前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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魔王が歩けば神に当たる

 イタリア、サルデーニャ島。四国の1.3倍の面積がある島で、地中海ではシチリア島に次ぐ巨大な島だ。

 人口は160万人ほどと、広さの割りにはあまり人が住んでいない。この島より狭い四国が人口350万人と言えばどれぐらい少ないか伝わるだろうか。

 

 観光客視点からすれば、人口密度が低いのは良いことだ。もう少し暖かい季節になれば観光客も増えるらしいが、今はまだ3月なこともあり空港を見渡したところそこまで人はいない。

 

「ようやく着いたか。飛行機での旅は時間がかかるな、やっぱり」

「本当は空間転移で来たかったけれど、地脈の関係上少し難しいからね。護堂の呪的耐性が低ければ、その辺の事情を無視してかっ飛ばせるんだけど……ま、これも旅の醍醐味だよ」

 

 僕と護堂は神具を片手に、さっそくこのサルデーニャ島の州都カリアリへと旅立ってきた。なにせ護堂には、高校入学までのタイムリミットがある。もたもたしていると、春休みが終わって入学式に間に合わない。

 あと壁の概念を教えたら、そこまで空気に徹さなくとも……と呆れられた。普通に観光しようぜとも。駄目かい、壁?

 

「エコノミー以外には初めて乗ったけど……ファーストクラスてのはどうにも慣れないな」

「そう?」

「ああ。爺ちゃんに連れられてよく海外に行ってたけれど、その時にはずっとエコノミーだったからな。それで慣れてるもんだから、ああも過剰サービスだと、どうにも落ち着かない」

「そういえば、護堂と一緒に飛行機に乗るのは初めてだったね。ハワイの時には──」

「……あれは思い出したくない」

「だね……」

 

 護堂が苦虫を噛みつぶした顔になる。どうしてそんな表情になるのかについては非常に気持ちが分かるので、これ以上この話はしないようにする。

 

「ファーストは落ち着かないか……かといって、僕がエコノミーは嫌だし、今度どこかに行くときにはビジネスぐらいまでにしておこっか」

「そうしてくれると助かる」

「帰りのチケットもファーストだから、それは勘弁してね」

 

 ひらひらーと手を振っておく。いやぁ、しかしファーストクラスのサービスはすごいね。前世ではエコノミーしか知らなかったので、僕個人としては少し感激だ。

 

 ……ちょっとお高くついたけれど。お金に関しては、この2年間の間委員会に呪式グッズを卸したり、魔本鑑定などの協力御礼金としてそれなりに頂いているのでそこまで困っていない。

 それで奮発し、大人として護堂の分も払ったのだが……思いの外かなりの金額が僕の口座から溶けた。

 

(え? こんなに?)

 

 思わず真顔になる価格だ。全然払える金額ではある。それでも僕の奥底に眠る、一般庶民がたっけぇと叫んだ。なので護堂のビジネスどうこうには賛成だ。空の旅をする度に、こんなの払っていられない。

 

 そんな一幕がありつつも、僕と護堂は空港から移動することに。

 

「おお! これはまた格別な景色だな」

 

 護堂が助手席から外を見て、おーすげーとはしゃいでいる。カリアス・エルマス空港で降りた僕たちは、現地でレンタカーを借りたのだ。ちなみに運転手は僕。国際運転免許証は、こういう時に便利だね。

 

 空港を出たらエルマス通りに出て、今日泊まるホテルの方に向かう。外に見える街並みは日本の建築様式とはずいぶんと違い、ああ異国に来たんだなと言う気分になる。

 

 そのままホテルに入って車を預けた後、僕と護堂は歩きで街の散策に行くことに。

 

「おーい。まだかー?」

 

 ホテルの部屋は護堂が嫌がるので、別々に取ってある。彼曰く、友達とは言え、女性と男性が同じ部屋に泊まるのはまずいだろ……だ。

 僕個人としてはお金浮くし良くない? とは思うが、護堂の方が凄く気にするから仕方ない。

 

 そんな別部屋に泊まっている護堂が、扉の外から呼びかける声がしてきた。流石男の子、準備が早い。

 『神速』を使って、着替える速度を高める。

 

 神速とは権能の一つだ。鋼の軍神や英雄神が持つことの多い、加速の力。ただし早めるのは物理的な速度ではなく、時間の流れだ。倍率としては数倍から数百万倍以上まで早めることができる。

 神速発動中であれば、音の数倍で飛ぶライフル弾ですら止まって見えるほど。最大加速までさせたら、秒速200キロ以上で大気を走る先行放電に走って追いつくのも不可能じゃない。

 あまり加速させ過ぎると速度の制御が効かず細かい立ち回りが不可能になるが、10倍程度に留めるなら服を着替えたりなど日常生活にも応用が利く。

 

「と、最後にこの眼鏡をかけて」

 

 部屋で荷解きをしている間、邪魔なので外していた伊達眼鏡を装着する。

 この眼鏡には一種の認識阻害効果がある。これを付けている間、僕を直接人が視認したとしても、精神に影響などが及ばないようになる。

 

 なぜこんなものを付けるかと言えば、神は存在するだけで周囲の人間にそれ相応の影響を与えるからだ。

 普段は神気だの権能の影響と言った副次効果を最低まで落としているけれど、それでも長時間視認して話をしたりすれば、気づかないうちに人の心に影響が出てしまう。

 しかしこれをつけておけば、僕はただの人間に過ぎない! みたいな認識になる。もっとも阻害効果そのものは弱く、一定以上の呪力を有していたら効かない。当然、護堂のように権能すら弾く耐性持ち相手には効果0だ。

 

 忘れ物がないかを10倍速でチェックした後、爆速で部屋を出る。

 

「ごめんごめん。お待たせ」

「い、いや、別に待っては……今の速度。もしかして、神速を使ってたのか?」

「そだよー。それがどうかした?」

「こんなおっかない力を、相変わらず上手に使うもんだなと思って」

「おっかない言うなよ。一応、権能(これ)神々(僕ら)が持つ特性みたいなもんなんだから……怖い力なのは否定しないけど」

 

 権能が恐ろしい力なのは確かだ。この神速にしたって、時間操作能力なので物理的破壊能力はないが、他の権能と併用したら一瞬で戦略兵器になる。

 体に他者を呪い殺す呪詛を纏い、神速で走り回ればさあ大変。実時間にして10秒もあれば、この州都カリアリに住む人間は全滅する。

 

 そして護堂は、口先だけだが平和主義を掲げている。彼の思想にしてみれば、権能とは個人が所有して良いような能力では決してない。なにせ個人で核弾頭を有しているようなものなのだから。

 

「でも、ま、結局は使い方だよ。地母の力を上手く使えば、農作物を美味しく育て上げられる。鋼の力なら、刃物を研いだり。前にも言ったと思うけれど、ちょっと規模の大きい十徳ナイフだと思えばいいんだよ、こんなの」

「そうか? 十徳なんて呼ぶには、俺には大きすぎるように思うぞ。第一、どれもこれも俺のは使い勝手が悪いし。日常生活で使えるのなんて、弓ぐらいしかないしな」

「それは護堂の気質に問題があるような……神殺しの権能は、簒奪した人物の気質が反映される。護堂の場合はなんというか……うん」

 

 確かに護堂の持つ五つの権能はなんか使い勝手が良くない。良くないと言うか、はっきりと言えば痒い所に手が全く届かない仕様だ。

 

 一番最初に倒した狼は、フル稼働させると神殺しの呪力量でも燃費が悪く、サイズなどの問題で小回りが利かないから日常で使うにはリスクが多い。

 

 二つ目の弓は入手経緯が特殊な分、護堂本人の気質はあまり反映されていない。そのせいか多少の欠点はあるものの、これは非常に使いやすい。むしろこれ以外が問題を抱え過ぎだ。

 

 あとの三つ。一つは護堂の魔導力がポンコツ過ぎて、単独で使うには制御などの問題から危険すぎる火の言霊。一つはそれ単体では何の意味も持たず、今はまだ形無き石として護堂の中で眠っている。そして最後の一つ──僕と護堂の中に一振りずつある、名前が違うだけの同じ鋼。

 

「戦闘では使い物になるんだけど、これは狼と同じで日常生活に使うには向かないからね……マグロを解体したり、牛の首を落としたりぐらいならなんとか?」

「首を傾げながら言われても、俺は猟師や漁師じゃないんだぞ? 現代人が使う刃物なんて、包丁ぐらいで十分だ」

「それは現代人に対する誤解だよ。テキサスにでも行けば、マチェーテがご家庭に何本か転がっていてもおかしくないんだから」

「……現代日本人には、包丁ぐらいで十分だ」

「譲らないなぁ……おおい、持ち主に包丁で良いから、お前なんていらないなんて言われてるぞ~」

 

 なんとはなしに、護堂の手に話しかけてみた。そこには一振りの鋼が眠っているからだ。

 しかし鋼は黙して語らず。その時が来なければ、別に話すこともないと言わんばかりだ。

 護堂の手を取って、にぎにぎと握ってみる。

 

「ここに眠る鋼は、戦い以外では無口で喋ろうともしない、最源流の鋼……戦いこそを本質とする鋼である以上は寡黙でもいいけれど、もうちょっと何か喋りなよ。ほら、同じ鋼仲間が話しかけてるんだからさ」

 

 護堂の手をペチペチ叩いてみるが、それで鋼が起きるわけでもない。我関せずと沈黙していた。

 ええい、この最源流が。己は路線変更したゴルゴか何かか。

 

「駄目だね。うんともすんとも言わないや」

「普段から全然喋らないやつだからな……とりあえず行こうぜ。流石に腹が減ったよ」

 

 護堂に手を握られたまま、グイっと引かれる。神殺しと言えども、外部からの栄養補給が無いと基本は餓死する。中華の魔王は仙人としての修行を積み、霞を喰らって生きられるなんて噂もあるが、それは特殊な鍛錬を積んだからだ。

 あいにく筋トレや走り込みはしていても、行者のような訓練をしているわけではない護堂には無理。生きているなら腹が減るのが道理だ。

 

 なお僕はと言えば、最悪食べなくてもよい。神の肉体は不滅属性なので、外部からの栄養補給を必要としない。

 仮に飢餓の権能で無理やり栄養が必要にされても、体内に大地母神の力で直接栄養を生成とかできる。

 もっとも、食べない選択肢はあまり選びたくない。心が栄養素を欲するのに権能でどうにかなんて、点滴だけで栄養源を賄うようなものなので、味気ないなんてものじゃない。甘味と旨味が生涯を豊かにするのだ。

 

 二人してホテルを出て街中を散策してレストランを探すが──

 

「ないな」

「イタリアにも午睡の習慣があるんだね……スペインやギリシャは知っていたけれど……ああ、でも地中海で繋がっているんだから、あって当然なのか」

 

 昼遅い時間なので、大抵のお店が休憩中になっていた。

 

「仕方ない……かしこみかしこみ──分かった。こっちにまだ空いてるお店があるよ!」

「でかした!」

 

 もう少し未来になればインスタなどでお店の状況を調べられるが、2008年現在ではそんな便利なものはない。日本で言えば、今年にiphone3Gが発売される予定──これは霊視で調べた──なので、スマホの普及を待たないといけない。

 

 そう言った便利な検索方法が使えないのであれば、手持ちの手札でどうにかするだけだ。

 

 雑に聖句を唱えて、導きと先導の予言を降ろす。その方向に行けば、確かにまだ空いているお店があった。

 入店して、二人で頼んだのはからすみのピッツァとアサリのパスタ。

 

「お、美味い。このピザ中々いけるな」

「ピザじゃなくてピッツァだよ」

「食べたら一緒だろ」

「……護堂はあれだね。ナポリでナポリタンを食べたいとか言い出しそう」

「それは……まずいのか?」

「現地の料理人が聞いたら、グ―パンチが出る類の暴言だよ」

「そんなにか」

「そんなにだよ。江戸前寿司でカリフォルニアロールを頼むぐらいの暴挙」

「……源次郎さんが聞いたら包丁が飛びそうだな、確かに」

 

 源次郎は草薙一郎の知人で、神田で寿司職人をしている人だ。かなりの頑固おやじで、江戸前寿司以外は握らない拘りを持つ。

 それを思い出したのか、護堂はうんうんと頷いていた。

 

 そうして腹も膨れたら、のんびりと町を散策する。三月と言えば日本でならまだまだ肌寒いが、地中海の気候のおかげでかなり過ごしやすい。

 護堂は半そでにカーゴパンツとラフなスタイルで、僕の方もハーフパンツにノースリーブと凄いラフ。それでも肌寒さは感じないのだから、のんびりとした空気が漂っているとしか言えないだろう。

 

「うーん……いいな、こういうの。凄く平和で」

「平和主義者()好みの平穏かい?」

「ああ……ん? なんか今、平和主義者の発音がおかしくなかったか?」

「気のせいだよ」

 

 気のせい気のせい。護堂は世界の平和を願う平和主義者だよ、うん。他認はどうあれ、自認が平和主義者なら平和大好きで良いんじゃないかな。思うだけならいつだって無料だ。

 

「でも確かにいいね、こういうのは。去年の夏とか、去年の暮れとか、あの辺の大変さを思えばこそ、のんびりだらりとしたバカンスの楽しさは輝くからね」

「だろ? でもほんとに良かった。あの魔導書がなんか大変なことになって、神様の降臨とかも無かったし。あとはちょいちょい観光を楽しんでから、ルクレチアさんにあれを渡してミッション完了だ」

「そだねー」

 

 ……行く前にサルデーニャ島やイタリアの動向は探ってある。と言っても、正史編纂委員会がこっちの方面に伝手を持っていないから、あまり大した情報は探れていない。

 予言にしても絶対に欲しい情報が手に入るかと言えば違う。神や神殺しが関わると、運命や未来予知なんて簡単に歪んでしまうからだ。時間に関わる関係者が、顔を真っ赤にして怒るぐらいにはあっさりと捻じ曲がる。

 

 調べられたのは、精々イタリアの魔王が南米に出張中で不在なことぐらい。だからこそ、僕と護堂はここに来たのもある。流石に神殺しが在住している状況で、下手に顔を出したら何が起こるか分からないからね。

 

 そんなことを思いながら、僕は護堂の顔を観察する。その視線になんだよと護堂が食いついてきた。

 

「いや、時差ボケとかもそろそろ解消されたかなと思って」

「気づいてたのか?」

「2年も一緒にいるんだから流石に気づくさ……で、どう?」

「どうって言われても……元々が、そんなに酷いものじゃなかったよ。この体になってから病気に罹ったことも無いし、高山病や減圧症にもそんなに困ることが無くなったからな……そういう美殊はどうなんだ?」

「ノープロブレム。神様ボディに不備はないぜ」

「羨ましいことで」

 

 僕にしろ護堂にしろ、体が特殊体質なこともあり頑丈さや生命力は普通の生物とは一線を画している。とは言っても、護堂は人間時代の名残なのか、多少の脆弱さは健在だ。酸素が無くなったらまずいとか、そんな感じのやつ。

 

 その一環として時差ボケなども残っているのだが、飯を食べて歩いているうちにマシになったようだ。良かったねぇと近所のお婆ちゃんみたいな感想を内心で呟く。

 

 そうして暫く歩いていたら、護堂の気配が変わった。なにごと?

 

「まずい」

「うん? 何が?」

「さっきは時差ボケなんてマシだって言ったよな?」

「言ったね」

「それでも多少は、体に怠さが残ってたんだ」

「うんうん」

「……それが一瞬で消えた」

「え~」

 

 その言葉を聞いて、僕は思わず護堂の方を見やる。護堂の目が、そういうことだよと訴えてくる。え~……。

 

 人間の体なんて、そんな簡単に怠さが消えたりするもんじゃない……が、それは常人の話。神殺しになった護堂は普通とは程遠い。

 

 なにせ神殺しの肉体は普通の人間とは違う。神を贄とする転生の儀式により、神の持つ肉体に性能が近づくのだ。簡単に言えば超人になる。

 

 骨は超合金Z製か何かで? と思うぐらいの強度になり、筋肉はフィクションに出てくる人工筋肉のような強靭さと柔軟さを併せ持つようになる。

 また筋肉が特別性になることで、筋力のリミッターが外れても自壊することがなくなる。つまり火事場の馬鹿力が簡単に出せるようになる。

 

 それと神経伝達系が強化される。手っ取り早く言えば、運動神経が向上するのだ。

 それらが組み合わされた結果、護堂は戦闘行為を始めると一気に普段とは別人のような動きをし始める。護堂曰く、一番調子が良い時のフルパフォーマンスを常に発揮しているのと同じだとか。スポーツ用語で言うところの、ゾーンに入った状態だ。

 

 これは神殺しのあり様が、そもそも神々と戦う戦闘兵器みたいなものだから。

 戦闘兵器が時差ボケしました、今日は風邪で動きが鈍いです、寝不足でパフォーマンスが低下しています……ではお話にならない。なのでいざ闘いとなれば、脳内麻薬などが常人の数十倍から100倍以上放出されて、自動で肉体が最高潮の状態に変化してしまう。

 

 このほかにも、魔術師数百人分の呪力量を保有するようになる。その膨大な呪力量は権能を使用したり、外からの呪的干渉に対する強力な防壁として機能する。

 

 仮に呪力を使い切ったとしても、肉体そのものの抵抗性も高い。

 これは内側に存在する自らの大呪力で壊れぬよう、器自体が霊的に硬いからだ。それらが全部組み合わせることで、魔術は元より、権能ですら簡単に殺しきれない耐久性を神殺しは持つようになる。

 ……一応例外もあると言えばあって、僕もその例外を使う羽目になったことがある。いや、これは護堂が悪いんだよ……うん……

 

 とまぁ、神殺しは特殊な体を持つ。その特殊なスペックが一気に引き出される案件は一つだけ──神殺しにとって最大の敵である、神が近くにいる時だ。

 これはもう生理的な物で、護堂の意志に関わらず自動で体が戦闘モードに切り替わる。これは僕も例外ではなく、護堂が神殺しになった直後は苦労したものだ。

 それをどうこうするため護堂の本能に、僕は敵じゃないよと教え込んだりした。添寝したり、背中を流したりとか色んな手段を使って。

 

 なので僕が傍にいて戦闘モードになることはない。しかし今、護堂の意志に関わらずそうなったという事は……いるのだ。近くに、僕以外の神が。

 

「……ちょっと待ってね。探してみる……大地よ、サルデーニャに住まう土の精よ、水の精よ。地母の末裔が請い願う。僕の問いに答えておくれ」

 

 この地に住まう精霊たちに問いかける。僕に匹敵する、霊格の高い存在が近くにいるかい? と。一つ目はすぐ傍、隣にいるよと教えてくれる。ごめん、護堂(そっち)じゃないんだ。それは知り合いだから無視して。

 二つ目は少し離れた場所。僕や護堂に比べると弱いけれど、それでも高次元の霊格が鎮座していると答えてくれた。

 

「……あっちだよ」

「あっちか」

 

 僕が指さす方を見て、護堂は嫌そうに呟いた。僕も嫌だなぁと思ったけれど、見つけた以上は仕方がない。

 護堂と顔を見合わせてから、その方面に向かってみる。するといた。一人の少年が、雑踏を歩く人間を観察していたのだ。

 少年は気がついたのか、こちらに顔を向けて面白そうに呟いた。

 

「ほう。これはまた奇妙な組み合わせじゃな。我らから武器を奪い去りし戦士と、我と同じ存在が共にいるとはな……しかしなんじゃ、奇妙ではあるのう。大地の瑞々しい気配の中に、雨と鉄が混ざっておるわ」

「……どうしよう、護堂。あれ軍神か戦神だよ。ウォーモンガーだよ」

「つまりバトルジャンキーか……」

 

 向こうが僕の中に嵐と大地と鋼を見たように、僕も少年の中に一つの形を見た。

 それは黄金の剣。夷敵を滅ぼしまつろわせる殺すためだけの武器。

 僕が幻視したのは、間違いなく少年の核となるあり方だ。剣が見えるほどの霊格となれば、それは鋼の英雄神や軍神、戦神しかありえない。

 

 いろんな神様がいるけれど、戦いこそを本質とする鋼は神殺しとの争いを躊躇しないし、むしろ好む。このままだとカリアリが火の海になるのかと、僕と護堂は顔を青褪めさせた。




賢人議会が把握している草薙護堂の権能(実際は別物)

1.陰陽の従者(正体不明の女神)
2.魔狼顕現(たぶんフェンリル?)
3.光輝体(英雄神カルナから鎧を簒奪?)
4.討伐の実績からして持ってる筈

実際の権能

1.狼
2.弓
3.鋼
4.火
5.石
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