新たにランキング戦に挑む6人が発表されてから数日。
ランカーになったからといって即座に挑戦できるわけではなく、実際に猛者たちとやり合うのはもう少し先のこと。
その間は競会からランキング戦についての講習などを6人は受け、満を持して頂点の舞台で戦うというわけだ。
新ランカーの1人である
スポンサーである
他にも仕事で知り合った者たちなど、顔に似合わず意外と広い交友関係の面々から繁は多くの祝いの言葉を貰っていた。
これを当人である繁は素直に良きこととして喜び、会見と同じくランキング戦と順位に恥じぬバトルをすることを誓う。
さて良きことの後に悪しきことが起こるのは世の常であり、それは繁も例外ではない。
繁のことを好ましく思っている者が会見で今回のことを知った以上に、それ以外の者たちも彼がランキング戦に挑む身分になったことを知ったのだ。
元より反感を抱いている者、今回の措置で新たに繁を知った者。
そのような者たちの大半は繁への敵愾心に溢れており、よって次の行動も示し合わせたかのように一致していた。
すなわち、名を上げる好機到来。
「ヒャッハー! 今すぐ俺とバトルしろや御園繫ゥッ!!」
あの会見から既に珍しいものではなくなった光景。
鳴り物入りでランキング戦デビューとなった繁を討ち取って名を上げようというプレイヤーはプロアマ問わずといった有様である。
まだ正式にランキング戦に臨んでいない繁であったが挑戦者たちにとってそんなことは些細な問題であり、自身の功名の糧になれというのが正直な感想であった。
「分かりました、お受けしましょう」
「まさか断るなんて寒いこと言わねえでくれよおい! まあ大事なランキング戦前でビビる気持ちも分かるがよぉ…………ほ?」
即座の快諾に、思わず挑戦者の目が丸くなる。
ランキング戦入りを発表されながらまだランカーとして活動していないという、このデリケートなタイミングでの辻バトル。
挑戦者の男としてはこの申し出に狼狽える繁へプレッシャーを感じさせつつ精神的に優位な状況で押し切ろうという魂胆だったのだが、相手はどうやら気圧されている様子は微塵も感じさせない佇まいで。
「ほほほう、い、いい度胸じゃねえか」
「近くの公園にバトルワールド用のレンタルスペースがありますので、バトルはそこでよろしいでしょうか?」
「お、おう。俺はいいぜ。どこでだってやってやるぜ……」
「それは良かった。では、公園はこちらですので」
言うが早いか自ら公園へ先導する繁。
その背中についていきながら、挑戦者である男の内心は以下の通りであった。
これ駄目そう。もうバトルする前から勝負ついちゃってない?
プレッシャー与えるどころかこっちが気圧されてんだけど……
何でこれに挑んじゃったんだよ俺。よく見たら顔や雰囲気とか完全に魑魅魍魎の類じゃんか。
「何故、私をバトル相手に選んでくれたのですか?」
「へぁ……? なんでって、えっと、テレビで見て……」
「なるほど、あなたもあの会見を見てそう思ってくれたのですね。大勢の人の前で気恥ずかしかったですが、バトルの申し込みがこうも増えるなら結果としてはプラスでしたか」
「……へへ、あざっす、あっす」
ちなみに挑戦者の男、繁との会話にほとんど意識を割けていない。
内心での泣き言やこの状況をリセットする手段がないかなどをただひたすら考えていたため作ったキャラも取り繕えず、ほとんど素の状態で今は繁と喋っている。
気分と連動してか視線も段々と下がり、今は繁の足しか視界に入っていない。
「あのよおッ! ちょいと相談があるんだがよ」
お腹が痛くなってしまったから、家の鍵を閉め忘れてしまったから、そろそろごはんの時間だから。
理由はこのうちのどれか、あるいは総当たりで今回のバトルは無しにしようと男が視線を上げた瞬間──
「さぁ着きました。私たちが使用するのはあそこですね」
「おお……?」
挑戦者の目に映るのはほどほどに植物が整備された公園、そして繁が指し示す敷地内のレンタルスペース。
なんといつの間にか目的地までたどり着いてしまったことを男はようやく知る。
完全にタイミングを逃がしたと焦る男であったが、ふと脳裏によぎったのはレンタルスペース使用に必要な申請手続きについて。
ここで無理やりにでも理由をつけて断れないかと思案し──
「道すがら使用申請は済ませておきましたからご安心を。すぐにバトルを始められますよ」
「……おお」
ことごとく潰される逃げ道。
これがランカーの座を勝ち取ったプロの手腕なのかと時期尚早な戦慄を覚えながら、流石に事ここに至って逃げ出す手を挑戦者の男は取ることができなかった。
ここまで勝負の場を整えてもらいながら逃げるのは相手への非礼、自身が怯懦であることの表明。
そして何より、組んだデッキへの裏切りに他ならない。
吹っ切れたのか無言でスペースの一方に立つ挑戦者に合わせ、繁ももう一方へ立つ。
2人が手にしているデバイスや雰囲気からバトルワールドの対戦が始まることを感じたのか、公園内の少なくない人が良い暇つぶしだと見物客に早変わりする。
衆人環視の中でのバトルなど繁にとっては慣れたものであったが、挑戦者の方はそうはいかない。
再び湧き上がってくる逃避の欲求。
それらを体外へと吐き出すように、このバトルの口火を切ったのは挑戦者の男であった。
「対ッ戦、よろしくお願いシマアアァァァッッ!!!」
「対戦よろしくお願いします!」
突然の大声に驚く観客と、挑戦者に応えるように勢い良く返す繁。
いざバトルの当事者となればプロかアマチュアかなど、繁にとって大して違いはない。
闘う意思を持ってその場に対峙していれば万人が彼にとって良き競争相手だ。
良く言えば差別のない、悪く言えば無節操な姿勢。
その是非は繁の闘志を現在進行形で浴びている挑戦者の顔色を伺うことでしか測れないが、少なくとも及び腰になりながら男はバトルから逃げるつもりはないようだ。
『Battle Start』
秋晴れの空の下デバイスより告げられるバトル開始のシグナル。
見物人に見守られながらの、いささか牧歌的な闘いの火蓋が切られた瞬間であった。
今の日本は昼頃だろうか。
会食の席にて、退屈を覚えながら
磨き上げられた大理石の床に豪奢なシャンデリア。
壁に並ぶ絵画はどれも高名な画家たちの作品でそれらが惜しげもなく飾られ、天井から吊るされた照明がより作品を格調高くまたは蠱惑的に見せていた。
卓上に並ぶ高級料理は見目華やかであり、赤ワインの入ったグラスが談笑のたびにかすかに揺れている。
日本より遠く離れた、ここはとある新興国の一流ホテル。
中でも最上級の1室を丸ごと貸し切っての会食に重花は参加していた。
「過分な評価をいただき恐縮です」
その席にて、普段バトルで披露している獣性漂わせた雰囲気からは結び付かないほどに重花は楚々と微笑んでいる。
これが競会が彼女を重用する理由の一端。
繁との1件からバトルワールドでの強引な姿勢が垣間見える重花だが、それを押し通すための道理を理解していないわけではない。
自身の要望を聞いてもらった代わりに競会からの要請をこなしているこの状況がその証左である。
「ですからミス重花、あなたにはぜひとも我が国のリーグへ参加していただきたいのです」
重花の対面に座る男が恰幅のよい身体を揺すりながら発言する。
今夜の会食の主催者である男はこの国のバトルワールド競技界において強い影響力を持つ要人であり、自らが主催するプロリーグ運営にも熱心だ。
しかし対面する重花はバトルワールドへの情熱を男から感じ取ることがいまだできていない。
反して彼女の勘違いでなければ、会食中の言動あるいは言外の雰囲気から権力や金銭への強い欲求ばかりが男から感じられる始末。
「我がリーグはこれからさらに発展していきます。待遇も報酬も、ミス重花が日本で得られるものとは比較にならないほど用意しましょう。なんなら専属の施設を用意しても、専属のチームを編成してもいい。あなたほどの選手なら望むものは何でも与えましょう」
「まあ、たいへん魅力的なお話ですね」
柔らかく、しかしどこか空虚な相槌を重花が打つ。
ちらりと窓の向こうに目を向ければ、そこには誘致した外国資本により急速な発展を遂げつつある街の夜景。
高層ビルの窓明かりが星のように瞬き、眼下の道路を走る車列が都市の血管を流れる血液のごとく光の筋を描いている。
急速な発展は国力以上に、あるいは要人の男の自負心を肥大化させているのかもしれなかった。
「ですがわたくしは現在、競会を通じてさまざまなお仕事をいただいておりますので……。今すぐ新しい環境へ移るというのはなかなかに難しいかと」
「それはもちろん承知しています。ですから今すぐとは申しません。1年後でも5年後でも、契約だけでも先に結んでいただければ他に何も申しませんとも」
「そこまでのお言葉をいただけるとは光栄です」
やはりどこか手ごたえのない声音で答え、重花はワインの入ったグラスを傾ける。
口に含んだワインは確かに上等なもので、料理も劣らず申し分ない。
少なくとも、会食の場としての質には文句のつけるところがなかった。
まぁそれらや金銭の多寡で転ぶような分かりやすい人柄なら、重花に対して現在所属している組織が定期的に頭を悩ませることないのだが。
「どうですミス重花、この場で一筆だけでもいただけませんかな」
「申し訳ございませんが、今夜この場で移籍について何か決めることはありません。どうかご容赦を」
いよいよ重花の受け答えが切って捨てる様相を呈してきた、その時である。
男の様子も呼応するように一変したのだ。
「……ミス重花、これだけはよく知っておいて欲しい。私はね、こう見えてもこの国ではそれなりの立場にある人間なのだよ」
男にそれまでの儀礼的な雰囲気は残っていない。
この発展著しい国でほとんどの場合好き放題できる力が確かに男にはあり、今まで咎める者などいなかった。
男の背後にはそのことを保証するかのように控えている4人の護衛。
荒事に慣れた雰囲気の護衛たちは会食が始まった当初から壁際に立ち職務を全うしていたが、重花へ向ける目つきはとてもゲストに向けるものではなかった。
「我がリーグに迎えたいというのも決して冗談ではない。しかしこうして誠意を尽くしているのにいつまでもはぐらかされるというのは少々気分が悪い」
「はぐらかしているつもりはありませんでしたが……」
「回りくどいのはやめにしてはっきり言おう。私のものになれ、重花」
ついに男から発せられる、公人としての仮面を外す発言。
男の目が重花の顔から首筋へと滑りやがて全身を舐めるように見る様から、その発言の意図は十分に察せられた。
「我が国はこれから驚異的な成長を遂げる、その恩恵を授かるこれはチャンスだと思うといい。私の寵愛を受ければそれが叶う。君があの窮屈な国で得るより遥かに素晴らしいものを手にできるのだよ」
自分の言葉に満足したように男が歯を見せて笑う。
「もちろん私も紳士だ。無理強いをするつもりはない、ただ──」
そこで男は誇張気味に、自身の背後に控える屈強な体つきの護衛たちを顎で示した。
次に席から立ちあがると、遠慮のない足取りで重花のそばへと近寄る。
「私には力がある。自分の立場とこの場の状況、それを君はよく考えたほうがいい」
男と護衛たちの口元に同じ種類の笑みが浮かぶ。
相手を意のままにできる状況に快楽を見出す、そんな笑み。
バトルワールド先進国の日本で名の知れたプレイヤーであろうと、ここでは自分のほうが圧倒的に有利なのだという優越感が男を酔わせる。
この場において絶対的な力を持つ者、それが自分なのだ。
そう、男は思っていた。
「……なるほど」
小さく呟いた重花はおもむろに、しかし彼女以外には誰も察知できぬタイミングで近付いてきた男の体へ手を伸ばした。
男の胸部にあと少しで触れようかという距離でそれはピタリと止まり、そこから胸へ這わせるようなどこか艶めかしい動きをする重花の指先。
ただの手、しかも体に触れてさえいないのにその様は男が浮き立つほどに官能的ですらあった。
「は、ははは。どうやら君は賢い選択を」
またも重花はおもむろに、空いたもう片方の手を伸ばした。
伸ばした指先がテーブルに置かれたワインボトルを何気なく撫で──
かちり、響いたのはそんな小さな音のみ。
しかしその音を合図とするかのように、左右できれいに分かたれたワインボトルがその中身を純白のテーブルクロスへと晒す。
まるで最初から継ぎ目があったように滑らかな切断面も共に。
そんな重花にとっては手慰みな代物が室内の空気、そして男たちに与えた影響は甚大であった。
丸腰の非力な女だと思っていた存在が素手でガラスを両断したのだから無理もないが。
護衛の男たちは懐に忍ばせた銃を一斉に重花へ向け雇い主である要人の安全確保を図る。
しかし護衛たちのそのような行動も、要人の男を安心させてはくれなかった。
何せいま重花が披露した所業を可能とする手のうち、もう片方は男の胸にギリギリ触れない位置にあるのだ。
具体的には胸のほぼ中央、そのまま触れれば心臓がある位置。
転がっている両断されたワインボトルと自身の心臓が重なり、男の平常心はあっという間に尽きた。
「お、おい! 両手をいますぐテーブルへ」
しかし護衛たちの声で、男は悲鳴を上げそうになるのをかろうじて堪えることができた。
銃。暴力を具現化したそれの存在が僅かな安堵を男にもたらす。
確かに曲芸染みた技には驚かされたが歴史がその力を保証してきた英知に敵うはずがないと、どこか拠り所とするように。
「すまないがそちらの要望には応えられない」
よそ行きの口調から本来のものへ戻し、重花がひらりと手を振る。
ただそれだけの動作の後、金属が擦れるような音が4度ほとんど同時に響く。
結果として4人の護衛が握る拳銃、その銃身が揃って真っ二つになっていた。
切断された数秒前まで銃だったものが床へ落ち、乾いた音を立てる。
もはや室内の重花以外の人間は身じろぎすることさえできなかった。
いつから自分たちは安いコミック誌の世界に紛れ込んでしまったのか。
ここは現実かを内心で問うくらいしか男たちにできることはない。
「お互い少々酔いが回ってきたとみえる。このあたりで失礼させてもらおう」
室内の誰に許しを得ることもなく、グラスに残ったワインを飲み干し重花が席を立つ。
そのまま彼女が退室するまで、誰も動こうとはしなかった。
具現化どころではない、暴力の化身がその矛先を自身に向けないよう。
扉が閉まりしばらくして、ようやく男たちは息を吸えた。
ホテルのエントランスを抜け、待機していた黒塗りの車へ乗る重花。
「お疲れさまでした、重花さん」
運転席に座っていたマネージャーがバックミラー越しに彼女を見た。
「お怪我はありませんか?」
「もちろんないとも、ただの会食さ」
「ふふ、それならよかった」
走り出す車の後部座席に重花が身を預けていると、隣に座るもう一人が声をかけてきた。
「面倒をかけたな経津。あの男についてはこちらでも事前に警告していたつもりだったのだが」
重花にそう謝るのは競会理事の1人。
競会の支配者とも世間に称される者が申し訳なさそうにする様子に、重花への競会としての信用が伝わってくるようであった。
「まさかあそこまで直情的に動くとは。君に余計な手間をかけさせてしまったな」
「いえ、いつものことですから」
慣れた様子で答える重花。
会食は彼女の服に仕込まれた小型機器で筒抜けであり、先ほどのマネージャーとのやり取りも戯れである。
最高峰バトルワールドプレイヤーというのは日本にとって価値の高い外交資産でもあり、そんな存在を無防備に放つはずもなかった。
加えて経津 重花という人物の容姿は非常に整っている。
180を超える高身長はバトルワールドや趣味である剣術の稽古で引き締まりファッションモデルばりのプロポーション、涼やかな顔立ちも相まって男女問わず彼女のファンは多い。
そうした重花のことを知り、手に入れようと考える権力者が今回のように時折現れてしまう。
競会の覚えがよい重花は諸外国との会談や要人との会食にたびたび駆り出される。
そうした中で今回のような手合いが現れるのだ。
最初は競技界への勧誘、次に個人的な面会の要求、それでも断れば贈り物や金銭をちらつかせるなど。
書面で断っても理解しない者はしつこく競会へ問い合わせ、ついには重花本人と会えるよう手配しろと要求してくる始末。
そして実際に本人を目の前に要求を通そうとして、というところまで重花にとっては見慣れたものであった。
「まぁ栄華の最後に君を知れた。あの男にはそれを手土産としてもらおうか」
理事がそう言ってタブレット端末を重花に手渡す。
表示されているのはこの国最大の報道機関によるニュース記事。
「日付は明後日……、バトルワールド推進委員会現委員長の更迭?」
「まあ、そういうことだ。挿げ替える首はこちらで用意した」
暗に日本による内政干渉をほのめかす理事の言葉。
聞く者が聞けばひっくり返りそうなことをさらりと言われた重花であったがその様子は特に変わらない。
すでに重花の記憶から会食の席での出来事はほとんど忘却されている。
ワインボトルの断面も、男の青ざめた顔も、護衛たちの間抜けな表情も。
その中でまだかろうじて残っている、要人の男から提案された自身の待遇について重花はふと考える。
もしあの提案に乗り、日本から離れていたら。
そうしていた場合、バトルワールドプレイヤーとしての自分は死んでいるだろうと彼女は確信する。
鞘から抜かれずただ展示されるのみの、持ち主が飽きれば油で手入れもされず錆びていくだけの存在。
そんなところが妥当だろうなと重花はあったかもしれない末路を思い描く。
ひたすらに斬り合う、それ以外は全てが雑事。
やがて刃が欠け刀身砕け、五体を地に晒すような闘争の果てこそ重花が求めしもの。
誰に影響されたわけではない、何の因果が巡ったわけでもない。
ただ持って生まれた性分が修羅の道にこそ行くべきだと決断させただけ。
いつかたどり着くことを夢見る、純粋な闘いの果て。
最期の光景、己を斬り伏せた相手の顔を見るところまでで重花は妄想を打ち切る。
無意識に相手の顔がとあるバトルワールドプレイヤーに瓜二つだったことと何か関係があるのか、それは彼女にしか分からない。
しかし、そう焦ることはないと自身に言い聞かせる重花。
「日本が恋しいな」
こぼれた重花の呟きに込められた想い。
同じ存在だと直感した相手はつい先日、実力で同じ舞台に上がってきてくれた。
きっと今も誰かとバトルをしているとあるプレイヤーを思い浮かべながら、重花が思い描くのは自身にとっての華々しい未来。
余人にどう映ろうとも、それを考えるだけでどうしようもなく彼女の心は躍るのだった。
バトルワールド先進国の外交姿勢
※国内シンクタンクより一部抜粋
・日本──競技秩序の設計者
ルール制定に熱心な日本は選手個人の強さだけでなく育成、審判、競技設備、プロ管理制度を外交資産としている。
有力選手を外交の場に送り出す一方、国際大会の運営や競技技術の標準化を通じて勝敗以外の部分での優位確保を目指す。
競会は日本政府と常に綿密な連携を是としているが、実態は緊張感を持った関係。
外交目標:バトルワールドの国際ルールを日本に有利な形で維持すること
最大の懸念:八百長や組織腐敗などの不祥事による制度そのものへの信頼失墜
・アメリカ──人材市場と興行による覇権
市場主導のアメリカは圧倒的な賞金、企業スポンサー、メディア露出、プロリーグの市場規模によって世界中のトップ選手たちの関心を引きつけている。
自国の選手育成だけに注力するのではなく、海外のスターを獲得し国籍を超えた強豪チームや興行成立にも力を入れている。
国際大会では公正な競技制度を支持しながら、民間リーグや配信権、スポンサー市場の主導権獲得には余念がない。
外交目標:世界最高峰の選手と生み出す資金がアメリカ市場を経由する構造の構築
最大の懸念:国家の選手囲い込みによる自由な商業活動の停滞
・中国──国家総動員の強豪育成
中国は学校教育から始まり地域リーグ、国営・民間企業の支援組み合わせ、選手層の厚さと育成速度を武器としている。
突出した個人を獲得するだけでなく十代の有望選手を発掘し、継続的なトップ選手の輩出を重視。
国際大会での勝利は国威発揚に、競技技術や関連製品の輸出は経済的な影響力に繋がる。
外交目標:世界大会の競技水準や商業規模維持に中国が必要不可欠な存在になること
最大の懸念:育成制度が硬直化し、選手やデッキレシピ・戦術の頭打ち
・EU──共通市場と規則の外交
EU諸国は単独で他先進国と競うよりも共通の育成制度、選手移籍の自由、競技者の権利保護、不正防止を整えることで対抗。
フランス、ドイツなどの有力国がそれぞれ独自の有力選手を抱えながら、国際交渉ではEU有利な国際ルールを求めるのが日常になっている。
特に日本の競会のような組織が強大な権限を持つバトルワールドの世界で存在感をアピールすべく、独立した審判機関や異議申し立て制度の整備にも邁進中。
外交目標:選手の自由と共通規則を通じ巨大市場としての交渉力確保
最大の懸念:加盟国間の格差や利害対立による国際大会での行動の不一致
・イギリス──仲介と金融の拠点
イギリスは選手の育成だけでなく代理人、国際大会の仲裁、競技関連金融などに独自の強みを持つ。
世界中のトップ選手が所属国とは別の場所で契約を結び、移籍やスポンサー交渉を行う際の拠点としてロンドンは名高い。
外交目標:どの国が優位でも利益が集まる、競技ビジネスと国際仲裁の中心
最大の懸念:大国の独自リーグや契約制度の席巻による国際市場の不健全化