ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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病院内にて

「避難状況は!?」

 

「最上階がまだ!」

 

避難誘導しているらしい看護師や警備員の横を、明久、雪菜、浅葱の三人は走っていた。

そんな三人を止めようとした警備員も居たが、それよりも避難誘導を優先したらしい。

そんな廊下を走りながら、明久は

 

「つっ……正面玄関に居るのは、眷獣か!?」

 

と渡り廊下から、階下の玄関を見た。

そこに居たのは、一体の眷獣だった。

その眷獣に対して、数人の武装した警備員が銃撃をしているのだが、全くダメージを受けた様子がない。

 

「凄い魔力だ……間違いなく、旧き者クラスだけど……」

 

明久は、その眷獣の動きに違和感を感じた。

その眷獣がどのような能力を有しているかは知らないが、感じる魔力から今交戦している警備員達は簡単に倒せる筈だと思ったのだ。

事実、先に交戦したらしい数人の警備員が倒れているのが見えたが、重傷だが生きている。

 

「もしかして……陽動?」

 

と雪菜が呟いた直後、明久は

 

「こっちだ!」

 

とある方向に駆け出した。

 

「先輩!」

 

「待ちなさい、明久!」

 

駆け出した明久を追い掛けて、雪菜と浅葱も走り出した。そして明久が向かったのは、裏側の地下に続く階段だった。

そしてそこには、既に一人の少女が居た。

揺らめく度に炎のように色を変える金髪の、幼い少女が

 

「き、君は……!?」

 

その少女を見た瞬間、明久を激しい頭痛が襲った。

まるで、頭の中を電撃が走っているようで、その度に脳裏に何かが見えた。

それはまるで、目の前の少女を知っているかのように。

 

「ふむ……まだ、記憶が欠けているか……では、少し試させてもらうぞ!」

 

少女はそう言うと、凄まじい速度で明久に迫った。だが明久は、その少女の速度に即座に反応。

少女の手を掴むと、くるりと投げ飛ばした。

だが少女は、空中で器用に体を捻って着地した。

 

「なるほど……今代のは中々の戦闘力の持ち主のようだな……」

 

と少女が感心していた時

 

「はあ!」

 

雪菜がまるで、流星のようにその少女に奇襲を仕掛けた。

しかし少女は、軽やかに跳躍して回避。

 

「ふむ……獅子王機関の剣巫……ということは、それが七式降魔機槍か……」

 

「先輩、ご無事ですか?」

 

「なん……とか……」

 

雪菜に問い掛けられた明久は、頭を押さえながら答えた。その明久の様子に、雪菜は

 

(彼女に、反応してる……?)

 

と少女に視線を向けた。

 

「ふむ……流石に、獅子王機関の剣巫まで相手にするのは、避けたいな……」

 

少女はそう言って、右手を肩の高さに掲げて

 

「おいで……」

 

と眷獣を召喚した。

それは、小さいがまるで火山を彷彿させる眷獣だった。

 

「あの眷獣は!?」

 

その眷獣を知っていたのか、雪菜は目を見開いた。

その間に、眷獣の中に凄まじい魔力が集まっていく。

 

「ヤバい……あんなのが放たれたら、病院が!」

 

集まっていく魔力を感じた明久は、左手を高々と上げた。

 

(浅葱に見られるけど、仕方ない!)

 

疾く在れ(こい)! 龍蛇の水銀(アルメイサ・メルクーリ)!」

 

明久は龍蛇の水銀を召喚し、少女の眷獣に差し向けた。

それを見た浅葱は、雪菜に

 

「あれって、眷獣……ウソ、明久は人間の筈……吸血鬼になってたの?」

 

と問い掛けた。

すると、雪菜は

 

「先輩は、ただの吸血鬼ではありません……非公式の真祖……第四真祖です」

 

と答えた。

その間に、明久が召喚した龍蛇の水銀は少女の眷獣を消し去ったのだが、余波で廊下の一角が消えていた。

その下に見えたのは、巨大な氷で出来た棺。

その中には、今目の前に居る少女と瓜二つの少女が眠っていた。

それを見た明久は、小さく

 

「アヴローラ……」

 

と呟いたのだった。


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