雪菜が逃げるように明久から離れた後、明久は一人自宅に戻っていた。
一体、雪菜に何が起きているのか。それを知る為に、雪菜の部屋に向かおうと考えていた。
そして自室に戻って荷物を置き、雪菜の部屋に向かおうとした。その時、雪菜の部屋のドアが乱暴に開き
「このバカ真祖ぉぉぉぉぉ!!」
と声がして、明久目掛けて銀閃が振り下ろされた。
「ぬあっ!?」
明久は驚きながらも、相手。沙矢華が振り下ろした煌華燐を白刃取りで止めた。狭い通路なので、避けるスペースが無かったからだ。
沙矢華は涙を流しながら
「あんた……! 雪菜に、なんて事をしたのよ……!!」
と睨んできた。
「雪菜ちゃんに、何が起きたの……!?」
押し返しながら明久が問い掛けると、遅れて部屋の中から出てきた唯里と志緒が
「明久くん……」
「これを、見てくれ……」
と沙矢華を離れさせてから、検査キットとノートを見せた。
検査キットを明久はよく知らないが、陽性を示している事は分かる。そしてノートは、ここ数ヶ月は霊力の上昇値が書いてあるようだが、凄まじい上昇値となっている。
具体的に言うと、出会った時に比べたら、約五倍近い数値になっており、明らかに人間が扱える範疇を越えていた。
「これは……」
「あんたのせいで、雪菜は……
「バカな! だって、
それは、夏音の事件の際に知った情報からだった。
しかし雪菜は、そんな儀式も人体への特殊な術式もしておらず、何より複数の霊力器官は有していない筈なのだ。
それは、よく一緒に居る明久だから知っている事だ。
だが
「それは、夏音が霊力を操る術を持っていなかったから行った事だ」
と新たな声がして、全員の視線が動いた。
その先には、那月と一緒に賢生が居た。
「だが彼女は、元々高い霊力を操る剣巫……更に、複数の霊力器官の代わりになる物を所持している」
「七式降魔機槍……雪霞狼……」
賢生の言葉に答えるように、唯里が告げた。
そして、持っていたノートを賢生に差し出すと、賢生はそのノートを見て
「……辛うじて、最終段階一歩手前……というところか……もう少しで、昇天フェイズに入ってしまうな……」
と衝撃の事実を告げた。
つまり、後少しで雪菜は消えてしまうという事実。
夏音の時は雪霞狼を使って助けられたが、今回はその雪霞狼も原因の一つになってしまっている。
明久には壊すしか選択肢が思い付かないが、下手したらそれが鍵となってしまう可能性すらあり得るから、明久には最善策が思い浮かばないでいた。
その時、それまで黙っていた那月が
「今、私の家に来た妖精が解決策を用意している。それまで、何とか時間を稼ぐんだ」
と告げた。
「妖精って……まさか、縁堂縁?」
「師家様が、
まさか指導者の遠藤縁が来てると知らなかった沙矢華達は、全員驚いた表情だった。
「ああ。私の家に居る錬金術師と夏音に協力を要請してきた……いいか、吉井。解決策が用意されるまで、あの剣巫に決して七式を使わせるな……」
那月はそう言うと、賢生と共に消えた。
恐らくだが、賢生の技術も必要なのだろう。
少し間を置くと、明久は
「雪菜ちゃんを探して、捕まえよう……! 今は、これ以上戦わせない為に!」
明久のその言葉に、三人は頷いた。