転生したらCパルス変異波形だったので、ガンダムを作ります。   作:コレクトマン

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地獄の試練 アムロチャレンジ

 淡い白光が訓練棟の天井を照らしていた。

 足立重工・第七戦術区──再構築された旧封鎖機構施設の内部。

 冷却ファンの低い唸りが響く中、日本兵と亡命した元封鎖機構の兵士たちが整列していた。

 

 中央の指揮卓に立つのはレイ=アダチ。

 軽く顎を上げ、彼は端末を操作する。

 青い光が空中に投影され、新しいタイトルが浮かび上がった。

 

 > 【戦術シミュレーションプログラム Ver.β】

 > 【開発:足立重工/監修:アダチ・レイ】

 

「全員、よく聞け。

 これから行うのは、新型戦術シミュレーションの実装試験だ。

 想定は三つ──対アーキバス、対ベイラム、そして封鎖機構残党への再侵攻戦だ」

 

 列の端で、日本兵の一人が手を挙げる。

 

「司令、今回の試験は“安全”ですよね?」

「今回は、な」

 

 微妙な間ができた。

 別の兵が小声で呟く。

 

「“な”って言ったぞ……」

「フラグだな」

「(^q^)嫌ナ予感シカナイ! ワー! ワー!」

 

 どっと笑いが起きる。元封鎖機構の兵士も苦笑した。

 

「安心しろ。今回は爆発物は使わない。……多分」

「多分って言いました!」

「この人、過去三回“多分安全”で爆発してるぞ!」

「ハァ……悪い予感でしかない……」

 

 レイは額を押さえた。

 

「お前らほんとに人の話を聞け」

 

 笑いが一巡した後、彼の声が低くなる。

 

「冗談はここまでだ。

 近年、各企業は戦術AIを導入している。

 ベイラムもアーキバスも、現場の判断を“AIが補佐する時代”に入った。

 だからこそ、我々も人とAIの融合運用を模索する必要がある」

 

 ホログラムが切り替わり、戦闘データと神経波形が重ねて表示される。

 機体挙動、反射時間、視界分析──そして、思考パターンの流れを示す波形。

 

「今回の試験で使用するのは、単なる戦術AIではない。

 戦闘中の“心理”や“判断”を含めた人格データを基にした学習型AIだ」

 

 元封鎖機構の士官が眉をひそめる。

 以前まではALMAの指示で動いていたが、そのALMAが暴走して巻き添えを食らったのだ。

 あまりAIに関していい思い出はないのだ。

 

「人格……つまり模倣知性か」

「そう。人のように考え、状況に応じて反応する。

 敵を分析し、“なぜその行動を取るか”まで推測してくる」

 

 後列の日本兵が顔を見合わせた。

 

「それ、もう人間より怖いじゃないですか」

「AI相手に反省会とかしたくねぇな……」

「泣くAIが出たら、俺もう訓練やめる」

 

 控えめに笑いが起きる。

 レイはその空気を受け流しながら続けた。

 

「今回の目的は、“技術と魂”の両立を確認することだ。

 足立重工の理念は『魂を宿す器』だが、その“魂”を理解できなければ意味がない。

 AIがもし意志を持つなら──我々はそれを戦友として扱うのか、敵として撃つのか。

 それを判断する訓練でもある」

 

 ホールが静まり返った。

 元封鎖機構の兵たちも姿勢を正し、レイの言葉に耳を傾ける。

 

「なお、このプログラムには特別な人格データを使っている。

 詳細は……実際に見てもらった方が早いだろう」

 

 レイが指を鳴らすと、ホログラムが切り替わる。

 映し出されたのは、光の粒子で形成された二つの影。

 片方は白く、もう片方は赤い。

 どちらも、ただ立っているだけで圧力を感じるほどの存在感を放っていた。

 

「旧地球時代の戦術アーカイブから抽出した“人格パターン”を組み合わせてある。

 戦闘における“本能”と“理性”を、それぞれの個体に分担させた。

 レベル1から3まで段階的に難易度が上がる」

 

 日本兵の一人がそっと呟く。

 

「司令、なんか嫌な予感しかしません」

「俺もだ。あの赤と白……絶対ロクでもない」

「たぶん、動いた瞬間に死ぬやつだな」

 

 苦笑が広がる。

 

「まあ、やってみりゃ分かる。

 ──シミュレーション、起動」

 

 レイが最後のコマンドを入力する。

 低い起動音が床を震わせ、フィールド全体が青白く発光した。

 データラインが空間を走り、兵士たちの視界が一瞬ホワイトアウトする。

 

 彼らの前に、霧のような光が立ち上がる。

 その中心で、二つの人影がゆっくりと姿を結び始めた。

 

 白い光の中で、淡い声が響く。

『……これが次の戦場か』

 

 そして、赤い残光が応える。

『ああ。私たちの相手はどの様な者たちだ?』

 

 レイが笑みを浮かべ、呟く。

 

「ようこそ、“地獄の試練”へ」

 

 ──シミュレーションが始まった。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 白い霧が晴れる。

 そこは、瓦礫の散らばる都市跡地──無機質な灰色の地平がどこまでも続いていた。

 ビル群の間に吹く風は冷たく、まるで“戦争の残響”そのものだ。

 

 シミュレーションに参加しているのは、ムラサメとウィンダムの日本兵部隊、

 そしてM1アストレイとダガーを操る元封鎖機構の混成チーム。

 

「お前ら、聞こえるか?」

 通信にレイの声が入る。

「今回は“レベル1”──一年戦争時のデータを元にした初期型アムロAIだ。

 反応速度は当時基準……のはずだが、油断するな。相手は“最初のガンダム”だ」

 

「了解!」「了解!」

「こちらαチーム、配置についた!」

「よし、大和魂を見せてやる!」

 

 明るく返答する声がいくつも響く。

 だが、誰もが内心では嫌な予感を拭いきれなかった。

 

 その予感は、すぐ現実になる。

 

「……レーダー反応、確認!」

「距離六百、接近中! 高速移動体一!」

 

 各機のモニターに“RX-78-2”の文字が浮かぶ。

 ビルの陰から姿を現した白い機体──。

 その動きは、静かで、滑らかで、どこか生き物のようだった。

 

「あれが……ホワイト・ゴーストの基となった機体か」

「ガンダムACの原型……中の奴も普通じゃねえな」

 

 日本兵たちが息を呑む。

 アムロAIは、こちらを一瞥しただけで動きを止めた。

 そのまま、ビームライフルを構える。

 

「全機! 距離を詰めろ! 近接戦で仕留める!」

「着剣せよ!」

「「「着剣ッ!!」」」

 

 叫びと同時にムラサメ隊が突撃した。

 その姿は、旧時代の万歳突撃そのもの。

 だが──。

 

 白光が閃く。

 一瞬のうちに、突撃した一機が撃ち抜かれ爆散した。

 

「なっ……!」

「早すぎる! 照準が合わねぇ!」

「天皇陛下、バンザー──」『迂闊な奴め!』

 爆炎とともに通信が途絶える。

 

「クソッ! あいつがやられた!」

「衛生兵ーッ!!」

「衛生兵なんていねぇだろうが!?」

 

 レイの声が入る。

「アムロAIは敵を“分析”して動く。攻撃パターンを記録されたら、次は必ず撃ち抜かれる。動きを変えろ!」

 

「クソッ、了解! ……全機、散開だ!」

 

 各機が左右に展開し、包囲を試みる。

 だが、AIの瞳が淡く光った瞬間、状況は再び一変した。

 

 ビームライフルが三連射。

 前進していたムラサメが肩を撃たれ、回避機動を取っていたダガーは動きを読まれていたのか撃ち貫かれる。

 

「馬鹿な! 回避越しに!?」

「反応してる暇もねぇ!」

「なんだ、あの異常な反応速度は!? 司令がカタフラクトと戦った時と同じ反応速度だぞ!」

「(^q^)ミウゴキガデキナイ! ワー! ワー!」

 

 混乱の中、日本兵の一人が叫ぶ。

 

「司令! あの白いの、動き読んでやがる!」

「だろうな。あれ、戦闘中にお前らの“思考波形”読んでるぞ」

「そんな化け物AI作るなよ!?」

 

 だが止まらない。

 アムロAIは射撃を止め、背中のビームサーベルを抜いた。

 白い残光が流れ、地面が焼ける。

 

「近接に来るぞ! 回避──!」

 

 叫びの直後、ムラサメ一機が瞬時に斬り伏せられる。

 その軌跡にはまるで“意志”があった。

 

「クソッ! 鬼畜めぇ!!」

『出てきたお前たちが悪いんだ!』

「殺してやるううぅっ!!」

 

 激情した日本兵が突撃する。

 だがアムロは静かに呟いた。

 

『墜ちろ!』

 

 瞬間、ビームサーベルが閃き、突撃機が真っ二つに裂けた。

 爆炎が夜空を焼く。

 

「うわああっ!!」

「もうダメだ! 撤退しろ!」

「無理です! 後退できません!」

 

 背後に回り込もうとした元封鎖機構のダガーも、ビームライフル一発でコクピットを貫かれる。

 残り三機。包囲網を維持できない。

 

「何なんだアイツは!? 本当に人間のデータで再現したのか!? これじゃあ化け物だぞ!?」

「まだ一年戦争データの“初期型”なんだがな……」レイが呟く。

「これでレベル1とは、上が思いやられる……」

 

 最後のウィンダムがビル陰から狙撃する。

「これでぇぇっ!」

 だが、アムロAIは撃つ前に撃った。

 狙撃光線は空を裂き、ウィンダムの胴体を焼き切る。

 

 閃光。

 通信途絶。

 

 シミュレーション終了。

 

 照明が戻り、現実の訓練棟に静寂が戻る。

 残ったのは、焦げたような匂いと沈黙。

 

「……全滅、ですな」

 元封鎖機構の士官が呟く。

 

 レイは端末を閉じながら、軽く息を吐いた。

「まぁ、最初はこんなもんだろう」

 

「最初……?」

「そう。これでレベル1クリア扱いだ」

「クリア……? 全滅してるんですけど!」

「データ取れたからOKだ」

 

 日本兵たちが一斉に崩れ落ちる。

 

「もう嫌だぁ……」「怖いぃ……」「(^q^)オレノコトハホットイテクレ……」

 

 レイは笑いをこらえながら言った。

 

「次は“レベル2”。機体はνガンダム、人格データ完全覚醒型だ」

 

「やめろォォォ!!」

「またあの白い悪魔か!?」

「悪魔どころか死神だろうが!」

 

 彼らの悲鳴を背に、レイは端末を閉じた。

 ホログラムには淡く点滅する文字が浮かぶ。

 

 > 【次段階データ:RX-93 νGUNDAM AI】

 

「……地獄の試練、まだ始まったばかりだ」

 レイは静かに呟き、再起動のコマンドを叩いた。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 訓練棟に再び集合がかかった。

 部屋の照明が上がり、先ほどの“全滅組”が半ば放心のまま整列している。

 顔面蒼白、震える手、そして何より……全員の視線が一点に集中していた。

 

「司令……まさか、またあの白いのと……?」

 

「そうだ」レイは淡々と答えた。

 

「ただし今度は“次の段階”だ。レベル2、RX-93 νガンダム。完全覚醒型アムロAIだ」

 

「完全覚醒……って、つまり、あれ以上があるんですか!?」

 

「ある。おまけに環境は“宇宙戦”。逃げ場はない」

 

 その一言で空気が凍った。

 日本兵たちの間から、小さな呻き声が漏れる。

 

「(^q^)オレラ、モウ、カエリタイ……」

「ダメだ、逃げても司令が引きずって戻してくる」

「(^q^)シッテタ……チクショウ!」

「そうだ、現実逃避は死ぬより辛いぞ」

 

 レイは肩をすくめた。

 

「心配するな。今度はちゃんと“再生機能”を付けた。死んでも即リスポーンだ」

「逆に地獄じゃないですか!!」

 

 場のざわめきを無視して、レイは端末を操作する。

 空間に青白い光が走り、訓練ホールが一瞬で変貌した。

 重力が消え、身体がふわりと浮く。

 そこは虚空の宇宙。月光のような地球の残照が遠くに輝いている。

 

「ここが戦場、“オービタル・シェル”。

 お前たちは引き続きウィンダム、ムラサメ、ダガー、M1アストレイの混成小隊。敵はνガンダム

 ──ただ一機だ」

 

「ただ一機!? 冗談だろ!?」

 

「前回のレベル1でもガンダム一機だけだったろうに……」

 

 レイが微笑んだ瞬間、空間が歪む。

 黒い闇を切り裂き、白銀の影が出現した。

 背面に六基のフィン・ファンネルがゆっくりと展開し、翼のように広がる。

 

『ここが次の戦場か……ならば、やってみるさ』

 

 アムロAIの声が静かに響く。

 それだけで心臓が跳ねた。

 

「……総員、迎撃準備。包囲陣形、デルタフォーメーション!」

 

 元封鎖機構の士官が叫ぶ。

 各機が散開し、宇宙空間に無数の残光を描く。

 

『行けっ、フィン・ファンネル!』

 

 次の瞬間、νガンダムがフィン・ファンネルを展開し、仕掛けに来た。

 

「うっそだろ!? ワープした!?」

「違う、加速だ! 加速してやがるッ!」

 

 その言葉が終わる前に、一機のムラサメが爆散。

 ビームが空間を裂き、次いでフィン・ファンネルが六方向から襲い掛かる。

 

「ファンネル接近! 迎撃、迎撃ぃっ!!」

「数が……多すぎる!!」

「(^q^)ミウゴキガトレナイ! ワー! ワー!」

 

 フィン・ファンネルが一機ずつ異なる軌道で旋回し、死角を突く。

 防御シールドごとビームが突き抜け、機体を焼く。

 残光だけが虚空に残った。

 

「司令、無理です! これ勝てません!!」

「いや、データは取れてる。問題ない」

「取れても死ぬんですけど!?」

 

 レイは笑みを崩さず端末を操作する。

 

「アムロAIの反応を解析すれば、次の対策に使える。つまり、犠牲は有意義だ」

「言葉のチョイスが酷い!!」

 

 その間にもνガンダムの射線は途切れない。

 レーダーには映らないが常にフィン・ファンネルが背後を取っていた。

 

「後ろか!? ぐわああああっ!!」

 光が弾け、元封鎖機構の士官が消える。

 

「バケモンだろ……!」

「総員、撤退! 撤退ぃぃ!!」

 

『逃がすかよ!』

 

 νガンダムが追う。

 まるで宇宙を泳ぐ魚のように、流れるような軌道で。

 その滑らかさは、恐怖そのものだった。

 

『人の戦いとは、こういうものか……だが、止まらない』

 

 AIアムロの声が無機質に響く。

 それは教官のようでもあり、処刑人のようでもあった。

 

「くっそ、あんなのチートだ! 弾が避けられてるぞ!」

「避けてるんじゃない、未来を見てるんだ!」

「未来なんて見るなぁぁぁぁっ!!」

 

 最後のダガーが突撃する。

 ビームサーベルを構え、叫ぶ。

 

「俺がやる! この一撃ぃぃっ!!」

 

 だが、νガンダムは微動だにしなかった。

 次の瞬間、光が交錯し、二機がすれ違う。

 

 沈黙。

 

「……やったか?」

 通信が静まる。

 そして遅れて、ダガーが二つに割れて爆発した。

 

「もうイヤだぁぁぁぁ!!!」

 悲鳴が訓練室に反響した。

 

 照明が戻り、全員が床に崩れ落ちる。

 リスポーン機能のおかげで死んではいないが、精神的には完全に壊れていた。

 

「司令……次は……ないですよね?」

「いや、ある」

 

 レイは平然と答えた。

 

「次が“最終段階”だ」

 

 モニターが切り替わり、赤い影が浮かぶ。

 禍々しいまでに美しいシルエット。

 重モビルスーツならぬ重ACだった。

 

「MSN-04 サザビー」

 レイが口にした瞬間、誰かが泣き声を上げた。

 

「やっぱり赤いの来たぁぁっ!!」

「白い悪魔に赤い彗星!? 二人まとめてとか無理だろ!!」

「(^q^)アカイノ、ニゲテモオイカケテクル! ワー! ワー!」

 

 レイは小さく笑って言った。

「地獄の試練──“アムロチャレンジ”はここからが本番だ」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 翌日、訓練棟は静まり返っていた。

 昨日までの喧騒が嘘のように、室内には重い沈黙が漂っている。

 壁際には、精神的に崩壊した日本兵たちと元封鎖機構の兵たちが並べられていた。

 誰もが真っ白な顔で、虚空を見つめている。

 

「……司令、もうやめませんか。彼ら、昨日から“白と赤の死神が来る”って言ってますよ」

 元封鎖機構の士官が言うと、レイは苦笑した。

 

「まあ、そりゃそうだろ。νガンダムのフィン・ファンネルを見て正気保てる奴はいねぇ」

「(^q^)オレ、アムロト、メシ、タベタ……」

「夢の中でもビームサーベル振ってるんですけど!」

 

 医療スタッフが慌てて彼らを運び出す。

 レイはため息をつき、617に視線を向けた。

 

「……さて、残ったのは俺たちだけか」

《ん……二人で、充分》

「かもしれないが、決して油断するな。レベル3はお前と俺でやる。最後は“アムロとシャア”、二つのAIが同時起動する」

 

 617は小さく頷く。

 そして、淡い光を放つコーラルデバイスを手のひらで握った。

 

「“魂を宿す器”の最終確認──俺たちの理念が通じるか、試してみよう」

 

 レイが起動コードを入力すると、訓練室の床が光り、重力が消失した。

 視界が一瞬白に染まり、気がつくと彼らは宇宙空間に立っていた。

 

 目の前に二つの影。

 一方は白い閃光──νガンダム。

 もう一方は紅の巨影──サザビー。

 

 どちらも、ただ“在る”だけで圧倒的な存在感を放っている。

 

『久しぶりだな、シャア』

『ああ。だが、今回は敵同士ではないようだな、アムロ』

 

 AI同士が淡く通信を交わす。

 そして、ゆっくりと視線をレイたちへ向けた。

 

『──君たちが、新しい“人の器”を試す者か』

 

 617が息を呑む。

 アムロAIの声は、どこか温かく、それでいて鋭い。

 

「……ああ。だが、俺たちは戦うために来たわけじゃない」

『ならばなぜ立つ?』

「証明のためだ。人と機械が“魂”を共有できることを」

 

 サザビーが僅かに身を乗り出した。

 

『理想を掲げる者はいつもそう言う。だが、その“魂”が暴走した時、君たちはどうする?』

 

「止めるさ。俺たちの手で」

《レイ、ウソ、付いてる》

「……まあ、正直止められる気はしないけどな」

 

 AIの二体が沈黙した。

 片や白い流星のνガンダムと赤い彗星のサザビー。

 もう片は617のLYNXとCパルス変異波形レイのデスティニー。

 

 始まりの合図は四機同時の加速だった。

 νガンダムのフィン・ファンネル、サザビーのファンネル。計12機がレイたちに襲い来る。

 

「617、右を取れ! νガンダムのファンネルが先に動く!」

《了解!》

 

 フィールド全体が光の雨に包まれる。

 無数のファンネルたちが交差し、青と赤の軌跡が乱舞する。

 617の機体が瞬時に回避し、レイのデスティニーの光の翼の要であるウイングが展開してそれぞれの攻撃を回避する。

 

「くそっ、速すぎる!」

『“速い”と感じた時点で、もう遅い』

 

 アムロAIの声と同時に、νガンダムが突進。

 だがレイは即座に機体を反転させ、逆推進で距離を取る。

 

「……流石はアムロさん! 自分で作っておいて何だが、AIにできる芸当じゃない!」

 

 レイの機体から電子ノイズが放たれる。

 Cパルス波が周囲に干渉し、通信波を乱す。

 アムロの瞳が一瞬だけノイズを帯びた。

 

『──これは……人の脳波?』

 

「そうだ。これが“魂を宿す器”の中核だ!」

 

 その瞬間、617が前へ出る。

 サザビーを相手に牽制として炸薬弾投射機の爆雷をバラ撒く。

 

『若いな……そのような歳で強化人間とは……』

《ん……ウォルターに拾われなかったら、意味を見出せずに死んでいた。でも、今は……!》

『だが、私とて只でやられる訳にはいかん!』

 

 シャアはビームショットライフルで確実に狙うも、617はAC特有のクイックブーストで回避する。

 

『甘いな!』

 

《……ん!》

 

 しかしそれを読んでいたのかシャアは腹部のメガ粒子砲を放ち、617のLYNXに向けて照射する。

 だが617は一歩も引かない。

 右肩のミサイルで牽制しつつ左肩のソングバードを放ち、サザビーの大型シールドを破壊する。

 

『やるな……!』

 

《まだ……まだ!》

 

 赤い閃光と青白い閃光が交錯し、激闘が激しさを増した。

 

 レイはデスティニーのアロンダイトでνガンダムのビームサーベルと鍔迫り合う。

 それぞれ一対一と持ち込んでギリギリ互角の戦いを繰り広げていた。

 

 これには観戦していた日本兵たちと元封鎖機構は呆然としていた。

 

「薄々思っていたが、レイやあの子があそこまで善戦するなんて……」

「……もうあいつ等だけでいいんじゃないか?」

「(^q^)オレタチ、カゲウスイ!」

 

 それぞれの反応を示す中、閣下は二人が善戦する様子を見て呟いた。

 

「……面白くなってきたな」

 

 レイの機体は既にエネルギー残量が残り28%を切り、フラッシュエッジ2は既にアムロに迎撃され、アロンダイトの刀身も折れていた。

 617のLYNXもガトリング砲と炸薬弾投射機の残弾は残り30%を切り、肩部兵装のミサイルとソングバードが残弾数がゼロになり、自動的にパージされる。

 

 アムロのνガンダムもビームサーベルと頭部バルカン以外の兵装は全て失っている。

 シャアのサザビーも残っているのは内蔵メガ粒子砲とビームサーベルにビームトマホークだけだった。

 だが、レイと617の闘志はまだ消えてはいなかった。

 

「617、まだ行けるな!」

《ん……大丈夫!》

 

 レイのデスティニーのヴォワチュール・リュミエールを最大稼働させ、ミラージュ・コロイド粒子を散布して残像現象を起こして一気に加速する。

 617のLYNXもアサルトブーストでデスティニーに続くように加速する。

 

『来るか、シャア!』

『ああ。これで終わらせるぞ、アムロ!』

 

 それぞれを迎え撃つためにアムロとシャア。

 

 レイのデスティニーがビームサーベルを振り下ろそうとするνガンダムの手に蹴りを入れ、ビームサーベルを弾く。

 

『これくらい!』

「いやっ、これで……終わりだぁ!!」

 

 デスティニーの手刀がコックピット部分に突き刺し、奥の手として残していたパルマフィオキーナ掌部ビーム砲でコックピット諸共吹き飛ばす。

 

 そして617はLYNXを過剰なほどにクイックブーストを繰り返し、サザビーのビームサーベルとビームトマホークの乱舞を躱していた。

 しかし、クイックブーストのエネルギー限界が来て、一瞬だけ動きを止めてしまう。

 

『ここまでだな!』

 

《まだ……終われない!》

 

 すると617に先天的な何かが覚醒し、まるで攻撃するの分かっていたかのように先に炸薬弾投射機の爆雷を至近距離でばら撒いた。

 

『何だと……!?』

 

 至近距離での爆発でサザビーは限界を迎え、体のあちこちに黒い煙が上がる。

 

 静寂。

 

 その静寂の中でいたのは、ボロボロのデスティニーとLYNX。

 大破したνガンダムとサザビーの姿があった。

 

『……なるほど。確かに“魂”は機械の中にも宿るらしい』

『我々が見たのは、戦いではなく──意志の証明だな』

 

 アムロAIとシャアAIが、わずかに微笑むように光を揺らめかせた。

 

『これで試練は終わりだ。レイ、まだ進化を恐れるな』

 

 次の瞬間、二つの影が光となって消えた。

 残されたのは、虚無の宇宙と、静かに漂う二機だけ。

 

《……勝った、の?》

「いや、たぶん“認められた”んだ」

 

 617がゆっくりと頷き、空を見上げる。

 そこには、緑色の光──サイコフレームから発する人の心の光が、まるで星のように瞬いていた。

 

「……アムロ、シャア。あんたらの時代が残したもの、ちゃんと受け取ったよ。

 ――“魂を宿す器”の意味が、今ようやく分かった気がした」

 

 静かな笑みを浮かべながら、レイは通信を切る。

 訓練室に光が戻り、重力が戻った。

 

 地上に降り立った617が、わずかに微笑む。

 

《……地獄、終わった》

「ああ。でも次の地獄は、現実だ」

《……また、ガンダム?》

「……いや、今度は“アムロ並の上司”だ」

 

 二人の笑い声が、静かな訓練棟に響いた。

 

 ──地獄の試練「アムロチャレンジ」。

 それは、足立重工が“魂の在り方”を見出すための最初の答えとなった。

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