ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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人形師との邂逅

 

 

 

その日、明久は朝から身体が重く、頭が全然働かなかった。

朝練という凪沙を見送り、椅子に座ろうとして、倒れた。そうして、意識が戻った明久の顔を、雪菜が覗き込んでいた。

 

「あれ……雪菜……ちゃん……?」

 

「良かったです、先輩……意識が戻ったようで」

 

雪菜はそう言いながら、明久の額に乗せてあった濡らした布を退かした。

そして、また濡らして冷やすと額に乗せて

 

「今先輩の体温は、8度5分です。完全に吸血鬼風邪ですね」

 

「……名前安直……」

 

実は吸血鬼も、風邪を引くのだ。

その名前は、人間の風邪を当て嵌めて吸血鬼風邪と命名されている。

症状自体は、普通の風邪と何ら変わらず、対処も安静にしてれば大丈夫である。

 

「とりあえず、先輩は安静に寝ていてください。学校には連絡済みですし……私は少し買い物してきますね」

 

雪菜はそう言って、明久の部屋から出た。

しかし、明久には不安要素が一つあった。それは

 

「……雪菜ちゃん……マヨラーなんだよなぁ……」

 

雪菜は、重度のマヨラーなのだ。

キッチンと居間の両方に5本はマヨネーズを常備しており、様々な料理に掛けている。

今の明久からしたら、胃の負担になりかねないので控えてほしいのだ。

まあ、流石の雪菜でも病人食には使わないだろうと明久は信じ、寝る事にした。

実は吸血鬼風邪は吸血鬼なら誰もが一回は懸かる病気で、大抵は子供の頃に懸かり、その後はならないのが一般的である。しかし、もしならないで大人になり、そこで重症化したら生殖機能に悪影響が出る事も時々あるのだ。

その後、何故かコンバットナイフで材料を切ろうとした雪菜に突っ込んだり、明らかに古い本を見ながら料理を作ろうとしたのを止めていたら、今度は矢瀬と浅葱が来たりして、何とか雪菜を隠れさせたりして過ごした。

 

「先輩……その……大丈夫ですか……?」

 

「……今は休ませて……」

 

自分に原因があると分かっているからか、雪菜は恐る恐ると明久に問い掛け、明久は少し意識朦朧としながら答えた。

そして、明久に血を与えようと考えて、ナイフで指先を少し刺そうとした時、異様な気配を感じ

 

「誰ですか!?」

 

と雪菜は、雪霞狼を展開しながらベランダの方を見た。すると、空中に一体の人型が見えた。

 

「ホムンクルス……!?」

 

「人工眷獣への魔力供給源を捕捉……」

 

少女はそう言いながら、伏せている明久を無機質に見た。そして次に、雪菜を見て

 

「目撃者の排除を開始します……執行……」

 

そう呟いた直後、その少女の左腕が真っ二つに割れて、中から大振りなマチェットが姿を現した。

そして少女は、虚空を蹴って突撃してきたが

 

伏雷(ふしいかずち)!!」

 

雪菜は横薙ぎの一撃を避けると、少女の顎に回し蹴りを放った。だが少女は大きくは飛ばず、空中に留まった。その時になり、雪菜は気付いた。

少女の右手の指先から無数の糸が伸びていて、それが空中に張り巡らせてあったのだ。

 

「目撃者の脅威度判定を更新……高レベルの攻魔師と推定……確保プロセス、失敗……離脱……」

 

屈強な獣人種すら昏倒させる一撃を受けながら、少女が苦痛を感じてる様子は無かった。そして少女は、上に消えた。

そして雪菜は、先ほど蹴った時の感触から、ある推理を頭の中で導きながら

 

「先輩、少しだけ待っていてください!」

 

と言って、部屋から飛び出した。

広大なマンションの屋上には、何枚もの太陽光パネルが並び、沈み掛けている太陽光を受け止めている。

そんな屋上の端に、人形師とスワニルダは居た。

 

「まさか、獅子王機関の剣巫が居るとはな……という事は、第四真祖がアスタルテの魔力供給源だったのか?」

 

「肯定……人形師様(マイスター)……当該剣巫の装備は、オリジナルの七式降魔機槍と推定されます」

 

「なるほどな……殲教師様がどうやってデータを入手したのかと思ったら、交戦したわけか……そんで、キーストーンゲートで阻止したのも、お前らって訳か」

 

人形師はそう言って、階段を上がってきた雪菜を睨んだ。そして雪菜は、スワニルダの正体を察していた。

 

「ホムンクルス……いえ、機械人形(オートマタ)ですか……!」

 

「どうせなら、人造人間(ヒューマノイド)って呼んでほしいねぇ。スワニルダはそこらの量産品とは、訳が違う。俺が心血注いで作り上げた、最高傑作にして最愛の女性なんだ」

 

人形師はそう言って、スワニルダを抱き寄せた。

それに対して、スワニルダの反応は自然だった。とても人形とは思えない。むしろ、普通の人間より完全な人間に見えた。

 

「ホムンクルスを素体にしたオートマタの製造は、聖域条約で禁止されている筈です……!」

 

その理由は、行き着けば人間をサイボーグにする事も可能になり、人道に反するからである。

道義に反し、人間と魔族の共存を目指す聖域条約からしても絶対に許してはいけない禁忌なのだ。

 

「聖域条約だ? ハッ! 芸術を理解出来ない愚者共に、永遠すら生み出せる俺の才能を縛れるとでも?」

 

「才能?」

 

「そうさ……彫刻家が石から作品を作り出すように、俺はホムンクルスから芸術を作り出す……俺の死後も永遠に存在する、永遠のアートを!」

 

理解し難い人形師の執念に、雪菜は雪霞狼をギリッと握りしめ

 

「そんな事の為に、彼女をオートマタに!?」

 

そして、雪菜は気付いた。

以前に那月が言っていたのだが、アスタルテはかなりの長い寿命を有しているという、情報。

 

「まさか、アスタルテさんも貴方が!?」

 

「おうよ! ロタリンギアの殲教師に頼まれてな。まあ最初は、そんな長生きしないあいつには興味無かったんだが……今は興味が沸いてな。回収しようとしてるのさ」

 

「アスタルテさんを、回収?」

 

今のアスタルテは、明久によって変わっている。

以前まではアスタルテの寿命を消費して眷獣を召喚していたが、明久がその権利を上書きした事で、今は明久の寿命を消費して召喚されるようになっている。

それにより、アスタルテはホムンクルスで唯一眷獣と共存しているホムンクルスになった。

そして、明久から流れる魔力による少しずつだが長い寿命が回復しつつあるのだ。

それを、人形師はどうやってかは分からないが知り得たのだ。

 

「それに、お前……肌綺麗だなぁ……お前も、俺の芸術に使ってやるよ!!」

 

「人形遊びなら、他所でやれ」

 

人形師の言葉の直後、雷光が走った。

スワニルダが庇った事で人形師は無事だったが、スワニルダの右側に現れていた一体が直撃を受けて大破。そして左側に現れていた一体は片腕が飛んだ。

 

「貴様! 邪魔するな! 俺はアスタルテの魔力供給源が知れれば!」

 

「五月蝿い」

 

明久は話も聞かず、刀を抜刀し踏み込んでいた。片腕を無くした人形は直撃を受けて消滅。そしてスワニルダは、刀。雷切の余波を受けて火花を撒き散らし、人形師はそんなスワニルダを庇って姿を消した。

 

「先輩!」

 

雪菜は明久に近寄るが、明久はフラリと倒れた。

触ってみたら、凄く熱い。

雪菜は急いで部屋に運び、何とか治療した。

それにより、明久は吸血鬼風邪は翌日には完治していた。

だがこれが、人形師との因縁の始まりだった。

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