前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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僕が来た

 5月10日土曜日の晩。GW最後の日から始まった、護堂の性訓練。それをする特訓日は次の日も御休みで、学校のない土曜日に行おうと言う話になった。

 場所は七尾神社の御社、つまりは僕の家だ。草薙宅でやると迷惑だからね。

 土曜日の夜という事は、このままいけば護堂はお泊りすることになる。それは大丈夫なのか尋ねてみれば──

 

「爺ちゃんと……一応静花のやつには伝えてあるよ」

「お? 一郎お爺ちゃんは当然として、静花さんにもちゃんと伝えたんだ」

「流石に美殊が絡むことだからな。お爺ちゃんみたいにならないでよね! とか怒られると思ったんだが──あ、ようやく正式にお付き合い始めたんだ。お兄ちゃんにしては、随分と長かったね──だとよ」

「僕が付き合う分には、静花さんとしては問題ない……のかな?」

 

 静花さんは兄である護堂の女性関係に随分とうるさいタイプだ。ことあるごとに、お爺ちゃんみたいになってご近所さんに噂されないでねとガミガミ説教しているのを何度か目撃している。

 

「あいつにしてみれば、お前と俺はどうして付き合ってないのか意味が分からなかったそうだ。なんで相思相愛なのに、二人して友達親友と叫んでるんだろ? ……と首を傾げられたな」

「僕らの関係、傍から見たらそこまで歪だったの!?」

「みたいだな……大半はどこかの女神が、無駄に素直じゃなかったせいだと思うがな!?」

「ははは、照れるなぁ! ツンデレ地母神とは僕のことだぜ!!」

 

 なははははと笑ってやったら、護堂に真正面からハグされた。おやぁ? おかしいな。いつもならここで、アイアンクローでも貰うはずなのだが。

 

「あれれ? 護堂、攻めのパターンを変えた?」

「変えたな……女神がツンデレとやらで素直じゃないなら、俺が素直にならないと何も進展しないだろ?」

「おいおい、ツンデレのツン期は終わり、今はデレ紀がやってきているんだよ? 今までと違い、素直クールとは僕の代名詞と言い換えてもいいね」

「また素直クールとは初めて聞く言葉を……それに素直……か? 相も変わらず、煙に巻くような開き直りが多そうな気がするぞ、俺は」

 

 そんなことないのにねぇ……と言ったら、じゃあ試してみるかと指で顎クイされた。おうおう、今夜の護堂様は攻めっ気たっぷりじゃあねえか。青空の下、僕の体質に問題が無ければCまで行ってた経験が変えたのかい?

 ……なんて茶化すのは駄目だよねぇ。今日は素直に護堂の攻めを受け入れるさ。このままだと護堂がかなり屈まないといけないので、背伸び──でも若干足りないから、少しだけ空中浮遊する。

 そうしたら護堂に頭を抱えられたので、僕は護堂の首に両手を回す。そのまま軽い口づけ。

 

 唇を離したら、護堂は僕の目を見ていた。

 

「なんだよ~」

「……こうして改めて見たら、いつも自画自賛してるだけのことはあって綺麗だよな」

「だろ? 神様なんて人型で超美形か、ドラゴンみたいな異形しかいない。僕のママ上もパパ上も引くほど美形だ。特にパパ上がすごい。あの神様たちの血を引く僕ももちろ──」

「そっちじゃなくて目だよ。ブルーサファイアの目のことだ。透き通るような青い眼が綺麗だよな、美殊は……あ、もちろん顔も可愛いと思うぞ。正直なところ、俺が知る中だと一番だ」

「……ほっほぅ……」

「どんな相槌だよ」

 

 いや、だってさぁ……つい先日まで、僕が無自覚にしていたらしい誘惑に墜ちかけてたらしいのに、ほんの数日で女の子を褒めるようなことを口にするようになってるんだぜ? これが驚かずにいられますかってんだ……ひょっとして僕は、とんでもないドンファンを覚醒させたのでは?

 いやいやそんな馬鹿な……たしかに無自覚に女の子を惚れさせる男の子ではあったけれど、それがある程度自覚的になっただけで……

 

「そ、そう言えばさ! 今更の話になるんだけれど、護堂は僕のどこにいつ惚れたのさ? 護堂の話や、その他の話を聞く限りでは、僕はけっこうめんどくさい性格だよ? 正直なところ、男性を振り回すタイプだ。惚れるようなところなんて、あんまりないと思うんだけどねぇ」

 

 僕はその予想を振り切るために、別の話題を放る事に。僕のせいで一郎お爺ちゃんを超えるかもしれない女たらしを覚醒させたなどとなれば、静花さんに怒られてしまう! あと僕が護堂とキャッキャする時間が無くなってしまう! そうなったら僕はヘラになるしかない。

 

「自己の評価が低いのか高いのか、良く分からんところがあるな……いつ……と言われたら難しいな。最初は綺麗さに惹かれてた……ところはあると思う」

「その辺の感性は実に男の子だね。いやぁ、僕にも覚えがあるよ。漫画のキャラクターだけど、いいなぁと思う子がいてね……そのキャラ、最後には死んじゃうんだけどね」

「そんなのと一緒に──いや、ほんとに一緒にするなよ? その例えで言ったら、お前がなんか死にそうだ」

「そこは大丈夫さ! 護堂が守ってくれるんだから!!」

「言っとくが、絶対なんてないんだからな……絶対になるようには頑張るが……でも綺麗さだけじゃなくて、初めてあった頃の美殊は、けっこうしおらしいところがあっただろ? それで料理とか、色々としてくれてさ……」

「あの頃は死にかけたこともあり、僕も落ち込んでたからね……今もしおらしいぞ?」

「それは絶対にない。お前はかなり自由なタイプだ……そんな時に、ほら。あれがあっただろ? 美殊が演武を見せてあげようとか言って……」

「ああ……あれか」

 

 あれはまだ護堂が神殺しになる前。僕は一郎お爺ちゃん、静花さん、護堂と一緒に近所にお花見にいったのだ。その時に余興として刀を使った格好いい演武を披露しようとして……出来なかった。

 その頃から宇宙兵器の試作品を開発したりはしていたのだが、いざ戦うための武器を握ろうとしたら狼のことがトラウマになっていた。何度柄を握ろうとしても、手が震えて保持なんて出来なかった。

 

「それで家に帰ったら泣いてただろ……あの時かもな。ああ、この神様は守らないといけないんだって。強いのに弱いから、誰かが守らないと駄目なんだ。そう思ったのが最初かもな」

「──そっか」

 

 そっかそっか……嬉しいね。そう言ってくれるのが嬉しいね……あの頃は僕、メンタルがボロボロだったからねぇ。自分は世界に一人で味方もいないんだ! とか、誰も僕なんて知らないんだとか悲劇のヒロインみたいな状態で。

 それで護堂に酷いことを言ってしまったのを覚えている。なのにこいつと来たら──

 

「そんな美殊は、俺のどこが好きになったんだよ。面白い話は出来ないし、趣味だって別に多趣味とかじゃない。良くいるその辺の少年でしかなかっただろ?」

「……護堂がその辺の少年だったら、僕はここに生きていないよ。七頭の神狼。あいつらから命懸けで守ってくれたのは護堂だ。それだけでも、僕にとっては十分な理由になる」

「あの時、主体で戦ったのは美殊じゃないか。それが理由に?」

「やっぱり……そういうところは神殺しだね。あれがどれだけ凄いことなのかを、護堂は……君は全くわかってないんだから」

 

 あの瞬間の光景が、どれだけ僕の目に焼き付いたと思っているんだ。僕が何度も何度も諦めかけたのに、それでもまだ勝てる。9回裏2アウトかもしれないが、まだゲームセットじゃない。逆転の目はあるんだと最後まで足掻いて、ウルヴル達の秘密を暴いた護堂。

 そして最後の槍を使った瞬間。あの瞬間、僕がどれだけ心を動かされたと思っているのだろうか。もう無理だ、死ぬんだと護堂より力の強い僕は心が折れかけたのに、それでも人間の身で眼に砕けぬ闘志を焼きつかせた護堂の姿は──

 

「お、おい。なんだよ」

「うっさい……ちょっとこうしてたいだけ」

 

 護堂の胸にグリグリと頭を押し付ける。護堂は困惑しているが、ツンデレ女神のデレデレを素直に受け取りやがれ!!

 そうしていたら少し感情も引っ込んだ。

 

「とりあえずご飯にしよっか」

「そうだな……メニューは?」

「ホロホロチキンカレー激辛」

「なんかヤバそうな気がする二文字が後ろについてるな」

「ヘーキヘーキ。美味しさだけは保証するよ」

「おい待てよ。その言い方、美味しさ以外が保証されてないやつだろ!?」

「死人も蘇る、僕が創った秘蔵スパイスたっぷりのカレーだゆ!!」

 

 変な語尾で誤魔化すな! おい!! と声が聞こえるが、するりと護堂のハグから脱出して台所に向かう。安心して護堂。今日の為に一からじっくりコトコト煮込んだカレーだからうまいぜェ!!

 

「はいカレーだゆ。サラダもあるゆ。あとウイスキーも」

「その語尾続ける気なのか……酒はいらないから戻してこい」

「へーい」

 

 そんなこんなで頂きますだ。一口掬って口に運べば美味しさがふんわりと口にひろが……から。なにこれ、舌の感覚消えたよ? どこの馬鹿が作ったんだよ、これ。

 

「げほ……ゲホッ!!」

「おま……このばか……こんなもんカレーじゃないだろ……」

「い、いっぱいたべてね……」

「食材が勿体ないから食べるが……今後はもう少し調整しような! 全く、普通に作れば美味しい料理が作れるのに、なぜ劇物が完成するんだ」

「不思議だね……てへ?」

 

 護堂にめっちゃ舌を掴まれた。あ、あんまり引っ張らないで。そんなに伸ばしたら、僕垢嘗みたいになっちゃう。

 楽しい夕食ではなく地雷処理の現場となった食卓で、護堂と共にカレーを掻きこむ。

 

 僕はもぐもぐしながら、ああそう言えばと一つの話題を出す。

 

「今だから話すけれどね」

「なんだ」

「僕、一部の術者から死んでくれないかなーとか狙われてるんだ」

「……は?」

 

 細かい事情を説明しておく。この間の宇宙兵器の件とか、まつろわぬ神疑惑の事などだ。

 

「そんなこんなで、一部から御命狙われちゃったぜ!」

「なぜそんな内容を楽しそうに? そもそもどこでそんな情報を拾って来たんだよ」

「僕の目と耳はどこにでもあるから。本気で情報を隠したいなら、思考盗聴も防がないと駄目だよ~」

「うちの女神様が本気で怖いな……それ以外にも何かしら、情報を得る手段がありそうだ」

「あるよ~。ほら、壁に耳あり、障子に目ありて言うでしょ。僕に言わせれば、壁には本当に耳があるし、障子には目がある。あとネット回線に繋がった端末に、情報を残すのもお勧めしない。悪戯好きな電子妖精が、全部盗んで行っちゃうから」

 

 うへぇと護堂は言うが、情報対策は僕相手なら基本だ。国外ならまだしも、国内で僕から本気で隠し通せると思わない方がいい。グィネヴィアの一件以来、さらに監視体制は強化してある。よからぬことを企む輩がいれば成敗だ。

 ……ま、本当に全部見通せるわけじゃないけれど。この間の甘粕さんが持ち込んだ、不意打ち爆弾みたいな例もあるし。

 僕のご説明を聞いた護堂は、美殊の命を狙うのは止めて欲しいなとぼやいていた。

 

「む~」

「なんだよ」

「もっと心配して欲しい。お前の命は、絶対に狙わせないからなとか」

「相手の情報全部ぶっこ抜いたやつに、何の心配をしろと? そもそも日光に猿猴神君? 何の話だよ」

「ああ、そうか。その辺、護堂は知らないんだね。かなり昔に、古老たちが中心となって一体の『鋼』を捕獲したんだよ。そいつに首輪を付けて、日本に竜蛇の類が出たら倒すための番兵代わりにしたんだ」

「まつろわぬ神を捕らえたのか!? とんでもないことをするなぁ……でもなんでそんなことを?」

「日本に竜蛇がいたら、ラーマさんが復活する可能性があるから。大地母神の命を吸えば覚醒するからね」

「竜蛇……つまり美殊相手なら、その『鋼』はいつでも番兵として解放できる?」

「そういうこと~。だからもっと心配して欲しいんだよね。ね? ダーリン?」

「そのダーリン呼びはやたらムカつくな……心配と言ってもなぁ……」

「護堂は僕のことが心配じゃないの?」

 

 そうだとしたら少し悲しい。僕がしょぼんとするのを見て、違う違うと護堂は声を出した。

 

「だって美殊のことだから、()()()()()()()()()()()()()()? 自分を脅かす要員があって、放置する性格じゃないだろ」

「……てへ」

「ほらやっぱり! 俺がなんかしなくとも、絶対何かしらの仕込みをしているだろうが!!」

 

 さすが護堂は僕の臆病さをよく理解してらっしゃる。石橋を叩き壊して造りなおすのが僕の流儀だ。猿猴神君──斉天大聖への対策なんて、存在を知った時点でこれでもかとしてある。

 こっそり封印を強化して解放なんてほぼ不可能にしてあるし、解放に使う刀は僕が本物を押さえてある。万が一解放されても嵌め殺すプランをAからZまで全部使って用意済み。それでも怖いので、対孫悟空装備も開発した。

 それでも駄目ならスミスさんを連れてきて、護堂とタッグを組ませて盟約発動だ。凡神が勝つためなら手段を選ばない様を、嫌というほど思い知らせる準備など腐るほどしてある。

 

 むふふと笑う僕を見て──

 

「……凡神とか自称してるけれど、普通に下手な神様より強いのに、専用対策も全部するお前が俺は怖いよ」

「またまたそんなこと言ってぇ~。いざ戦いとなれば、僕に勝てるのが護堂でしょ?」

「どうだろうな。強さなんて喧嘩では意味がないと思うけれど……美殊相手に攻略する方法か。実は浮かばないんだよな。隙を全然晒さないし、隙を晒すかもしれないと感じたらすぐ逃げる。一度逃がしたら最後、絶対に前回負けかけた反省を活かして、こちらを倒す手段をこれでもかと用意して報復しに来る。そんな気がするんだよな」

「護堂の僕に対する評価がおかしい。彼女とか奥さんにする評価じゃ絶対ない」

 

 少し不服な態度をして見せたら、怒るな怒るなと頭を撫でてくる。そんなんで機嫌を……直してもいいけれど……

 それからカレーのダメージを抜くためにアイスを食べたら、本日の本番。まずは一緒にお風呂だ。

 

「そうくるよな……分かってたよ」

「す、すごい! もうマーモットにならなくなってる!!」

 

 前回はマーモットだったのに、護堂はもう克服したのか余裕そう──よく観察したら、御尻に視線が行ってるな。胸より御尻を揉まれる方が多いし、護堂は尻派なのか?

 

「何してるんだよ」

「僕の御尻の感触を確かめようと……護堂のよりは柔らかいね」

「何と比較してるんだ、何と」

 

 ううむ、自分のおケツなんて触っても、脂肪以外の感想が出てこない。ま、護堂が喜んでくれているなら、良いおケツと言う事にしておこう。

 あと余裕そうだったが、僕のを全部洗ってよと手にボディーソープをたっぷりとつけさせてお願いしたら狼狽していた。やりー、まだ僕の勝ち!

 

 そうして二人で温まれば、ようやく本番。僕が自前で作ったキングサイズ以上の敷ふとんを、畳の上に敷いたら準備完了だ。

 

「前回が都庁の屋上で青空の下だったことを考えたら、随分と普通のシチュになったね」

「あれは初回でやる場所じゃないんだよ……ああ、今思い出したら、俺はなんであんな場所であんなことを──」

「ん~雰囲気じゃない?」

「誘った奴がぬけぬけと……はぁ。なら俺の方も準備するか。そうしないと俺が死ぬかもしれないから」

「前回は大変なことになったからね」

 

 前回とは、言うまでもなく都庁でのあれだ。あの時、僕は母親にすら触らせない一番大事な場所を、護堂に触れて貰った。タントラの本体と呼べる場所に。

 その時の護堂は息が荒かった……性的興奮ではなく、必死で僕のタントラに抗うために。

 

「神弓の導きとなりて、我は大いなる輝きの主を導かん! 雄強なる我が掲げしは、猛る駱駝の印なり!! ……くっそぉ……これでも右手が破壊されそうだ!」

「僕のタントラやばない?」

 

 まさかの神弓顕身と駱駝の化身の重ね掛け。弓となって神殺しの耐久性を底上げし、駱駝も重ねる事で更に強化。それでも足りないからと、護堂は雄牛まで重ねた。

 その時に知ったのだが、ウルスラグナさんと違い護堂は化身を二つまで同時発動できるらしい。弐式だからか?

 

 そうして呪力も上げて対抗しようとしたが、途中で護堂がギブアップした。これ以上僕の大事な場所に触れていると、神経が焼き切れそうになったらしい。どうなってんだよ僕の体質はあ!!

 

 しかしこの数日間、護堂なりに僕の攻略法を考えたらしい。それも実行すれば、予想より早く僕の攻略が出来るかもしれないと言われた。

 護堂は天叢雲を抜く。彼はそれを僕に突きつけて──

 

「美殊のタントラをコピーしてくれ!!」

「……………………………………………………ああ」

 

 すさまじく不本意そうな声を出しながら、天叢雲が僕のタントラをコピーする。彼の能力は二つあり、一つは権能のコピー能力。もう一つが護堂の権能を吸収して、強化・発展させるだ。

 このうち前者を使って、僕のタントラを模倣する。

 

 これが僕の攻略法──護堂もタントラを使う事で、僕の牙城を崩す戦法だ。

 もう一つプロメテウスの指輪でタントラを奪う案もあったが、こちらはそれだけを奪えるか分からないし、元に戻せるかも不明なので却下。ついでに指輪の火で焼く以上、たぶん僕の全身が痛くなる。

 

「考えたね護堂。ようは僕を喘がせたら良いんだから、タントラを使う事で同条件にしてしまえばいい……でも天叢雲のコピー時間はそう長くない。果たしてその短時間で、僕を屈服させられるかな?」

「そんなもん、やって見なくちゃ分からないだろ。いつもの美殊らしく逃げたりするなら無理だが、今日は違うだろ。俺の全てを使って、熊野美殊を攻略する……覚悟しろよ。前回と違って、今回は余裕でいられると思うな」

「そっちこそ。模倣に過ぎない猿真似で、本家本元にどこまで通用するかな」

 

 ふ。へ。僕と護堂はにやりと笑い、一緒に布団に転がって──

 

 

 

 

 

「……ごど……いひへ……はへ……んんん~~~~~」

「こ……お、雄羊があって……良かった……」

 

 の、脳みそが溶けるかと思った!! 下半身の感覚が全くないけど、これ僕の下半身神経大丈夫だよね!?

 

「いま……じかん……なんじだ」

「はひ……い、いま……いちじ……だよ」

「そう……か。三時間……もたったの……」

「ちが……日曜の……昼──ごどーが、とちゅうで、何回もむらくもに呪力注いで……たんとらふっかつ……」

 

 だ、駄目だ!! 蛇があるのに、声が途切れる。僕も護堂も体力自慢だから、普通なら腹上死するような時間遊んだとしても耐えられるせいで、とんでもない耐久戦をしてしまった。最後は護堂の心臓が停止して死んで雄羊発動して終了。

 Cまではまだ行けなくてB止まりだけれど、これでCまで行ったらどうなるんだ? 僕も死ぬんじゃないのか。

 

「ふと、ん。洗わないと……びちゃびちゃ……」

 

 うへぇ、これどっちの液体だろ。途中から二人とも頭がおかしくなっていたので、色々と垂れ流しだ。どうにか復活していそいそと片づけていたら、護堂も復活して全力で御片付けをすることに。

 それから味噌汁呑んで、畳の上に転がってお休みする。目を覚ましたら時刻は晩の20時。すっかり寝入ってしまったようだ。

 

「俺は帰るよ。ふああ、まだ眠い」

「転移で送ろうか?」

「大丈夫だ。何とか……歩けるぐらいには回復したからな」

「そっか……それじゃ、また明日ね」

「ああ。明日な……おやすみ」

 

 半分眠りながら、護堂は七雄神社を去っていった。僕も明日の準備しなきゃ……忙しくなるからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなとんでもない休日があり。

 草薙護堂は私立城楠学院1年5組の教室で、朝のHRを待ちながら空を見つめて黄昏れていた。

 体にはまだ美殊との対決によるダメージが残っている。

 昨日のことを思い出すと、護堂は頭が痛くなる。幾ら何でも、12時間以上とか俺は何してるんだろうかと。帰ったら妹の静花にもこってり怒られたし。

 

「へぇ! 美殊さんと一日中遊んでたんだ! へぇえええ!!!! どういうことかなぁ!!!」

 

 護堂はそれ以上聞きたくなかったので、早々に打ち切って部屋に戻り寝た。神殺しの肉体だと言うのに、それでも疲労がまだ抜けきっていない。

 ひょっとして、これからの土曜日毎回こんななのか? と思わなくもない護堂だった。

 

「草薙君、ボッーとしてるね」

「どうしたんだよ、草薙。そんなアホ面をして」

「ん? ああ、高木か。いや、なんでもないよ」

「なんでもはあるだろ。あんま寝てないのか?」

「寝てない……のはたしかにあるな。昨日ちょっと色々とあったから」

 

 そう、色々と護堂にはあったのだ。美殊に口でされて、冥府神としての相も持つ女神に魂もろとも吸い出されかけたりとか。

 最初は護堂が攻めていたのに、最後には常人の数百倍以上のアドレナリンを放出しないと耐えられない快楽信号に神経が焼き切れかけたりとか。

 本当に色々だ。特に魂吸いによる生命力の吸引はすさまじく、それのせいで雄羊が発動したと言っても過言ではない。

 

「ほほう、色々……しかも寝てない……女だね」

「な、なんだと!! 草薙!! まさかお前……俺たちを裏切ったのか!?」

「なんだ裏切りって!? 何に対するやつだよ!!?」

「卒業まで抜け駆けはしない! 彼女を作るときは同じタイミング!! そう誓っただろ!?」

 

 それらをしらねぇ……と護堂は一蹴する。女絡みなのはそうなので、否定はせずにやんわりと濁しておくことも忘れない。

 まだ高木が何か言っていたが、それ以上は護堂も放置することに。そうこうしている内に担任が来て、HRが始まる。

 

「全員席につけ。今日は急遽の話になるが、転校生がいる」

 

 皆がへー、そうなんだと反応した。中には変な時期にくる子もいるんだねと。

 護堂も同じことを思った。護堂は高校一年生であり、このクラスに転入すると言う事は相手も高校一年生だ。これが8月や10月ならまだしも、季節はまだ5月だ。つまり新しい子は、前の学校からたった一月でここに来た事になる。

 それがなんとも不思議だなと護堂は感じて──先生の案内で入って来た転校生を見て、嘘だろと絶句した。

 

「うわぁ……」

 

 それは誰の声だったのか。入って来たのは身長155ぐらいの女の子。それだけであればどこにでもいそうな少女でしかないが、彼女は普通ではなかった。

 ゾッとするほどに整った美貌。噓臭さすら感じる美。世界の名だたる彫刻家たちが丹精を籠めて作成した美の像が、意思を持ち人間になったと言われても信じられる領域のそれ。

 制服の上からでも、明らかに実っているのが見て取れる女性の象徴。人体を黄金比で作成すれば、こうなるだろうと言う完璧な8頭身。

 

 知る者が見れば、それはそうだろうと呼ぶ。なにせ彼女は、とびっきりの美形しかいない神を二柱足した存在。もしも彼ら神々の美形が権能だと言うのであれば、それを二倍で持つ神格とはどれだけの美を誇るのか。

 空より青く透明で透き通る両目を隠すように眼鏡を装着し、漆黒の髪を揺らしながら彼女は迷いない足取りで皆の前に立つ。

 

「皆さま初めまして。私は美殊。熊野美殊と申します。本日から皆さまと共に、この学び舎で学業に勤しむこととなりました。先達である皆さまから学べることがあれば、大いに吸収させて頂きたいと考えています。これから三年間の間、どうぞよろしくお願いします」

 

 護堂以外がコロコロと転がる鈴の音だと感じた。それとも澄んだ清流が流れる音だろうか。声も外見も全てがそうあれと願われ産まれた女神。

 そんな女神は護堂を見つけて、恥ずかしそうにひらひらと手を振った。その行動を見て、クラスメイト全員が護堂の方に視線を向ける。

 

 男子たちの目には は? と浮かんでいて、女子生徒らはまさか……と慄く。あれお前の知り合い? と。

 

「す、すみません。貴方様は、あそこにいる男と……どのような関係なので……しょうか」

「草薙護堂様……で御座いますか?」

「様ぁああ!!? 護堂……様付けぇええ!!?」

 

 聞いた男子生徒は、更に続けて質問をする。それらに対して、頼むと護堂は願った。神様、この瞬間だけでもいいから俺の味方を──駄目だ。あそこにいるのがその神様じゃねえか。そもそも神頼みするには、何柱倒してるんだよ俺は。

 

 護堂は忘れていた。熊野美殊はやんちゃな女神。告白を受け入れたとしても、それで御せるような相手ではない。そんな当たり前を思い出して──

 

「あの男とは……どのような関係で?」

「二年前からお慕いしていた方です……あのお方と私の関係を一言で表せば──」

 

 護堂は悟った。さよなら、俺の高校生活。グッバイ、高校生活。フォーエバー高校生活。

 

「──愛神で御座います」

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