「くそっ……これ以上は、ドアが保たないぞ!?」
「こっちも、もう魔力が……!?」
そう告げたのは、屋上に続く階段のドアを抑えていた獣人と、屋上の縁から壁を登ってくる魔術師だった。
彼ら、彼女達は所属に関係なく避難してきた人達を守っていたが数に押されて、ドアは蝶番が異音を立てて、魔術師は肩で荒く呼吸していた。
「くっ……マズイ! 離れろ!!」
「駄目だ、迎撃が間に合わない!?」
そしてとうとう、維持していた防衛線が瓦解した。
ドアは蝶番部分が壊れて突破され、屋上縁の方は数体のマネキンが手を掛けた。
「か、囲まれた……!?」
「くそが、数が多過ぎる!!」
圧倒的数に押され、避難者達はマネキンに囲まれた。
その真ん中辺りで、凪沙は涙を滲ませながら頭を抱えて震えている事しか出来なかった。
「助けて……明久くん……!」
凪沙がそう言った直後、階段付近のマネキン達が一斉に斬り刻まれた。
「な、なんだ!?」
「あ、あれは……」
「タルタルーガ……君……?」
階段の出入り口付近には、左手に刀を持った着ぐるみ。タルタルーガ君を着た明久が居た。
(動き難いけど、バレるよりかはマシだよね)
明久はそう考えながら刀を構え、壁をよじ登ってきたマネキンが明久の背後から飛び掛かってきた。だがそこに
「はあぁぁぁ!!」
とマスクドバニーの衣装を着た雪菜が、そのマネキンを薙ぎ払って明久の横に降り立った。
何故その衣装なのか。
それは、明久が落ちた場所に放り投げられていたのが、ヒーローショーで使用されたそれらだったのだ。
よほど慌てていたのか、箱に仕舞いもせずに放置されていた。
着ぐるみは言わずもがなだが、マスクドバニーも顔の大部分がマスクで覆われる為に、変装するならうってつけだった。
そこに、那月も協力して声を変えている。
しかし、声を変えていたら戦闘に支障が出そう、という明久の判断を聞いた那月が魔導具と魔術を使い、明久と雪菜のみに聞こえる魔術式通信を構築している。
(行くよ、雪菜ちゃん!!)
(はい、先輩!!)
念話で会話した二人は、常人には視認すら難しい速度で駆け出した。
二人は次々とマネキンを斬り刻み、もしくは弾き飛ばして、屋上のギリギリに居る敵。
スワニルダを視認した。
(お前が、自分の欲望の為に見ず知らずの人達を利用する? そんな事、絶対にさせるものか! こっから先は
(いいえ、先輩! 私達の
「未確認勢力、視認……私の目的を邪魔するのなら、排除します!」
最早元の美しい姿から醜い姿に変わったスワニルダは、無くなった右腕の代わりに蜘蛛を彷彿させる魔導具を右肩から取り付け、今まで無闇矢鱈に集めた生命エネルギー故かブクブクと大きくなった体を支える為に、多脚型の魔導具に下半身を納めていた。
だが、意志の強い眼光で明久と雪菜を睨んでいた。