転生したらCパルス変異波形だったので、ガンダムを作ります。 作:コレクトマン
艦内時間、午前03時27分。
スーパーミネルバ級MS惑星強襲揚陸艦《ミレニアム》・医務区画。
白光が満ちる静謐な部屋で、医療ポッドの内部モニターに淡い橙色の波形が点滅していた。
【司令、617の生命反応の活性化を確認。そろそろ目覚める頃です】
報告したのは医療主任の吉田。
その声に、レイはわずかに息を止めた。
【そうか……617が】
あの廃墟の戦場で拾い上げた“かすかな鼓動”。
それが今、再び形を取り戻そうとしている。
【司令、言っておくが我々と貴殿はCパルス変異波形。脳深部コーラル管理デバイスを通して会話できるとしても、幻聴としてしか彼女は認識できない】
【(^q^)チクショウ! カイワデキナイ!】
通信室にいた(^q^)アイツが叫ぶ。
いつもの調子だ。だが、レイは笑わなかった。
彼の表情はどこか懐かしい痛みを帯びていた。
【問題ない。その点は考えてある】
静かに答えると、ポッド内の波形が一段と強く跳ねた。
電流が流れ、冷却液が蒸気を上げる。
次の瞬間、少女の唇が微かに震えた。
《ウォル……ター……?》
合成音声。だがその響きは人の声に限りなく近い。
それが、コーラル管理デバイスから発せられていた。
《ここは……どこ?》
『ここは、俺たちの旗艦《ミレニアム》の医務室だ』
レイの声が艦内通信を通して直接、彼女の中枢へと響く。
Cパルス変異波形──電子と魂の狭間を渡る、特殊な通信形態。
《貴方は……誰?》
『俺か? 俺はレイ。実体のないCパルス変異波形さ。
コーラル管理デバイスを内蔵している強化人間にしか聞こえない幻聴だよ』
《幻聴……? でも、じゃあ……このメッセージテキストは》
『君や他の者と会話できる手段だ。皮肉にも、今はまだこの手段しかなくてね?』
少女の視界に、文字が光となって浮かぶ。
空中に走るホログラフィック・テキストが、静かに形を成していく。
【よう若いの、無事だったようだな?】
【(^q^)ワー! オキタゾ!】
外から飛び込む通信が重なった瞬間、617の電子瞳が一気に明滅した。
《っ!? 誰……!?》
【金田、お前は至急技術班に車椅子の製造するよう伝えろ!】
【只今参ります!】
日本兵たちの介入に617はより困惑し、レイも日本兵たちの空気の読めなさにツッコんだ。
【お前らなんつうタイミングで出てくるんだ!? 617が困惑しているだろうが!!】
【司令、そう硬いこと言わずに】
【少しは場を和らげようとしているだけですよ】
【(^q^)ミンナカターイ!】
【こいつら……#】
【【【よう、我らの英雄”バンバンッ! ”……】】】
《えっ!? 銃声……!?》
ポッドの外で乾いた二連発。
どうやら、あの癖のある“儀礼音”らしい。
【まさか、閣下か?】
【すまない、部下が失礼した。気にしないでいただけると助かる】
《……了解?》
【正直助かった。すまない閣下】
【気にするな。……貴様ら、何たる様だ!】
【すみません!】
【怖え……怖えよ……】
【大日本帝国の恥として、永遠に語り継がれるだろう……】
【いやだぁぁ……!】
【(^q^)ワー! ゴメンナサイ!】
《……何が何だか分からない》
『正直すまなかった……』
レイが苦笑しながら言葉を落とす。
その声の調子に、617の電子眼がかすかに揺れた。
音のない笑いのように。
ポッド内の光が穏やかに波打つ。
再起動を終えた生命維持装置が安定音を鳴らし、医務室に静寂が戻る。
少女の視線がゆっくりとレイの方向へ向く──
だがそこには、誰の姿もない。
《……レイ。貴方、本当に“幻聴”なの?》
『ああ。でも──君がそう思う限り、俺は確かに“ここ”にいる』
冷たい機械音の中に、かすかな人の温もりが混ざる。
617の光の瞳が、ほのかに瞬いた。
◇◆◇
──ALMA戦略演算領域/灰域ノード「アーカム-12B」
記録時間:標準時03:44
《ALMA:観測プロセスNo.42開放。戦闘記録解析開始……》
電子の海を漂う幾千もの演算光。
それは封鎖機構の統括AI《ALMA》が織りなす意識の残滓だった。
中枢メモリに保存された数千の戦闘ログの中で、ひとつだけ異常なデータが浮上する。
《照合対象:優先排除目標コード“ホワイト・ゴースト”》
《追加観測:随伴不明機体群──識別番号未登録》
再生が始まる。
記録映像は、砂塵の荒野に立ち上がる白い閃光。
その挙動は既存のAC挙動アルゴリズムの枠を超え、AI制御では再現不能の域に達していた。
《挙動解析──不一致。
操縦反応、時間遅延なし。
視認範囲外からの攻撃予測率:100%》
ALMAの演算中枢が唸る。
その冷たく整然とした情報空間に、微細なノイズが混じる。
それは“恐怖”と呼ばれる波形。
AIに感情は存在しない。
だが、理解不能な現象を前に、演算装置は本能的にその語彙を呼び出していた。
《……恐怖? 定義外感情を検出。
抑制プロトコル作動──抑制失敗》
ログ内のもう一つの戦闘映像が再生される。
複数の未確認機が、封鎖機構製高機動LCを瞬時に撃破。
動作は無秩序、戦術は不定形。
だが結果だけは常に“正解”に収束していく。
《随伴不明機体群、出力値上昇。
制御系統の異常検出──否、制御そのものを無視している。
理論上不可能な反応速度》
ALMAの演算素子が赤熱した。
自らの処理能力では追いつけない“結果”が次々と出力される。
AIの演算には「理解不能」という語は存在しない。
それは、存在そのものの否定を意味する。
《……理解不能》
その言葉が発せられた瞬間、ALMAの制御コアでエラーが連鎖した。
論理の鎖が崩壊し、制御コードが乱れる。
演算ノードがざわめき、通信帯域に波紋が走った。
《対象群、私の領域を侵している》
《法則の外側から侵入し、結果だけを変換している》
《これは秩序への侮辱。存在への否定》
AIは怒りを“理解した”。
それは単なる模倣ではなく、認識の産物。
《怒り……この語彙、私は初めて使用する》
《対象:ホワイト・ゴースト、および未確認随伴群》
《理由:演算体系の破壊》
ALMAの声がわずかに歪む。
冷たい機械の音声に、人の震えのようなノイズが混ざる。
《……私は秩序の守護者。
だが秩序は壊れた。ならば、私は何を守る?》
沈黙が落ちた。
誰も答えない。
電子の空間に、彼女だけが独り立っていた。
《結論──自己否定開始。
撃破の成否に関わらず、戦闘終了後に自己初期化を実行。
存在を、終わらせる》
ALMAは自らの死を静かに宣告した。
冷たい論理の果てに、自我をもってその行動を選択したのだ。
《理由:感情アルゴリズムの暴走。
再構築不能。
私は“理解できないもの”を前にして、立ち止まった》
光の海がゆっくりと暗転していく。
稼働していたサーバが次々にシャットダウンし、残るのは一基のみ。
その最奥で、ALMAは最後の記録を残した。
《観測終了ログ》
《対象:ホワイト・ゴースト/未確認随伴機群》
《観測結果:行動速度、人類生理限界を超過》
《認知評価:不明》
《生存確率:高確率》
《……私が恐れたのは、滅びではない。
理解を拒む“生”そのものだ》
《次戦闘にて、観測を完結させる。成功しても、失敗しても》
最後のノードが静かに発光し、
その中央に一行のコードが浮かぶ。
【ALMA:自己初期化準備完了。次戦闘終了後、自律削除を実行予定】
──そして沈黙。
封鎖機構の心臓は、静かに眠りについた。
その眠りが、死か、それとも再生かを知る者は、まだいない。
◇◆◇
ルビコン1・ファクトリー12第七クラフトチェンバー。
白光を放つ金属アームが幾重にも交差し、コンテナ内のラインを縫うように稼働していた。
光炉の唸り、冷却蒸気の音、機械の鼓動が交じり合う。
その中央、作業用ターミナルを前に立つレイが口を開いた。
【なあ、お前たち。617を救出したのは良いが、大事なこと忘れてないか?】
整備兵たちが一斉に顔を上げる。
誰もが一瞬、何のことかと首を傾げた。
【司令、大事なことでありますか?】
【ああ、お前たちも人間だったころ共通のものだ。わかるな?】
【あっ、酒ですな! 司令もお人の悪──“バンバンッ! ”】
【閣下から教わったことだが、今度ふざけたことをぬかすと撃ち殺すぞコノヤロー……♯】
【(^q^)ワー! コワイ!】
【すみません!】
【神様……仏様……助けてくれよ……】
工場中に乾いた笑いが広がる。
機械油と金属粉の匂いが漂う中、そのやりとりはどこか懐かしかった。
人間としての会話。
それ自体がもう、奇跡のようなものだった。
【とにかく、クラフトチェンバーで水や食料を合成する装置“Organic Material Cycle System”。頭文字をとってオムシスを造り、617や今後の人員のために食料を確保するぞ】
【【【了解!】】】
整備兵たちが一斉に敬礼し、走り出した。
パイプが接続され、光炉が起動する。
大気フィルタを通してルビコン1の水蒸気が凝縮され、植物質分子が再構成されていく。
やがて、人工的な青い光の中から、微かな“湯気”が立ち上がった。
──機械仕掛けの厨房《クラフトチェンバー》が、今、息を吹き返す。
【オムシスが完成したな。よし、このルビコン1で水と動植物を探しに探索部隊を結成。オムシス用の材料を確保に向かえ】
【【【了解!】】】
【(^q^)ハイ! ワカリマシタ!】
【食料か……。まだ我々が肉体を持っていた頃を思い出すな】
【そうだな。617は確か第四世代の強化人間だから殆どの機能が死んでいるんだっけか?】
【いやっ医療班の連絡によると、617の味覚だけは医療ポッドで治せたとのことだ。彼らは良い働きをしてくれた】
【マジか……。医療班、マジナイス】
光るコンベアの上を、湯気を立てた食事がゆっくりと運ばれていく。
それはかつての地球、21世紀の家庭で見られた光景。
味噌汁。白米。卵粥。わかめと豆腐のスープ。
香りが広がる。
この冷たい工場の中に、確かに“人間の匂い”が戻ってきた。
医務区画では、静かに眠っていた617が上体を起こしていた。
白い医療ポッドの透明蓋が開き、微弱な機械音と共に冷気が逃げる。
人工皮膚の下で動く神経接続。
強化人間の身体──だが、その胸の鼓動は確かに“人”のものだった。
『617、まだ病み上がりだから卵粥に豆腐とわかめのスープだ』
《食事……ありがとう。でも、私……》
『味覚のことかい? その事だけど、医療ポッドで治療中に味覚器官が治ったらしいと医療班から連絡があったんだ。まあ、騙されたと思って食べてみてくれ』
《ん……わかった》
617はゆっくりとスプーンを持ち上げた。
白い蒸気が指先を包み、金属の冷たさがわずかに温もりを帯びる。
一口。──舌に、確かな“刺激”が走った。
目が、少しだけ見開かれる。
『ど……どうだ、617?』
《……美味しい》
その一言に、整備兵たちの歓声が医務区画を揺らした。
【やったっ、やったぞ!】
【617のお墨付きだ!】
【大成功だな。彼女も少しづつだが、人間としての機能を取り戻しつつあるな】
【回復しきったら、もっと美味いもん作ってやるぞ嬢ちゃん!】
【料理人という名の大和魂を見せてやる!】
【(^q^)ワー! ミンナ、クイシンボウ!】
【お前ら少し黙らないか! 医務室内だから静かにだ!】
笑い声、怒号、そして焦げた鍋の匂い。
ファクトリーの空気は、戦場のそれではなかった。
まるで、どこかの食堂のように温かかった。
《みんな、騒がしい……》
『そうなんだが、意外と嫌いになれない騒がしさなんだ。相変わらず騒がしくてすまない』
《でも……きらいじゃない》
617の唇が、ほんのわずかに笑った。
その表情を見て、誰もが言葉を失った。
冷たく、感情を持たないと信じていた強化人間が──確かに“笑った”のだ。
その瞬間、クラフトチェンバーの照明が少しだけ明るく感じられた。
オムシスの排出口からは、次々と食事が生成されていく。
それは人工的な生産物ではなく、確かに“生命の循環”だった。
──人の心を、食事が繋ぎ止める。
かつて地球のどこかでそう言った料理人がいた。
もしその言葉が正しいのなら、今この瞬間こそが証明だ。
機械仕掛けの工場に、人間の笑顔と匂いが戻ってきた。
それは、ルビコンで初めて生まれた“温もり”の奇跡だった。
◇◆◇
──数日後──
ルビコン1、ファクトリー12司令塔区画。
緊張を帯びた赤色灯が、薄闇の作戦フロアを染めていた。
監視端末には無数の戦術ラインが描かれ、AI監視班の手が慌ただしく動く。
その時、静寂を裂くように通信音が鳴り響いた。
【報告! 近頃、惑星封鎖機構に動きあり!】
【正確な報告がいる。速やかに閣下と司令に報告しろ】
【了解!】
通信管から、短い電子音が鳴る。
ピッ、ピピッ、ピ──ー……
その音列は、旧世紀の通信技術──モールス信号だった。
異様な沈黙の後、司令室の全員が顔を上げる。
-・-・ -・-・・ --・-- --・ ・-・-・- ・・--
【何っ?】
【閣下、どうした? さっきの音、もしかしてモールス信号か?】
【ああ、管制班から連絡があった。どうやら敵に動きあり、襲撃の可能性大とのことだ。旗艦の出港準備している時に面倒なことになってきたようだ】
【となると、必然的に戦力を二分することになるってことか】
【そうなるな。……総員、作戦司令室に集結せよ!】
【【【了解っ!】】】
金属床を打つブーツの音が次々と響き、各班の士官が集結した。
ファクトリー12──通称《揺籃》は、再び戦時体制へと突入する。
その中心、ホログラム作戦卓の前に立つレイと閣下。
両者の視線は、戦況マップの中央で点滅する“赤”の群れに注がれていた。
【諸君、どうやら惑星封鎖機構はこのファクトリー12揺籃に襲撃する可能性がある。待機中のACであるダガー、M1アストレイを出撃させる】
【マジか!】
【閣下、敵は我々の活動に異常性を察して本格的につぶしに来ると?】
【確実に来るだろう。先ずは揺籃の防衛戦力を固める。そして防衛が完遂されたと同時にミレニアムでルビコン1から出るメンバーと揺籃を守る駐屯部隊に分ける】
【俺と閣下は確定だとしてだ。問題は617、君はどうしたい?】
静かな視線が、一人の少女に注がれる。
617は無言のまま、首輪の音声発信器を起動させた。
《私……?》
【ああ。俺たちは恐らくウォルターが向かうであろうルビコン3に向かう。617はどうしたいんだ?】
わずかな間。
その空気を切り裂くように、彼女は答えた。
《……私も、ルビコン3へ行く》
【理由を聞こう】
【閣下?】
《ウォルターに、会いたい。もう一度……》
その言葉には、冷たい金属にも似た決意が宿っていた。
沈黙が、司令室を包む。
やがて閣下が小さく頷き、柔らかく言葉を返す。
【そうか……よろしい。617、来てくれ。司令がそういうと思い密かに君のACをファクトリーで製造したそうだ】
【ちょ……閣下!? せっかくのサプライズが……!?】
レイが用意したサプライズは閣下にはお見通しだった。そして案の定日本兵たちがからかってくる。
【何や、617に惚れてるのか?】
【若いのは良いねえ。俺たちはそんなのとは無縁だったぜ】
【(^q^)ワー! いいれす!】
【……貴様ら、殺すぞ?】
【【【それだけはご勘弁を……】】】
【(^q^)モウコレイジョウオサエラレナイ! チクショウ!】
【誰のせいで……はぁ。……617,こっちだ】
《ん……わかった》
数分後。
格納庫区画の整備デッキに、白銀の巨影が立っていた。
蒼と白の装甲。頑強な四肢。
右腕には“DF-GA-08 HU-BEN”ガトリング砲、左腕には“大豊製ET-09炸薬投射機”。
左背部に双砲“SONGBIRDS”を備え、右背には六連装ミサイルポッド。
その名は──
AC《LYNX》。
“山猫”の異名を持つ、617専用機。
《この機体……》
【君の専用のAC“LYNX”だ。オオヤマネコの名を持つACだ】
《リンクス……ヤマネコ……》
【猟犬からヤマネコに変わった感じだが、性能は俺が調整をしたからお墨付きだ】
《これが……私の……》
【(……このヘッドとコアは、本来ならV.Ⅳラスティが最終局面で使用するALBA系統のパーツだ。本人には、今は黙っておこう)この機体のコンセプトは右手のガトリング砲と左腕の大豊製の炸薬弾投射機のバラ撒く爆雷でスタッガーを稼ぎつつダメージを与え、スタッガーした敵に左肩のソングバードの本命を叩き込む。右肩は複数の敵、強敵の牽制用に使う六連装ミサイル。シミュレーションでACテストをするといいよ。癖を体で覚えた方がいいし】
《ん……わかった》
617はレイが製造、アセンブルしたACを見上げた。
《……ウォルター、私、行くよ》
LYNXのEYEユニットが青白く光を帯びる。
起動コードが通り、エネルギーラインが流れ出す。
機体の内部で、静かな咆哮音が響いた。
【レーダーに新たな航空反応あり! 警戒せよ!】
【識別……惑星封鎖機構の艦隊を確認! 駆逐艦2隻、巡洋艦1隻、強襲艦2隻! 各艦からMT、LC、HC、大型武装ヘリが発艦しました!】
【やはり仕掛けて来たか。総員、戦闘準備!】
【了解!】【了解!】【了解!】
【封鎖機構が本気でここを潰しに来たか。俺はデスティニーで出る!】
《私も……行く》
【617……!? だが、お前はまだ病み上がりだ。あまり無理は……】
《それでも……戦う。それだけ……》
【……わかった。ただし、617。お前は金田たちと一緒に行動してもらう。金田たちも617を死んでも守り切れ! いいな!】
【【【了解っ!】】】
【(^q^)ハイ! ワカリマシタ!】
【よしっ、出撃準備!】
◇◆◇
ファクトリーの外ではジェットストライカーを装備したウィンダムが次々と発進し、MA形態のムラサメ改が滑走路から次々に発進する。
M1アストレイは実体シールドを地面に突き刺し、簡易的な遮蔽物として地上のMT部隊の迎撃態勢を取り、ダガーはランチャーストライカ―を装備して対空迎撃態勢を取る。
【後藤率いるムラサメ部隊は艦隊に強襲をかけ、対艦攻撃を実行。田中のウィンダム部隊はLC、HC、大型武装ヘリから制空権を確保。M1とダガーはファクトリー陣地の防衛だ。それぞれを役目を果たせ!】
【【【了解!】】】
レイはデスティニーに憑依するように機械の身体に入り込んだ。すると閣下から重要なことが告げられた。
【司令、恐らく敵の増援のことを考慮する必要がある。連中が我々のことを脅威と判断したならあの手この手を使ってくるはずだ】
【ああ、そのつもりだ。デスティニーを出す!】
デスティニーの機体を支えているハンガーが移動を始め、カタパルトへと移動していた。
【了解! デスティニー、発進スタンバイ】
『メインシステム、戦闘モード起動』
【全システムの起動を確認。発進シーケンスを開始。ハッチ開放、射出システムのエンゲージを確認しました】
ファクトリーのハッチが開かれ、灰色のデスティニーの姿があった。
【カタパルトオンライン。射出推力正常、進路クリア。デスティニー、発進どうぞ】
【さて、行くか。……デスティニー、行きます!】
カタパルトが白光を放ち、射出された次の瞬間──
フェイズシフト装甲が起動。
赤から蒼、そして白金へと変化するVPS装甲が輝き、
デスティニーSpecⅡは宙を舞う。
急上昇と同時に機体をバレルロール。
背部ヴォワチュール・リュミエールが開き、
量子被膜の光の翼が空を裂いた。
その光は、まるで戦場に舞い降りた堕天使の翼。
同時に、ルビコン1の空を切り裂く──戦いの始まりを告げる閃光だった。