ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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殺人人形

 

 

 

放課後の教室にて、基樹は電話を受けていた。相手は異母兄の幾磨だ。

以前に明久を襲撃した謎のオートマタ。その襲撃犯を特定した、と連絡してきたのだ。

 

「人形師?」

 

その異名は、基樹も知っていた。

国際指名手配されている魔導犯罪者の一人だ。

 

『ザカリー・多島・アンドレイド……国際指名手配中だった魔導犯罪者だ……生体操作の魔術が専門で、人体と機械人形の融合に優れた才能を持っていた。欧州で行われたオークションで、こいつが造ったオートマタが一体数十億で落札された事もあるそうだ』

 

「……思い出した。前に不法入島したリストに記載されてたな」

 

基樹は不機嫌な口調で呟いた。

アンドレイドの犯罪者としての危険度は、Aプラス。

絃神島で殺人事件等の凶悪犯罪をする可能性が極めて高い、と予想された極めて危険な人物だ。

 

「んで、そのアンドレイドを探せばいいのか? ……いや待て、だったって言ってたな?」

 

『ああ……つい昨日、空隙の魔女が死体で発見した』

 

「殺されたってのか?」

 

基樹は信じられない、という風に呟いた。

アンドレイドは、自身の周囲に戦闘に特化したオートマタを多数配置し、自身を守らせていた、と記載されていたのを思い出したからだ。

それが理由で、今まで多数の降魔官や警察の機動隊に犠牲が出ているのだ。

 

『恐らくな……現場の状況を調べた結果、アンドレイドを殺した犯人は、オートマタかホムンクルスのどちらか。もしくは、その両方を併せ持つ者と断定された』

 

「いや、オートマタやホムンクルスには不可能だろ? あいつらには、人間を傷付けるなんて、出来ないんじゃ……」

 

『アンドレイド自身の作品ならば可能だ』

 

基樹が反論していたら、幾磨が被せるように告げた。

 

「は……人形師が自身の作品に殺されたってか……皮肉だな」

 

『スワニルダ……それが、対象の人形の名前らしい』

 

「そいつはどうなったんだ?」

 

『逃走中……いや、潜伏中というべきだな……ここ最近、島内で発生している連続失踪事件……そのいくつかに、スワニルダが関与していると公社は睨んでいる』

 

「なんだと!?」

 

幾磨からの報告に、基樹は驚愕した。

美しい人物ばかりを狙う人形の話は、基樹も聞いた事があったが、魔族特区特有のオカルト話だと思っていたからだ。

だがもし本当に居て、今も何処かに潜伏しているとなれば、ありがちな噂話に流されてしまい、本物が見つけづらくなり、本当の目撃者の証言が埋もれてしまう。

 

『そいつを見つけるのが、お前の仕事だ……人形師が第四真祖に接触した、というお前の報告書は読んだ。ならば、再度近くに現れる可能性は高い』

 

「なるほどな……」

 

幾磨の話に、基樹はうんざりといった様子でため息を吐いた。

何時もは秘匿事項だ、とか難癖つけて情報共有しない幾磨が、簡単に情報共有した理由を察したからだ。

 

「一つ訊かせてくれ、兄貴」

 

『なんだ?』

 

「殺人人形が関与したっていう被害者は、どうなった?」

 

基樹からの問い掛けに、幾磨は僅かだが答えず、そして感情を感じさせない声で

 

『喰われたよ……殺人人形に融合されてな』

 

と告げた。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「あっちゃー……やらかした!」

 

帰宅して入浴しようとしていた浅葱は、脱衣所の洗濯機の前で頭を抱えていた。プールバッグを学校に忘れた事に気付いたのだ。

しかも、明日明後日は土日。そして月曜日にプールの予定になっている。

 

「流石に、週末ずっとロッカーに入れっぱなし、ってのはマズイわね……学校に行かないと」

 

冷房が切られた土日に、通気性が悪いプールバッグの中に放置された水着の末路なんて、浅葱は考えたくはなかった。

一度自室に戻った浅葱は、脱いだ制服を再度着てから自室を出て、居間で夕食の準備をしていた菫に

 

「忘れ物を取りに、学校に行ってきます。すぐに戻りますので」

 

とだけ伝えて、菫が何か言う前にエレベーターに乗った。浅葱が住む高級住宅地は、景観は最高だが、交通の利便性は悪い。

何とかモノレールを乗り継ぎ、彩海学園の前まで着いたが、時間は夜の9時近く。

学園の周囲には人影は無く、人工島特有の無機質な夜景に校舎があり、不気味だった。

 

「まあ、こんな時間じゃあ、閉まってるわよね」

 

高い校門は固く閉ざされており、そこは内側から鍵を使わなければ入れない。

しかし、横にある通用門に近づき

 

「モグワイ、これ開けて」

 

『人使いの荒い嬢ちゃんだな……というか、犯罪の片棒をかつがせるの、やめてくんねーか?』

 

「どうせ暇でしょ?」

 

モグワイからの文句を軽く受け流し、浅葱は気楽な口調で返した。その言葉に、モグワイはやれやれ、という様子で従った。

 

「あ、ついでに校舎のセキュリティも解除しといて」

 

『へいへい。ログに残らないようにしとくぜ』

 

モグワイがそう言った直後、浅葱の前にあった玄関の鍵が開いた。

 

「んじゃ、回収しに入りますか」

 

そうして浅葱は、校舎に入った。

それを、怪しい眼光が見ている事に気付かぬまま。

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