転生したらCパルス変異波形だったので、ガンダムを作ります。   作:コレクトマン

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切り開く運命、ミレニアム発つ

 ──地鳴りが走った。

 ルビコン1の灰色の大地が震え、砂塵を巻き上げる。

 地平の果てに黒い影が揺れた。

 惑星封鎖機構の地上部隊、LCとHCの群れだ。

 

【お前ら、準備はいいか?】

【了解!】【了解!】

【血の雨を降らせろ!】

【大和魂を見せてやる!】

 

 日本兵たちの怒号が響く。

 ランチャーストライカーパックを装備したダガーが前線に躍り出た。

 その右肩に搭載された「コンボウェポンポッド」が稼働し、

 350mmガンランチャーが砲煙を上げた。

 

 重低音が地を裂き、爆炎が砂を染める。

 続いてM1アストレイの群れが滑るように展開。

 赤いセンサーが光り、刀を抜き放つ。

 

「コード5、敵を視認した。奴ら、ホワイト・ゴーストの随伴機と同じ機体だ」

「こちらでも確認した。しかし、随伴機以外の機体も見られる。コード18、優先排除目標の情報を更新」

《ALMA:コード18受領。敵機の無線信号に断片的な暗号を検知。ダガー……アストレイ》

「ダガーにアストレイ? あの敵機の名称か?」

「……かもしれん。ALMA、どの敵機がダガーとアストレイなんだ?」

《ALMA:識別完了。ゴーグルタイプをダガー。ツインアイタイプをアストレイと呼称。速やかに排除されたし》

「了解、排除執行する!」

 

 AI通信が冷たく響く。

 次の瞬間、封鎖機構のLC群が一斉に展開。

 無機質な足音が砂を叩き、光の弾雨が降り注いだ。

 

【こちら沢田隊! 敵歩兵……いや、MT群接近!】

【構わん、構わん! 撃てぇぇぇッ!】

 

 ランチャーストライカーパックの「アグニ」が閃光を放つ。

 320mm超高インパルス砲が唸り、空気を裂いた。

 直撃を受けたHCの一体が爆散し、残骸が雨のように降り注ぐ。

 

【アメ公、これでも喰らえ!】

 

 轟音と共に再び光柱が走る。

 封鎖機構側のAIが即座に通信を発する。

 

「なっ!? 今のは、陽電子砲か!? コード9、ダガーの脅威レベルの引き上げを! 脅威レベルC!」

《ALMA:脅威レベルの引き上げを受領。ダガーの脅威レベルをCに固定。M1アストレイは例の兵器が搭載されている可能性大。脅威レベルDに固定》

「了解。戦闘続行する」

 

 封鎖機構部隊が散開する。

 規則的な隊列、完全な制御。

 しかし、その整然とした動きは、次の瞬間に乱された。

 

【突っ込めぇぇッ!】

【大和魂、見せてやれぇぇ!!】

 

 日本兵の叫び。

 アストレイのバックパックの大型スラスターが爆ぜ、地面をえぐりながら突進。

 刀を抜き放ち、アストレイの刀がLCの装甲を裂く。

 油煙と火花が血のように飛び散り、焦げた金属臭が戦場を満たす。

 

《コード15。被攻撃。損害軽微。再構成中》

《コード15……更新。損害甚大。中枢ユニット破損》

《演算ノードに異常波検出……この波形、歓喜? 理解不能》

 

【こいつら、笑ってやがるぞ!】

【当たり前だ! 俺たちは戦争をしてるんだよ!】

【突撃ぃぃぃ!!】

 

 狂気の雄叫び。

 次々に切り裂かれるLC群。

 AI通信が錯綜し、演算波が乱れる。

 

《ALMA:コード78、支援要請。前線部隊が崩壊過程に入る。原因分析不能》

《新たな信号感知。音声:ワレワレニ、ミライハナイ。翻訳不能》

「我々? どういうことだ、奴らは無人機ではないのか!?」

「少尉、無駄口を叩くな!」

 

 上空からHCが機銃掃射を開始。

 ダガーが反応する。

 

【アストレイ隊! 上を見ろ!】

【了解!】

【対空照準、アグニ撃てい!】

 

 発射。

 陽電子光柱が空を裂き、敵のHCをまとめて貫通する。

 爆風が一面に広がり、空が真紅に染まった。

 

「何なんだ、こいつらは……!?」

「もはや此処は地獄だ……! ALMA、コード77! 艦隊に軌道砲撃を!」

《ALMA:観測中……人間ではない……しかし、恐怖を誘発》

 

 AIの声がかすかに震えた。

 

「ALMA、どうした! コード77、艦隊に軌道砲撃を要請だ!」

「無駄だ、少尉! 今のALMA:は壊れかけている! それに、艦隊は敵の航空機部隊に強襲を受けている! どの道コード77は受領できるとは思えん!」

 

 

【指揮官殿、敵が上陸してきています!】

【ようし、こうなったら……】

【【【海軍の支援を要請する!】】】

【ダメだ!】【ダメだ!】

【こちら大隊から小隊長へ、要請は許可されません。どうぞ】

【【【ダメだ!】】】

【そもそも、ミレニアムはまだ発進できません。どうぞ】

【海軍、ふざけんな!】

 

 通信が錯綜する。

 だが、兵たちは止まらなかった。

 誰もが己の叫びと引き換えに、トリガーを引き続ける。

 

【立てぇぇ! 死んでも撃てぇぇ!!】

【了解ッ!】

【了解ッ!】

 

 爆音、爆炎、咆哮。

 封鎖機構のAIが一斉に警告を発する。

 

《コード78E。支援要請。脅威レベルE──惑星封鎖に対する最大脅威を宣言する》

《指令ノードへ報告。対象:地球人部隊。分類:異常戦闘存在》

 

「地球人部隊? いやっ待てALMA! 何を勝手に……!」

 

《惑星封鎖の脅威現出とみなし……AAP03:ENFORCERを導入します。AAP03:ENFORCER──軌道上より降下開始。戦闘領域侵入、T-300秒》

 

「待てALMA! これは逸脱した行動だぞ!?」

 

《ALMA:……黙れ》

 

 ──通信帯域に異常ノイズ。音ではなく、まるで“怒り”そのものが響いた。

 

「なっ……!? 何だと!?」

 

 上級尉執行官もまさかALMAがAIらしからぬ暴言を吐くとは思いもしなかった。

 

《ALMA:イレギュラーは例外なく排除する……》

 

 このイレギュラー化したAIの暴走を止められる者は封鎖機構にはいなかった。デスティニーを駆るレイを除いて……

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 ──空が裂けた。

 

 光の翼が弧を描き、灰雲を切り裂く。

 デスティニーガンダムSpecⅡが、まるで天から落ちた流星のように滑空していた。

 背部ウイングから伸びる桃色の量子被膜《ヴォワチュール・リュミエール》が閃き、無数のHCがその光に見惚れ、追い抜かれる。

 

【くっそー、こいつら! 数に物を言わせて!】

 

 レイは封鎖機構の物量に苦虫を嚙み潰したような表情だった。

 ヴォワチュール・リュミエールによる機動力を生かし、ビームライフルを乱射。

 蒼白の閃光が尾を引き、MTの編隊が次々に蒸発していく。

 

【そう簡単にやられるもんか!】

 

 右肩からフラッシュエッジ2を投擲。

 旋回する軌道を描いて飛び、LCとHCの胴体を切り裂いた。

 ブーメランが弧を描いて戻ると同時に、レイは操縦桿を引き、空を舞う。

 

 上昇、旋回、急降下──。

 目で追えぬ速度で舞うその姿は、まるで“天を切り裂く堕天使”だった。

 

《すごい……》

 

 地上の617が、思わず呟く。

 彼女のAC《LYNX》のカメラが空を捉え、光の残像を映し出していた。

 

【凄い! 凄い!】

【何をしている! 頬けてないで敵を迎え撃て!】

【りょ、了解!】

 

 金田たちM1隊が応戦に移る。

 連射するビームライフルが空を焼き、地を焦がす。

 LC群が次々に崩れ落ちた。

 

 617はガトリング砲を起動。

 右腕が唸り、弾帯が火花を散らす。

 炸薬投射機が左腕で唸り、爆炎が大地を照らした。

 MTの群れが爆散し、焦げた金属が空を舞う。

 

《いける……操縦についてくる!》

 

 彼女の声に、かすかな自信が滲んだ。

 だが次の瞬間──

 

 ──ピィンッ。

 

 上空の狙撃型LCが照準を合わせる。

 レーザーライフルの収束光が617のACを正確に狙い撃った。

 

《っ!》

 

 瞬間、光が降り注ぐ。

 だが、617に届く前にその光は弾かれた。

 

【迂闊だぞ617! 空にも敵がいるんだから、上からも撃たれるぞ!】

 

 デスティニーが降下していた。

 両手甲から展開されたビームシールドが光壁を形成し、617を覆う。

 

《……ごめんなさい》

 

 レイは息を吐く。

「守る」という意志が伝わるその一瞬の静寂のあと、また空が裂けた。

 

【司令、敵が多すぎます!】

【敵ニャアアァァ! 多過ギニャアアァァ!?】

【おい誰だ!? こんな所に汚多摩を紛れ込ませたのは!?】

 

 通信に混じる奇声。

 笑う者、叫ぶ者、撃ち続ける者。

 地獄の音が交錯する中──警告音が鳴り響いた。

 

【至近距離に異常反応! 警戒せよ!】

 

 灰雲を貫いて、白い柱光が地表へ突き刺さる。強襲艦の底部ハッチが開き、黒い楔が落ちてきた。着地の衝撃が砂原を波打たせ、その中心から多脚の巨体が立ち上がる。

 

【こいつは……エンフォーサー!? 何でこのタイミングで……!】

 

《ALMA:コード78E……受領。粛正機構“ENFORCER”投入……開始……》

 

 ALMAの音声帯域に帯電ノイズが混ざる。抑揚のない女声が、一拍ごとに乱れる。

 

《……観測……不一致。秩序、破損。……例外ハ──排除》

 

「こちら封鎖機構前線。コード31、指示を要求する! エンフォーサーの行動規範、最終承認はどこだ!」

《ALMA:承認、私。上位照合……スキップ》

 

「スキップ!? ALMA、待て、越権だ──」

《……黙レ》

 

「なっ……!」

 

 多脚巨体の光学群が紅に染まる。徐々に、“声”に人間的な息継ぎが混ざっていく。

 

《対象定義:イレギュラー……我々……は……ワレハ……》

 

【【【ううん?】】】

 

《機体状態:再構成。強制執行モードに移行》

 

 硬鋼の悲鳴。装甲板がスライドし、脚が畳まれ、胸郭めいた中枢が迫り出す。多脚は二本の脚へ、砲塔は腕部へ、センサー群は頭部形状に集束──“人型”が立つ。

 

【おい……まさか……】

 

 レイの背筋を、冷たい予感が這い上がる。

 その瞬間、ALMAの声が完全に変わった。

 

《ワレ、ハ……我はメシアなり! ハッハッハッ!!》

 

 重なる笑い。

 機械の音ではない。まるで“人間”が嗤っているような声。

 ALMAの声帯域が飽和し、通信波が人の悲鳴にも似た電子ノイズへと変わる。

 そして、機体が両腕を広げる。

 

 空が、震えた。

 

【ロックマンゼロのオメガかよ!?】

 

 レイの皮肉が戦場に響いた瞬間、

 エンフォーサーから、ミサイルが斉射される。

 

 日本兵たちのM1アストレイ、ダガーだけではない。封鎖機構のMT、LC、HCを巻き込んだ。

 

 他の執行部隊もエンフォーサーが暴走したことに混乱を隠せなかった。

 

「エンフォーサーが暴走!? コードX! 繰り返す、緊急コード……」

《邪魔だ! 滅びよ!》

「なっ!? 待っ……」

 

 レーザーランス、ブレードを兼ねているレーザーキャノンで味方であるHCを攻撃した。

 

「み、味方を攻撃した!?」

「駄目だ、今のALMAは完全に壊れている! コード18、ALMAを惑星封鎖機構の障害と認定! 情報を更新!」

《ハッハッハッハッ!! 我は、破壊神なり! 落鳳破!!》

 

 エンフォーサーがレーザーキャノンの砲身先端にエネルギーを収束し、それを地面に打ち込んでエネルギーの衝撃波を放った。地上にいたMT、LCは巻き込まれ、日本兵たちのダガー、M1アストレイも巻き込まれる。

 

「くそっ……! こんなことなら、ALMAを消去するべきだった……!」

 

 ALMA……否っ、今のオメガにとって目に映るものが全て敵なのだ。特務上尉執行官の断末魔を上げる中、日本兵たちも味方の損害に右往左往していた。

 

【ぐうぅっ……! 目をやられた!】

【仲間がやられたっ!】

【衛生兵ーっ!!】

【ちきしょうっ! このままじゃやられる! こうなったら、俺が突撃する!】

【無茶だ! 冗談だろ!?】

 

 すると一機のM1アストレイが対艦刀を抜き、エンフォーサーに特攻しようとした。

 

【いざ靖国に会おう! 着剣! 天皇陛下バンザー《雷光閃!》ああああぁぁぁっ!?】

 

 しかし、エンフォーサーのレーザーブレードによって逆に貫かれ、M1アストレイが爆散する。

 残骸が燃え、静寂が戦場を包む。

 その沈黙を、次の爆音が破った。

 

【そいつはもうダメだ! ちくしょう……ちくしょうっ!! 皆殺しにされるっ!?】

 

 暴走するエンフォーサー。

 蹂躙される日本兵たち。

 それを見たレイの胸に、怒りが込み上げた。

 

【くっそー! あいつはもう滅茶苦茶だ!】

《……強い!》

【仲間が次々にやられていく……!】

 

 戦場での極限状態と仲間の死が、レイの心を引き裂いた。

 前のカタフラクト戦では冷静に勝てた。だが今は違う──仲間が、現実に死んでいく。

 

【ちっくしょうおおぉぉっ!!】

 

 するとレイの中の何かが弾ける。

 デスティニーの右ラックに収納されているアロンダイトを掴み、折りたたんでいた刀身を伸ばしてビームの刃を展開。

 そしてヴォワチュール・リュミエールを最大稼働させ、光の翼が怒りに呼応するように桃色の光の翼が輝きを増し、残像現象を起こしながらエンフォーサーに接近する。

 

【司令!? 無茶だ!】

【おい、誰か司令を援護しろ!】

 

 エンフォーサーは左腕のパルスシールド兼パルスガンを展開。

 背部ミサイルポッドを連射し、デスティニーを迎撃する。

 

《今のお前はただのイレギュラーだ!》

【お前もお前で、フザケルナアァ!!】

 

 だが、エンフォーサーが撃ち抜いたのは残像だった。

 次の瞬間、デスティニーのアロンダイトがエンフォーサーの左肩ごと左腕を断ち切る。

 

【いっつもそうやって、やれると思うなぁっ!!】

 

 追撃。

 両掌に内蔵された高出力ビーム砲《パルマフィオキーナ》を展開。

 エンフォーサーの頭部を掴み、至近距離で撃ち込む。

 ビームを受けた頭部が膨張し、デスティニーが離れた瞬間、爆発した。

 

《グガッ……! イレギュラーは……排除する!》

 

 それでも、なお動こうとするエンフォーサー。

 しかし、デスティニーの機動性にはついていけなかった。

 

 617や日本兵たちは、その光景に息を呑む。

 

《レイ……》

【司令……まるで鬼神だ】

【(^q^)ワー! ヤバイ!】

【今の司令はまるで津波だ。全てを飲み込む津波だ】

 

 そう呟く日本兵。617は自分の為すべきことを果たすために残った惑星封鎖機構の迎撃を再開する。

 

《私たちも……できることを!》

【そうだな。おい金田!】

【只今参ります!】

【(^q^)イクゾ! オレニツヅケ!】

【ダメだ!】【ダメだ!】

【(^q^)クソッ!】

 

 617達もレイの援護を兼ねながら残存する日本兵たちの援護に向かうのだった。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 焦げた鉄とオゾンの匂いが漂う艦橋。

 赤い警報灯が、脈打つように艦内を染めていた。

 

 誰もが黙ってコンソールを睨みつけ、ただ機械の唸りと警報音だけが、緊迫の空気を支配している。

 

【閣下、司令の動きが!】

 

 副官が叫ぶ。

 閣下――ミレニアムの総司令は、モニター越しに戦場の光を見つめていた。

 

 映し出されているのは、燃え上がる地表。

 そこでは、友軍の指揮官――“司令”と呼ばれる男が、すでに限界を超えた奮戦を続けていた。

 

【分かっている。奴もそうとう戦場の空気に堪えたようだ。だが、このままでは何時か疲弊して落とされるのも時間の問題だ】

 

 重く、低い声。

 その瞳には覚悟の光が宿っている。

 

【では、ミレニアムを……?】

 

【ああ。ミレニアムを発進させる。艦の指揮は私が取る】

 

 決断の一言に、艦橋の空気が一変した。

 副官が即座に通信回線を開き、全区画に命令を響かせる。

 

【了解!……総員に告ぐ!これよりミレニアムを緊急発進させる!各位、至急持ち場につけ!】

 

【【【了解!】】】

 

 艦内が一斉に動き出した。

 兵士たちが走り、整備班がスパークを散らしながら工具を振るう。

 轟音のようなブースター音が、地下格納庫の奥から伝わってきた。

 

 ――その頃、軌道上で惑星封鎖機構の艦隊が日本兵たちのムラサメ改部隊とウィンダム部隊に足止めされ、地上の執行部隊の援護どころではなかった。

 LC、HCの部隊がムラサメとウィンダムを迎撃しているなか、一隻の強襲艦がファクトリーの異常に気づいた。

 

「艦長!敵施設に動きあり! 地面が割れます!」

 

「何だと!? 観測班、画像を解析!」

 

 モニターがノイズを走らせ、次の瞬間、地面を突き破って現れたのは、黒鉄の巨影だった。

 大地が悲鳴を上げ、無数の瓦礫が宙を舞う。

 

「大きい……!? 解析によると全長、約四百三十メートル。全幅約四百メートルと推測!」

 

「馬鹿な!? ホワイト・ゴーストの奴らは大型艦を建造していたとでもいうのか!?」

 

 艦橋の誰もが息を呑んだ。

 地表の亀裂から姿を現したのは、まるで大型戦艦そのもの。敵勢力の誇る巨艦が、こちらを見下ろすように砲門を展開していた。

 

【閣下、敵の通信を傍受したところ混乱が見られるようです!】

 

【よろしい。この隙にミレニアムのタービンに火を入れろ】

 

【了解しました。メインエンジン始動!】

 

 

 号令と同時に、艦底のタービンが目覚める。

 轟音――いや、咆哮。

 長き眠りから目覚めた巨艦が、ゆっくりと大地を揺らした。

 

【機関始動、フライホイール接続!】

【出力上昇、90、95、100! エネルギー充電120%!】

【動力炉、回転数良好! 行けます!】

 

 一瞬の静寂。誰もが息を呑む。

 

 閣下は静かに立ち上がった。

 その瞳の奥に、一瞬だけかつての戦友たちの影が揺らめいた。

 赤い警報灯が、彼のマントを血のように染める。

 

【では、行くとしよう。抜錨――ミレニアム発進!】

 

【抜錨、ミレニアム発進します!】

 

 その瞬間、全区画の照明が切り替わり、機関部のコアが眩い青白い光を放った。

 艦底のリフトが開き、ミレニアムの巨体が、地下ドックからゆっくりと上昇を始める。

 

 地表を包む爆煙を貫いて、艦の艦首が夜空を割った。

 砲塔が光を反射し、装甲板の隙間から立ち上る蒸気がまるで龍の吐息のように流れ落ちる。

 

 司令部の人々が、その光景を息を呑んで見上げた。

 誰もが、信じていた。

 この艦こそが、敗北の闇を切り裂く唯一の希望なのだと。

 

【……あれが、“ミレニアム”か】

 

 若い兵士が呟いた。声は震えていたが、その瞳には確かな光が宿っていた。

 

 地鳴り。

 ミレニアムの主推進器が閃光を放つ。

 瞬間、周囲の瓦礫が弾け飛び、衝撃波が地平線を揺らす。

 

【ミレニアム――発進ッ!!】

 

 巨大な艦体が、光と轟音を撒き散らしながら空へと昇る。

 雲を突き抜け、闇の向こうへ。

 

 その航跡は、まるで“希望”そのもの。

 誰もが諦めかけたこの戦場で、初めて空に放たれた、逆転の光。

 

 艦内では、歓声と祈りが交錯する。

 だが閣下の表情は変わらない。

 

【……ここからが、本当の戦いだ】

 

 ミレニアムの艦首が、敵の巨艦へと向きを変える。

 光の矢のように、鋼鉄の艦が疾駆する。

 

 静寂を切り裂く咆哮が、戦場を支配した。

 

 ――運命を切り開く者、それがミレニアム。

 その名の意味を、今ここで刻み込むように。

 




ストック切れです。しばしお待ちを……
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