炊き出しが終わった後、明久達は浅葱の家に向かったのだが
「……何このバリケード」
「確か、3日位前までは無かったですよね」
浅葱のアパートの前が、完全武装のアイランドガード達により封鎖されていたのだ。それも、装甲車も止まっている。
どう見ても入れる状況ではなく、上を見ると数機のドローンが見えた。恐らく、対魔族武装を装備したタイプだろう。
一人が来て入ろうとするが
「すみません、許可証の提示をお願いします」
とその一人を制止した。どうやら入るには、許可証とやらが必要なようだ。
それを確認した明久は
「今は帰ろう……これは無理そうだ」
「……手が無い訳では無いですが……」
明久の言葉に従って、雪菜も離れた。
同時刻、場所は変わり雪菜の部屋の前。
「ふふふ……まさか、雪菜の部屋に入れる日が来るなんて……!」
と沙矢華が一つの合鍵を手にした状態で、歓喜に震えていた。しかし、そんな沙矢華に困惑する様子の志緒と唯里が居て
「私たちも居るからな」
「忘れないでね」
と忠告した。
何故この三人が居るのかと言うと、今絃神島には滅びの王朝の王子。イブリスベールが居る。その護衛役として、沙矢華と志緒が派遣され、もしもの場合に備えて唯里が待機という形で派遣されたのだ。
そして三人は中に入ると、部屋の内装の殺風景さを見て
「まったく……雪菜は相変わらずね……」
「うん。養成所から変わらないね……」
沙矢華は雪菜が入ってから二年近く一緒に住んでいたから、昔から飾り気が無い事を知っており、唯里は沙矢華が出た後に一時期一緒だったから知っていた。
居間は机と椅子、何らかの棚位しか家具はなく、本当に最低限しかない。
沙矢華はふと、棚に一つの箱を見つけて開けた。
その中には、如何にもゲームで取れそうな小さな猫のキーホルダーや、ハンカチ。そして、明久や凪沙と写っている写真等が入っている。
ささやかな思い出、という感じだ。
「いいなぁ。私も一緒に写真撮りたいなあ」
唯里は羨ましそうだが
「まったく……吉井明久のくせに、生意気なのよ」
と沙矢華は、明久の部分を指でつついた。
その時、志緒が
「おい、これ……」
と声を出した。
志緒が持っているのは、細長いプラスチック製の簡易検査キット。
「嘘……これって……」
沙矢華は呆然としながらも、それを見た。その簡易検査キットが示すのは、陽性だ。
「ねえ、これ……!」
次に唯里が、一冊のノートに書かれた折れ線グラフを見た。それが示すのは、霊力の数値。
その2つを見た三人は、顔を青ざめた。
再び場所は変わり、あるスーパーのフードコートに明久と雪菜は来ていた。
今日凪沙は、深森に呼ばれて食べ物を持っていき、掃除して泊まるらしい。
だから珍しいが、二人で食べて帰ることにした。
明久はしっかりと食べているのだが、雪菜はレモネードだけしか飲んでいない。
「雪菜ちゃん。最近あまり食べてないけど、大丈夫なの?」
「最近、少しばかり食欲が無いので……とりあえずは大丈夫ですから」
明久としては最近食べていない雪菜を心配したが、そう返答されたら引き下がるしかない。
「しかし、あの警備は異様ですね……」
「だね……見た感じ、強化外骨格も装備してた……」
そして二人は、先ほど見たアイランドガードの装備とバリケードの事を話し始めた。
一般的なサブマシンガンだけでなく、ショットガン。そして何より、強化外骨格を纏い、車載用に使われる重機関銃を持ち、巨大な剣を背負った隊員すら居た。
警備目的を逸脱した装備に、ただ事じゃないと二人は考えていた。
「式紙を潜り込ませますか?」
「……多分、気付かれる。上空をドローンが最低でも10機近く飛んでた……多分、呪的センサーも装着してる筈」
雪菜の提案を、明久は拒否した。
最悪、霊力波形を記録されて、捕まる可能性すら高い。
それらを考えながら、フードコートから出ようとトレイを返却口に返した。その時
「なんだ!?」
「人払いの結界です!」
明久は背筋に悪寒を感じて身構え、雪菜は即座に展開された結界を明久に教えた。
それを聞いた明久は、周囲を見回した。
気付けば、その場には明久と雪菜。そして、白いマントで全身を隠した小柄な人物だけになっていた。
しかもその人物からは、膨大な霊力が溢れている。
「誰だ、あんた……」
「来ます!」
明久は問い掛けるが、相手は無言で明久達に襲い掛かった。