転生したらCパルス変異波形だったので、ガンダムを作ります。 作:コレクトマン
うp主「仕事が増えて執筆時間がなかった……」
レイ「……本音は?」
うp主「アークナイツエンドフィールドをやって、ハマりすぎて全然進んでなかった」
レイ「KO☆RO☆S」
うp主「はい死んだ~!」
バンッ!!
レイ「うp主の代理に謝罪します。遅れてすみませんでした。29話です」
グリッド086の倉庫にて、二人は自身に貸し与えられた機体──デュエルとバスターのスペック表を手に、無言で睨み合うように確認していた。照明に照らされた倉庫内には、整備を終えた二機の人型機動兵器が鎮座し、その装甲表面は新品同様の鈍い光を放っている。
「こいつは……デュエルっていったか? 装甲は元はフェイズシフト装甲なんだが、近代化改修を施した結果VPS装甲に変更したってことだけか。武装は57mmビームライフルに頭部バルカン砲塔、ビームライフル銃身下部に取り付けられている175mm単発グレネードランチャーにビームサーベル、んで最後に対ビームコーティングを施した実体シールドか。……つーか武装が少ねえだろ!?」
苛立ち混じりの声が倉庫に響く。
「そっちはまだいい方だろう? こっちは武装がかなり多すぎるぞ……」
そう言って、もう一人は手元の端末を差し出した。表示されているのは、もう一機──バスターの詳細な武装一覧だった。
両肩に装備された220mm径6連装ミサイルポッド。
右腰アームに接続されるレールガン方式の散弾砲、350mmガンランチャー。
左腰アームに接続される大型ビームライフル、94mm高エネルギー収束火線ライフル。
ガンランチャーを前面に向け、収束火線ライフルを後に連結した広域制圧モード──対装甲散弾砲。
収束火線ライフルを前に、ガンランチャーを後に連結した高威力・精密狙撃モード──超高インパルス長射程狙撃ライフル。
近接武装こそ存在しないものの、その火力と用途の幅広さは、どう考えてもバスターの方が上だった。
倉庫内に沈黙が落ちる。二人の視線は、デュエルとバスターを交互に行き来し、まるで「どちらがより面倒な代物か」を無言で競っているかのようだった。単純な武装数の差だけではなく、扱い切れるかどうかという問題が、じわじわと現実味を帯びてくる。
「前まではタンクでやってたが、人型なんざ久方ぶりだぞ……」
低く、少しだけ懐かしむような声が漏れる。
「しかも連結機能って、普通考えねえぞこんな武装……」
呆れと警戒が入り混じった言葉に、倉庫の空気がわずかに重くなる。人型に戻ったこと自体もそうだが、問題はその“癖の強さ”だった。操作系統、射撃感覚、重心移動──どれもACとは違う系統であることもあって一朝一夕で慣れるような代物ではない。
そのとき、不意に倉庫の入口側から軽い足音が近づいてきた。
「おーいっ二人とも、ちょっと仕事があるぞ」
気の抜けた調子の声が、張り詰めた空気をあっさりと切り裂く。
「ああっ?」
「仕事?」
二人が同時に振り向く。その視線の先には、まるで今の空気など意に介していない様子で立つ人影があった。嫌な予感が胸をよぎる中、次に告げられる“仕事”の内容が、これからの運命を大きく左右することになるのだと──この時点では、まだ誰も確信していなかった。
◇◆◇
ある部屋にて、集められた面々が簡易ブリーフィング用の卓を囲んでいた。レイを中心に、レイヴンである621と617、日本兵たち、そしてレッドガン所属のイグアスとヴォルタが並ぶ。壁面モニターには惑星ルビコンⅢの一部地図が投影され、中央氷原とアーレア海が淡く強調表示されていた。空気は静かだが、これから厄介な話が始まることを全員が察している。
「ベイラム・インダストリーから依頼が来ています。この仕事にはレイヴン宛に名指しの依頼になります」
淡々とした報告とともに、補助AIが依頼概要を表示する。同時に、保存されていた音声データが再生された。その声は、レッドガンの六人目──G6レッドのものだった。
『G13レイヴンに伝達! ベイラム本社から直々の依頼だ』
室内の視線が自然と621に集まる。
『内容は、数日前にウォッチポイントから放出したコーラルがアーレア海先にある中央氷原にて収束する現象が確認された。だが、確証を得るために貴様にはその先行調査を依頼したい』
《中央氷原……》
地図上で示された氷に覆われた大地を見つめながら、短く思考が走る。
『無論、アーキバスもこの情報を知っているため先に向かっているようだ。アーキバスには妙な噂が流れているとの情報が確認されているが気を引き締めていくように。G13レイヴン! 確実な遂行を期待する!』
音声はそこで途切れ、室内に再び静寂が戻った。
「依頼内容は以上になります」
「先行調査となると、現場に着く早さが必須となるか……」
「しかし、ミレニアムの潜水機能を活かして氷原地帯に向かうのはどうでしょうか?」
提案に対し、地図を見つめていたレイは小さく首を振る。
「いや、ベイラムはアーキバスより先に利益を得たいんだ。一分一秒でもな……」
その言葉には、企業同士の熾烈な争いが滲んでいた。時間をかける選択肢は、最初から除外されている。
「まあ……ちょうどいいタイミングというか、なんというか。カーラ、確かこのグリッドの上層区画に備え付けられた大陸間輸送用”カーゴランチャー”があったな?」
「ああ、あるさ。まさかと思うけど、ビジター……アレを使うってのかい?」
「あっちの方がミレニアムの潜航速度より速い。ミレニアムだと早くても1~2日、カーゴランチャーなら3時間だ」
その瞬間、室内の空気が一段階重くなった。“カーゴランチャー”──通称、積荷大砲。人員輸送を前提としない代物だ。
《でも、この依頼は私宛の依頼だけど……》
「依頼には単独で行うようにとは記載されてはいないし、言われてもないだろ?」
《ん……ちょっと屁理屈》
小さなやり取りの裏で、嫌な予感が現実味を帯びていく。
「まあ……ちょうどいいテストにはなるんじゃないか?」
「げ……!」
「おい……なんで俺達をみるんだよ」
露骨に視線を逸らす二人に、背後から楽しげな声が飛んだ。
「あらら~? まさかビビっちゃった? アハハハハッ!!」
「「……ああ?」」
その一言が、完全に火を点けた。挑発は正確に心を撃ち抜く。
「テメェみたいなAC擬きに言われる筋合いはねえ。やってやるぞゴルァ……!」
「誰がビビってるってんだ! 俺達をなめんじゃねえぞ……!!」
「そいつは上々。じゃあ決まりだな」
こうして話はまとまった。
中央氷原へ──通常ではあり得ない手段で。
それがルビコンでは“名物”と呼ばれる所以だと、この時点ではまだ、誰も笑えずにいた。
◇◆◇
三機──621のloader4改、イグアスのデュエル、ヴォルタのバスターは、グリッド086上層区画へと続く上昇用リフトに乗り込み、そのまま巨大な縦穴を滑るように上昇していく。金属が軋む低音と、機体重量を受け止める駆動音がリフト内に反響していた。
本来であればレイも同行したいが、今後の話し合いや根回しを考慮し、戦闘は621たちに任せる判断が下された。カーゴランチャーの確保が確認され次第、合流する手筈になっている。
エアはすでにボディをミレニアムへ送り戻し、Cパルス変異波形の状態で621をサポートしていた。
なお、イグアスだけは例外だった。
彼はエアの声──Cパルス変異波形を、はっきりと聞き取れている。かつてコーラル管理デバイスを賭け事で失い、負け損の末に“モルモット”として怪しい医者の手で強化人間手術を施された過去がある。621たちと同じ第四世代の強化人間。
他の声は、まだ耳鳴りのようにしか認識できない。それでもエアだけは、妙に鮮明だった。
『始めるよ、ビジター。案内は任せな』
《カーラ、道案内をよろしく》
リフトが停止し、上層区画へのゲートが開く。
「マジかよ……こいつ」
「この機体……乗ってみて分かるぜ! こいつ、タダもんじゃねえ……!」
操縦を始めた瞬間、イグアスとヴォルタは嫌でも理解させられた。
デュエルとバスタ──―その反応速度、推力配分、制御系の完成度。これまで乗ってきた自身のACと比較して、明らかに“格”が違う。慣熟が追いついていないにもかかわらず、機体の方が操縦者を待っている感覚すらあった。
『リフトで上った先はグリッドの天辺。外殻に当たる区画だが……残念ながら、そこは私らの縄張りじゃない。分かるかい?』
《封鎖機構の仕業……》
『その通りだビジター。封鎖機構が衛星軌道から睨んでやがるのさ。ドーザーってのは総じて頭のネジが緩い。度胸試しに向かう奴もいたが……結果はお察しさ』
「つーことはだ……」
「俺達は、その封鎖機構の衛星軌道からの攻撃を躱しながらカーゴランチャーに向かうってのかよ!?」
『そういうこったね。ま、あんた等も運がなかったね』
【上層に到着しました。マーカー情報を送信します】
三機は同時に外へと踏み出す。
眼前に広がるのは、グリッド外殻──遮蔽物の少ない高高度区画。カーラの言葉どおり、衛星軌道から常に監視しているかのように、赤い照準用レーザーが無数に地表を這っていた。
【カーラの言う通り……この高度は封鎖機構の狙撃圏内になっているようです】
「ちっ……面倒なところだな」
「どうするよ、屋根を上手く利用してあそこまで渡りきるか?」
《……先に行く》
短い意思表示と同時に、loader4改のブースターが火を噴いた。
躊躇なく前へ──カーゴランチャーへ向けて一直線に加速する。
「はっ?」
【……っ!? レイヴン!?】
照準用レーザーが、即座にloader4改を捕捉する。
『立入禁止区画への侵入者を検知。対象を排除します』
次の瞬間、衛星軌道から一筋の破壊光が降り注いだ。
しかし621は慌てない。真上から落ちてくるその軌道を見切り、タイミングを合わせてクイックブースト。
レーザーは空を裂くだけに終わり、loader4改は何事もなかったかのように走り抜け、そのままカーゴランチャーの“弾”である巨大コンテナへと向かっていく。
「あの野郎……平然と通り過ぎやがった……!」
「おいっイグアス、まさかと思うが……」
「ヴォルタ、お前は屋根とか上手く活用して上のレーザーを躱しながらついて来い。俺も行くぜ」
「おい、イグアス!?」
こうして、逃げ場のない高度での“度胸試し”が始まった。
ルビコン名物──積荷大砲による有人射出。その前段階にして、すでに命懸けだった。
◇◆◇
カーゴランチャーへの道のりは短いようでいて、実際にはやけに長く感じられた。最大の難所は単純明快──隠れるための屋根が、どこにも存在しないという一点だ。
だが621にとっては、それほど問題ではなかった。1周目、2周目、そして3周目を経験してきた身だ。衛星軌道から降り注ぐあのレーザーの癖も、照準が絞られる間の僅かな間も、すでに身体が覚えている。タイミングさえ外さなければ、恐れる相手ではない。
【レイヴン……できればあまり無茶をしないでください】
《ごめんエア。でもこっちはあのレーザーには慣れているから……》
【慣れているとはいえ、こちらは心配するんです】
通信越しの声には、はっきりとした感情が混じっていた。それでも621は速度を落とさない。
その背後から、ブースター音が近づいてくる。
「よう……追いついたぜ、野良犬」
《イグアス……ヴォルタは?》
「おいイグアス! テメェ置いていくんじゃねえ!」
遅れて、ヴォルタのバスターも姿を現す。二機とも、レーザーを紙一重で躱しながら、ほとんど無理やりここまで追いついてきたようだった。
『……ここからは隠れる場所はなさそうだね』
【強行突破するしかないようです】
「マジかよ……」
遮蔽物は完全に途切れ、前方にはカーゴランチャーが鎮座する区画が見えている。そこへ至るまで、文字通りの丸裸だった。
「どの道行くしかねえんだ。先行ってるぞ、野良犬!」
《あっイグアス!》
言うが早いか、イグアスのデュエルが前に出る。それを追うように621もブースターを吹かした。
道中、封鎖機構の無人機が迎撃に現れるが、二機は動きを止めない。最低限の迎撃だけを行いながら、衛星軌道からのレーザーを紙一重で躱し続ける。その連携は、初めて組んだとは思えないほど噛み合っていた。
「……ええい、こうなりゃ被弾覚悟で突っ込むしかねえ!」
ヴォルタの声とともに、バスターが一気に加速する。
621とイグアスは進路上の無人機を撃破しながらも封鎖機構の衛星狙撃を躱しながらも衛星狙撃地点から外れることに成功する。
『……まさか機体ひとつで封鎖機構の狙撃を躱す奴がいたとはね。それも二人……やるじゃないか、ビジター』
《イグアス、大丈夫?》
「ハッ! テメェに出来て俺に出来ねえことはねえ。そんだけだ」
「おいイグアス、テメェふざけんなよ!」
遅れて到着したヴォルタのバスターは、装甲の一部が焼け焦げ、ところどころ剥がれていた。レーザーを掠めた痕跡だ。それでも致命傷ではない。突破できた──その事実が、全てを物語っていた。
『侵入者が衛星狙撃地点を突破。脅威レベルを引き上げます』
機械音声が淡々と告げる。
『封鎖施設に接近する侵入者を検出』
次の瞬間、無人機が次々と呼び集められ、迎撃態勢へと移行する。今度は見逃すつもりはない、という意思表示だった。
【カーゴランチャーまであと少しのところ……!】
『やれやれ……せっかくだ、ついでに掃除を頼もうか? ビジター』
《了解……!》
621は右手の軽レーザーショットガンで無人機を迎撃しつつ、左手の装備をパルスブレードから炸薬弾投射機へと切り替える。そのまま無人機の進路に爆雷をばら撒き、連鎖する爆発でまとめて吹き飛ばしていく。
「へっ! 封鎖機構の無人機なんざに苦戦するかよ!」
「まあ、この鬱憤をてめえらで晴らさせてもらうぜ!」
イグアスは57mmビームライフルで確実に無人機を撃ち抜き、ヴォルタは両肩の220mm径6連装ミサイルポッドからミサイルを放って迎撃する。さらに隙を見て、ガンランチャーを前面に、収束火線ライフルを後方に連結。
広域制圧モード──対装甲散弾砲が火を噴き、周囲の無人機をまとめて粉砕していった。
こうして三機は、カーゴランチャー目前の空域を制圧する。
だがこれはまだ前座に過ぎない。
本番──“積荷大砲による有人射出”は、これからだった。
◇◆◇
無人機を全滅させ、ついにカーゴランチャーを確保した三機は、短い静寂の中で息を整えていた。破壊された残骸がゆっくりと落下し、遠くで金属音が反響する。だが、その静けさは長くは続かない。
『……片付いたみたいだね。カーゴランチャーを起動しようか』
《エア、どのコンテナに乗ればいい?》
【あれです、コンテナにアクセスしてください】
指定された巨大コンテナは、すでに射出準備状態にあり、外装には無機質な固定用アームと警告灯が点滅している。
『あとはアンタ等がそいつに乗り込んで……』
【……待ってください、上に敵性反応!】
【Die, you Jap!】
警告と同時に、上空から影が落ちてきた。
現れたのは六本足の異形──封鎖機構が接収し、グリッド086最上層防衛に配備していたC兵器、“IA-13:SEA SPIDER”。
別名ルビコニアンデスマツボックリ、ルビコニアンデスフワライド。
さらに異常なのは、コーラルジェネレータ内にいるエアやレイたちと同じ、Cパルス変異波形を持つ“米兵”が、このシースパイダーを操っている。
【!? この機体は……】
『超高速巡洋レーザー空母”シュトゥルムシュトラーム”発見!!』
《えーと……何?》
【Let’s Gun Fire!】
『超高速巡洋レーザー……』
【命名は後です! レイヴン、注意を!】
次の瞬間、シースパイダーから放たれた無数のコーラルレーザーが弾幕となって降り注いだ。
回避が一瞬でも遅れれば、機体は蒸発しかねない密度だ。
「くそっ!? なんだ、この蜘蛛擬きはよぉ!?」
『……アンタ等、まずいのに絡まれたよ。C兵器シースパイダー型……ろくでもない技研の遺産が……こんな所に配備されていたとはね……!』
【Three enemy aircraft! Shoot them down! Fire!】
レーザーが地面を焼き、空気が震える。
「くそっ! こいつから……耳鳴りがしやがる!!」
『兵装5! そいつは米兵だ、注意しろ!』
「ああっ? 米兵ってなんだよ!?」
「んなこと気にしてる場合かよ、イグアス! ただでさえこのバケモンはオープンチャンネルで叫んできやがる!」
《うるさい……日本兵たちみたい》
【ジェネレーターからコーラル反応……確かに通常の機体ではない……レイヴン、注意を】
《分かってる。いつもと変わらない》
しびれを切らしたのか、シースパイダーは六本足の先端を展開し、内蔵されたコーラルレーザーの“爪”を振り下ろすようにして621へと突進してきた。
【Die! Die! Die!!】
「この蜘蛛ヤロー……野良犬ばっかりに目向けてるんじゃねえ!」
イグアスが反撃に出る。ビームライフル銃身下部の単発式グレネードランチャーが火を噴き、爆発がシースパイダーの装甲を抉った。
続けざまにヴォルタが、収束火線ライフルを前に、ガンランチャーを後に連結。
高威力・精密狙撃モード──超高インパルス長射程狙撃ライフルの一撃が、装甲の隙間を正確に貫く。
【You fucking bastards!】
怒号とともに、シースパイダーは六本足を大きく広げた。
次の瞬間、それらをヘリコプターのフィンのように回転させ、重力を無視するかのように浮遊し始める。
「マジかよ……!? 飛びやがったぞ!?」
『おいおい……飛んじまいやがったよビジター? うちの商品開発に活かせないかね?』
驚愕するカーラとヴォルタとは対照的に、イグアスと621の反応は薄い。
「似たようなものなら見たことあるからなんとも言えねえな」
《私の場合は戦ったことがあるからなんとも言えない》
【レイヴン、イグアス。その様な薄い反応をしても私たちは初めてみるのですが……】
空中で唸りを上げるシースパイダーを前に、三機は再び構え直す。
カーゴランチャーはすぐそこだ。
だが“名物”に辿り着く前に、もう一つ──とびきり厄介な関門が立ちはだかっていた。
上空に滞空するシースパイダーは、その苛烈さを一切緩めることなく、コーラルレーザーを撃ち続けていた。空間そのものが焼かれ、照準用の残光が幾重にも重なって視界を埋め尽くす。
【You bastard!!】
《あの機体……空で私たちを嬲り殺しにするつもりかもしれない》
【しかし、あの機体の見た目の重量からして長くは飛べないかもしれません。スタッガーさせれば落下するかもしれません】
「……だったら、こいつでどうだ!」
ヴォルタが動いた。
両肩の220mm径6連装ミサイルポッドが一斉に火を噴き、飽和するほどのミサイルがシースパイダーへと殺到する。さらに間を置かず、対装甲散弾砲を叩き込み、厚い装甲を削りながらスタッガー値を確実に蓄積させていく。
そこへ続くように、621が軽レーザーショットガンのエネルギーをチャージ。短距離で収束させたレーザーを、至近距離から叩き込んだ。
【Oh, damn it!】
《ダメ押しにもう一手……!》
621は右肩のSONGBIRDSを展開し、二発のグレネード弾を放つ。直撃。
耐えきれなかったシースパイダーはスタッガー状態に陥り、六本足の回転が乱れ、そのまま空中で失速して墜落した。
【シースパイダー、過負荷状態! 今です、レイヴン!】
《うん。イグアス……》
「言われずとも……!」
621は炸薬弾投射機を解除し、パルスブレードへと切り替える。
イグアスは57mmビームライフルを右サイドスカートアーマーに懸架し、バックパックからビームサーベルを引き抜いた。二機は同時に加速し、落下するシースパイダーへと突撃する。
【Don't come, you bastard!】
《これで終わり! そして……》
「さっきからテメェの声が耳鳴りの様に喧しいんだよ!!」
二人の攻撃が同時に叩き込まれる。
パルスブレードとビームサーベルが、シースパイダーの胴体を深く貫いた。
ダメージ許容限界を超えた機体は、悲鳴のような金属音を上げながら爆発を始める。
【敵機システムダウン……。ジェネレータが爆発します!】
【Medic, Medic!】
【Negative! Negative!】
【Ah, damn it……Nooooo!!?】
断末魔が空間に響き渡り、次の瞬間、シースパイダーは爆散した。破片とコーラルの残光が霧のように散り、やがて静寂が戻る。
【レイから聞いてはいたのですが、コーラルを動力にする機体をこの目にするのは初めてです……】
その余韻の中で、通信が割り込む。
『面白いものを見せてもらったよ、ビジター』
『こっちも遠くから見てたぞ。イグアスにヴォルタ、どうやらデュエルとバスターを上手く使いこなせてる様だな?』
「ちっ……テメェだけ遠巻きに見物かよ……」
『そう言うなって。おかげでいいデータが取れたんだからさ(……と言っても、まさかシースパイダーに万歳エディションの米兵がいるなんてな。これはもしかして、あのデスワームも……?)』
戦闘は終わった。
カーゴランチャーは、もう目の前だ。
だがこのルビコンでは、戦いが終わった“後”こそが、本当の意味での地獄の始まりになる──そんな予感だけが、静かに胸の奥に残っていた。
◇◆◇
シースパイダーを撃破し、カーゴランチャーを確保した621たちは、合流してきたレイと短く状況を確認した後、すぐさま“弾”となるコンテナへと乗り込んだ。
コンテナ内部は本来、人型機動兵器を想定した作りではない。固定用のアームと最低限の制御系があるだけの、あくまで物資輸送用の箱だ。
なお、構造上ACは二機までしか搭載できないため、レイと621、イグアスとヴォルタはそれぞれ別のコンテナに分かれて搭乗することになった。
『ところで、イグアスだったけ?』
「ああっ? 何だよ……」
『あんたビジターとは結構気にしているようだね? ビジターに惚れているのかい?』
変なことを聞かれて顔が真っ赤になるイグアス。
「ばっ!? 誰が野良犬に惚れるってんだよ⁉」
『あたしは別にウォルターの猟犬のことを言っているんじゃないよ。その反応からして、気になるには気になるって感じだね?』
「て……テメェ、図ったな!? このクソババアッ!?」
「おい馬鹿っ!? 女性にババアなんて言うんじゃないよ!?」
言い争いが続くその裏で、コンテナは別のコンテナと連結され、静かに発射体制へと移行していく。固定アームが締まり、内部に低い振動音が満ち始めた。
『おやおや……悪かったよ。……ああ、それからもうひとつ。こいつはあくまで物資輸送のための代物だ』
「ああ? それがどうだってんだよ?」
「要するに、このカーゴランチャーは有人射出を想定してない。最悪死ぬ場合があるってことらしい」
「おいおい……それってつまり……!」
《凄い衝撃が射出と着地に起きるってこと》
【レイヴン!?】
レイの説明に青ざめるヴォルタ。
カーゴランチャーのデメリットを621が説明し、エアが驚く。
『そう言うこったね。有人で打ち出されるのは、あんた等が初めてになるだろうね』
「まあ、射出系ジェットコースターだと思えばいい。ただし、衝撃は死ぬかもしれないレベルだけどな。けど、その程度なら問題ないだろ?」
「「問題しかねえぞ、馬鹿野郎っ!?」」
【恐らくもう引き返せない……】
《ん……二人とも、口閉じていて。舌嚙むよ》
その直後、カーゴランチャーの制御音が一段階高くなり、発射準備完了の表示が灯る。
次の瞬間、凄まじい衝撃とともに、レイたちが乗り込んだコンテナが中央氷原地帯へ向けて撃ち出された。
『面白いあんた等に、幸運を祈るよ……』
ルビコン名物──“積荷大砲”による有人射出。
その第一号が、今まさに空を裂いて飛び去っていった。
◇◆◇
一方で、カーゴランチャーが射出される様子を遠くから見ている者がいた。
その者はアーキバス系列の機体構成で出来たACで、そのデータログにはデュエルとバスター、そして621のloader4改とレイのデスティニーのデータが記録されていた。
「まさかデュエルとバスターをこの世界でもお目にかかれるとは思いもしなかったよ……」
遠くで見ていたものの正体は、ラウ・ル・クルーゼだった。
クルーゼ専用AC”ネームレス”で621達の行動を監視していたのだ。
とくにデスティニーを見たクルーゼは、C.E.の盟友である”ギルバート・デュランダル”が開発陣と共に手掛けた機体デスティニーガンダムがこの世界にあることにも多少は驚いた。
「あれを動かすパイロットも気になるが、向こうから自ら出向くだろう」
クルーゼは記録したデータを持ち帰るためこの場から離脱するのだった。
クルーゼの狙いが再び人類の粛清なのか……。
今のレイ達は気づくこともなかった。