ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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魔女の復活

「これは……」

 

視界が白一色に染まった阿夜は、周囲を見回した

すると雪菜が

 

「まさか……霧の眷獣!? 島自体を霧化させたんですか!?」

 

と驚愕した

雪菜の指摘は、正解だった

明久が沙矢華と優麻の血を吸って支配下に置いた新たな眷獣

甲殻の銀霧(ナトラ・シネレウス)

それが表すのは、吸血鬼を代表する能力

霧化だ

旧い世代ともなれば、相手の攻撃を無力化し別の場所に現れるということも平然と成し遂げるとされる

しかし、明久のは桁が違った

甲殻の銀霧の霧化の範囲は、なんと絃神島全体に及んでいた

明久は絃神島全体を霧と実体の間で固定することで、魔力の無効化からくる島の崩壊を防いだのだ

それに気付いた阿夜は、明久を睨み

 

「おのれ! 第四真祖風情が!」

 

と言いながら、魔法を立て続けに放った

だが、それを座して見ているだけの雪菜と沙矢華ではない

二人は明久の前に陣取り

 

「はあ!」

 

「せぁっ!!」

 

と明久に迫った魔法を弾いた

すると明久は

 

「獅子の黄金! 双角の深緋!」

 

と更に二体の眷獣を同時召喚した

はっきり言って、今の明久にはかなり負担が大きい

しかし、阿夜に勝つためにはやる必要がある

阿夜は那月並の腕前の魔女である

全員が全力で挑まなければ、勝つのも勝てなくなる

それに呼応するように、雪菜と沙矢華も動いた

明久の眷獣の攻撃を回避したタイミングを狙い、雪菜と沙矢華は攻撃を繰り出した

だが、二人の攻撃は闇によって防がれた

しかも、その時の衝撃を増幅、二人を撥ね飛ばした

そして、二人が着地したタイミングを狙い、二人に魔法を放った

だがその魔法は、獅子の黄金と双角の深緋によって弾かれた

はっきり言って、いたちごっこだろう

だが、長くは戦えない

明久の集中力が途切れて、眷獣達の支配が失敗すれば、大災害になるのは確実である

だから、短期決戦が必須条件である

それを理解しているからか、三人は攻撃の手を緩めない処か、苛烈にした

明久は獅子の黄金と双角の深緋の波状攻撃を繰り出し、それに追随して雪菜と沙矢華も更に攻撃を繰り出した

しかしその攻撃を、阿夜は空間魔法で回避

一気に距離を取った

すると、一冊の魔導書を取りだし

 

「ええい、煩わしい餓鬼共め! この個人歴史(パーソナルヒステリー)の書で、貴様らの時を奪ってくれる!!」

 

と怒った

それを聞いた三人は、慌てて攻撃しようとした

その時だった

 

「待っていたぞ、阿夜……お前がその書を出すのをな」

 

と聞きなれた声が聞こえた

その直後、何処かから伸びた鎖が、阿夜が持っていた魔導書を絡めとり、引っ張った

それをキャッチしたのは、意識を失っていたはずの人物

おさなこと、那月だった

 

「那月ちゃん!? 戻ったの!?」

 

明久が問い掛けると、那月は

 

「一時的にだがな。何処かのバカが、鼻血を盛大に流したから、こうして一瞬の隙を突くぐらいの魔術は使えるさ……」

 

と言いながら、明久を睨んだ

叩かなかったのは、明久が眷獣を操っているためらしい

そして那月が魔導書を強く握った直後、那月の体つきが変わった

それは、見慣れた那月の姿だった

どうやら、奪われた時を取り戻したようだ

そして、魔導書を消すと

 

「諦めろ、阿夜……もうお前に、勝機は無い」

 

と告げたのだった


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