神縄湖で異変が起きて、少しした時間の近くの山間。
「ほう……これは変わっているが、中々に美味だな」
「でしょう? このカップ麺、私の一押しラーメン屋が直々に監修してるのよ。島に着たら、本店に行ってみてほしいわね」
「むう……カップ麺は味噌にしろとあれほど……」
浅葱と戦車乗りことリディアーヌは、一人の褐色肌の少年に見える吸血鬼。滅びの王朝の王子の一人、イブリスベール・アズィーズが三人でカップ麺を食べていた。
さて、何故こんなことになっているのか。
それは、今から1日ほど時を遡り絃神島でのことだ。浅葱は本土で何が起こっているのか、更に自分も凪沙を助ける助力になるはずと思って、一人空港に向かい、本土に渡ろうとした。
しかしそこに、何故か警備隊が殺到。浅葱は掴まらないために逃走を開始したが、相手は仮にも軍事訓練を受けた警備隊。足の速さや持久力は、女子高生の浅葱を超えており、更には人数も多かったために、追い込まれた。
そんな浅葱を助けたのが、新型の多脚戦車に乗ったリディアーヌだった。
リディアーヌが絃神島に居るのは、リディアーヌが大の日本好き(特に侍が好き)なのと、彼女の実家にあたるディディエ重工で設計・開発される新型兵器のテスト運用のためである。
実は絃神島の警備隊の一部兵器は、ディディエ重工がデータ収集のために格安で売られた物であり、リディアーヌはそれらのソフト関連の開発とデータ収集を行い、ディディエ重工の専用サーバーに送っているのだ。
そして今回は、リディアーヌが個人的に浅葱を助けてくれたのである。
そして二人は、ディディエ重工が試作した無人機で本土に向かい、神縄湖に向かうという予定だった。
しかし、神縄湖上空に差し掛かった辺りで、無人機が未知の魔物、
予定外ではあったが、二人は神縄湖に向かうことにした。
その途中で、大量の蜂蛇に包囲されていた(最初は気付かなかったが)イブリスベールを発見し、リディアーヌは、イブリスベールを助けようとした。だが、ここで試作機の脆さが出てしまった。主砲の
リディアーヌはせめて、多脚戦車を盾に守ろうとしたが、その時にイブリスベールが眷獣を召喚し、蜂蛇を一網打尽にして窮地を脱したのだ。
そこからは、リディアーヌが火器管制システムの調整をしつつ夜食を取ることにしたのだ。
しかも、何故か浅葱はイブリスベールに自身のオススメのラーメン屋を教えたりしている。
これもまた、浅葱の恐いもの知らずな性格が理由だろう。
そして浅葱は、カップ麺の容器をゴミ袋に入れつつ(ゴミはその辺に放り捨てず、ちゃんとゴミ箱に捨てるか自宅で処理しましょう)
「けど、あの魔物は何なのかしら? あんなの、データベースでも見たことないわよ?」
と蜂蛇の残骸を見た。浅葱は警備隊のデータベースを時々見ているので、一通りの魔物の種類と特徴は把握しているが、蜂蛇は初めて見たのだ。
すると、イブリスベールが
「大方、神縄湖に封じられていた聖殲の遺産だろう……少し前に、この国の軍隊が動いていたからな」
と自身の推測を告げた。それを聞いて、浅葱は
「自衛隊か……問題は、その自衛隊が張ってるだろう検問よね……」
「女帝殿。その検問でござるが、どうも今は機能不全に陥ってる模様。神縄湖に行くなら、今が好機かと提案するでござる」
「機能不全? 自衛隊も、さっきの魔物に手を焼いてるってことかしら?」
浅葱は少し考えると、立ち上がり
「よし……一息に神縄湖に行くわよ! 何か、嫌な予感もするしね!」
と告げた。そして、リディアーヌを見て
「戦車乗り、今度こそ大丈夫よね、その戦車……今度ダメだったら、ポンコツって呼ぶわよ?」
「今調整が終わったところでござる。大丈夫かと」
少し自信無さげだったが、リディアーヌはそう言って臨時で増設された客室のドアを開けた。そして、気付いた様子で
「む……この場合は、女帝殿かアズィーズ殿下に乗ってもらうべきか……」
増設された客室は、浅葱が乗ることしか考えてなかったので、一人しか乗れない。だがそうなると、イブリスベールはどうするべきか、リディアーヌはそう考えていたが
「そちらの娘で構わん。どうも、狭い空間は苦手だからな……それに……見た目が寒そうでな」
「好きでこんな格好してるわけじゃないんだからね!?」
イブリスベールの最後の言葉に、浅葱は顔を赤くしながら反論した。実は今の浅葱は、水着のような見た目のパイロットスーツを着ているのだ。
一応体温保護機能はあるが、見た目はかなり寒そうである。
そうして、奇妙な組み合わせの三人は神縄湖に向かう。