ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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絃神島

絃神冥雅

彼が何故、監獄結界に収監されたのかは、明久達は知らない。だが今は、彼が敵だというのだけは分かった。

 

「おや、あの剣巫の少女は居ないのですか?」

 

「お前に、何の関係がある?」

 

冥雅からの問い掛けに、明久は語気を強めに返す。

普段の明久からは考えられない語調に、沙矢華は少し驚いている。

すると、冥雅は

 

「……なるほど……どうやら、既に昇華直前の状態ですか……」

 

と雪菜の状況を言い当てた。

それに明久が動揺するが、冥雅は気にした様子もなく

 

「これまで、歴代の雪霞狼の使い手の剣巫達は、最後は昇華してきました……」

 

「歴代の雪霞狼の使い手!?」

 

雪霞狼というのは、雪菜が使っている七式突撃降魔機鎗の名前だが、同時に、剣巫用に開発された秘匿兵器に付けられてきた銘でもあった。

 

「なんで、お前がそんな事を知っている!?」

 

「それは簡単です……私が、獅子王機関で秘匿兵器を開発していた一人だからです」

 

志緒からの問い掛けに、冥雅は淡々と答え、それを聞いた明久達は驚いていた。

 

「この零式降魔双鎗……ファングツァーンも、私が開発した武装……ですがまあ、失敗作なんですよ……魔力と霊力の両方を無効化出来るのですが、使い手を非常に選ぶ……私みたいな存在しか使えない失敗作」

 

冥雅はそう言いながら、ファングツァーンを巧みに振り回す。その動きだけでも、精通しているのが分かる事から、開発者だったというのは嘘ではないだろう。

 

「そんな人物が、なんで監獄結界に収監されていた……」

 

「いえ……途中で気に入らない事件が起きてしまいましてね……その腹いせで獅子王機関で暴れたんです……獅子王機関の降魔師を十数人……殺しましてね」

 

冥雅の話を聞いて、唯里が

 

「まさか……約10年前に、獅子王機関に甚大な被害をもたらした事件の犯人って……!」

 

と冥雅を見た。

唯里は両親も獅子王機関に在籍して働いている珍しい少女で、その縁もあり、多少は獅子王機関で起きた事件も知っていた。その中で、特に記憶に残っていた事件がそれだった。

 

「……そうですね、私になります……」

 

冥雅の肯定に、獅子王機関の三人は構えた。

確かに冥雅は獅子王機関の職員かもしれないが、同時に獅子王機関に敵対した者になる。

三人からしたら、討伐する理由は充分にある。

だが冥雅は、三人からの殺気をさらりと受け流し

 

「……私が愛した冬佳(とうか)を昇華させ、死なせた獅子王機関を、私は決して許さない」

 

と宣言した。すると

 

「……冬佳様が、昇華した……?」

 

と声が聞こえ、明久達は声のした方、通路の方を見た。

そこにはいつの間にか、雪菜の姿があった。

 

「雪菜ちゃん!?」

 

「そう……貴女を宗教団体から助けた冬佳は、その戦いの最中に昇華し、宗教団体諸とも消えました……雪霞狼の先代の使い手だった冬佳は、獅子王機関に殺されたんですよ。使い続ければ最終的には人造天使(エンジェルフォウ)になって昇華すると知りながら、使い続けさせた獅子王機関にね」

 

それまでは淡々と語っていた冥雅は、途中から明らかに憎悪を込めていた。それほどまでに、冥雅は冬佳という人物を愛していたのだろう。

そして、冥雅の話を統合すれば、今から約10年程前、雪菜はある宗教団体により、生け贄にされそうになっていたが、それを冬佳という剣巫に助けられたが、その冬佳は宗教団体との戦闘中に人造天使になり昇華し、宗教団体諸とも消滅した。

そして、その冬佳が使っていた武器の名前も雪霞狼だったらしい。

冥雅は冬佳を喪った事で獅子王機関を恨み、その恨みを晴らす為に獅子王機関の職員を十数人殺害して、那月により監獄結界に収監された。という事になる。

冥雅の言葉に、獅子王機関の一同が困惑していると

 

「だから私は、この島……絃神千羅の遺産を使い、獅子王機関に復讐するんです! 聖孅の遺産でね!!」

 

「絃神島が、聖孅の遺産!? どういう事だ!?」

 

冥雅の言葉に、明久は困惑した。

絃神千羅がどういう考えで絃神島を作ったのかは、実は未だに謎なのである。

名目上は、魔族の暴走による被害から日本本土を守る為、と言われているが、それにしても約330kmは離れ過ぎているのだ。

例を挙げると、今は違うがゴゾ遺跡のあったカルアナ魔族特区は、普通に欧州と地続きであった。

これは、カルアナ魔族特区は強固な結界に守られていた事が大きな要因らしい。

そして、タルタロス・ラプスにより消滅したイロワーズ魔族特区。こちらはある騎士団により守られていたかららしい。

つまり、強固な結界や何らかの対策を採用していれば、約330kmも離れる必要は無かったのだ。

だが、今冥雅が言った聖孅の遺産というキーワード。もし絃神島に聖孅の遺産が隠されているのならば、330kmも日本本土から離れた理由が分かる。

 

「何らかの理由で、迂闊に聖孅の遺産が発動しない為に、330kmも日本本土から離れた!?」

 

「それに、そろそろ時間です……Cが接続されれば、この島は真価を発揮する」

 

それを聞いた明久は、腕時計を見た。0時まで、後数分といったところ。つまり冥雅の狙いも、浅葱の居る移動式メインサーバーになる。

 

「お前の狙いが何なのかは知らないけど、絃神島の人や世界が危ない……だから、何としても止める!! ここから先は、第四真祖(ボク)戦争(ケンカ)だ!!」

 

「いいえ、先輩……全員(私達)戦争(ケンカ)です!!」

 

明久の宣言の直後、雪菜が明久の隣に着地して構え、冥雅もその身から凄まじい気を漏らしていた。

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