ディディエから話を聞いて、約三時間後。
明久達は、キーストーンゲート前に居た。
「さて、僕達の目標はキーストーンゲートの第1層になる……正確に言うと、その第1層に接続される第0層こと移動式メインサーバールーム」
と明久は、以前に入った際に得たキーストーンゲートのマップを指差し、更には第1層の写真も見せた。
そこには、明久の他に獅子王機関の三人とリディアーヌの姿がある。イブリスベールはいつの間にか街に消えた。
「けど、先に雪菜を……」
「大丈夫……雪菜ちゃんも、第1層に来る……」
沙矢華の言葉に、明久は確信した様子で告げる。
「どうして分かるんですか?」
「雪菜ちゃん。大体僕に、式紙を着けてるからね……」
「……ああ、監視用の式紙か……それを逆に利用するのか」
唯里からの問い掛けに明久が答えると、志緒が納得していた。
すると沙矢華が
「けど、キーストーンゲートのセキュリティーはどうするのよ? こういう場所のセキュリティーって、大体凄いじゃない」
と問い掛けてきた。
確かに、キーストーンゲートのセキュリティーは凄まじく、並大抵の魔族は対魔族用の銃弾で滅多打ちにされるか、キーストーンゲートを守る警備隊に迎撃される。
しかし、リディアーヌが
「それならば安心するでござる。拙者が進行に合わせて電子はハッキングするでござる」
と自信満々に言った。
沙矢華達は電子の女帝と呼ばれる浅葱の事は、出会った後に調べて把握していたが、まだ戦車乗りと呼ばれているリディアーヌの事は把握していなかったようだ。
因みにリディアーヌは普段は、結夢と同じ学園に通っているが、本当の姿はディディエ重工が産み出したデザインチャイルドであり、更にはディディエ重工が開発した兵器の試験運用が仕事だ。ハッキングは彼女の特技を生かした副業となるのだが、今やそちらの方が有名になり、試験運用している個人戦車からとり、戦車乗りと呼ばれているのだ。
「先にハッキングして調べたのでござるが……気になる人物が先に入ってるのでござる」
「気になる人物?」
明久が問い掛けると、リディアーヌが新しく用意させたという赤い戦車。膝丸・弐式からタブレットを取り出して
「この人物でござる」
と全員に見せた。
中国の伝統衣装を纏った人物。その人物を、明久は知っていた。
「こいつ……監獄結界からの脱獄囚人だ! 確か名前は、
「監獄結界からの脱獄囚人!? まだ捕まってなかったのが居たの!?」
沙矢華はその件に関与していた為に、そのタブレットの冥雅を見た。
絃神冥雅
名前から察するに、絃神島を設計し建設に携わった絃神千羅の親族なのは明らかだが、何故捕まって収監されついたのかは知らない。
だが、冥雅の右手には見たことの無い鎗がある。その造形は何処か雪霞狼に似ているが、雪霞狼と違って上下に穂先がある双頭鎗になっている。
「そういえば……キーストーンゲートがやけに静かだ……」
「リディアーヌちゃん、ハッキングして映像見れる?」
明久が問い掛けると、リディアーヌは即座にキーボードを叩き始め
「これは……!?」
と驚いながらも、全員にタブレットを見せた。
すると見えたのは、惨憺たる有り様のキーストーンゲートの内部だった。警備装置は破壊され、通路には警備隊が倒れている。
「急いで中に入るよ!!」
明久は言うと同時に、一気に駆け出して内部に入った。
隔壁は破砕突破され、警備装置やロボットは軒並み煙を上げている。
明久は急いで近くで倒れてる警備隊に近寄り
「……大丈夫、息はある。どうやら、気絶させられてるだけみたいだ」
と全員に告げた。
確かに負傷はしているが、命に別状は無い。つまり冥雅の目的は、キーストーンゲート内部にあるということ。
明久はジッと先を見て
「……行こう……多分、目的地は同じだ」
と呟いた。
そして、お誂え向きにわざと残されていたらしいたった一基のエレベーターで第1層の前まで降りて、明久達は破砕突破されていた扉を超えて、第1層に入った。
そして、広い空間にポツンと居る人物を見付けて
「久しぶりだね……絃神冥雅!!」
「そうですね……3ヶ月振りでしょうか、第四真祖……吉井明久」
全員の視線が交差した。