は活かすべきだ……なぜ理解しない……」

 

「お覚悟を……」

 

「!? 誰だ!」

 

 ハンドガンを構えた瞬間、背後から強烈な衝撃。

 ノーザークはそのまま意識を失い、床に崩れ落ちた。

 彼を気絶させたのは、日本帝国に所属する忍びだった。

 

「レイ殿、例の目標を確保いたしました。某はこの者を運びます故……」

「頼むぞ。そいつには我が社でいろいろと働いてもらうからな」

「御意にございます……」

 

 忍びは気絶したノーザークを担ぎ、そのまま闇の中へと消えていく。

 

『今のは……?』

「日本帝国の暗部部隊“SHINOBI”。俺達の影さ」

 

 こうして副目標であるノーザークの確保に成功したレイは、再び本来のルートへと機体を向ける。

 RaD本拠点、その最奥──真の“派手な歓迎”は、まだ終わっていなかった。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 RaDのMTを蹴散らしながら進んだ末、レイはようやく下層区画最奥の入り口前へと辿り着いていた。

 金属の焦げた匂いと、熱を帯びた空気がこの先に待つものの危険性を雄弁に物語っている。

 

『まさかここまでたどり着くとはねえ。けど、一番笑えたのはあの独立傭兵のやり取りくらいか?』

 

「勘弁してくれ。アレは勢いとノリでノーザークを確保したんだ」

 

『その割には、アンタも楽しんでたじゃないか』

 

 カーラの指摘に、レイは返す言葉を失い、短く息を吐いた。

 

『ともかく、その最奥にスマートクリーナーがいるよ。せめて補給してからこっちに来な』

「……そうさせてもらう」

 

 直後、どこからともなく妙にテンションの高い通信が割り込んできた。

 

【茨城県人、ここにありだあぁぁぁっ!!】

 

「……慣れてしまうと何とも思わなくなるな」

 

『レイ……先ほどの独立傭兵ですが、いったいどうするつもりですか?』

 

 エアの問いに、レイは迷いなく答える。

 

「そりゃあ、借金返済さ。それも、家の受付嬢の暗子監修の借金返済法でだ」

『そうですか……』

 

 どこか納得したような、していないような反応を残しつつ、補給シェルパによる弾薬補給と機体の応急修理が完了する。

 準備を整えたレイは、そのまま最奥へと進んだ。

 

 そこに待ち構えていたのは、RaDが保有する作業用MTを改造して作られた自律型大型兵器──スマートクリーナー。

 両腕には金属裁断用の超大型グラインダーブレード、いわゆるライオンシュレッダーを搭載した破砕アーム。

 近づく敵を両腕で擦り潰す、極めて物騒な構造をしている。

 さらに製鋼用の炉を内蔵し、背中の高炉煙突や頭部の排出口から、熱々の銑鉄を火山噴火の如く噴き上げるという、常識外れの攻撃を繰り出す代物だった。

 

『さて、アンタならどう攻略する? ビジター』

 

 カーラの問いに答える間もなく、またしても通信が割り込む。

 

『超巨大双胴強襲ドリル戦艦デュアルアラハバキ接近!』

 

 案の定、巨大兵器を見ると命名せずにはいられない日本兵たちだった。

 

『何だって?』

『超巨大双胴強襲……』

 

「いや、ドリルはドリルでもグラインダーブレードじゃねえか! しかも戦艦でもねえ!?」

 

 ツッコミが炸裂するのと同時に、スマートクリーナーが動き出す。

 

『解体作業を行う無人重機のようですが、性能は侮れません。破砕アームに巻き込まれたら終わりです。……気を付けて』

「ああ。それに、弱点は既に把握している!」

 

 そう言って、レイはSONGBIRDSを構え、スマートクリーナーの顔面にある赤く光る部分へと撃ち込んだ。

 そこはスマートクリーナーの弱点の一つであり、確実にAPが削れていく。

 

『やるじゃないか、ビジター。だが、クリーナーが笑えるのはこれからさ』

 

『行動パターンが変わった……? 危険です』

「……じゃあ、617の再現と行くか!」

 

 レイはLYNXのガトリングをスマートクリーナーのコアへと押し付け、そのままゼロ距離射撃を敢行する。

 凄まじい反動と共に弾幕が叩き込まれ、APが削られ、スタッガー値が一気に上昇。

 スマートクリーナーは一時的な機能障害を起こした。

 

『ガトリングでここまで!? ……無茶をしますね、貴方は!』

「でも、それだけ見合うものだったな!」

 

 止めとばかりに、SONGBIRDS、6連装ミサイル、炸薬弾投射機。

 ありったけの爆発物をスマートクリーナーのコアへと叩き込み、巨大兵器は完全に沈黙した。

 

『敵機システムダウン。完全停止です』

「あー……終わった~……」

 

『ビジター。アンタの腕前、見せてもらったよ』

「とりあえず、お眼鏡に叶ったか?」

 

『十分さ。アンタの目的、認めようじゃないか。この“灰かぶり”のカーラがね』

 

 こうして、RaDの派手すぎる歓迎は終わりを告げた。

 火傷どころか、丸ごと焼き尽くされかねない試練を乗り越えたことで、レイは確かに信用を勝ち取ったのだった。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 レイのLYNXに敗れたノーザークが目を覚ました場所は、薄暗い一室だった。

 

「な……何だここは」

 

 起き上がって周囲を見回すと、そこにあるのは簡素なベッドと洗面台、個室付きトイレ、そして壁に設置されたモニターだけ。

 逃げ場のない、妙に生活感のある空間だった。

 

 すると、突如モニターが点灯し、そこに映し出されたのは──。

 

『あ、目を覚ましたようですね!』

 

「な……何だお前は!?」

 

『私は足立重工の受付嬢、暗子です! ノーザークさん、貴方には多額の借金があると聞きました』

 

 にこやかな笑顔とは裏腹に、その声色は逃げ場を与えない響きを帯びていた。

 

『貴方の借金額1億COAMを暗黒ローンで肩代わりし、利子300%分を足して合計4億COAMとなります!』

 

「な……何だと!?」

 

 あまりにも理不尽な数字に、ノーザークは言葉を失う。

 いつもならACで取り立て屋を排除してきたが、そのACは既にレイのLYNXによって破壊されていた。

 

 絶望が胸に広がった、その時──。

 

『ご心配いりませんよ、ノーザークさん! そんな貴方に借金を返済する方法がございます!』

 

「何っ!? 本当か!」

 

『はい! では、案内いたします!』

 

 その瞬間、ノーザークの足元が音もなく開いた。

 

「何っ!?」

 

 反応する間もなく、ノーザークは穴の中へと落下していく。

 その穴は滑り台のように傾斜しており、抗うこともできないまま滑り続け──。

 

「痛っ……今度はなんだ!?」

 

 辿り着いた先は、さらに薄暗いフロアだった。

 そこには無数のキャタピラが並び、その下は底が見えないほど深い穴が口を開けている。

 

『ここでは自家発電機械により足立重工や他に地域には販売する電力リソースをここで生産しています。特に借金をした人が最終的に送られるお仕置き部屋です』

 

「自家発電……まさか、あのキャタピラのところで走るというのか!?」

 

『その通りです! それにノーザークさんは初心者なので特別に借金早期返済法を教えます!』

 

 暗子の説明によれば、自家発電機械──すなわちランニングマシーンの右側にはゲージが存在し、走れば走るほど上昇するらしい。

 ゲージを上限である赤色の領域まで維持できれば、借金を減らす値が2倍、5倍、最大で10倍にもなる。

 それを「テクニカルラッシュ」と呼ぶのだという。

 

「まさか……借りた金をこの様な形で返済することになるとは……」

 

『他の取り立て屋だったら臓器を売ったりモルモットにされたりするよりこちらの方がまともだと思いますよ?』

 

 その理屈が正しいのかどうか、ノーザークには判断できなかった。

 

『……という訳でノーザークさん。借金返済のために、レッツランニング!』

 

「まて! 私はまだやると決めた訳では……!?」

 

 その後、ノーザークの悲鳴が途切れることはなかったという。

 

 一方その頃──。

 

 レイたちはカーラの信用を勝ち取り、本来の愛機であるデスティニーをRaDの手によって運んでもらっていた。

 なお、デスティニーの操縦桿を握っているのは617である。

 

「悪いな617、機体を運んでもらって」

 

《ん……レジェンドの操縦練習になったから大丈夫》

 

「アンタ等、結構仲が良いんだね?」

 

《ん……レイは、命の恩人》

 

「出会いは本当に偶然だったけどな」

 

 穏やかな空気の中、別チャンネルから声が入る。

 

《ところで、ノーザークを確保して何処に送ったの?》

 

「あー……あいつか? あいつは今、お仕置き部屋に送られたと思うぞ」

 

「お仕置き部屋? 何だいそれは」

 

「まあ簡単に言うと、自家発電のランニングマシーンで強制的に走らされる自家発電エリアだな。しかも暗子監修だからノーザークの借金を暗黒ローンが肩代わりする形でノーザークを逃がさないようにした感じだな」

 

 レイは苦笑いを浮かべるが、カーラたちはその“お仕置き部屋”がどれほどのものなのか、想像すらできなかった。

 

 こうして、RaDの派手な歓迎は幕を閉じる。

 火傷どころでは済まない試練と、忘れがたい後始末を残しながら──。

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