前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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数で囲んで暴力こそ人間の戦い方

 暁の焔と救世の恒星。二つの超高熱に焼かれる中、それでもドニは嗤う。『白馬』の火焔に捲かれた時点で服は燃え尽き、鋼の肉体は真っ赤に赤熱化した。体中に数百のルーンが浮かび上がり、ドニの鋼鉄化を最大限にまで強化する。

 

「君の来歴であれば知ってるだろう! 鋼の神様は超々高熱に弱い! どれだけ高い耐久性を誇ろうとも、高温に晒されたら鋼は溶けるからだ……だが僕は違う! どれだけ形を変えようとも、鋼は打ち直し鍛えれば新たな剣になる! 僕を太陽の焔と雷熱で溶かし尽くせると思わないでくれ!!」

 

 とは強がっているが、彼とてかなりきついのは事実。もしも『白馬』がメルカルトの神力で強化されていなければ、ドニはかなりの余力を以て耐えきっただろう。

 ウルスラグナ第三の化身『白馬』。その力は現在のドニが体験しているように、疑似太陽を召喚して太陽の欠片を落とし地上の敵を焼き尽くす。

 だがそれだけではない。この化身の力は敵の罪の重さに応じて炎熱が増大する。ドニは4年間もの間カンピオーネをしてただけのことはあり、それなりの罪をいくつも重ねている。

 

 そうなれば、当然『白馬』の裁きは苛烈になる。そこに小さいとは言え、救世の神刀が放つ『白き恒星』が殺し尽くさんと迫る。

 なるほど……実にピンチだ。これほどのピンチは久しぶりだと、ドニの闘争心がグツグツと煮えたぎる。

 

 敵が強い? 別にいいじゃないか

 敵が強大? だからなんなんだろうね

 敵が数的有利? 別に喧嘩の強さは数じゃない

 

 そも神殺しが神殺しになる時、自分の数百万倍は強い神を相手にして勝利をもぎ取るのだ。であるならば、この程度がどうしたと言うのだろうか。

 ドニは現在の恵那が救世の英雄擬きなんて知識もない。護堂の方が多彩な権能を有しているとも考えていない。

 ただ剣で裂き、首を刎ねて殺せるならそれでよし。血が出るなら殺せるの精神だ。それ以外には何一ついらない。

 

 ようし、なら行こうじゃないかと、ドニは闘争心をそのままに無我の境地に精神を傾けていく。このままだと焼き殺されるのであれば、防御はここまでだ。

 ジークフリートから奪い取った鋼の力を弱める。途端に全身に大火傷を負うようなひりつきが広がるが、痛いのなら生きている証拠だ。

 そちらに使っていた呪力を、ただ右腕に全集中させる。自分の呪力センスでは細かい操作なんて効かないし、そう言った細々した戦い方は好きじゃない。

 だからドニはもう制御しない。

 

「ここに誓おう! 僕は僕に斬れぬ物の存在を許さない! だから──この大地全域すらも、僕が斬らなければいけない!!」

 

 それは行われた。先ほどの大地そのものを魔剣に変える権能行使。それと同じことが起きたが、生成された魔剣は片っ端からドロドロに溶かされていく。

 だがそれでいい。これでいいとドニは更に魔剣を生成し続ける。

 

「なんだ……あいつ一体何をして──やばい!!」

 

 護堂の声にえ? と恵那が反応するが、このままだとまずい事になると護堂の直感が最大級の警戒を発した。

 

「恵那! 攻撃は中止だ!! 俺の首を狙って全力で剣を振れ!!」

「王様、なに──」

「いいから早く!!」

 

 護堂の常にない焦りを察した恵那は、もうどうにでもなれと護堂の首を落とさんと振り下ろす。

 それに対して、護堂は──

 

「羽もてる我を畏れよ!!」

 

 『鳳』の化身に切り替える。護堂が持つ権能の中では大火力の『白馬』が消えてしまうが、まだペレから簒奪した『火』がある。

 神速を発動した護堂は恵那の手を取り、一気に距離を取る。ギリギリで二人が逃げ出すと同時に──それは来た。

 先ほどの炎熱攻撃で溶かされ、固まった魔剣の群れ。それが再度の大地魔剣によりバラバラに砕かれていく。

 無数の破片になった魔剣は空中に散布。数千、数万の魔剣軍となり──

 

「ほんとうにこんな戦い方は好きじゃないんだけど……なぁ!!」

 

 ドニの呪力を受けて、それら全ての魔剣が一気に巨大化。それだけに留まらず、四方八方に撃ち出される。

 三人が戦っていたのは、最初にいた竜宮浜の漁港から700mほど南下したところにある丸山浄化センター付近だ。その周囲1キロほどが、剣軍により斬り倒され破壊されていく。

 海水浴場を使うお客向けの民宿も、畑も、浄化センターも、漁港も、一切合切の全てが制御されていない魔剣の群れによって薙ぎ払われる。

 

 それらの出鱈目な破壊を、上空から護堂は見下ろす。もしもあの場に留まっていたら、剣軍により恵那も自分も容赦なく巻き込まれていた筈だ。

 

「無茶苦茶しやがるぞあいつ……やっぱり『戦士』で切り裂くなら、あの剣を真っ先に封じるべきか」

「とんでもない破壊力だね。単純な破壊範囲だけなら師匠の方が上だろうけれど、攻撃性能に限るならあの魔剣の方が厄介かも」

「だな──ん?」

 

 そうこうしている内に、舞鶴の北で光の柱が二本立ち上がった。恵那と護堂がそちらに目を向ければ、島が二つ地図上から消さないといけないことになっている。

 続いて若狭湾全体に砲撃音と発砲音、爆弾が爆発する音が響き渡る。どれだけの爆薬と弾薬が消費されているのか、考えたくもない豪快な破壊音だ。

 それらすら遥かに凌ぐ、恒星の華が夜空に咲き誇る。思わず護堂と恵那が耳を塞ぎたくなるような轟音と目を焼く閃光。

 二人から数十キロは離れた海上数千メートルで炸裂しているのに、それでも熱波と衝撃波を感じるほどの連鎖起爆。

 30秒近く神すら殺しうる恒星起爆は続き……全てが終わった時、アテナが呼んだのであろう闇は全て消滅していた。

 

 二人ともそれをポカンとした顔で見る。

 

「……師匠、あれを本気で使ったんだ……恒星の群れ(ニュークリアクラスター)とか呼んでた兵器」

「……今の隠ぺいとか出来るのか? 俺の『白馬』とかも大概だとは思うが、あいつの宇宙兵器は絶対無理だろ」

「王様。訂正するね……やっぱりサルバトーレの王様より、師匠の方が段違いに危ないと思う」

「奇遇だな。俺もそう思ってた──よ?」

「どうしたの王様? 急に変に言い淀んで」

「権能を簒奪した時みたいに、急に肩が重くなったんだ。なんでだろうな?」

 

 なぜそんなことに? と護堂は訝しむが、原因は分からないので放っておくことに。それよりも今は、先の大爆発についてだ。

 神々の権能は怪奇で凶悪。だとすれば、宇宙兵器など作る美殊はどれだけ頭がおかしいのだろうと二人は思いを馳せる。

 なおこの評価を聞いたら、美殊はぷんすかする。今回用意した弾頭は、ニュークリアクラスターの中でも威力抑えめなやつを選定したんだよ……と。

 

 本当のニュークリアクラスターは、核融合燃料の水素ではなく反物質を使用する対消滅弾頭──アナイアレイション・クラスターだ。その威力は小型爆弾一個当たり、ニュークリアクラスターの230倍相当。それを米国とロシアが保有する核弾頭数ぐらいは、個神で所有している。

 今回はそんなものを日本近辺で使ったらまずいと自制して、威力が控えめなニュークリアクラスターを用意したんだよ! と美殊なら誇らしげに語るだろう。

 

 そんな恐ろしい裏事情は知らないので、美殊なぁ……と護堂はちょっと黄昏る。そんな二人のところに、転移術で件の人物が近づいてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ護堂! アテナさんとの死闘をなんとか制してきたよ!!」

「お、おう……なんかお前、体中がバチバチしてないか?」

「ああ、これ? ちょっと呪力強化をした影響でね。ようやく多少の制御は利くようになったんだけど、まだ偶に体から放電しちゃうんだよね……」

 

 自動迎撃の稲妻はようやく止められたけれど、高まった呪力は未だに健在。静電気感覚で、人間を数百人焼き殺せる電気が流れているのはご愛嬌だ。

 

「アテナは確実に倒せたのか?」

「うん、それは大丈夫。ちょっと予想以上の強敵だったけど、なんとかね……サルバトーレさんは未だに健在か」

 

 護堂の視線を追えば、真っ裸になったサルバトーレがいた。なぜ裸族に? と一瞬疑問に思ったが、さっき東の空に馬がいたから、太陽光線で焼いた時に服も燃え尽きたようだ。

 次に恵那さんに視線を向けたら、彼女は草薙劔──救世の神刀のレプリカをしっかりと握っていた。体に宿る神力を見れば、疑似スサノオは上手くいったようだ。

 

「恵那さんも無事みたいだね」

「王様が助けてくれたから。あ、そうだ。今の恵那、なんだかおじいちゃまそのものになったみたいな力があるんだけど、これは師匠が何かしたの?」

「そうだよ。護堂の加護に僕の加護を混ぜて、一時的に恵那さんをスサノオそのものと呼べる域にまで強化してある。いまの恵那さんであれば、まつろわぬ神が相手でも互角に切り結べるよ……草薙劔まで考慮したら、大地母神が相手なら余裕で勝てるんじゃないかな」

「それ何気なく言ってるけれど、凄い事なんじゃないか? ……この状態で恵那が神様を倒したら、神殺しになるのか?」

「それは無理。護堂の加護で強化してあることが前提だから、恵那さんは護堂の『剣』と呼べる状態。その場合は、護堂に権能が増えるよ」

 

 尤もパンドラさんがこんなチートモードを使って倒したところで、満足するとは思えない。だから今回も、僕が円環を回す役をしたのだが。

 ……うーむ。やはり僕も『簒奪の円環』みたいな神具を開発するべきか? それか別世界の神殺しがそうであるように、神殺しが神を倒すだけで権能が増えるようにするべきか?

 今回は盟約スーパーモードなので、反則技を使って護堂のためにアテナさんの神力を召し抱えられたけれど、いつでもそれができるわけじゃない。神殺しが2名以上いて、まつろわぬ神がいるケースにしか使えない裏技だ。

 この世界は反運命を押さえる気質が異常に強いから、『簒奪の円環』みたいな神具がないと神殺しが出てこないんだよね。

 そのことは後で考えよう。今はサルバトーレをどうするのかだ。

 

「サルバトーレさんは……大分呪力が減ってるね」

「あいつ、かなり無茶苦茶な権能の使い方をしてたからな。それは減るだろ……そもそもあいつがどんな状態なのか、『視』えるのか?」

「今の僕なら、どんな情報であれ隠し通せないよ」

 

 『眼』でみれば、どれぐらいサルバトーレに呪力が残っているのかぐらい見て取れる。おそらく神刀を防いだり、白馬から身を守るのに使いまくったっぽい。半分ぐらいしかなかった。

 護堂の方は、9割以上は呪力が余っている。どうやら神刀を通して呪力供給し続けた、恵那さんが中心となって戦ったようだ。

 

「護堂はまだ余力があるね……でも不安だな……と言う訳で、ちょっと唇借りるね」

 

 護堂に経口摂取で、僕の無駄に有り余る呪力を渡しておく。すると、護堂がちょっとしかめっ面になった。何事?

 

「お前、なんか変に体が熱くないか? 唇が火傷するかと思ったんだが」

「あ、ごめん。僕の体温、呪力のせいで上がってるんだった……情熱の熱いキスと言う事で、ここはひと──僕のほっへたふぁのひる」

 

 いつものように、護堂の手でギュッと頬を抓られる。その様子を見て、恵那さんがあははと笑い出した。

 

「王様は闘争本能剥き出し、師匠はなんだかすごい状態になってるみたいなのに、二人とも揃ったらいつもと全く変わらないんだね」

「へっひょく、ぼくらはしりあすがつづひゃにゃい性格だからね」

「それはお前だけだ、お前だけ……これで美殊もこっちに合流したわけだが、これでドニの奴引いてくれると思うか?」

「相手の数が増えて、強いから……これだけの理由で、同じ神殺しである護堂は撤退を選ぶ?」

「俺なら退くな。相手の土俵でやりあうなんて、ごめん被る」

「でも退けない理由があったら? 例えばその場面で、静花さんが後ろにいるとか」

「それならあいつも連れて撤退だな……そうじゃなくて、そもそも静花のやつが動けない状態だと仮定したらか。それなら退けないから、相手をどうにかするしかないわけか……うん。なら相手をぶっ飛ばすだけだ」

「サルバトーレの王様にとって、それが今なんだね……何かし始めたよ!」

 

 恵那さんが言うように、サルバトーレの呪力が活性化している。ちょっと距離が遠いけれど、破邪顕正の力で妨害しにかかる。それでも向こうは大量の呪力を注いで、何かしらの攻撃を行おうとしているようだ。

 何をしようとしているのかを視て──僕は西の空を視線をやる。遥か宙の彼方から、サルバトーレの魔剣の反応を感じ取れた。

 それが超高速でこちらに向かって飛来している。

 

「小惑星だ! サルバトーレさんのやつ、小惑星を魔剣化したんだ!?」

「マジかよ! そもそもいつ、そんなもんを剣にして──」

「ともかく迎撃だ!!」

 

 小惑星の激突コースを予測計算したら、まっすぐ僕らに向かって突っ込んでくる予想だ。まだ距離はあるので避けられはするが、それをすれば最後魔剣は大地に着弾する。

 大きさから威力を計算するなら、舞鶴どころか京丹後市や小浜市辺りまでが消し飛びかねない。魔剣の機能を帯びているなら、大阪の能勢町ぐらいまでなら効果範囲内に成りかねない一撃。

 

「救世の神戟よ! 我が父の神能を体現し、三界を地上に貶めた破壊の力を示せ!!」

 

 トリシューラを取り出し力を籠めて、膨大な呪力を上乗せする。それを空に向かって投擲!

 地理的には鳥取の上空辺り。そこで魔石剣と神戟が激突し、地上を照らす巨大な光球となる。が、それで終わりではない。

 サルバトーレは二発目、三発目を用意しようとしていた。

 

「放置していたら、まだまだ来るよ!!」

「くそ、あの野郎!! 俺たちを倒すために、形振り構わなくなってやがる!!」

「僕は迎撃の準備をするから、あの馬鹿殴り倒して止めてきて!!」

「うん!! 行こう王様!!!」

 

 僕は『戦艦』に命じて、隕石粉砕用の弾頭を用意させる。それが海上から打ち上げられて、西の空に消えていく。とりあえずはこれで大丈夫だろうが、まだまだ油断はできない。

 下を見れば護堂が駱駝の蹴りをサルバトーレに叩き込み、恵那さんがその隙間を狙って神刀で追撃をする。それでも向こうさんは死に物狂いで凌ごうとしているので、僕は援護射撃に入る。

 

 取り出したのは携帯用の電磁レールガン。僕の雷の呪力を帯びたライフルから、神すら穿つ日緋色金の弾丸が解き放たれる。

 それも一発や二発ではなく、何十発もだ。サルバトーレはそれを迎撃しようとするが、護堂らを相手にしながらできるわけもない。

 駄目押しと言わんばかりに、護堂は『戦士』の剣も抜いていた。黄金の剣は知識さえあれば、剣を使い切らない限りいつでも対象を切り替えて神力そのものを叩き切れる。

 

 急激にヌアダの神力が削り取られていく。続いてジークフリートの権能も機能停止した。それでもまだ剣は残っているようで、次に厄介そうだったディオニュソスの権能も切断。

 そこで剣は打ち止めになったようだが、サルバトーレの戦力もガタ落ちしている。これで終わり……なら良かったのだが、向こうは魔剣の力がまだ残っている枝を拾い護堂に斬りかかった。

 一度振れば消えるであろう灯のような神力だが、それでも魔剣は脅威だ。だから僕は──

 

「凶を清め、災を退け、厄を祓う! 是すなわち幸いなるものの霊験なり!」

 

 禍祓いで逆転の目をとにかく全て潰す。ただの枝に戻った木ごと護堂の蹴りがサルバトーレを蹴り抜き、吹き飛んだパッキンに恵那さんが神刀から雷撃を落とした。

 ……うわぁ……内臓が破裂して、全身に重度の大火傷を負っているのにまだもぞもぞ動いてる。ん、つまり手足がまだ動くと言う事か?

 

 引き金が引けるうちは油断するな。手足をレールガンで吹き飛ばしておく。護堂が殺しを好むとは思わないので、四肢の破壊だけに留めた。

 これでも戦闘続行するなら頭を潰すしかないのだが……流石にサルバトーレも諦めたのか、沈黙した。




火の言霊「出番は?」
美殊「無いよ」
山羊用の指輪「出番は?」
美殊「無いよ」
護堂「この手榴弾いらなかったな」
恵那「師匠て臆病なぐらいに過剰戦力を用意するよね」
美殊「だって怖いし……」
パンドラ「まさかこんな反則技でまた円環を強奪して! 護堂を贔屓しすぎよ!」
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