転生したらCパルス変異波形だったので、ガンダムを作ります。 作:コレクトマン
レイがフリーダムで出撃する数十分前。
ウォッチポイントデルタのミサイル発射地点には、既に621と617の姿があった。
カーラに誘われたのだ。
曰く、面白い打ち上げ花火を見せてやる、とのことだった。
もちろん、普通の花火ではない。
RaDが用意した大型ミサイル。
封鎖機構の後ろ盾を得て調子づいたジャンカー・コヨーテスへ向けて打ち上げられる、物騒極まりない花火である。
「どうやら来たようだね、ビジター」
カーラの声が通信越しに響く。
621は周囲に配置された巨大なミサイルを見上げていた。
発射台に固定されたそれらは、ただそこにあるだけで十分な威圧感を放っている。
《ん……花火、少し気になる》
617が静かに呟いた。
彼女の視線もまた、大型ミサイルへ向いている。
普通の花火を想像しているわけではないだろうが、それでも“打ち上げる”という言葉には何かしら興味を引かれるものがあったらしい。
《花火と言ってもちょっと違う花火だけどね、617》
621が苦笑するように返す。
その時、RaDの通信担当であるチャティ・スティックから連絡が入った。
『ビジター。お前宛のメッセージが今届いた。レイヴンの方だ』
《私に……?》
621がわずかに反応する。
カーラも興味を引かれたように、すぐさま指示を出した。
「そいつは気になるね。チャティ、開きな」
通信データが展開される。
流れてきたのは、聞き慣れた、やたらと勢いのある声だった。
『G13レイヴンに伝達! これはベイラム本社より承認された軍事作戦だ!』
《ベイラム? ……あー、忘れてた》
621は小さく呟いた。
ベイラムからの依頼。
それもG13レイヴン宛て。
カーラの打ち上げ花火を見物するつもりだったが、どうやらそうもいかなくなったらしい。
『アーキバス占領下にあった“壁”を巡り、解放戦線が動いたようだが……結局は両者とも惑星封鎖機構に制圧された! それが目下の状況だ!』
ベリウス中央地方の壁。
かつてアーキバスが占領し、解放戦線が取り戻そうとしていた要衝。
しかし封鎖機構の介入によって、その構図は崩れた。
企業も、解放戦線も、そこを完全には保持できず、今や封鎖機構の執行部隊が展開している。
『……だがこれは、我が方にとってアーキバスから漁夫の利を取り返す好機とも言える! 貴様には当該地点へと侵攻し、配備途中の惑星封鎖機構執行部隊を殲滅してもらいたい!』
ベイラムらしい発想だった。
アーキバスが一度得たものを、封鎖機構が奪った。
ならば、その混乱に乗じてベイラムが取り返す。
そのために、G13レイヴンを投入する。
『未確認だが、敵方戦力には新型機体と思わしき機体も含まれているという。可能ならそれを撃破してくれ。……G13レイヴン! 確実な遂行を期待する!』
メッセージはそこで終わった。
ミサイル発射地点に、少しだけ沈黙が落ちる。
《新型機体……? HCじゃなくて?》
621は首を傾げた。
封鎖機構の新型戦力と言われれば、まず思い浮かぶのはHCやLC、あるいはエクドロモイのような特務機体だ。
しかし、わざわざ“新型機体と思わしき機体”と表現されたことが気にかかる。
エアもまた、警戒するように言った。
「もしかしたら、以前主任が回収した疑似太陽炉と関係あるのでしょうか?」
主任がヒアルマー採掘場から持ち帰った疑似太陽炉。
封鎖機構がそれを持っていた理由は、まだ分かっていない。
もし今回の新型機体がそれに関係しているのなら、単なるベイラムの依頼では済まない。
《分からない。でも……警戒しておくことに越したことはないよ。……617はどうする?》
621が問いかける。
617は少しだけ考えた後、静かに答えた。
《ん……ここでレイを待ってる》
レイはまだ来ていない。
ミレニアムからこちらへ向かっている最中のはずだ。
カーラの打ち上げ花火には、レイも呼ばれている。
617はそのままRaD側に残り、レイの到着を待つつもりだった。
「どうやらベイラムは前回の壁越えが出来なかったことに固執しているようだね。ビジター、アタシらは先に打ち上げ花火の準備をしておくよ」
カーラの声には、軽さの中に少しだけ呆れが混じっていた。
ベイラムもアーキバスも、封鎖機構が介入してなお、壁という場所にこだわっている。
だが、それがルビコンの勢力争いというものなのだろう。
621は短く頷いた。
《ごめんカーラ、行ってくる。エア、サポートお願い》
「分かりました、レイヴン」
エアの声が、すぐに応じる。
621はloader4の起動準備へ入った。
久しぶりに乗る、慣れ親しんだ機体。
金色のオルトゥスではない。
自分の手足として動かせる、あのACだ。
カーラの打ち上げ花火を見ることはできなくなった。
だが、ベリウス中央地方の壁に現れた封鎖機構の新型機体。
それが疑似太陽炉に関係するものなら、見過ごすわけにはいかない。
loader4が出撃位置へ移動する。
621は操縦桿を握り、前方のモニターに映る出撃ルートを確認した。
エアが静かに告げる。
「ミッション目標は、ベリウス中央地方の壁に展開する封鎖機構執行部隊の殲滅。敵新型機体の存在にも注意してください」
《うん。行こう、エア》
loader4が発進する。
カーラたちのいるウォッチポイントデルタを後にして、621はベリウス中央地方の壁へ向かった。
その先で待つものが、封鎖機構の通常戦力だけではないことを、薄々感じながら。
◇◆◇
loader4は、ベリウス中央地方の壁へ到着した。
巨大な構造物が、雪と灰色の空の中にそびえ立っている。
かつてアーキバスが占領し、解放戦線が奪還を狙い、そして今は惑星封鎖機構が制圧した場所。
その周辺には、既に封鎖機構のMT部隊やLCと思われる機影が点在していた。
ベイラムからの依頼は、ここに展開する執行部隊の殲滅。
目的は明確だった。
『ミッション開始です。壁を制圧した執行部隊を全て排除です』
エアの声が、通信越しに響く。
621は前方の壁を見据えたまま、短く応じた。
《了解。……でも、その前に》
『レイヴン?』
loader4は、壁へ向かわなかった。
正面に見える封鎖機構の部隊ではなく、右側の雪原へ進路を変える。
そこには、無数の巨大なポールが立ち並んでいた。
雪に覆われた地形と、林立する金属柱。
遮蔽物としては十分だが、一見しただけでは敵影はない。
『あの……そちらには何も』
エアが疑問を口にする。
だが、621には心当たりがあった。
《ここに確かAC単機隠れているはず……》
前の周回の記憶。
この近辺には、解放戦線のACが潜んでいる。
リング・フレディ。
タンク脚部でアセンされたAC、キャンドルリングを駆る独立勢力側の戦士。
前回は敵として交戦した相手だった。
だが、今の状況は違う。
壁は封鎖機構に制圧されている。
アーキバスも解放戦線も、この場所を押さえきれなかった。
ならば、封鎖機構を相手にする今だけなら、解放戦線と目的は一致する可能性がある。
『ACが? しかし、何故接触を?』
《万が一のこともあると思って一度共闘を持ち掛けようと思う》
621はそう答え、スキャンモードを起動した。
巨大ポールの間を進みながら、周囲を慎重に探る。
レーダーは雪原の反応を拾い、構造物の影に紛れた熱源や残骸を識別していく。
その中で、ひとつの反応が引っかかった。
データアーカイブ。
《データアーカイブ? アレは……大破した解放戦線のAC?》
雪に埋もれるようにして、ACの残骸が横たわっていた。
解放戦線のものと思われる機体。
装甲は破れ、フレームは歪み、武装もまともに残っていない。
ただ、機体内部にデータアーカイブの反応が残っている。
『何か有力なデータが残っているかもしれません。近づいて調べてください』
エアの提案に、621はloader4を残骸へ近づけた。
この場所で何が起きたのか。
封鎖機構の配備状況。
解放戦線の動き。
あるいは、今回の新型機体に関する情報。
何か掴める可能性はある。
loader4が残骸の傍らで停止し、データ読み取りを開始する。
その瞬間、621は思い出した。
前の周回。
この残骸。
そして、この反応。
(あっ……忘れてた。このデータアーカイブは囮だってのを)
思い出した時には、既に遅かった。
雪原の奥。
巨大ポールの影が動く。
隠れていたACが姿を現し、重々しいタンク脚部で地面を踏み締めた。
リング・フレディのAC、キャンドルリング。
肩部のグレネードキャノンがこちらを向き、ミサイルポッドが一斉に開く。
次の瞬間、警告音がコックピットに鳴り響いた。
「かかったな……猟犬」
『攻撃……!? レイヴン!』
《分かってる……!》
621は即座にloader4を後退させた。
直後、先ほどまで機体がいた場所にグレネード弾が着弾する。
爆炎が雪原を吹き飛ばし、巨大ポールの一本が軋みながら揺れた。
さらに続けて、ミサイルが複数の軌道で飛来する。
621はブースターを吹かし、ポールの間を縫うようにして回避した。
白い雪煙の中、キャンドルリングがその巨体をゆっくりと前へ進める。
リング・フレディは、最初から交渉するつもりなどない。
レイヴンを見つけた瞬間、敵と判断したのだ。
もっとも、それは無理もない。
偽りの名義。
借り物の名前。
そして、ルビコンの戦場を引っ掻き回す独立傭兵。
解放戦線から見れば、信用しろという方が難しい。
《まずい……完全に敵対された》
『レイヴン、説得を試みますか?』
《うん。でも、まずは攻撃を捌く》
621は操縦桿を握り直した。
共闘を持ちかけるつもりだった。
だが、その前に戦闘の火蓋は切られてしまった。
キャンドルリングが再びミサイルを放つ。
loader4は巨大ポールの影に滑り込み、爆風をやり過ごす。
交渉の余地は、まだある。
ただし、それを成立させるには、まずリング・フレディの攻撃を生き延びる必要があった。
封鎖機構の執行部隊が壁を制圧する中、雪原では621と解放戦線のACによる予期せぬ戦闘が始まった。
◆◇◆
キャンドルリングの両腕が持ち上がる。
二挺のHML-G2/P19MLT-04。
ファーロン・ダイナミクス製の連装型ハンドミサイルが、雪原に白煙を引きながら放たれた。
ミサイルの群れが、巨大ポールの間を縫うように飛来する。
「今日は様子見のつもりだったが……好都合だ」
リング・フレディの声が、通信越しに響いた。
敵意は明白だった。
621はloader4を横へ滑らせ、ポールを盾にしながらミサイルを回避する。
爆発が背後で連鎖し、雪煙が巻き上がった。
『アリーナ登録情報を参照……AC“キャンドルリング”。ルビコン解放戦線所属パイロット、“リング・フレディ”です』
《うん、知っている。ミサイルとキャノンしか取り柄がないACだからわかりやすい》
621は冷静に返した。
キャンドルリングの構成は、極端だった。
タンク脚部による安定性。
二挺のハンドミサイル。
そして、肩部の二連装グレネードキャノン、SONGBIRDS。
火力は高い。
だが、武装の性質上、接近戦や細かな対応には向いていない。
それでも、このような遮蔽物の多い雪原でミサイルと爆風を押し付けられるのは厄介だった。
「悪いがここで消えてもらおう。師父がそうお望みだ」
《いや……絶対にドルマヤンはそんなこと考えてないよ……》
621は思わず呟いた。
ドルマヤン。
解放戦線の師父。
少なくとも前の周回で知る限り、彼が積極的に自分をここで殺せなどと命じるとは思えなかった。
だが、フレディにはフレディなりの信仰と解釈があるのだろう。
キャンドルリングの肩部が火を噴いた。
SONGBIRDS。
二門の二連装グレネードキャノンが、しつこくloader4へ砲撃を浴びせる。
621は直撃を避ける。
だが、爆風までは完全に逃げ切れない。
機体を揺らす衝撃。
APが少しずつ削られていく。
《SONGBIRDSが敵が使うと本当に厄介ね……》
621は巨大ポールの影から飛び出し、別の遮蔽物へ向けてブーストする。
ミサイルが追う。
グレネードが先回りするように撃ち込まれる。
フレディはただ撃っているだけではない。
タンクACの重さを活かし、陣地を押さえながら逃げ場を潰してくる。
その最中、フレディの声が再び通信に乗った。
「……ひとつ質問をいいか? ウォルターの猟犬。偽りの名義で何をするつもりだ? 師父には全て見えておられるようだ。お前の……お前“達”の正体がな」
その問いに、621は一瞬だけ沈黙した。
前の周回では、答えなかった。
ただ戦い、撃破し、そのまま進んだ。
リング・フレディの言葉を、深く受け止めることもなかった。
だが今は違う。
レイがいる。
617がいる。
エアがいる。
そして、自分は同じ道をただ繰り返すつもりはなかった。
《……ウォルターにカーラ、ラスティにイグアス。そしてエア……みんなが生き残るための手段を探してる》
『レイヴン……』
エアの声が、わずかに揺れた。
621の言葉は、決して上手く整えられたものではない。
だが、それは本心だった。
誰かを燃やして終わらせるのではなく。
誰かを切り捨てて進むのではなく。
可能なら、皆が生き残れる道を探したい。
それが今の621の願いだった。
しかし、フレディはすぐには信じなかった。
「生き残る? その様な見え透いた嘘を……」
キャンドルリングが再び砲撃姿勢を取る。
だが、その瞬間だった。
『……! レイヴン、壁から封鎖機構の執行部隊が向かってきています!』
エアの警告と同時に、レーダー上に複数の反応が現れた。
壁の方面から、部隊がこちらへ向かっている。
621とフレディの交戦を、レーダーか何かで捕捉したのだろう。
雪煙の向こうから、まずSGのMT部隊が姿を現す。
そして、その後方。
MTとは明らかに異なる機体が二機、前線へ出てきた。
一機は、がっしりとした量産型人型機。
もう一機は、より細身で高機動戦闘を想定したような機体。
どちらも、封鎖機構の既存兵器とは系統が違っている。
「なんだ……あの機体? 封鎖機構の新型か!?」
フレディの声にも、明らかな動揺が混じった。
621はその機体から放たれる粒子の反応を見て、息を呑む。
《アレが……レイが言っていた疑似太陽炉を使った機体……!》
アヘッド。
アドヴァンスド・ジンクス。
いずれも、GNドライヴT──疑似太陽炉の搭載を前提とした機体だった。
以前主任が持ち帰った疑似太陽炉。
封鎖機構がそれを持っていた理由。
その一端が、今この戦場に姿を現している。
「コード23、現場に到着」
「識別名レイヴン。片方は解放戦線のACか」
「我々のやるべきことは変わらない。排除執行する」
封鎖機構の通信は、いつも通り無機質だった。
相手がベイラムの雇われ傭兵であろうと、解放戦線のACであろうと関係ない。
封鎖機構にとっては、どちらも排除対象。
アヘッドとアドヴァンスド・ジンクスが武装を構える。
SG部隊が散開し、包囲を始める。
状況は一変した。
621とフレディの戦いは、封鎖機構の介入によって三つ巴へ変わろうとしていた。
loader4はキャンドルリングから距離を取りつつ、封鎖機構の新型機体へ向き直る。
フレディもまた、一度砲口を621から外した。
敵は目の前にいる。
だが、今この場で最も危険なのは、封鎖機構の疑似太陽炉搭載機だった。
◆◇◆
壁方面から展開してきた封鎖機構の執行部隊は、瞬く間に雪原へ散開した。
SGのMT部隊が左右へ広がり、後方からアヘッドとアドヴァンスド・ジンクスが前へ出る。
通常のMTやLCとは明らかに違う機体。
橙色を帯びた粒子が、機体周辺に薄く漂っている。
疑似太陽炉搭載機。
それが、実戦投入されている。
621はloader4の姿勢を低くし、キャンドルリングとの距離を保ったまま周囲を確認した。
前には封鎖機構。
横にはリング・フレディ。
逃げ場の少ない雪原。
このまま三つ巴になれば、いずれどちらかが先に崩れる。
そして、崩れた瞬間を封鎖機構に突かれる。
《……見ての通りだけど、ここを切り抜けるには一旦共闘すべきだと思う。お互いに生き残りたいならだけど……》
621はフレディへ通信を送った。
キャンドルリングの砲口は、まだloader4へ向いている。
だが、その背後では封鎖機構のMTが包囲を狭めていた。
「共闘だと? 分からない……何を考えている……?」
フレディの声には、疑念が滲んでいた。
無理もない。
彼にとって621は、ウォルターの猟犬であり、偽りの名義を使うレイヴンだ。
その相手から突然共闘を持ちかけられても、すぐに信じられるはずがない。
だが、状況はそれを待ってくれなかった。
アヘッドがGNビームライフルを構え、アドヴァンスド・ジンクスがプロトGNランスを前へ傾ける。
SG部隊が射線を取り、攻撃開始のタイミングを測っている。
その時、外部から別の通信が割り込んだ。
『この通信は……。解放戦線のミドル・フラットウェルと霞スミカです』
《フラットウェルにスミカ?》
621は思わず反応した。
フレディもまた、明らかに動揺する。
「帥叔とスミカからだと……? 師父は?」
『やれやれ……相変わらずだな、貴様は。いい加減師父離れしたらどうなのだ』
霞スミカの辛辣な言葉が通信に乗る。
開口一番の容赦ない毒に、フレディが言葉を詰まらせた。
『霞スミカ、毒を吐いている場合ではない。同志フレディよ、今は独立傭兵レイヴンと協力し、封鎖機構を撃退するんだ』
続くフラットウェルの声は落ち着いていた。
だが、その内容は明確だった。
レイヴンと共闘しろ。
解放戦線側からの命令に近い言葉だった。
「共闘を? し、しかし……」
それでもフレディは戸惑う。
師父の敵。
ウォルターの猟犬。
偽りの名義。
彼の中にある疑念は、そう簡単には消えない。
だが、その迷いが霞スミカの逆鱗に触れた。
『いいから黙って共闘しろ。貴様の頭は飾りか? 師父に寄り添うしか脳がない無能が!』
通信越しとは思えない鋭さで、罵倒が飛んだ。
フレディだけでなく、621まで一瞬固まる。
エアも、ほんのわずかに沈黙した。
スミカの言葉はあまりにも容赦がなかった。
『……フレディ。これ以上霞スミカの機嫌が損ねる前にレイヴンと共闘するんだ』
フラットウェルが、どこか疲れたように付け加える。
それが決定打だった。
通信はそこで切れる。
フレディはしばらく黙っていたが、やがて重々しく息を吐いた。
「……本来なら師父の敵であるお前達と共闘とは不本意だが、今は生き残るために共闘させてもらう」
《本当に面倒くさい性格しているね……》
621は小さく呟いた。
だが、共闘は成立した。
少なくとも、この場を切り抜けるまでは。
キャンドルリングの砲口がloader4から外れ、封鎖機構の部隊へ向けられる。
loader4もバーストライフルを構え、アヘッドとアドヴァンスド・ジンクスを正面に捉えた。
その間に、エアは封鎖機構のネットワークへ侵入していた。
『封鎖機構のネットワークに侵入して機体情報を入手しました。GNX-704T“アヘッド”。GNX-604T“アドヴァンスド・ジンクス”。アヘッドは汎用性に特化した機体で、ジンクスの方は上級執行士官用に製造された改良試作機の様です』
モニターに簡易情報が表示される。
アヘッド。
手持ちのGNビームライフルはバレル変更によってGNサブマシンガンとしても運用可能。頭部GNバルカン、GNシールド、GNビームサーベルを装備した汎用機。
アドヴァンスド・ジンクス。
アドヴァンスドGNビームライフル、肩部に装備されたGNディフェンスロッド。さらにプロトGNランスとランスに内蔵されているGNバルカンと、鋭いマニピュレーターによるGNクローを備えた上級執行士官向けの改良試作機。
どちらも、疑似太陽炉を前提とした兵器だった。
《アヘッドにジンクス……。レイの最悪の可能性がここに浮き出てきた訳だね》
621は静かに言った。
主任が持ち帰った疑似太陽炉。
封鎖機構がそれを保有していた理由。
そして、レイが警戒していた敵側の太陽炉技術。
それらが今、目の前で形になっている。
アヘッドがライフルを構える。
アドヴァンスド・ジンクスがプロトGNランスを取り出し、橙色の粒子が薄くまとわりつく。
SG部隊が進軍し、こちらを包囲する。
「識別名レイヴン、および解放戦線AC。排除執行を開始する」
封鎖機構の冷たい声が響いた。
次の瞬間、GNビームの光が雪原を切り裂く。
621はloader4を横へ跳ばし、バーストライフルを構えた。
キャンドルリングもまた、肩のSONGBIRDSを起動する。
不本意な共闘。
信用しきれない相手。
そして、初めて相対する疑似太陽炉搭載機。
それでも、生き残るには戦うしかない。
《エア、敵の粒子反応を追って》
『了解しました、レイヴン』
loader4が前へ出る。
621はバーストライフルの照準をアヘッドへ合わせ、封鎖機構の執行部隊に立ち向かった。
◆◇◆
621とフレディの短い共闘が始まった。
だが、その戦況は決して有利とは言えなかった。
SG部隊のMTが周囲から牽制を仕掛け、アヘッドとアドヴァンスド・ジンクスがその隙を突く。
橙色のGN粒子を纏う二機は、通常のACや封鎖機構のLCとも異なる動きを見せていた。
アヘッドはGNシールドを構えながら前進し、手持ちのGNビームライフルで中距離から的確に射撃を加える。
時にバレルを変え、サブマシンガンのように短いビームの弾幕を張ることで、loader4とキャンドルリングの動きを制限してくる。
一方のアドヴァンスド・ジンクスは、より厄介だった。
アドヴァンスドGNビームライフルによる牽制射撃。
プロトGNランスを構えた高速突撃。
肩部のGNディフェンスロッドを回転させ、実弾やビームを弾きながら距離を詰めてくる。
ACの常識とは違う機動。
疑似太陽炉から供給されるGN粒子によって、二機は雪原を滑るように、時に跳ねるように移動していた。
「ルビコンの脅威……封鎖機構の新型……! 師父が危惧されるのも頷ける……!」
《喋ってないで動いて! 的にされるよ!》
621は叫ぶように通信を送った。
キャンドルリングの火力は高い。
SONGBIRDSと二挺のハンドミサイルによる面制圧は、封鎖機構のMT部隊相手なら十分な脅威になる。
しかし、アヘッドとアドヴァンスド・ジンクスの機動力は、明らかにACの常識を超えていた。
特にタンク脚部のキャンドルリングでは、相手の速度についていけない。
フレディはミサイルを放つ。
だが、アドヴァンスド・ジンクスはプロトGNランスに内蔵されているGNバルカンで迎撃し、残りを機動で回避する。
SONGBIRDSが火を噴く。
しかし、アヘッドはGNシールドで爆風を受け流し、着地と同時にGNビームライフルを撃ち返した。
「……っ! 攻撃が読めない……! どう対処する……!? 師父……! 俺は……どうすれば……!?」
フレディの声が乱れる。
彼の信仰と忠誠は強い。
だが、それが戦場で迷いに変わった瞬間、致命的な隙になる。
キャンドルリングの動きが鈍った。
『フレディに精神的異常。動きが鈍くなっています!』
《あーもー……アレじゃあ墜とされる!》
621は援護に回ろうとした。
だが、その前にSG部隊が射線を塞ぐ。
さらにアドヴァンスド・ジンクスがプロトGNランスを構え、loader4の接近を阻んだ。
アヘッドは、その一瞬を見逃さない。
GNビームライフルの砲口が、キャンドルリングへ向けられた。
橙色のビームが雪原を貫く。
直撃。
キャンドルリングの装甲が焼け、機体内部で爆発が連鎖した。
「師父……どうすれば……教え……を……」
フレディの声が途切れかける。
次の瞬間、キャンドルリングは大きく傾き、タンク脚部を引きずるようにして崩れ落ちた。
『ACキャンドルリング大破。……パイロットは脱出装置が起動して脱出できたようです』
《その様ね。……こっちはかなり不利になってるけど》
621は安堵する暇もなく、状況を確認した。
フレディは生きている。
だが、戦力としてのキャンドルリングは失われた。
残されたのはloader4一機。
対する敵は、アヘッド、アドヴァンスド・ジンクス、そしてSG部隊。
「コード4、解放戦線のACを撃破」
「残すは優先排除目標のレイヴンだけだ。速やかに排除執行する」
封鎖機構の声が冷たく響く。
アヘッドがGNビームライフルを構え直す。
アドヴァンスド・ジンクスがプロトGNランスを回し、次の突撃姿勢に入る。
SG部隊は左右から包囲を狭めていた。
621は操縦桿を握り直し、各武装の残弾数を確認した。
まだ戦える。
だが、厳しい。
(敵の方が性能が上……。ACで敵を倒せなくはないけど、最初のフレディとの戦闘が後に響くなんてね……)
フレディとの交戦で、APは削られている。
弾薬も無駄に消費した。
さらに相手は、初めて見る疑似太陽炉搭載機。
機動力も火力も、通常のACとは違う。
それでも、退くわけにはいかない。
『レイヴン、敵機が包囲を狭めています。突破するなら右側のSG部隊を──』
エアが打開策を提示しようとした、その時だった。
レーダーに新たな反応が現れた。
「……っ! 待て。接近する機影がある」
「こちらでも確認した。この機影は……」
封鎖機構側の通信にも動揺が走る。
高速で接近する機影。
壁の向こう側から、一直線にこちらへ向かってくる。
『レイヴン。こちらに向かってくる機影があります!』
《この識別は……フリーダム!? ということは……》
621は壁の方へ視線を向けた。
雪と煙の向こう。
巨大な壁の上を、一機のMSが飛び越えてくる。
青と白の機体。
背に広げた翼。
手にはビームライフルを携え、空中で姿勢を制御しながら戦場へ降下する。
レイの駆るフリーダムだった。
「大丈夫か? それと、待たせた!」
通信越しに聞こえた声に、621は思わず息を吐いた。
援軍。
しかも、今この場で最も頼りになる相手。
フリーダムが空中で翼を広げ、アヘッドとアドヴァンスド・ジンクスへ照準を向ける。
封鎖機構の執行部隊が一斉に反応した。
「ホワイト・ゴースト……!」
「コード5、ホワイト・ゴースト。優先排除目標だ」
「了解。コード18、優先排除目標を更新。レイヴン、およびホワイト・ゴーストを排除する」
アヘッドがGNビームライフルを構える。
アドヴァンスド・ジンクスがプロトGNランスを前に出す。
だが、レイは怯まなかった。
フリーダムのビームライフルが、橙色の粒子を纏う新型機たちへ向けられる。
621はloader4の体勢を立て直した。
《遅いよ、レイ》
「悪い。こっちもRaDの花火大会でちょっと面倒があってな」
『レイヴン、状況はまだ不利ですが、フリーダムの援護があれば突破可能です』
《うん。ここから立て直す》
雪原に再び緊張が走る。
キャンドルリングは大破し、フレディは脱出した。
だが、621はまだ戦える。
そして、レイが来た。
封鎖機構の疑似太陽炉搭載機を相手に、ここから反撃が始まろうとしていた。
◆◇◆
フリーダムとloader4。
そして、アヘッドとアドヴァンスド・ジンクス。
雪原の戦場は、二対二の構図へ移り変わった。
封鎖機構のSG部隊は既に後方へ散開し、射線を確保しながら支援に回っている。前線に立つのは、橙色のGN粒子を纏う二機の疑似太陽炉搭載機。
アヘッドがGNシールドを構え、手持ちのGNビームライフルをフリーダムへ向ける。
アドヴァンスド・ジンクスはプロトGNランスを構え、肩部のGNディフェンスロッドを回転させながら、こちらの出方を窺っていた。
「ホワイト・ゴースト……随分と戦場をかき乱し、秩序と均衡を崩してくれたな」
「ホワイト・ゴースト。レイヴン共々、ここで排除させてもらう」
封鎖機構の声には、明確な敵意があった。
フリーダム。
彼らにとっては、ホワイト・ゴースト。
ルビコンの戦場に現れ、何度も封鎖機構の作戦を狂わせてきた白い亡霊。
レイはその二機を見据え、操縦桿を握る手に力を込めた。
「くっ! 分かっていたが、疑似太陽炉搭載機相手だと流石にフリーダムじゃキツイな!」
フリーダムは核分散炉を動力とする高性能機だ。
だが、GN粒子による推進、制御、防御補助を得た疑似太陽炉搭載機と比べれば、機体性能の差は確かに存在する。
それでも食らいつけているのは、レイ自身の操縦技術が突出しているからに他ならない。
《レイ、援護する!》
「悪いが頼む! 相手はまだ機体に慣れていないとはいえ性能面では向こうが上だ! 相手が慣れる前に短期決戦で仕留める!」
長期戦になれば不利。
レイはすぐにそう判断した。
フリーダムがビームライフルを構え、loader4は右肩のSONGBIRDSを起動する。
先に動いたのはアヘッドだった。
GNビームライフルから橙色のビームが放たれる。
フリーダムは横へ滑るように回避し、即座に反撃のビームを撃ち返した。
だが、アヘッドはGNシールドで受け流し、その影からバレルを切り替える。
GNサブマシンガンモード。
短く連射されるビームが、フリーダムの進路を削るように飛来した。
「ちっ……! ホワイト・ゴーストめ! ようやく対等になれたというのに墜とすことすらままならないとは……!」
「落ち着け少尉。こちらはまだ機体を動かして数時間しか経っていない。長期戦に持ち込め。焦らず確実に仕留める」
「了解です、大尉」
アヘッドを扱う少尉。
そして、アドヴァンスド・ジンクスを操縦する大尉。
二機は新型機をまだ完全には扱いこなせていない。
だが、それでも連携は取れていた。
アヘッドが前面で射撃と防御を担当し、アドヴァンスド・ジンクスが側面からプロトGNランスで突撃を仕掛ける。
レイはフリーダムで回避するが、その動きを読んだSG部隊が牽制射撃を重ねてくる。
さらに、アドヴァンスド・ジンクスのプロトGNランスから内蔵GNバルカンが放たれ、回避方向を潰してきた。
「くそっ……マズいな!」
『敵機は長期戦に持ち込もうとしています! このままでは……!』
エアの警告が響く。
621も状況の悪さを理解していた。
フレディとの戦闘で消耗している。
キャンドルリングは大破し、フレディは脱出済み。
今はloader4とフリーダムだけで、封鎖機構の新型二機を相手にしなければならない。
《……それでも。ここで諦める訳には……いかない!》
その瞬間、621の中で何かが弾けた。
遺伝子に刻まれた種。
無自覚のまま、再びその扉が開く。
視界が研ぎ澄まされる。
音が遠のく。
敵の動きが、粒子の流れが、砲口の向きが、次に来る攻撃の軌道までもが、頭の中に線として浮かび上がる。
SEED。
覚醒した621は、loader4をまるで別の機体のように動かし始めた。
「動きが変わった……!? この動き……BAWS第2工廠で封鎖機構の艦隊を殲滅した動きと同じ!」
「面倒なことになった。コード9、優先排除目標レイヴンの脅威レベルを引き上げる」
封鎖機構の声にも、初めて明確な警戒が混じった。
(見える……私にも敵の動きが見える!)
621はアヘッドの射撃を紙一重で避け、SG部隊の弾幕の隙間を抜ける。
アドヴァンスド・ジンクスのプロトGNランスが突き込まれるが、その軌道を読むように機体を傾け、最小限の動きで回避した。
レイは、その変化を見逃さなかった。
(SEED因子を無自覚に覚醒させたのか? ……詳しい詮索は後だな。今は……!)
余計な考えを切り捨てる。
今は戦闘中だ。
だが、その瞬間、レイ自身の瞳にも変化が起きていた。
本人は気づかない。
ただ、視界がやけに澄んでいる。
敵の動きが以前よりもよく見える。
フリーダムの限界が、手に取るように分かる。
封鎖機構の大尉が、その変化に気づいた。
「ホワイト・ゴーストに変化が……?」
「ホワイト・ゴーストもコード9を適応。脅威レベルを引き上げる、ここで叩くぞ……!」
「了解……援護します」
アヘッドとアドヴァンスド・ジンクスが、同時に動いた。
アヘッドはGNサブマシンガンで弾幕を張り、フリーダムとloader4を分断しようとする。
アドヴァンスド・ジンクスはGNディフェンスロッドを回転させながら正面から突撃し、プロトGNランスを構える。
だが、二人には見えていた。
《遅い……!》
「……狙い撃つ!」
loader4が一瞬だけ足を止め、SONGBIRDSを発射する。
同時に、フリーダムのビームライフルが正確にアヘッドの胴体部を捉えた。
ビームがGNシールドの角度をずらし、そこへSONGBIRDSの砲弾が叩き込まれる。
直撃。
アヘッドの胴体部が大きく歪み、内部から爆発が連鎖した。
「な……なんだと!?」
機体耐久値が限界を超える。
アヘッドは橙色の粒子を撒き散らしながら、雪原の上で爆散した。
「コード31C、少尉が撃破された。対処法を求む」
「これで一機。残るは……」
《ランスを持った機体だけ……!》
残されたアドヴァンスド・ジンクスは、わずかに後退した。
だが、撤退はしない。
「……了解。任務を継続、作戦を続行する」
大尉は冷静だった。
アドヴァンスド・ジンクスが、腰部のGNビームサーベルを格納している部分へ手を伸ばす。
そこから取り出したのは、スティック状の爆弾だった。
それを周囲へばら撒く。
次の瞬間、爆弾が一斉に炸裂した。
雪原に薄い幕のような粒子が広がる。
ビーム攪乱幕。
フリーダムのビームライフルが一発、試し撃ちのように放たれる。
だが、ビームは攪乱幕に触れた瞬間、減衰して霧散した。
「ビーム攪乱幕……!? GN粒子の応用で作り出したのか!」
「これでビーム兵器は役に立たない。ならば……!」
アドヴァンスド・ジンクスがプロトGNランスを構えた。
橙色の粒子を噴き出し、一直線にフリーダムへ突撃する。
「接近戦では、こっちが有利……!!」
《レイ!》
621の声が飛ぶ。
だが、レイは慌てなかった。
ビーム兵器が使えない。
ならば、実弾兵器を使えばいい。
フリーダムは突貫してくるアドヴァンスド・ジンクスを、飛び越えるように上昇して回避した。
相手のランスが空を切る。
その背後を取った瞬間、フリーダムの腰部レール砲が展開された。
クスィフィアス レール砲。
フリーダムが持つ、数少ない実弾兵器。
轟音と共にレール砲弾が撃ち出され、アドヴァンスド・ジンクスの背部へ直撃した。
「馬鹿な……! この機体でも、勝てないのか……!?」
アドヴァンスド・ジンクスが大きくよろめく。
ビーム攪乱幕は、ビーム兵器を無力化するためのもの。
だが、実弾までは止められない。
さらに、攪乱幕の濃度が急速に薄れていく。
効力が切れる。
レイはその瞬間を見逃さなかった。
「これで……終わりだ!」
フリーダムがラケルタ・ビームサーベルを抜刀する。
橙色の粒子幕が消えた直後、桃色のビーム刃が振り下ろされた。
アドヴァンスド・ジンクスの胴体が、真っ二つに切り裂かれる。
機体は数秒だけ空中で姿勢を保とうとしたが、やがて制御を失い、爆発した。
雪原に沈黙が戻る。
『封鎖機構の執行部隊の撃破を確認。……お疲れ様です、レイヴン』
《ありがとう、エア。でも……アレが今後出てくるとなると今のままじゃ駄目みたい》
621は静かに言った。
アヘッドとアドヴァンスド・ジンクス。
今回は、相手が機体に慣れていなかった。
こちらもレイの援護があり、さらに621自身の覚醒があったから勝てた。
だが、次は分からない。
「その様だ。フリーダムも今の戦いでほぼ限界に近い。俺の動きについてこれなくなっている……」
レイはフリーダムの状態を確認する。
各部フレームに負荷。
関節部の反応遅延。
スラスター制御に微細なズレ。
機体が壊れているわけではない。
だが、レイの操縦に対して、フリーダムの方が追いつかなくなりつつあった。
これ以上の戦闘は危険だ。
『……ミッションは完了です。一旦帰りましょう』
「賛成だ。今回は流石に疲れた……少し休みたい」
《同意。ミレニアムのお風呂に入りたい気分……》
621の言葉に、レイは小さく笑った。
戦場には撃破された封鎖機構の残骸が散らばっている。
フレディは脱出済み。
ベイラムの依頼も、封鎖機構執行部隊の撃破という形で達成された。
これ以上留まる理由はない。
フリーダムとloader4は、そのままミレニアムへ帰投するために戦場を離脱した。
だが、彼らは気づいていなかった。
遠方の雪原。
専用のステルスコートを纏い、機体の反応を極限まで隠した黒いガンダムが一機、静かにその様子を監視していた。
GNY-002FB。
ガンダムサダルスードTYPE-Fブラック。
そのコックピットで、ディヴァイン・ノヴァは取得したデータを確認していた。
「リボンズ。例のガンダムのデータを収集した」
『ご苦労だね、ディヴァイン。そのまま帰還してくれ』
「了解、帰還する」
ディヴァインは短く応じた。
サダルスードTYPE-Fブラックはステルスコートを翻し、静かに戦場を離れる。
フリーダムの戦闘データ。
レイの操縦特性。
そして、621の異常な反応速度。
それらはすべて、リボンズのもとへ持ち帰られる。
彼の目的は、未だに見えない。
ただ確かなのは、PROJECT OOを巡る戦いが、既にレイたちだけのものではなくなりつつあるということだった。