ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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緊急事態

二人がゴゾ遺跡に来た翌日、二人はその遺跡に入った。

道中には、牙城やPMCが破壊したらしい遺跡の防衛機構の残骸が転がっていた。

明久は、それらを刀で突きながら進んだ。まだ生きていて、後ろから奇襲された面倒だったからだ。

 

「……あれ? 牙城君は?」

 

「カルーゾって人を探しに行ったよ」

 

周囲を警戒しながら、凪沙の問い掛けに明久は答えた。

ふとその時、遺跡の壁面が突如光り

 

「そっか……ここは、貴女の……」

 

と呟いた。どうやら、何やら感じたようだ。

凪沙は過応適応者と霊媒の二重能力者で、直感的に遺跡や古代遺物を分かることが出来るのだ。

そして凪沙が奥の壁面に触れた時、内部の壁全体に幾何学的な模様が浮かび上がった。

 

「これって……封印?」

 

その模様を見た明久がそう呟くと、凪沙が触れた壁が地響きと共に動き始めた。

 

「開く……」

 

とリアナは呟いた直後、鋭い目で来た道を振り返った。

そのリアナに問い掛けようとした明久は、尋常じゃない気配が近づいてきていることに気付いて、竹刀袋から刀の柄を出して、鯉口を切った。

すると、暗かった通路の向こうから身長3mに迫る大柄な体格が特徴の黒い獣人が現れた。

しかも、大量の死体を率いて

 

「獣人が、魔術を……?」

 

獣人というのは自身の身体能力に絶大な自信を持っていて、魔術を覚えることは殆どない。しかも、下手したら腐臭で鼻を妨害しかねない、死体魔術(ネクロマンシー)を使うなど、本来なら有り得ないことだ。

しかし、その相手に心当たりがあるのか、リアナが

 

「まさか……黒死皇……いえ、黒死弟のゴラン・ハザーロフ!?」

 

と驚愕の声を上げた。

 

「ほう……ワシを知っている輩が居たか……娘、何者だ?」

 

「リアナ・カルアナ……」

 

ゴラン・ハザーロフの問い掛けに、リアナは名乗りながら左手に装着していた腕輪を外した。そう、彼女は魔族特区に登録している魔族なのだ。

 

「カルアナ……そうか、貴様……カルアナ辺境伯の娘か!」

 

カルアナ辺境伯、それは今居るゴゾ遺跡を含めた魔族特区を管理する吸血鬼の貴族だ。

 

「来て、スコル!!」

 

リアナが叫んだ直後、リアナの傍に巨大な白い毛並みの狼が現れた。眷獣を召喚したようだ。

そしてリアナは、ゴラン・ハザーロフの従えている死体の中に、見知った顔を見付けたらしく、顔を歪めつつ

 

「……外に居た、彼等は……どうしました?」

 

と問い掛けた。

するとゴラン・ハザーロフは、鼻で笑いながら

 

「虫けら共など、知ったことではない。恭順を選んだ畜生のこともな」

 

と答えた。調査団の中には、傭兵として活動していた獣人も少なからず居た。

しかし、獣人至上主義の黒死皇派にとって、雇われと言えども人間に従う獣人は最早同族ではいらしい。

 

「待って……牙城君は……牙城君は、どうしたの!?」

 

「牙城……? ああ、死都帰りのことか……やはり只の人間だな……楽しませてはくれたが、大したことはなかったぞ」

 

凪沙の問い掛けに、ゴラン・ハザーロフはそう言いながら、何かを放り投げた。

それは、血に濡れた黒いボロボロのコート。牙城が着ていたコートだった。

 

「そんな……牙城君……」

 

それを見た凪沙は、涙を滲ませながら膝を突いた。

そんな凪沙の前に、抜刀の構えをした明久が割り込み、更にはリアナが前に出た。

そしてリアナは、明久に

 

「明久君……私が、なんとか時間を稼ぎます……妹さんと……出来るなら、彼女を外に連れていってください」

 

と言った。

 

「彼女……?」

 

それを聞いた明久は、肩越しに背後を見た。

凪沙が開けた扉の先に、水晶で作られたかのような巨大な棺桶があり、その中には一人の少女が眠っていた。

金髪の、人形を彷彿させる容姿の少女だ。

明久がその少女に視線を奪われていると、ゴラン・ハザーロフが

 

「逃がすと思うか?」

 

と言いながら、右手を挙げた。その直後、死体群がその手に重火器を構えた。

 

「ハティ!」

 

リアナが新たな眷獣を召喚したのと同時に、洞窟内に炸裂音が連鎖した。

PMCの中には、対魔弾を装備した部隊もあり、リアナが新たに召喚したハティが展開した轟炎の壁すらも容易く貫通。

リアナと、凪沙を突き飛ばした明久を、次々と銃弾が撃ち抜いた。

銃撃により、リアナは即死。明久も、右腕を肩辺りから喪失。左目にも、穴が穿たれていた。

それを見た凪沙は、涙を流しながら

 

「いや……嫌だよ……明久君……」

 

と明久にすがり付いた。

ゴラン・ハザーロフは、そんな明久を見ながら

 

「妹を守るとは、大した気概だ……だが、無駄な足掻きだったな……聖孅の遺産は、破壊させてもらうぞ」

 

と告げた。

だが、その時

 

「……あ……とは……頼んだ……よ……」

 

と明久の声が聞こえた。

 

「貴様、まだ……」

 

明久がまだ生きてると気付いたゴラン・ハザーロフは、再び死体群に撃たせようとした。

だが、気付くべきだったのだ。

奥に有った透明な棺桶に眠っていた少女が、棺桶から出ていたことに。

 

十二番目の眠り姫(アヴローラ・フロレスティーナ)……」

 

明久がその名前を言った直後、洞窟内を極寒の冷気が襲った。

岩や、銃撃によって発生した火すらも凍りつかせる冷気は、一瞬にしてゴラン・ハザーロフと死体群を凍らせた。

そして少女は、裸足で死体となった明久と気絶した凪沙の近くに歩みより、膝を突いた。

そして静かに、明久に手を這わせた。

それから少し経ち、ゴゾ遺跡の外

 

「あ……が……ぐ……畜生……中に入った奴等は、大丈夫なのか……?」

 

と血塗れの牙城が、何処からともなく、予備の黒いコートを羽織って立ち上がった。

その時

 

「生存者は、二人だけだ。吉井牙城」

 

と声が聞こえて、牙城は先ほどと同じように何処からともなくサブマシンガンを出して、声が聞こえた方向に向けた。

 

「あんた……空隙の魔女……南宮那月か!? なぜここに!?」

 

「なに、調子に乗ったネコ共がこちらに来ていると聞いてな……まあ、既に氷付けにされていたがな」

 

那月はそう言いながら、牙城に一枚の書類を突きつけた。その書類には、明久と凪沙の二人を絃神島にて預かるという旨が書かれていた。

 

「それと、一つ教えておく……息子の方だが、一度即死級の攻撃を受けた形跡があり、更には瀕死級の流血跡も有った……だが、全くの無傷だったぞ」

 

那月の話を聞いて、牙城は驚いた表情で

 

「まさか……血の従者になったのか、あいつが!?」

 

と声を上げた。

しかし、那月は気にした様子はなく

 

「さて、死都帰り。お前はどうするつもりだ?」

 

と牙城に問い掛けた。

すると牙城は、傷を労りながらも立ち上がり

 

「探すさ……宴を終わらせる方法を……」

 

と言って、去っていった。

その背中には、強い決意が伺えた。

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