「ああ、もう!! 数多過ぎ!!」
「分かりますが、口よりも手を動かしてください!!」
明久が悪態を吐きながらマネキンや人形を破壊していき、雪菜は背中合わせで明久と共闘していた。
意識を失った店員を警備員に引き渡した後、明久達は脱出を目指していたが、余りにもマネキンや人形の数が多くて、中々進めなかった。
また一人、別の店員を助けて引き渡した時
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「凪沙!?」
気付けば、天井からマネキンが凪沙に襲い掛かろうとしていた。
明久と雪菜は助けようとしたが、横から飛び掛かってきたマネキンに邪魔され、間に合わないと思った。
まさにその時
「おらぁぁ!!」
と凪沙に襲い掛かったマネキンを、熊系の獣人が薙ぎ払って助けた。
「すいません! ありがとうございます!」
「良いって事よ! まあ、獣人化は緊急事態だから、お咎め無しみたいだしな。嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「あ、ありがとうございます……」
凪沙を抱えていた獣人にお礼を言い、獣人は凪沙を雪菜に引き渡した。
雪菜が凪沙を立たせ、周囲を見回した。
「ちいっ! 更にマネキン共が増えてやがる!! しかもこっちに来るぞ!」
「なんとか、離脱しないと……危ない!!」
気付けば、数体のマネキンが獣人に襲い掛かっていた。
「クソが! があっ!?」
「響よっ!!」
何体かは獣人が破壊したが、間に合わずに背中と足に組み付かれた。何とか雪菜が破砕したが、獣人は荒く呼吸していて
「クソ、不甲斐ない……!」
獣人は何とか動けるようだが、獣人の方に意識を向けた際に、更に数十体のマネキンの接近を許してしまった。
気付けば、逃げようと警備員の方に向かっていた凪沙と分断されてしまった。
「あ、明久くん! 雪菜ちゃん!」
「凪沙は先に離脱! 大丈夫、追い付くから!!」
「先に行って!!」
明久と雪菜の言葉に頷いて、凪沙は警備員と一緒に階段の方に駆けていった。
明久は更に獣人に群がろうとしたマネキンを破砕し
「大丈夫ですか?」
「悪いな、坊主……これ以上の獣人化は、難しそうだ……」
明久が近寄ると、獣人化が解除された。
どうやら、魔力の大部分が吸われたらしい。明久はそんな獣人を、何とかエレベーターに運び込み、屋上へのボタンを押して見送った。
そこに、雪菜が近寄り
「先輩! あそこを!!」
とある方向を指差した。
その先に居たのは、包帯だらけだが、間違いなく
「スワニルダか!?」
スワニルダが明久と雪菜を指差した瞬間、頭上から夥しい数のマネキンが襲い掛かり、明久は数に押されて吹き抜けに落ちた。
「先輩!!」
雪菜は手を伸ばしたが、間に合わず落下した。
だが、予想外に痛み等は無い。
「あれ、なんで……」
「間に合ったようだな」
聞き覚えのある声に振り向くと、那月とアスタルテの二人が居た。
「あ、那月ちゃんに助けられたのか……」
「お前に気付いたのは、アスタルテだがな」
そう言いながら、那月は明久をゆっくりと下ろした。そこに、雪菜も着地して
「先輩! 大丈夫ですか!?」
「うん、大丈夫」
明久が返答すると、那月とアスタルテに気付いたらしい。
「南宮降魔官」
「お前か……上はやはり、スワニルダが人形を操っているか」
「まるで、どこぞのB級ホラー映画だよ」
明久と雪菜はボロボロのスチールパイプを放り投げ、雪菜は雪霞狼を展開。明久は札から刀を取り出した。
「お前、その刀……」
「文句はバカ親父にお願いします」
今回明久が取り出したのは、小烏丸天国だ。漆黒の焔が揺らめき、近くに漂っていた霧が一気に晴れた。
「スワニルダは、屋上に向かいました……」
「目的は凪沙かな……行ったら、バレるよね……」
「バレますね……」
流石に今のまま行ったら、凪沙に気付かれるのは明白。
「さっき見た時、スワニルダから魔力の糸みたいなのがマネキンに伸びてた……」
「奴の体内に、傀儡創造があるからだな」
「人形遣いの魔導具……! スワニルダが持ってたのか!」
明久の言葉に那月が説明すると、明久は今回の犯人がスワニルダだと分かった。しかし、その目的が分からないでいた。
「人形師ってやつが命令したのかな?」
「……人形師様は、スワニルダにより殺害されていました」
「え、つまり……創造主を殺した事で暴走してるって事?」
明久としたら、近くに居るだろう人形師を捕まえて無力化し、命令を無効化させようとしたが、死んでるのでは無理と判断し、頭を掻いた。
「となれば、スワニルダを直接撃破するしかないかと……けど、バレない為にはどうすれば……」
「……アレ、使えるかもよ」
雪菜の言葉に、明久はある物を指差した。
どうやら、放り込まれたらしい着ぐるみを。