ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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大晦日3

「この魔法陣……どこで撮影されたか、分かる?」

 

真剣な表情で明久が問い掛けるが、浅葱は首を左右に振り

 

「確かに良い機種だけど、スペックが足りないわ……位置情報も……ダメね、破損してる。相当電波が悪い所で撮影した。位しか、分からないわ」

 

と言いながら、お手上げと言わんばかりに両手を挙げた。それを聞いた明久が唸っていると、基樹が

 

「おーい、明久。出汁が煮えてきたぞー」

 

と言ってきたので、明久は蕎麦の調理に戻った。その後、蕎麦を食べ終わったら結瞳が眠そうになったので、基樹が結瞳をタクシーに乗せて帰ることにした。

午後11時50分頃。除夜の鐘が鳴り始めている。

基樹は結瞳が寝ているのを確認すると、携帯を取り出して短縮番号で相手を指定した。

名前は、矢瀬幾磨(やぜかずま)。十歳以上歳上の基樹の異母兄だ。

 

「……兄貴、俺だ」

 

幾磨と繋がったのは、約30秒程してからだった。イライラし始めたタイミングだったので、口調にも多少苛立ちが混じってしまったのは仕方ないだろう。

 

『分かっている。基樹、結瞳はどうした?』

 

「結瞳坊なら寝た。今から連れて帰るところだ」

 

幾磨の問い掛けに、基樹は要点だけ伝えた。そして、即座に本題を切り出すことにした。

 

「それより、ちょっと厄介なことが起きた。情報が欲しい」

 

『悪いが、規定の就寝時間を過ぎている。用があるなら明日にしろ』

 

「就寝時間だ? 正月だぞ?」

 

『日付なぞ、しょせん人が便宜的に決めた記号だ。俺がそんなものに従う理由はない』

 

「あんた……絶対モテないだろ」

 

幾磨の話を聞いて、基樹は思わずそう言ってしまった。

幾磨が多忙なため、時間に非常に厳しいのは知っていたが、まさか用件すら聞かないとは思わなかった。

だから、皮肉の一つでも言わないと気が済まなくなったのは仕方ない。

 

『監視報告ならば、情報部に伝えろ。今なら羽沢が残っているはずだ』

 

「稜子さんの手に負えない案件だと判断したから、あんたに連絡したんだよ」

 

『……説明しろ、手短に』

 

基樹の声音から切羽詰まってると分かったのか、幾磨が促してきた。

 

「どうやら、本土で凪沙ちゃんが事件に巻き込まれた公算が高い……画像を送る」

 

基樹はそう言って、端末を操作して魔法陣が映った写真を幾磨の端末に送った。少しすると、幾磨が

 

『……かなり大規模な魔法陣だな……確かに、この近くに居るのならば巻き込まれた可能性が高いが……』

 

管理公社(ウチ)の諜報員がくっついてる筈だ。何をしていたんだ」

 

『……遊園地の人混みを利用され、撒かれたらしい』

 

「……吉井牙城の仕業か……」

 

『そのようだ……死都帰りの吉井牙城……予想よりも、厄介な人材のようだ』

 

基樹は脳裏に、数日前に出会った牙城の姿を思い出した。見た目は、何処にでも居る中年オヤジという風体だが、その気配は違った。

 

(あのオヤジさん……相当な修羅場を潜っただろうしなぁ……こっちの監視に最初から気づいてたか……)

 

と基樹が考えていると

 

『ただ、この写真だけでは管理公社の戦力は動かせん……攻魔官の派遣も出来んぞ』

 

「分かってる……だが、下手したら明久が本土に行きかねないぞ……あいつはあれで、身内には相当に心配性だ……特に凪沙ちゃんは、病弱の節があるからな……」

 

『第四真祖がか? そんな情報は初耳だが……分かった。諜報員を増員し、情報収集に当たらせる』

 

「それが無難か……」

 

『何か分かったら、そちらの端末に直接送らせる。それと、第四真祖に対する監視は続行し、もし動いたら報せろ。こちらで対処する』

 

「対処って、まさか……」

 

『二度言わせるな。監視していろ』

 

幾磨はそう言って、通話を切った。携帯を仕舞った基樹は、無邪気に寝ている結瞳を見てから、シートに深々と体を預けた。

場所は変わり、神社。

蕎麦を食べ終わった明久は、雪菜と浅葱の二人と一緒に二年参りに来ていた。

絃神島唯一の神社なために、境内から人が溢れる程に参拝客が居る。

その一角に、明久達が居るのだが

 

「明久。いい加減落ち着きなさい」

 

「これでも、落ち着いてる方だよ」

 

「そうは言いますが……殺気が凄いですよ、先輩……」

 

見た目は落ち着いている明久だが、やはり写真が気になるらしく、その身からは殺気が洩れている。もし感覚が鋭い人が居たら、反応していただろう。

 

「まあ、あれが気になるのは分かるけど……」

 

「それより先輩。先ほど、おみくじを買ってましたが……結果はどうでした?」

 

雪菜が明久の気を逸らそうとしたのか、明久が先ほど買ったおみくじのことを聞いた。

 

「ん……」

 

「……うわぁ……」

 

「えぇ……」

 

明久は二枚のおみくじを二人に見せたのだが、その二枚を見た二人は言葉を失った。何故ならば、大凶と凶だったからだ。そうそう出ない二枚を、明久はピンポイントで引いたようだ。

 

「だ、大丈夫ですよ、先輩! 今がドン底なら、挽回が可能です! ほら、結びましょう!」

 

雪菜はどうやら、フォローしようとしているようだが、はっきり言って微妙である。取り合えず明久は、言われた通りにおみくじを巻きに行った。そして、二枚を巻き終わると

 

「ねえ、二人とも……私の家に来ない?」

 

と浅葱が、二人に問い掛けてきた。


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