数分後、明久と基樹の二人は浅葱を引きずりながら教室に到着した
なお、浅葱は数分間引きずられたというのに一回も起きなかった
そこから、相当眠かったのだろうと明久は分かって、心中で再び謝ってから席に座った
すると、数人の男子が集まり
「朝から大分お疲れみたいだな」
「……大丈夫か?」
「お疲れなのじゃ」
と明久を労ってきた
「ありがとう」
明久は労ってきた友人達、坂本雄二、土屋康太、木下秀吉に感謝の言葉を告げた
「しかし、噂の転校生と一緒に登校とはな」
「……羨ましい」
雄二と康太の言葉に、秀吉は腕組みしながら頷いている
「噂の転校生?」
明久が問い掛けると、秀吉が頷いてから
「うむ。中等部の聖女と並ぶ美少女で、中等部だけでなく高等部の男子も見に行くほどじゃ」
と説明した
「そっか……まあ、確かに美少女だよね」
と明久が納得したタイミングで、チャイムが鳴った
入ってきたのは、西村だった
「席に座らないと、欠席にするぞ!」
西村がそう言うと、雄二達は急いで席へと戻った
「藍羽は……寝ているのか……まあ、管理公社から連絡は受けているがな」
西村はそう言うと、出席簿に何かしら書き込んだ
そこを皮切りに、出席確認が終わり、当たり障りのない話をして、西村は出席簿を持つと教室から去ろうとした
その時、視線を明久に向けて
「吉井、後で南宮先生の所に行くように。呼んでいたぞ」
と言って、教室を去った
西村の言葉を聞いて、明久は深々とため息を吐いた
そして、昼食を食べると明久は職員室へと向かった
が
「南宮先生の執務室なら、最上階だよ?」
と笹崎先生に言われて、最上階へと向かった
途中で雪菜と出会った
「雪菜ちゃん?」
「あ、先輩……先輩も呼ばれたんですか?」
雪菜の言葉に明久は頷いて、溜め息混じりに
「どう考えても、昨日のことだよね……」
と言いながら、最上階に到着した
「……何、この豪華なドアは?」
明久は那月の執務室のドアを見て、思わず呟いた
そこにあったのは、豪奢にして大きな木製のドアだった
「那月ちゃん……入りますよ……」
と言いながら、明久はドアを開けた
その直後、扇子が明久の額に直撃した
「教師をちゃん付けするな」
明久は悶絶しているが、那月は無視して書類にサインをしていた
「南宮先生、お呼びした要件は一体?」
雪菜が問い掛けると、那月は視線を二人に向けて
「いやなに、昨日の事件は知っているな?」
と問い掛けた
すると、ようやく立ち直った明久も頷いた
「
と明久を指差した
「南宮先生、先輩が吸血鬼だって知ってたんですか?」
那月の言葉を聞いて、雪菜は問い掛けた
「ああ……吉井、気をつけろよ」
「了解でーす」
那月の言葉に明久は後頭部を掻きながら、気を抜いた感じで返答した
「話は終わりですよね? それでは」
明久はそう言うと、踵を返して執務室から出ようとした
「ああ……待て、お前ら」
那月の呼び声に反応して、二人は振り向いた
その直後、雪菜の目前に招き猫のぬいぐるみが現れた
雪菜は落ち始めたぬいぐるみを慌てて掴むと、嬉しそうに抱き締めて
「ねこまたん……」
と呟いた
そして、数瞬後にハッとした
それは、昨日に雪菜と明久が逃げ出した時に落としたぬいぐるみだった
二人を見て、那月はニヤリと笑みを浮かべて
「今回は見逃してやるさ……転校生が吉井を回収してくれたからな」
と言った
どうやら、アイランド・ガードが来る前に雪菜が明久を回収したお礼らしい
「要件は終わった。さっさと帰れ」
那月はそう言うと、再び書類の処理を始めた
そして、二人は那月の執務室から去った
だが、二人は帰らずに食堂へと向かっていた
「先輩、帰らないんですか?」
雪菜が問い掛けると、明久は頷いて
「うん……那月ちゃんは言わなかったけど、多分、あのオッサンはここ数日襲撃してたはずだよ」
明久がそう言うと、雪菜は目を見開いた
「凪沙が言ってたんだけど、登録魔族の怪我人が多く出てたんだって」
「なるほど……」
凪沙のおしゃべり好きを思い出して、雪菜は納得した様子で頷いた
「だから、先にちょっと情報収集しようかなって」
「情報収集ですか……」
雪菜の言葉に明久は頷いて
「僕の知り合いに、情報収集が得意な人が何人か居るんだ」
二人が会話している内に、食堂へと到着した
そこでは、驚きの光景が広がっていた
一人の少女の前に料理が山盛りされた皿が、幾つもあった
「ヤッホー、浅葱」
「あら、明久」
大量の料理を食べていたのは、浅葱だった
浅葱はかなり細いが、平均男子よりもかなり大食いなのである
見慣れた明久は普通だが、雪菜は驚愕で目を見開いて固まった
「あ、明久。運んでくれてありがとうね」
「いやいや……それより、ちょっとお願いがあるんだ」
明久の言葉を聞いて、浅葱は首を傾げた
「なによ?」
「ちょっと、ロタリンギアの会社のことを調べてほしいんだ」
明久の頼みが予想外だったのか、浅葱は片眉を上げた
「ロタリンギアの会社? どうしてよ?」
「うん。ちょっと、課題を出されちゃってさ。夏休み中にでも、ちょっと見学に行こうかなって」
明久の言葉を聞いて、浅葱は納得した様子で端末を操作し始めた
明久の課題の多さは浅葱も知っており、度々手伝っていたのだ
数秒すると、浅葱は首を傾げた
「あれ? 珍しいわね……ロタリンギアの企業、島内にはないわね」
「え、無いの?」
明久の言葉に、浅葱は頷いて
「ええ……有ったとしても、既に撤退してるわね」
浅葱の言葉に、明久は端末を覗き込みながら
「どこ?」
と問い掛けた
「ここよ。アイランド・イーストの製薬会社跡」
浅葱の説明を聞いて、明久は顎に手を当ててから
「撤退してたんじゃ、仕方ないかなぁ……自分でなんとかしようっと」
と言った
「あたしも手伝いましょうか?」
「行き詰まったら、お願いするね」
明久はそう言うと、お礼として五百円を置いて食堂から去った