時は流れて――公式大会“べすとふれんどマッチ”開催日。
現地にて集合すれば、既に多くの人間が商店街の中にいた。
バルーンも飛ばしていて、声を出して客を呼び込む人たちも活気づいていた。
お客さんたちにも笑顔があり、盛り上がっている様子で。
俺たちは商店街の入り口の脇に立ち、俺は先輩方にギプスを外した状態の鍛え上げられた肉体を見せていた。
「どうっすか、先輩方ッ!」
「「「おぉ」」」
ポーズを決めながら、俺は白い歯を見せて笑う。
すると、先輩方が手を叩いてくれた。
ギプスと地獄のトレーニングによって。
俺の体は鋼のようになっていた。
筋肥大の心配はあったが、良い感じに細く引き締まったお陰で。
幼馴染にも文句を言われる事は無くて良かった。
……まぁ肌はがっつり焼けていたけど、アイツの技術で元通りだしな。
俺の幼馴染は化粧やスキンケアにも詳しい。
だからこそ、俺が真っ黒になっていけば。
アイツはむすっとした顔になり、速攻で俺を元の肌の色に戻していた。
何がそんなに不満なのかと聞けば、アイツはただ一言だけ言う。
『別に』
理由を話してはくれない。
が、俺からそれ以上問いただす事はしない。
アイツと俺の関係はそういうものだ。
だが、淡泊という訳ではなく。
アイツはどうかは知らないが、俺はアイツの事を誰よりも信じている。
頼れる存在であり、世界で一番の大親友だ。
俺はそんな事を考えつつ、上着を再び着る。
そうして、IECEで時間を確認し……そろそろだな。
「……行きますか?」
「いや、少し待て……来たな」
「「「……?」」」
ゴリ先輩は誰かを待っていた。
誰を待っていたのかと先輩の視線を辿れば……あの人は……。
黒塗りの高級車から出て来た小太りのおっさん。
瞳は黒くぱっちりとして、頭は見事な角刈りだ。
青いスーツを着こなして、赤い蝶ネクタイを巻いている……あぁ、やっぱりそうだ!
彼はゴリ先輩と俺を見つければ笑みを浮かべて近づいて来る。
見覚えがあると思えば、ゴリ先輩が剛魂をしていた場所にいたおっさんだった。
まさか、このおっさんと会う約束をしていたのかと視線を向けて――おっさんに手を掴まれる。
「五十嵐仁君!! ようやく、君に恩返しが出来るよ!! 今日は呼んでくれてありがとう!!」
「え、あ、いや……ど、どうもっす!」
「……高梨さん。そいつには何も伝えていないんですよ」
「おろ? そうなのかい……では、私から説明しよう。自己紹介からさせて貰うよ? 五十嵐君とその仲間諸君、私の名前は高梨哲司。こう見えても、飲食業界では名の通った男でね。知っている人はいるかな?」
「「……?」」
「……! 高梨哲司って、まさか炎の料理人と呼ばれたあの!?」
「ふふふ、知っている人がいて良かったよ……そう! 私こそが火を使わせれば右に出る者はいないと言わせるほどの料理の腕を持つ鉄人!! 我こそが炎の料理人、高梨哲司なのだよ!! はははは!!」
「「「……おぉ」」」
俺たちはパチパチと手を叩く。
すると、高梨さんは照れたように笑う。
が、ゴリ先輩の咳払いを聞いて彼はハッと気づく。
「すまない。ちょっと調子に乗ってしまったね……まぁ、そんな私が今日この場所に来たのは他でもない――君たちの支援をする為なんだよ!」
「俺たちの、支援を……まさか、美味い飯をご馳走してくれるんすか!?」
「ふふふ、まぁそれも考えたが……よりサポート的な事をするよ。端的に言えば、金銭面での支援だね」
「……平たく言えば、高梨さんは天龍寺高校メカ・バト部のスポンサーになってくれるという事だ。これはとても喜ばしい事で」
「――ただぁし!! 条件があるんですよ!!」
高梨さんは手を突き出して待ったをかける。
条件とは何かと全員が高梨さんを見る。
すると、彼は指をピンと立てて告げて来た。
「お礼は今回の支援で。スポンサーとして今後もお付き合いをするのであれば――今回の大会にて優勝して頂きたいのですよ!」
「……ほぉ、そう来ましたか」
「ふふ、御礼はお礼ですからねぇ。あくまで、スポンサーとしてであれば、それ相応の実力が無いとこちらとしても支援の意味が無いので……ただ、私はあの時、命を救ってくれたジン君を見ています。あんなにも素晴らしい才能を持つ貴方であればきっと……私は信じていますよ。五十嵐仁君!」
「へへ、そう言ってくれるってんなら――任してくださいよ!! 絶対に俺たちが優勝して見せますから!!」
俺は胸を叩き、にかりと笑う。
すると、高梨さんは満足そうに頷いていた。
おにぎり先輩や服部先輩、坂崎さんもやる気だが……桜間は浮かない顔だな。
「……」
腹でも痛いのかと心配していれば、ゴリ先輩が説明する。
「先ず、今回それぞれが参加する部なのだが……俺と服部と桜間は団体の部に出場する事になっている。ジンとおにぎりは個人の部だ」
「え!? なななな何で僕が!? それも団体戦って!?」
「仕方ないだろう。お前は戦う気が無いんだからな。だったらせめて、デコイとして役に立ってもらうぞ」
「そ、そんなぁ……うぅ」
「……俺とおにぎり先輩が個人戦っすか……へへ、燃えるっすね」
「ふふ、頑張ろうねぇ。決勝で会おう! てね」
おにぎり先輩が拳を突き出す。
俺はそれに応えて互いに拳を合わせた。
「トーナメント形式だからな。説明を聞いた限りでは、抽選が行われるそうだが」
「へぇ……あ、そうえいば……未婚とか独身とかって条件なんすけど、それってどうやって」
「ぎゃあああああ!!?」
「「「……!?」」」
突如、男の悲鳴が響き渡る。
見れば、商店街の中から誰かが走って来て――近くに倒れる。
見れば、ケツに闘犬のような強そうな犬が噛みついている。
男は泣き叫びながら助けを求めていた。
俺は咄嗟に飛び出して、犬の頭に手をそっと当てた。
瞬間、犬は俺にターゲットを変えてきて噛みついてきた。
「じ、ジン君!?」
坂崎さんが声を掛けて来た。
俺は大丈夫だと伝えてから、犬の頭を優しく撫でた。
「大丈夫だ。怖くねぇからな」
「……?」
犬は俺の目を見つめる。
そうして、段々と落ち着きを取り戻していき……口を離した。
俺は利口な犬だと褒めながら頭を撫でる。
すると、犬は舌を出して尻尾を勢いよく振っていた……可愛いなぁ。
「ほっほっほ! アンジーを手懐けるとは……お主、相当に“純な者”のようだのぉ」
「んぁ? じゅんなものぉ? 何だそれ」
声がして振り返る。
すると、そこには杖を突きながら歩く小柄で派手な着物を着こんだ婆さんがいた。
しわくちゃな顔だが、化粧はばっちりで。
白髪の髪は鏡餅のようになっていた……すげぇ。
「純な者とは、身も心も清らかなる者の事……そこにいる穢れた男と違う、澄んだ存在だよ」
「お、俺の何処がケガレてるって――ひぃ!!」
ケツを噛まれていた男が尻を抑えながら叫ぶ。
が、婆さんに杖を突きつけられて悲鳴を上げた。
婆さんはカッと目を見開き、叫んでいた。
「お黙りッ!! 他の人間は騙せても、この商店街の長であるこのマダム・スミィレの目は誤魔化せやしないよッ!! ズバリ言ってやるッ!! お前、今までに交際した女の数は――七人だね?」
「――!? ななな何でそれが……あ!」
「ふふふ、やっぱりねぇ。それに、アンタはその女たちを泣かせてるねぇ? 女の生霊がついてるよぉ。ほぉら、首に手を当ててさぁ!!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!」
婆さんの声に男は泣き叫びながら走り去る。
そんな男の姿を見つめながら、婆さんは舌打ちをした。
「……アンタたち、うちでやる大会の参加者だね? 驚かせてしまったのなら謝るよ……さ、行こうか」
「ちょ、ちょっと待ってください! ぼ、僕たちは、だ、大丈夫なんですか……?」
桜間は怯えながら聞く。
すると、婆さんは足を止めて振り返る。
そうして、俺たちの顔をぐるりと見て――ニッと笑う。
「問題ないね。アンタたち全員……まぁ下衆っぽいのはいるが、合格だよ」
「「「……ほっ」」」
桜間と坂崎さんとおにぎり先輩は胸を撫でおろす。
ゴリ先輩と服部先輩は顎を撫でながら互いに見つめ合っていた。
俺は拳を握り、闘志を高めた……いよいよだな。
「さ! さっさと来な。あの男で最後だったかねぇ。開会式を始めるよ」
「お、オッス!」
「「「……」」」
俺は立ち上がり気合を込める。
そうして、先輩方と共に婆さん……スミィレについて行った。
◇
開会式が終わり、個人の部と団体の部に別れて抽選を行った。
その結果、俺は最後から二番目の枠に入った。
対戦相手は男であり、長い金髪に白スーツで胸元には赤い薔薇を差していた。
おにぎり先輩は最後の枠であり、対戦相手の男は……おっと、いけねぇ。
「……そろそろか」
IECEで時刻を確認する。
すると、そろそろ俺たちの対戦時間だった。
控室として提供されているネットカフェの一室。
他の参加者の声などは丸聞こえだったが、誰も気にしてはいない。
俺自身もどうでもよく、時間になるまでただ腕を組んで座っていただけだった。
……時間になれば係の人間が呼びに来るって言ってたけど……お?
トントンと扉がノックされる。
返事をすれば、外にいる係の人間が時間であると教えてくれた。
俺はニッと笑い、両頬を強く叩く……うし!!
俺は立ち上がり、外へと出た。
「ヴェルサイユ様は既にお待ちですので、このまま会場へ向かってください! それでは!」
「あ、はい! ……ヴェルサイユって……あぁ、あの白スーツのおっさんか!」
俺は納得した様に手を叩く。
そういえば、選手登録には本名も書くが。
名前を呼んでもらう時は、好きな名前を登録出来るって言っていた。
俺はジンであり、先輩方もプレイヤーネームだった気がする。
「って、いけねぇ! 急げぇ!!」
俺は慌てて走り出す。
狭い廊下を抜けていき、そのままレジを通り抜ける。
扉を開ければ、光が差し込み。
俺は目を細めながら、会場へと向かった。
会場には既に多くの人間が集まっている。
俺は予め用意しておいたマスクをポケットから出す。
開会式の時もつけていた赤いマスクであり、それを被れば準備は万端だ。
……大会に出るようにはなるが、顔とかは出さねぇ方が良いってアイツが言ってたしな。
頭の良い幼馴染の考えはさっぱりだが。
きっとそれが正しい事なので俺は渡されたマスクを被りながらステージを目指す。
スタッフの女性が気づいて、柵をのけて案内してくれる。
俺は礼を伝えてから、柵で開けられた通路を進み……止められる。
「少しお待ちを……ジン選手来られました……はい、はい……分かりました……それでは、司会者から名前を呼ばれましたら、ステージに上がってください」
「分かりました! ……ふぅ」
急に緊張してきた。
ステージに上がるなんて何年ぶりだろうか。
小学生の頃に、感謝状を贈られて校長に褒められた時以来か。
そんな事を考えてくすりと笑い――歓声が聞こえた。
「さぁ!! 第三試合が終わり、いよいよ第四試合が始まります!! 第三試合では、両選手ともに素晴らしい射撃の腕前を披露してくれましたが、第四試合ではどのような試合が展開されるのでしょうか!! 皆さま、どうかそのままで……さぁ、それでは両選手入場してもらいましょう!! 先ずは、私から左手側――ジン選手!! どうぞ!!」
「――オッスッ!!」
俺は気合の声を出し、そのまま階段を上がる。
ステージの上に立てば、多くの観客が俺に注目していた……おぉ!
最初にステージを見た時は、小さいように感じたが。
実際ステージの上に立てば、こんなにも広いのかと感じてしまう。
お客さんの年代は割と高めであるが、誰しもが瞳を輝かせていた。
俺はニッと笑いながら、司会者の横に立つ。
「ジン選手! 今日の意気込みを一言!!」
「――絶対に勝ちます!! それと――俺が優勝します!!」
「「「おおぉぉ!!!」」」
「素晴らしい!! これぞ若さですね!! ではでは、続きまして右手側にご注目――ヴェルサイユ選手、どうぞ!!」
名前を呼ばれた瞬間に黄色い歓声――というよりはお年寄りの声が響いた。
ばあちゃんたちであり、誰しもがピンクの法被に同じ色の鉢巻きを巻いている。
見れば、あのおっさんの顔がプリントされたでけぇうちわなんかも持っていた……すげぇ。
ヴェルサイユは笑みを浮かべながら手を振る。
そうして、慣れた手つきでウィンクをしていた。
それを受けたばあちゃんたちは胸を押さえて後ろに倒れる。
控えていた医療スタッフたちが担架でばあちゃんたちを運んでいき……だ、大丈夫なのか?
「ヴェルサイユ選手!! 今日のいきご」
「――勝つよ。それと、優勝するのはそこの少年ではない――この僕さ。ふっ」
「おぉ!! 流石は、公式戦への参加経験もあるヴェルサイユ選手!! ジン選手にプレッシャーが掛かります!!」
「……へっ、おもしれぇ!」
俺は拳同士を打ち付けてにやりと笑う。
相手も薔薇を手に持ちにやりと笑っていた。
司会者は上に手を掲げて、俺たちを交互に見る。
「それでは両選手、闘志が高まったところで、IECEの準備を!!」
俺たちはIECEに指を添える。
司会者はそれを確認し、ゆっくりと頷いて――指を鳴らす。
「では、レッツ――ゴー!!」
「「――アクセスッ!」」
互いに叫べば、俺たちの体は光の粒子となって――――…………
…………――――目を開ける。
「……此処は……新しいステージだな」
視界に映るのは、バカでかい古城だった。
平原であるが、起伏のあるステージのようにも感じる。
空は少しだけ暗くなっていた。
足場としては凸凹のような感じであり、地上を走る時はかなり……背後に何かが降り立つ。
「ふっ、君の機体は……何ともみすぼらしいね。ほとんどカスタムもされていない既製品……初期状態かな?」
「……悪いかよ」
純白の機体だ。
背中には真っ赤なマントであり。
武装らしきものは右手に持った細い棒状の近接武器……レイピアってやつか?
でも、レイピアにしては太く、剣にしては細い気がする。
妙な感じがする上に、得体が知れない。
あんなもので戦えるのかと思うが……まだあるな。
背中はマントで見えないが。
スラスター以外にも何かが少しだけ見えている。
円状のケースのようなもので……。
スリムなボディーであり、その外装には黄金によって美しい彫刻が施されている。
特に頭部にはこだわりがあるのか。
馬のたてがみのような黄金の毛が頭頂部の突起物から後ろに流れるように生えていた。
ライン上の水色のセンサーが妖しく光り、奴は片手でマントを翻す……それにしても、だな。
現在、俺が乗っている機体は……“エースじゃない”。
シュウが代替機として用意した市販の機体。
R7というシリーズの中でも安価なものであり。
カスタム前提で売りに出されているモデルだった。
ほとんどカスタムされていないのは当たっている。
こいつは装甲を少し増設し、関節部を滑らかにしているだけだ。
元の状態とほぼ変わっておらず。
そんな機体にて出る事になってしまったが……信じるしかねぇな。
『絶対に間に合わせっから!!』
「……大丈夫だ」
シュウから聞いた情報はほとんどない。
だが、アイツが無策のまま初期状態に近い機体を貸すとは思えない。
きっと何かがある。そう思い……俺は拳を構える。
「……まさか、君……それで、この僕を……倒せるとでも? ふふふふ……出来る訳、ないだろう?」
奴の纏う空気が一変した。
濃厚な殺気であり、公式戦に出ていたという情報から相当に戦い慣れているのだろう。
素手での戦闘を挑む俺は愚かか。
無謀に近いと言いたいのだろう……でもな、違うぜ。
馬鹿でも、無謀でも――諦めねぇ奴が勝つんだよッ!!
「やってみなきゃ――分からねぇだろうッ!!!」
「面白い。ならば、そう思い込んだまま――土に還るがいいさ!!」
カウントダウンは既に始まっていて――ゼロになる。
俺たちは互いに大地を蹴って接近する。
互いの得物を構えて――突き出す。
レイピアの切っ先と拳が触れる。
互いに力が拮抗し――後ろに弾かれる。
「……!! なるほど、中々に――いい機体だッ!!」
「そりゃどうも!!」
土を滑り、俺は地面を蹴って走り出す。
ヴェルサイユは空を飛びながら一定の距離を保ってきた。
レイピアの特性は知っている。
一点集中であり、熟練のプレイヤーが使えば貫けないものはない。
それほどまでの貫通力だ。
が、今の一撃で相手も俺も気づいた――硬い。
拳が硬く。
あのレイピアの全力の一撃でも罅一つ入らなかった。
……だけど、それはあのレイピアも同じだ。
あんなに棒のようなものを全力で突いてきて。
しなる事も、折れる事も無かった。
それはかなりの耐久性を意味している。
走りながら、冷静に分析する。
互いに近接戦を得意とする。
だからこそ、否が応でも互いに距離を詰めるしか―無いッ!!
「――!」
俺は地面を蹴り――飛んだ。
スラスターを噴かせて――目の前に敵の機体が迫る。
俺は反射的に拳を振るう。
が、攻撃は空を切る。
ヴェルサイユは回避しながら攻撃をし――俺も機体を回転させて避ける。
「――ほぉ!!」
「――はは!!」
すげぇ――すげぇよ!!
動く、動くぞ。
思ったように機体を動かせる。
考えた通りに動きが反映されている。
今までは避けられなかったような攻撃の軌道が――理解できる。
意味はあったんだ。
出鱈目な特訓も、何度も負け続けた事も。
全て意味があり――繋がっていた。
空を舞う。
今度は敵が接近してきて――連続攻撃を仕掛けて来た。
ノーモーションによる疾風の如き刺突攻撃。
が、俺の目にはその攻撃の軌道が見えていた。
機体を動かしサブのスラスターを噴かせながら避けて。
避けられない攻撃は拳で弾いていく。
そうして、そのまま大きく敵のレイピアを弾き機体を回転させて――蹴りを放つ。
「――くぅ!!」
敵は間一髪で後ろに飛ぶ。
敵が離れて行くのを見ながら、先ほどの感触を確かめる……当たった。
僅かだが、触れた感触がした。
掠めただけであり、ダメージと呼べるものじゃない……それでも、当たった。
対等で、真剣で。
ちゃんとした戦いで――初めて攻撃を当てられた。
「……はは!!」
俺は笑う。
その間にもスラスターを噴かせて敵は俺の視界から消える。
俺は視線を動かす事も無く、背後からの敵の攻撃を下へと降下し避けた。
見える――見えるぞ!!
そのまま地面に着地して、全力で走り出す。
敵は空から俺の動きを観察していた。
もっとだ。もっともっと――感じるんだッ!!!
敵の攻撃を、戦場の空気を。
全てを感じて、己が力に変えていけ。
俺はそう自分に言い聞かせながら笑う。
歯をむき出しにして、目を大きく見開き――笑った。