「カードをチャージし【奮起する騎士団】を召喚! それに併せて【施しの慈愛像】と【人望厚き司祭】の効果も誘発しますわ!」
【施しの慈愛像】などの継続的なSP回復手段を用意し、それに連鎖するようにユニットたちを繰り出し盤面を制圧していくのがこのデッキの勝利への道筋。
多くのビートダウンデッキと異なる点は最大の特徴である回復手段であり、これにより順当にユニットで殴り合っていた場合は回復し続けたSP差によりこちらが勝つという寸法だ。
「わたくしはさらに【歓待する貴族】を召喚! SPが25000以上のため召喚された時デッキから1枚ドローしますわ!」
安治 結
SP25000→SP29000
【施しの慈愛像】
カードコスト:[黄]
カードタイプ:ユニット
世界:黄
種族:リビングアート
戦闘力:0/生命力:1000
【奮起する騎士団】
カードコスト:[黄][1]
カードタイプ:ユニット
世界:黄
種族:騎士
戦闘力:1000/生命力:3000→戦闘力:5000/生命力:7000
【人望厚き司祭】
カードコスト:[黄][黄][1]
カードタイプ:ユニット
世界:黄
種族:聖職者
戦闘力:1000/生命力:1000
【信徒】
カードタイプ:ユニット(トークン)
種族:大衆
戦闘力:1000/生命力:1000
【歓待する貴族】
カードコスト:[黄][1]
カードタイプ:ユニット
世界:黄
種族:貴人
戦闘力:2000/生命力:2000
このように1度回りだせば生半可な抵抗など無意味な軍団をあっという間に作り出せるデッキ、【キュアビートダウン】とはそういうデッキなのである。
「これでわたくしはターンエンドですわ!」
「ではターンを貰いましょう、ドロー! ……まずは黒のカードをチャージします」
結は対戦相手、
激情家である一方切り替えが早い性格の彼女は数分前までの自分に内心自己嫌悪しながら、繫の使用可能なエネルギーがついに8点に到達したことへ警戒心を強めている。
確かに自陣の盤面は理想に近い形で固められているが、それでも最大限警戒してしまうのが重コストカードを使用可能なエネルギー域である8点という数値。
「緑黒含む3点で【人道的通行料】を発動します! カードを3枚ドローし、その後ユニット1枚を捨てられない場合手札を全て捨てなければなりません」
手札補充は青の世界が最も得意としている効果だが、他の世界とて条件付きだがその術は心得ている。
「私は【香蟲花草 漂う綿毛】を手札から捨てます。さらにコスト2点の【芽吹く命】でデッキからエネルギーフィールドへ1枚チャージし、ターン終了です」
繫のエネルギーフィールドへさらにカードが追加される様を見て、結の中では警鐘が鳴りっぱなしであった。
次の相手ターンに繫がチャージすれば総エネルギーはいよいよ10。
デッキによっては冗長、持て余してしまうほどの点数である。
もしや自分に残されたチャンスはこのターンのみなのではないかと考えながら、結がカードを引く。
「わたくしのターン、ドローッ!!」
引いたカードを見て、結が目を見開く。
かと思えば笑みを、信頼する相手へ向ける柔らかくも力強い笑みを浮かべた。
「良いカードが来てくれましたか?」
「ええ、わたくしの想いに応えてくれましたわ。その気高き姿、いまお見せします!」
結からの戦意、あるいはプレッシャーが急速に上昇していくのを繫は感じた。
「チャージし黄5点ッ! 【
歌と光に包まれ、結の切り札であるユニットがフィールドに降臨する。
その姿は自身をすっぽりと覆えるほどの翼を持つ天使。
プレイヤーである結を見つめる眼差しは温かく、意味を理解することはできないがその歌は祝福に溢れていた。
「ユニットが召喚されたことで慈愛像の効果が誘発、さらにそのSP回復に併せて騎士団と司祭の効果も発動しますわ!」
SP回復を起点にまたもや始まる結の軍団強化。
だが今回は新たに召喚された【祝歌の大翼】により、前回の比ではない強化がユニット全体へもたらされる。
「そして【祝歌の大翼】がフィールドに存在しわたくしのSP総量が25以上なら全てのユニットに浮遊を、さらに30以上なら戦闘力と生命力に4000の補正を与えますわ!!」
大詰めと言わんばかりに結のユニットたちに活力が宿る。
天使の歌声はただプレイヤーを寿ぐだけではなく、共に戦う同胞たちに翼と力を与えるのだ。
安治 結
SP29000→SP32000
【施しの慈愛像】
戦闘力:0/生命力:1000→戦闘力:4000/生命力:5000
【奮起する騎士団】
戦闘力:5000/生命力:7000→戦闘力:12000/生命力:14000
【人望厚き司祭】
戦闘力:1000/生命力:1000→戦闘力:5000/生命力:5000
【信徒】
戦闘力:1000/生命力:1000→戦闘力:5000/生命力:5000
【歓待する貴族】
戦闘力:2000/生命力:2000→戦闘力:6000/生命力:6000
【祝歌の大翼】
カードコスト:[黄][黄][黄][黄][黄]
カードタイプ:ユニット
世界:黄
種族:天使
戦闘力:5000/生命力:5000→戦闘力:9000/生命力:9000
天使による大幅な強化により、どのユニットも元が低コストとは思えぬステータスへと変貌する。
手札は使い切ってしまったが、しかし結の表情は自信に満ちていた。
自陣の偉容を高らかに、そして誇らしげに叫ぶ結。
「御園プロ、これがわたくしのありったけですわ!」
「素晴らしい……」
繁の結への賛辞は、プレイングだけに向けられたものではない。
ここぞという時にそのカードを引くことができる、いわばカードとの信頼関係が成り立っているそれは何よりの証左であった。
人によっては鼻で笑う話だが、繁は日々のバトルでカードとの繋がりを実感する時が何度もある。
そんな繁から見て今の結は、まさに1人のバトルワールドプレイヤーとして対峙すべき相手だと強く思わせた。
「これで決めますわ!! 行動可能な全ユニットで攻撃ッ!!」
結の号令の下、天翔ける軍団が繫へと押し寄せる。
その総攻撃は初期SPなど容易く吹き飛ばせるものであり、これが通れば結の勝ちは決まるわけだが──
「【死者への尊重】を3コストで発動! 自分の墓地からコスト2以下のユニットカード1枚を選びフィールドへ出し、戦闘力がそのユニットの数値以上の相手ユニットからのダメージを私は受けません!」
「っダメージを遮断するカード!?」
「私が選ぶのは【香蟲花草 漂う綿毛】……。このユニットの戦闘力は0、よって私が受けるダメージも0です」
墓地から忙しなく叩き起こされた綿毛がふと前を見れば、そこには自分を容易に叩いて潰せそうなユニットたちがずらり。
しかし綿毛は一切怯むことなく、敵を近づけさせまいと羽音を立て威嚇的に飛び回る。
そんな様子、たった1匹の小さな命が懸命に行動しているのを見たユニットたち総勢8体は明らかに気勢を削がれたようで、繫と綿毛の手前で止まりそれから気まずそうに主である結の下に帰っていった。
「尊重というか、良心に付け込んでいるのではなくて?」
「まぁ、これも一種の生存戦略でしょう」
軽口を交わしながら、結はこのターンで決められなかったことに焦っていた。
繁の残り使用可能なエネルギーから、バウンスや破壊などでユニットが除去されても精々1体か2体だと高を括っていた結。
ユニットは全て無事だが、決着をつける気概で仕掛けた攻撃はあっさりといなされてしまった。
「……ターン、エンドですわ」
盤面でもSPでも圧倒している結だが、そのエンド宣言からは不安が滲んでいる。
その原因は相手の伸びに伸びているエネルギーも要因ではあるが、何より繁本人の対戦開始から絶えないあの曖昧な笑み。
「ではターンをいただきます」
カードを引く動作すらどこか粘っこさを錯覚させる繁に、これがプロから感じるプレッシャーなのかと思わず慄く結。
「まずは緑4点で【生き残りの選別】を発動。デッキの上から4枚の内ユニットカード1枚を手札に、1枚をエネルギーフィールドへ。次に【香蟲花草 漂う綿毛】の効果を発動するため緑2点を含む5点のエネルギー、そして綿毛自身を破壊します」
その身にエネルギーを注がれ急成長した綿毛。
しかし些か無理のあるものだったのかその場を少し揺蕩ったかと思えば、次の瞬間に何の予兆もなくその身が爆ぜた。
「ぴゃっ!?」
「おっと失礼、驚かせてしまいましたね。綿毛は自らを犠牲としてプレイヤーにエネルギーの実りをもたらしてくれるのです。それはエネルギーフィールドのカード枚数を参照し、今回は実に10点分の緑エネルギー!」
「びゃっ!?」
予期せぬ繫の大量エネルギー獲得に思わず悲鳴を上げてしまう結だったが、それがまだ序の口であることをすぐに知ることになった。
「4点で【没頭】を発動し3枚ドローします。さらに2点で【守銭奴な墓守】を召喚」
繫がカードを繰り出すたび、どんどん結の悪い予感がその色を濃くしていく。
さながら目の前で自分を処刑するためのギロチンが組み立てられているような心地。
「続いて手札から2体目の【香蟲花草 漂う綿毛】を召喚! そして即座に綿毛の効果発動!」
「……あぁ、また追加で10点の」
「さらに綿毛の効果に対応し3点支払い【双生児の死生観】を発動します! このターン墓地に同名カードがあるユニットが墓地へ送られる時、その同名カードをフィールドへ出すことができます!」
「……へ?」
呆ける結を置いてけぼりに、綿毛が先ほどと同じくその身を散らしエネルギーをばら撒く。
そうしてフィールドを去った筈の綿毛だが、どこからともなく再びその姿を晒す。
まるで双子が入れ替わるかのように、そのユニットは元気よく繫のそばを漂っている。
「墓地からフィールドへユニットが蘇ったことにより【守銭奴な墓守】の効果発動! デッキからカードを1枚ドローします! そして再び綿毛の効果を発動!」
「あ、これって……」
目の前で実例を見せられれば嫌でも理解できた。
「無限ループですわーーっッ!?」
結の悲鳴の内訳を説明するならば恐ろしさ7割、興味深さ3割であった。
いよいよ枷をはめられギロチンが頭上にある状況に対しての恐怖。
演出などではなく実際の対戦で披露される無限ループというド派手な戦術への期待。
それぞれがバトルワールドプレイヤーならではの複雑な感情と言えた。
「あわわ。ど、どんどん手札とエネルギーが増えて、あわわ……」
綿毛がフィールドと墓地をグルグルと行き来するたび、繫の手札とエネルギーが増えていく。
目の前で無法に積み重なっていくリソースに若干幼児退行を起こしながら、しかし結の中のプレイヤーとしての部分はこの稼いだリソースをどう使い自分に止めを刺すのかに興味を示していた。
だいぶ後ろ向きだが、冷静にバトルを見ることが出来ている証ではある。
繁の使用カードで見えている色は緑、青、黒。
まだ結のフィールドには防御可能なユニットが残っておりSPも潤沢。
この状況から正攻法のユニットによる攻撃での線は薄いと考える結。
ならばどのような手段で来るのかと当たりをつけようとした結だが、ついにはそこで時間切れとなってしまう。
「ふむ、こんなところですかね」
無限ループによるリソース稼ぎの手を止め繫が呟く。
いよいよ処刑執行の時かと結は身構えながら、しかし気持ちはどこか晴れやかだった。
「……御園プロ、先ほどまでの非礼改めてお詫びいたしますわ。こんなわたくしに付き合っていただいて」
「非礼などとんでもない。自身の未熟さを実感させていただき、こうして結様という素晴らしいプレイヤーと対戦できている。私からすれば感謝してもし足りないくらいですよ」
彼はバトルワールドに真摯な者なら皆にそうした態度なのだろうなと、結は一歩引いた姿勢で繁からの言葉を受け取る。
きっかけは自身の嫉妬から始まったものだが、存外その結末は良い形で着地できそうだった。
「さあ御園プロ、幕を引いてくださる?」
「大役、ありがたく引き受けさせていただきます」
増えに増えた手札から繁がカードを1枚引き抜く。
あれがこの対戦を、自身に引導を渡すカードかと見つめる結。
どのようなものであれ、全力を出した末に負けるのなら結に拒む理由などなかった。
「黒2点に加え、残り全エネルギー35点をαコストとして払います!」
膨大なエネルギーが繫の持つ1枚のカードへと注がれていく。
バトルワールドのカードは必ずそれを使うためにコストが設定されているが、中にはその上限がないものが存在する。
それらのカードはαコストという既存のコストとは別に際限なくエネルギーを取り込み、有限のカードたちでは成しえない結果をプレイヤーへもたらす。
一撃でSPを消し飛ばすステータスのユニットや、デッキ全てのカードを引き切るサポート。
俗にプレイヤーたちからはαコストと呼ばれるそれらカード群。
このカードに、結は派手で良いじゃないかと笑う。
そうして満足げに目を閉じ、己の敗北を受け入れようとした彼女へ──
「【テンタクル・イロージョン】を発動!! 払ったαコスト分、貪欲な触手たちがプレイヤーのソウルを啜ります!」
「え」
何かとんでもないことが聞こえた気がした結が目を開き、繫のフィールドを見る。
そこには何とも冒涜的な、粘液にまみれた触手で形成された巨大な球体が浮かんでいた。
「ちょっと御園プロ、少しお待ちに」
「これが私の、1人のバトルワールドプレイヤーとしてこのバトルで見せる全力です」
「そうなんですのね。わたくしもそれを否定する気はないのですけど」
「いざ勝負! 対象プレイヤーは当然、結様へ!」
「薄々気付いてましたけどあなたバトルのことになると一直線ですのね!? ああ触手がこっちにっ! い、今から、今から入れる保険ってないんですのーーーッ!?」
そんなものはバトルワールドの世界にはない。
触手たちが結に到達する寸前、この日最も真に迫る声を彼女は上げた。
「お嫁に行けなくなりますわーーーーッッ!!!??」
バトルワールドのカードには時折使用に制限がかかるものがあります。
主に環境を歪めていることを危惧し競会が有識者と定めているものですが、これらとは別に使うことを咎められるカードというものも存在しています。
理由は様々であり、半ばローカルルールと化しているのも否めません。
彼はもう(社会的に)終わりですね。
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【テンタクル・イロージョン】
カードコスト:[黒][黒][α]
カードタイプ:サポート
プレイヤー1人を対象とする。
αコストの点数分、そのプレイヤーのライフは失われる。
数に限りはなく、欲に果てはない。
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・ぼく、社内大会にて女性社員にこのカードを使い無事○亡
・↑なぜ大衆の面前でこのカードを?
・↑↑絶対故意に使っただろこいつ
・好きなカードも使えないこんな世の中じゃ……
・さすが主要なイベントや大会で使用を控えてもらうよう通知されてるだけはあるぜ!
・絵面がね……、ちょっと……
・禁止カードでもないのに何を躊躇う必要がある! おれは構わず使うぜ!
・↑嫁や恋人の前でも同じこと言えんのかっつー話だ
・↑そんなものおれにはいないが?
・↑すまん、お前の勝ちだ
・まぁでもましになってきた方だろそれこそ数十年前はあの事件でこのカードの話題自体好まれなかったし
・あの事件is何
・台覧試合事件も知らないってこれがゆとりか
・↑↑何十年か前に開催された台覧試合って皇族が観戦する試合でこれ使った奴がいて、試合中に過激派な観客から○されそうになったって事件
・でも正直この風潮嫌いだわ禁止はおろか制限さえされてないカードに目くじら立てて
・↑分かるカードに罪はないし、普通に実用的だしな(そっちの意味じゃないゾ)
・↑台無しだよ