前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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楽しい時間は束の間で

 教授の術で知識を吹き込んだ後、ふーふーと息が荒くなった護堂が全然鎮まらない。どうも性的興奮がおさまらないようだ。15歳……もうすぐ16歳。そろそろ色を覚える子も出てくるような年齢だから仕方ないね。

 一説によれば、18歳までに3割ぐらいが捨てるらしい。護堂は今年で16歳、高校に入学して一年も経てば、クラスメイト15名ぐらいの内、二人ぐらいは夏休み辺りで捨てるだろう。高校生とはそんな年齢だ。

 

 濃厚なキスのせいで雄としての本能が刺激されたのか、護堂は僕を離そうとはしなかった。そうなったのは僕のせいである以上、仕方ないねと好きにさせた。へぇ、一郎お爺ちゃんみたいにならないように、そういったことから遠ざかろうとしていたのに、首筋にキスをしたくなったりするのか。これも本能なのかな?

 

 あと胸が好きなのも、男の子の本能なのだろうか? 前世の僕はどうだったかな……今みたいに目の前にあって、揉んでも怒られないおっぱいがあったら揉んでいただろうが。

 ……これはどうでも良い情報だが、地母神はだいたいおっぱいが大きい。各遺跡から発掘される大地母神像がだいたい胸が大きいことからも、これは確定事項だ。山の神格化が大地母神なので、大きな山脈は大きなおっぱいになったのだろう。古代も現代も、みんな考える事は一緒だね。

 そして僕は大地母神だ。鋼とか、嵐とか混ざってるけど、肉体のベースとしては大地母神だ。つまりそういうことだ。服の上からでも分かるサイズ、さぞかしいい揉み心地だろう。

 

「護堂も年頃の男の子らしく、胸が好きなんだねぇ……」

「え? …………うわぁ!!」

 

 自分が何をしているのか自覚していなかったらしい。服の上からどころか、下着にまで突っ込んでいた手を慌てて引き抜いていた。こら、そんな乱暴に動かすな。ブラの形が崩れる。

 

「別に手を離したりしなくてもいいのに……まだ朝まではたくさん時間があるんだから、もうちょっとぐらいならいいぜ!」

 

 いやっふー! と指を立てながらお勧めしてみたら、え、遠慮しておくと答えが返って来た。性欲に抗うのは辛かろうに……護堂が吹っ切れてもう我慢出来ん! するなら、友達として、そして恩人として協力するつもりだ。有象無象ならいざ知らず、護堂になら体の一つぐらいは使わせてあげるよー……とか言ったらまた顔を真っ赤にして反論しそうなので止めとく。

 いつか来るのかねぇ……護堂に僕で童貞捨てた癖にと言う機会。そうなる前に、僕以外に好きな人とやらを探して欲しいものだが。清秋院さん家の恵那さんとかが、これでもかとゴリ押しすれば護堂だと受け入れそうな気はするんだ。

 ただ、同時にこう思う。その内一郎お爺ちゃんみたいに、僕が好きだとか言いつつ、それはそれとして別の女の子が猛アプローチしたら、護堂は受け入れるだろうなとも。この場合、鈍感さとは別でクソボケー! と言いたくなるが。クソボケはよくないぞ、クソボケは。

 それか本当に、護堂の初めてが僕になるとか? 草薙家に居候していた時は僕が静花ちゃんと分担して家事をしていて、ゴミ出しとかシーツ洗いとか洗濯とかしていたから、護堂が神殺し本能騙し作戦の時に僕で精通したのは知っているのだが……

 

 僕で精通した癖に? 流石にこれはないな。尊厳破壊なんてもんじゃない。僕がこの事を知っているのは、護堂に知られてはいけないことだ。

 

「……すまん。胸を揉んだりして……」

「別にいいよ。あれだけねっとりした口づけをしたら、そうなるのは至極当然の反応だから。むしろ男の子らしくて、安心すら覚えるね」

「そ、そうか? ……そういう美殊は、けっこう余裕そうだな。あんまり……俺じゃ、そんな気持ちにはならないか」

「……内緒」

「なんだよ、それ」

「乙女には色んな秘密があるんだよ。知らなくても良い事や、知ると幻滅する事とかね」

 

 護堂には刺激が強すぎるだろうから、あまり言えない事もある。教授をしている間、護堂の草薙ブレードが元気いっぱいだったように、僕の方も中々大変な事になっていたとか。実は下着を取り替えたいんだよね。これ言ったら、護堂の性格だとぶっ倒れるんじゃないだろうか。

 

「あ、でもこれは知っておいて貰った方がいいやつが一つあった」

「なんだそれ?」

「護堂の体質に絡むこと。護堂の体は、神の神力で造りなおされてるでしょ? それは遺伝子やDNAレベルでの改造だから、人間とは交雑になるんだ。具体的に言えば、護堂の種で受胎するのはすごく難しい」

「……そう、なのか」

「うん……数十人の女性を囲い、十数年毎晩女性を抱き続けた神殺しが、実子を一人も残せなかった例があるくらいには妊娠率が低い。適齢期の人間の男女なら20から30%はあるのに対して、護堂の場合は数万分の1%以下だと思って」

「つまり俺は、ほぼ自分の子供は見れないって訳か……はは、結婚して、子供を作ってなんて10年後ぐらいの話だと思っていたけれど、それ自体がもう無理になってたのか……」

 

 突如として知らされた事実に、少しだけ護堂は落胆していた。それはそうだろう……普通の人間らしさなんて消し飛んでいる神殺しの肉体だが、何もメリットばかりと言う訳ではない。こういった面で、多少のデメリットが存在するのだ。

 だからもう一つ、僕は伝えておく。

 

「……ところで護堂。大地母神は、多産の神であることは知ってる? 生命を産み出すことを職能とする僕たちは、多くの神や生命を産み出す。日本でなら伊弉冉がそうだし、メソポタミアのティアマトや、ギリシャのガイアもそう。命と直結する神格なせいか、多産であることが多いんだ」

 

 そしてねと付け加える。護堂の耳に口を近づけて、小さな声を届かせる。

 

「僕らは多産の神であるがゆえに、子供がとても出来やすい。権能により、体質がそっち方面に特化してるんだ……例えば数万分の1%しかない相手でも、呪力で後押しすれば100%に出来るほどに」

「な、ば、おまえ、ばか……お前それは……」

 

 おーおー、狼狽えてなさる、狼狽えてなさる。普通なら神殺しと地母神が契りあったとしても、現象に過ぎないまつろわぬ神では妊娠なんて出来ない……しかし、ここに例外が存在する。あらゆる意味で超がつくイレギュラーな僕であれば、そんな縛りなんてないも同然だ。

 

「ま、この話を聞いてどうするかは護堂に任せるよ……ただこれだけは覚えておいて。()()()()()()()()()()()()?」

「がぁ……があ……」

「アヒルの玩具みたいになっちゃった」

 

 護堂が壊れてしまった。ただ壊れたおかげで、性的興奮もだいぶ収まったらしい。ならばよかったとしておこう。

 暫くしたら護堂も正気を取り戻して、寝るよ……とテントに引っ込んでいった。そのあとを追って、僕もテント内に戻る。洗い物などを一度外に持っていきじゃぶじゃぶさせて、戻ったら護堂は寝入っていた……エリカさんに抱き着かれて。

 

「なんで?」

 

 一度起きたのだろうか? 先と違い護堂は寝ているせいか気づいていない。その姿を見て僕は──

 

「仕方ない。左が空いているようだし、そっちに行ってあげようか」

 

 右はエリカさんが占有しているので、左には僕がついて添寝してあげよう。世の中はバランスを取らないといけない。右だけに傾いたら駄目なのだ。ちゃんと両方に持たせることで、天秤は正常な動作をするように出来ている。

 

「両手に美少女だ、やったね護堂、明日の英気を養えるよ……」

 

 エリカさんが裸族なのであれば、僕も裸族になるしかない。おやすみ~護堂……

 

 翌朝。起きた護堂はうわぁああ! と絶叫した。その声に僕とエリカさんも目を覚ます。エリカさんは状況の意味不明さに困惑し、ウルスラグナさんはどうしたんじゃと起きて、朝からテント内は大盛況になった。

 

「おはよう護堂、良い夢みれた?」

 

 それだけで察してくれたのか、護堂に頭をポカンとされた。いたい……

 

「美殊……お前ってやつは……エリカをわざわざ抱き着かせたのか?」

「ううん、それは知らない」

「私が自ら護堂にしがみ付いて!? どうしてそんなことを私は……?」

「目を離したのは数分だったから、その間に一回目が覚めたんじゃない? それで寝ぼけて、護堂にレッツゴーしたんだと思う」

「そんな……私はブランデッリの娘として、淑女の名誉を守らないといけないのに。昨日出会ったばかりのカンピオーネに肌をみせ、あまつさえ同衾するなんて……これで護堂がカンピオーネで無ければ、私は首を刎ねていたわ」

「えらい物騒なことを言い出したぞこいつ」

「淑女の名誉と言うと?」

「名家の乙女たるもの、結婚を前提とした男性以外に、無暗に肌をみせてよい物ではないの。こうなったら……護堂に娶って貰わないといけないかもしれないわね。相手がカンピオーネとなれば……魔術師としては役者不足な相手じゃないから」

「確かにそれはそうかも? 肌……と言うか裸かな? 僕もこの人! と思う相手じゃないと、見せたくないのには同意するよ」

「娶るとか言うなよ、そんな簡単に決めていいものじゃ……待て。美殊、いまお前、なにか気になる事を言わなかったか?」

「え? 僕何か言った?」

「俺の聞き間違いじゃなければ、好きな人でもないと裸を見せないとか言わなかったか?」

「そんなの当たり前の一般論だよ。護堂は何を言っているんだい?」

「そうよ、護堂。あなたは何当たり前のことを口にしているのかしら」

「え……これ俺がおかしいのか!?」

「朝っぱらから騒がしいやつらじゃの。うるそうて適わんわ」

 

 やいのやいのと僕らは、朝からカオスなやり取りをする。護堂は納得いかねえ……とムスッとしていたが、朝食を摂る内に機嫌を直してくれた。

 魔術師とまつろわぬ神と神と神殺しが共に飯を食う呑気な空間。ほのぼのとした空気が流れる。きっと今、ここには平和な匂いしかない。それはとても良い匂いだ。だから僕は、携帯を取り出し式神に持たせて撮影させた。全員がフレームの中に入るように。

 

「写真か? 相変わらず好きだな、撮るのが」

「記録を残すのは良い事だからね。絵を描くのも好きだし、文字を残すのも好き。いま確かなこの瞬間を、残すことが出来るんだ。これらはとてもいい物だよ、とてもね」

「ふうん? なら全員で集合写真でも撮ってみるか?」

「いいねそれ! それじゃ食器を片付けて、全員で外で撮ろうよ。ウルスラグナさんとエリカさんもそれでいい?」

「私は構わないわ。神殺しと神が仲良く映る写真なんて貴重ですもの」

「我も構わん。美味い酒と肉に対する礼をせねばならんからな」

 

 全員で片づけをしてから、外に出てテントを片付ける。背景は丘と緑と蒼い空。携帯ではなく、ちゃんとした一眼レフを使う。

 

「みんな~、はいチーズ!」

 

 式神がシャッターを押し、全員の写った写真が一枚作られる。二度目のシャッターが下りる音、三度目、四度目と続く。

 

「これをあとは持ち帰って、現像するだけだ」

「どんなのになるか楽しみだな」

「現像したら後でください。私も気になるわ」

「その写真とやら、我にも……とはいかんだろうな」

「それは……うん。ごめんなさい、ウルスラグナさん。本当は渡したいけれど、これの現像が終わるのは、日本に帰った後になる。最短でも月と太陽の入れ替わりが、10回ぐらい終わった後になるから……」

「よい。そも我は、草薙護堂が邪悪なる羅刹か、そうでないかを見定めるために行動を共にした。ゆえにこれは泡沫の夢じゃ。ほんの少しだけの休暇……どうあれ、お主が気に病むことではない。我らはどこまで行っても、地上に降りた時点でまつろわぬ神。行く末など決まり切っている事じゃ」

 

 僕が言いたい事。それを口にするでないと、ウルスラグナさんは戒める。そうだ……決まり切っている。まつろわぬ神はどうしたところで、本来の神性は失われていく。神話以前の時代にまで回帰するか、バグを引き起こして本来の在り様から外れていく。それ以外にない。

 たった一日だけの僅かな戯れの時間。ここにいるウルスラグナさんは神話の神性が現出しているが、それはいつまでも続く事じゃない。十日も持たない……化身を取り戻さなくとも、もって三日ぐらい。

 

 そして……もう猶予は一日もない事がすぐに分かった。

 

「ウルスラグナさん……」

「分かっておる。近づいて来とるな。我の化身が」

「そうか……近づいてるんだな……なあ!」

「なんじゃ?」

「今のうちに聞いておきたい。俺を見極めるって話。あれはどうだった? 俺はウルスラグナから見て、どんな人物だった」

「そうじゃな。うむ、邪悪ではない。粗忽なところもあり、決して手放しに良いとは褒められんが、我ら善神に属する者が討たねばならぬ、他者を害そうとするそれではない……これが我の総評じゃが、どうじゃ?」

「……平和主義を付けたしといてくれ」

「平和主義とやらは、こやつに相応しい称号なのか?」

「それは……自認するだけならただ……かなぁ……」

「お主といる事の長い女神は、どうやらそう思っておらんようじゃ。ならば我が、草薙護堂をそう評価するのは筋が通らんな」

「それは残念だよ、ほんとうに」

 

 どこまで残念だと思う? そう聞いてみたかったが、僕は黙っておく。それは野暮に思えたから。

 エリカさんは護堂とウルスラグナさんのやり取りを聞いて、神妙な顔をするだけだった。欧州は神や神殺しの本場、これから何があるのかぐらいすぐに察しがつくだろう。だからこそ何も言わない。そこに踏み入る事は、流石に許されないと理解しているから。

 

 そうして数分経った後、山羊と鳳が姿を見せた。

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