「どういうつもりなのよ! なんで、ヴェレシュ・アラダール議長と戦う事になった訳!?」
獅子王機関の出張所にて、明久は沙矢華に詰め寄られていた。
「そうは言ってもさ……グレンダもだけど、羽場さんや斐川さんを見捨てられないでしょ?」
「そうだけど、分かってるの? 相手は真祖を除いて、世界でも最古参の吸血鬼なのよ!? 小国なんか、簡単に殲滅出来るクラスの化け物よ!?」
ヴェレシュ・アラダールは、戦王領域でも最古の旧き世代の吸血鬼であり、世界で見ても最古参の一人。
眷獣の強さも、真祖に匹敵する。
「そうだね……今のあんたじゃ、勝ち目は万に一つしかない」
そう語ったのは、沙矢華の肩に乗っている黒猫の縁だ。
「アタシとしたら、蛇遣いに会いに行けと言いたいね。アイツ程に眷獣の使い方に精通した吸血鬼は早々居ないからね」
「ヴァトラーかぁ……」
縁の言葉に、明久は渋面を浮かべた。
すると、沙矢華が六式を抜いて
「選り好みしてる場合!? あんたが撒いた種なんだから、自分で何とかしなさい!!」
「待って待って待って!? 今斬られたら、ヤバいから! そっちも、また変な服を着せられるよ!?」
明久は沙矢華が振り下ろした煌華麟を白刃取りで受け止め、何とか耐えながら沙矢華を止めた。すると沙矢華は、ハッとした表情で止まった。
「チッ……」
「師家様? 今舌打ちしました……?」
沙矢華の肩から降りた縁は舌打ちし、近くに居た雪菜は思わず見た。
しかし、問題が一つ。
「ヴァトラーが何処に居るのか、分からないんだよねぇ……」
そう。ヴァトラーは少し前から所在地が分からない状態なのだ。
少し前にヴァトラーの巨大クルーズ船のオシアナス・グレイブⅡが絃神島に戻ってきたが、連絡は着かない。
「煌坂さんから連絡は……」
「私がアルデアル公の電話番号知ってる訳がないでしょう!?」
「だろうね」
ある意味分かりきっていた為に、軽く受け流す明久。
さて、どうしようか、と明久が考えていると
「先輩、ラーメンを食べに行きましょう」
と雪菜が告げた。
「ラーメン?」
「……ああ、なるほど」
雪菜の言葉に沙矢華は困惑し、明久は納得した。
それから、十数分後。
「……それで、私の食事を邪魔しに来たという訳か」
「お食事を邪魔してしまい、申し訳ありません。アズィーズ殿下」
ある有名なラーメン屋に居たイブリスベール・アズィーズの所に来ていた。
「ヴァトラーに連絡は……」
「そもそもが繋がらなかったんで……」
「まあ、そうだろうな……アヤツは賛成した側の一人だからな」
明久の言葉に、イブリスベールは頷いた。
「しかしだ、私は然程戦闘は得意ではないからな……それに、アヤツ程に眷獣の扱いも長けておらん……」
「そうですか……」
明久は知らなかったが、第八王子という立場でありながら、情報収集を得意としている為、戦闘はそれほど得意ではないのだ。
「それに……お主が話すべきは一人だけよ」
イブリスベールはそう言いながら、明久を指差したのだった。
ほぼ同時刻、ある場所にて
「ほら、戦車乗り。頼まれた物よ」
「助かったでござる、女帝殿。代わりに、こちらを」
浅葱は鞄から取り出した物をリディアーヌは受け取り、すぐに指を鳴らした。
すると、二人の横の広場にある存在が姿を見せた。
それを見た浅葱は、ニヤリと笑みを浮かべて
「ありがとう、戦車乗り……これだけあれば十分よ」
と告げた。
「女帝殿……これだけの力で、何をするつもりでござるか?」
「そりゃ勿論……戦争よ」
リディアーヌからの問い掛けに、浅葱はそう答えた。