ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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敵対者

「あ、いけね……携帯持ってくるの忘れた」

 

「何やってるんですか、先輩」

 

マンションから出た明久は、バトラーに連絡するために携帯を出そうとポケットに手を入れたが、無いことに気付いた。しかし、今から戻るのも面倒だったので、そのまま行くことにした。

 

「まあ、キラ君が居れば入れてくれるかな?」

 

そう言いながら明久は、頭を掻いた。そしてモノレールの駅に着いた時、何時もより少し騒がしいことに気付いた。

 

「なんだ? 何かあったのかな?」

 

「どうも、空港で何かあったようです」

 

明久が首を傾げると、雪菜がそう言いながら少し遠くのビル壁面のモニターを指差した。明久も目を細めながらそのモニターを見るが、字は読めなかった。

 

「なにが起きたんだか……まあ、今はバトラーの船に向かおう」

 

「バトラー樣って呼びなさい!」

 

「断固断るっ!!」

 

そこから、明久とセレスタの口喧嘩が始まるが、雪菜は呆れた表情を浮かべながらも止めなかった。その時モノレールが来たのだが、セレスタは珍しそうにしていた。

 

「ん? モノレールが珍しい?」

 

「私が居たシアーテには、無かったから」

 

シアーテというのが、セレスタが居た場所の名前のようだ。ということは、セレスタとしか呼ばれてなかったのか、もしくはシアーテ村のセレスタという意味なのかな。と明久は考えていた。

すると雪菜が

 

「シアーテという名前に聞き覚えがありましたが、セレスタさんはあのシアーテの方なんですね」

 

と少し驚いていた。

 

「雪菜ちゃん、知ってるの?」

 

「はい……南米の隠れ里、シアーテ……確かそこでは、いわゆる土着神に近い邪神が奉られていて、長い間巫女がその邪神に生け贄とされていたと……」

 

明久の問い掛けに、雪菜は小声で明久にそう教えた。それを聞いた明久は、あるニュースを思い出した。

それは、アメリカ連合が南米で起きた独立運動に軍隊を派遣をしたというニュースだった。

それにより、独立運動をしていたグループとアメリカ連合国軍の双方に甚大な被害が出ているという。

そしてその独立運動側に、混沌皇女の勢力が加担しているとされている。

 

「……もしかして、バトラーはあの独立運動に何らかの介入をしたとか?」

 

「……あり得なくはありません……私が聞いた話では、独立運動側は混沌皇女から強力な魔導兵器を入手し、アメリカ連合国軍も精鋭部隊と最新兵器を投入しているようですから……」

 

二人はそこまで会話すると、二人して嫌な表情を浮かべた。戦闘狂のバトラーのことだから、嬉々として戦場で暴れているのが予想出来たからだ。

少しすると目的地たる駅に到着したので、三人はモノレールから下車し改札から出た。

するとセレスタは、周囲の光景を見回して

 

「改めて見ると……本当に、シアーテとは全然違う……」

 

と呟いた。それを聞いた明久は

 

(隠れ里って言ってたし、やっぱりジャングルの中にあるのかな……?)

 

と内心で首を傾げた。その時、セレスタが突如として走りだした。本当にいきなりだったため、明久と雪菜の二人は反応が遅れてしまった。二人が気付いた時には、セレスタは既に信号を渡り終えていて、しかも信号が赤に変わってしまっていた。

 

「しまった!?」

 

「雪菜ちゃん、式紙を飛ばして!」

 

明久の咄嗟に指示に、雪菜は即座に応じて懐から取り出した折紙を空に飛ばして

 

「追って!」

 

とセレスタの走っていった方角を指差した。折紙は空中で鳥の形状になり、雪菜が指差した方角に飛んでいった。それを見た二人は、信号が変わった直後に走り始めてセレスタを探し始めた。しかし、幾ら探しても見つからない。

 

「雪菜ちゃん、式紙は?」

 

「……ダメです、見つかりません……」

 

明久の問い掛けに、雪菜は少し間を置いてから悔しそうに首を左右に振った。どうやら、式紙も見失ってしまったらしい。

 

「……探すにしても、こう人が多くっちゃ……」

 

もうすぐ大晦日とあってか、街中にはかなりの人数が歩いており、その中からセレスタ一人を見つけるとなったら、まさに砂漠の中から一つの石を見つけるといったレベルだろう。

それでも二人は、セレスタを見つけようと探した。そして二人が、少し広めの場所に移動した時

 

「先輩、伏せてください!」

 

と雪菜が声を上げながら、雪霞狼を構えた。その直後、雪菜は遥か遠くから飛来してきた弾丸を弾いた。

 

「雪菜ちゃん!?」

 

「狙撃です! それも、かなり遠くから!」

 

明久が呼び掛けると、雪菜は弾丸が飛来してきた方角を睨んだ。そこに、一人の大柄な男が現れた。 

 

「……何者ですか」

 

「貴様らに名乗る名は無い……!」

 

雪菜が問い掛けるが、男はそう言って拳を構えて突撃してきた。

 

「速いっ!?」

 

男の予想外の速さに驚く雪菜だったが、雪霞狼で何とか防いだ。しかし、男は即座に二撃目の蹴りを繰り出していた。

その二撃目の蹴りで、雪菜は大きく吹き飛ばされて、男は明久の方に視線を向けた。だがその時には、明久は既に態勢を整えていて

 

「何処の誰かは知らないけど……これは正当防衛だよ」

 

抜刀していた鉋切長光を、突き出していた。しかし男は、その一撃を体を横にずらして回避。明久のボディーを狙って拳を繰り出した。その一撃を咄嗟に腕で防御した明久だったが、余りの威力に3mは押し飛ばされた。

 

「この威力は……あんた、普通の人間じゃないな!?」

 

明久は睨みながら言うが、男は答えず

 

「貴様らを、排除する」

 

と宣言し、構えた。


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