ストライク・ザ・ブラッド おバカな第四真祖   作:京勇樹

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終わりの刻

戦いが始まると、雪菜は雪霞狼を構えながら、天塚と相対した

すると天塚は、船の一部を使って、賢者の血液を生成

分身体を作り出した

しかしそれは、ようやく人の形を保っているというレベルである

それは恐らく、天塚の精神が揺れているからだろう

 

「天塚さん……貴方はもう、気付いているはずです」

 

雪菜がそう言うと、天塚が

 

「ごめんねぇ……こうする以外に、分からなくてさあ」

 

と答えた

その瞳は、意思の光が不安そうに揺れていた

それは、自分の過去の記憶

人間だった頃の記憶が、無いことに気付いたからだった

偽りの記憶が与えられ、偽りの思いを植え付けられ、賢者に都合のいいように使われ続けた

それが、天塚の精神を不安定にしていた

 

「行けぇ!」

 

天塚が指示した直後、その人形達が雪菜に飛び掛かった

しかし、雪菜は慌てずに

 

「はあっ!」

 

雪菜は雪霞狼を振り回し、次々と人形を撃破

天塚に迫った

そして、天塚に雪霞狼を突き付けて

 

「貴方は、人間であろうとすればよかったんです!」

 

と言って、雪霞狼に呪力を回して神格振動波を起動

祝詞を唱える

それに呼応し、雪霞狼が光輝く

それを見た天塚は、自身の片腕を槍に錬成

雪菜に攻撃を仕掛けた

その穂先を狙って、雪菜は雪霞狼を突き出しながら

 

「先輩みたいに、人間であろうとすればよかったんです!!」

 

と言った

それを聞いた天塚は

 

「そうか、僕は……人間として生きれば良かったのか……」

 

そう言って、消滅した

それを確認した雪菜は、明久の方を見た

明久は両手を雷で覆い、賢者が放つ荷電粒子砲を弾いていた

どうやら、船を守るためらしい

すると賢者は、大規模砲を撃とうと考えたのか、最初に撃った時と同じように高い魔力を溜め始めた

その隙を突いて

 

「獅子の黄金!!」

 

獅子の黄金を突撃させて、賢者の頭部を吹き飛ばした

だが、その程度で終わるとは、明久も思っていない

だから、左手を高々と掲げて

 

焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)の血脈を継ぎし者、吉井明久が、汝が枷を解き放つ!!」

 

と新たな眷獸の召喚を始めた

 

疾く在れ(来い)! 11番目の眷獸、水精の白鋼(サダルメリク・アルバス)!!」

 

そうして明久が召喚したのは、下半身は蛇、上半身は妖艶な美女のセイレーンの眷獸だった

その眷獸は、頭を再生した賢者に向かい、絡み付いた

その直後、賢者の体が縮み始めた

 

「あれは!? 再生……いえ、時を巻き戻している!?」

 

それを見た雪菜は、その眷獸の能力に気付いた

 

「あの眷獸は、吸血鬼を示す能力……再生能力を司る眷獸!? その力で、賢者を原初にまで巻き戻している!?」

 

『バカな!? 消える!? 完全なる我が!? バカなぁ!?』

 

賢者がそう驚いている間にも、賢者の体は少しずつ縮んでいく

それを見ていた明久は

 

「あんたの妄執も、ここで終わりだ! 消え去れ!!」

 

と告げて、更に魔力を込めた

それにより、更に加速度的に縮んでいく

そうして数十秒後、賢者は完全に消え去った

こうして、約300年続いた賢者の妄執は終わり、ニーナは縛られる必要が無くなったのだった


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