前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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ドキドキ学生性活開幕

 数十年ぶりの高校は、懐かしいようなそうでないような感覚に陥る。前世の高校はどんなだっただろうかと思い起そうとしても、遥か記憶の彼方で薄ぼんやりとしていた。

 

「どうした熊野? 窓なんて触って」

「なんでもありませんわ、先生。少し曇っていたのが気になりましたの」

 

 担任の先生はそうかと言いながら、僕を教室まで先導してくれる。

 ここは私立城楠学院。護堂の御実家がある根津3丁目から20分ほど歩けば到着する高校で、護堂や祐理さんが通う学校だ。

 僕の家である七尾神社からは少し遠いが、神速で走れば1秒かからない。権能も術も、僕にとっては十徳ナイフ。使えるもんはなんでも使うのが僕の流儀だ。

 

 担任が先に教室に入り、続いて僕が入る。いつもと違い少し緊張するが、数歩進めばそれも消え失せる。

 今日から一緒に学ぶ学友たちに、僕は深々と挨拶した。いつもの一人称である僕ではなく、完全に余所行きの私に切り替えて。普段時ならまだしも、こういう場では一人称とは大事なのだ。

 

 それと言葉遣いもかなり丁寧に。昨日護堂にしおらしくないとか、大人しくないなど言われたので、意識して学校にいる間ぐらいは変えてみる。

 いわゆる味変と言うやつだ。いつもいつも同じ味では、護堂も飽きてしまうだろう。護堂が攻め方を少し変えたように、僕もこうすることでマンネリ防止になる。

 

 それと護堂に手を振ることも忘れない。今の僕のキャラクターは、護堂を慕うあまり無理を言って転校してきた良家のお嬢様だ。目線をあわせようとするも少し恥ずかしくなり、目を下に逸らしてしまった少女っぽさを演出しておかないと。

 

 すると護堂と知り合いなのかと聞かれたので、護堂様と呼んでおく。僕は草薙護堂の従者という事になっている。ならば公の場では、様付けで呼称するべきだろう。

 どんな関係かとも聞かれた。神殺しと神です! ……なんて正直に言えるわけもない。ではお嫁さんや婚約者? 正式な籍は恵那さんの物なので、これを言うとややこしいな。

 彼女です! ううん、風情がない。何か良い表現はないかと記憶を探せば、そういえばエリカさんが僕のことを愛人と呼んでいたのを思い出す。

 現代日本では愛人に良い響きはないが、言葉として正しい意味は深い性愛関係にある相手。または婚姻関係ではないが、それぐらい深い関係性の相手だ。

 そう考えると、愛人ならぬ愛神とは僕にぴったりな言葉だ。ありがとうエリカさん。

 

 なので二年前から慕っていたことと、愛神であることを明かす。ありがとう、護堂……素直じゃない僕のために、二年間も待ってくれて。

 ……あら、おかしいね? クラスがざわつき始めたぞ。横を見たら先生も護堂を見て、僕を見て仰天している。なぜに?

 

「あ、愛人!! 草薙君に愛人!!? なにそれなにそれ!! 詳しい説明プリーズ!!」

「どういうことだ草薙ぃいいいい!!! あんな超かわいい子がお前の彼女のぉ!?」

「愛人てことは……こいつ、他にも女がいるのか!?」

 

 おやおや、若人は騒がしいですなぁ。いまはHRのお時間でごじゃるよ? ボケたいが、どうやら皆気になるのか僕と護堂に注目している。先生も気になるのか、目でどういうことだと訴えている。

 護堂の方を見てみたら──

 

「待ってくれみんな! これは誤解だ!! あいつは俺の愛人とかじゃない!」

「何が誤解じゃぼけぇ! あんなはにかみながらお慕いしておりますとか、どう見てもその手の関係だろうが!」

「……そうですよ、護堂様。そのようなことを悲しいことを仰らないでください。(わたくし)、護堂様とお会いしたくてこの高校に入校したのですから……それとも、私のことがお嫌いに……成られたのですか?」

「う……それはないが……いや、たしかに彼女みたいなもんではあると思うが……でも愛人じゃないだろ!」

「愛神であっていると、私は愚考いたします。昨今は悪いイメージのついたお言葉ですが、元来は愛する()と書いて、愛人。戦前までも恋仲にある御相手は、愛人と呼称することがありました。言葉に悪いイメージが付き纏う事になったのは、不倫報道などの悪影響。マスメディアの御言葉に踊らされてはならない……そう(わたくし)は思案いたします」

 

 僕がそう答えたら、あ、彼女ではあるんだとか、なら二股してるわけじゃない……? とか、そもそも草薙にあんな美少女彼女がいるとか許せねえ! とか色んな反応がある。

 そこでHRの時間も終わり、僕は席に着くことに。最初は護堂から離れた席だったが、護堂の隣にいる女子生徒がここに座りなよと譲ってくれた。

 

 すっと座れば一限目の授業が始まる……のだが。明らかにクラス中から、話の続きが聞きてぇ~な空気を感じる。みんな授業に集中しなよ。

 こら、護堂も僕の方をすごい目つきで見るんじゃなくて、黒板の方に視線を向ける。授業代が勿体ないでしょ。

 しかし新鮮だ……学校の授業を受けるなんて、本当に何年振りか。習う内容なんて全部知っているものしかないが、生徒として扱われることに新鮮味しかない。

 

 地上に墜ちてからは媛巫女さん達の講師をしたり、東京分室の術師にレクチャーしたりと教える側だったので、改めて教わる側に回るのは随分と面白い。

 板書をして、ふむふむと聞いていたら一限目が終了。先生が出ていった途端に、わっとクラスメイトが僕ら二人を囲んできた。

 

「熊野さん! 草薙君との馴れ初めは!!」

「第一声から元気ですね……ええと──」

 

 横を見てみたら、護堂はぶすっとしていた。いい? と目線で問うたら、ここまで来たら好きにしなさいと返された。その代わり後でアイアンクローなとも。

 僕はそれにはーいと目をぱちぱちさせてから、みんなに向き合う事に。

 

「私と護堂様の出会いは二年前。私が暴漢に追われているところから始まります。当時私は見知らぬ男性七人に追われていて、逃げていたところなんです。それを助けてくださったのが護堂様で──」

 

 すいっと立ち上がり、僕は護堂の膝に座る。途端に女子生徒たちからはおお~と声が上がり、反対に男子生徒たちからは歯ぎしりが聞こえてきた。

 護堂の手を取って僕の首に廻し──

 

「このように私を庇いながら、護堂様はこう仰られたんです。俺が死なない限り、この子に指一本触れられると思うな。殺す気でかかってこい……相手は刃物や鉄パイプまで持ち出す相手です。ですが護堂様は一歩も引かず、警察が駆けつけてくれるまで私をお守りくださいました」

 

 またもや女子生徒たちからおお~と声が上がる。

 

「しかし当然、護堂様はそのようなならず者を相手にすれば傷つきます。骨まで折れてしまっていたのに……初対面の私など放っておいてもいいのに。それをこの御方は攻めたりせず──」

 

 護堂の掌を頭に乗せる。それをよしよしするように動かしておく。

 

「──このようにしながら、こう仰られたのです……怪我がなくて良かった。ん? そりゃ助けるだろ。女の子が追われているんだ。助けるのが普通じゃないか……これが護堂様と私の馴れ初めで御座います。それ以来、ずっとお慕いさせて頂いております」

 

 と〆たら、ほぇえ~と女子生徒からの喝采。イエーイ! これがうちの旦那様だぞ!! 暴漢どころか、まつろわぬ神相手に喧嘩売った超格好いい彼ぴっぴだぞ!! もっと拍手~

 

「草薙君はそんな過去があったんだ……」

「あんたなら同じ状況で助けられたらどう?」

「うーん……好きになっちゃうかな? よく見たら、草薙て普通にイケメンだし、背もあるし」

「あんた面食いだからね」

 

 と女子生徒からは中々の高評価だった。でもあげないぞ? どうしてもと言うのであれば、僕のタントラで面接だからね? それも無視してなら、僕泣いちゃうからね? 天空神が泣き叫ぶんだから、東京には一時間1000ミリぐらいの雨が降り続けることになるからね?

 

 内心で女子生徒らをけん制していたら、反対に男子らからは、渋々と言った拍手が飛ぶ。

 

「まぁ……それなら……」

「くそう! どうして俺はその場面に出くわさなかったんだ!! そうしたらこんな可愛い子と仲良く──」

「さすがに無理だろ……武器持った男が七人だろ? 殺されるよ」

 

 そうだよね、普通は殺される。その普通を覆したからこそ、僕は惚れ込んでしまった。

 そういう意味では、僕の攻略難度はきっと高い。最低でも運命が狙っている状況で真正面から世界を敵に回して喧嘩を売り、実際にまつろわぬ神七体を相手に勝つぐらいじゃないといけない。

 

 そっと護堂を見上げたら、全くこいつはまたそんなストーリーを作って……と呆れていた。ただ呆れつつも、僕が動かさなくても手で頭を撫でまわしてくる。大胆だねぇ……なんて休憩時間も終わり、授業が始まって、休憩時間が再び来る。

 それを繰り返せばお昼休みだ。

 

「俺はこれから学食にいくけれど、お前飯は?」

「こちらに。御口に合うかは自信がありませんが、護堂様の分も御作りしてきました」

「て、手作り弁当……おのれ、草薙護堂……美少女にそこまでして貰うほどに惚れ込まれるとか……許すまじ……」

 

 わーお! 僕がお重を取り出したら、クラス中の男子から護堂に怨嗟の声が漏れ聞こえてくる。そ、そんなに?

 僕自身美少女だとは思うけれど、こんなの神様界隈では普通のレベルだよ? うちの母様とか、この間爆殺したアテナさんとか。あとは憎きペレとか……にっくきペレとか!! 護堂の唇を奪って洗脳しやがった、僕の威信全てを賭け、悪鬼滅殺しないといけないペレとか!!!

 

「なんか寒くない?」

「あ、ほんとだ。ちょっと肌寒いね」

「美殊……おい……ちょっと漏れ出てるぞ」

「あ、ごめん」

 

 ペレへの思い出し怒りで、少し冷気が放出されてしまったらしい。いかんいかん……ふぅ、メンタルリセット。

 大丈夫大丈夫。やつは護堂がちゃんと倒したし、仮にまた不死の領域から出てきても、キラウェアの火山ごと破壊する準備はしてある。

 あの手の島とかをテリトリーとするやつ対策に、ミョルニルの概念と重力制御機構・量子論による重力波発生装置を組み合わせた宇宙兵器──グラビティ・ショックウェーブ・ジェネレイティング・ツールも開発した。次に出てきたら、光子にまで分解してやる。

 

 と言うのはさておいて、美少女手料理の羨ましさは分からないでもない。僕だって前世で何度か妄想したような気もする。今は手料理をする側に回ったが。

 しかし僕レベルの美少女度なんて、この世界にはありふれているのだ。それこそこの学校に通っている祐理さんや、療養生活から解放されて実家に戻った恵那さん。

 エリカさんなんて媛の血とか入ってないのに、素晴らしいプロモーションと美貌の持ち主だ。ひょっとしたら、どっかで神の血とか入ってるのかもしれない。

 

 ようするに美少女がこの世界は多い。そんな彼女らに混ざれば埋もれるのが僕と言う凡神なのだから、必要以上に羨ましがる必要なんてない筈なんだけどね。

 

「護堂様。もしよろしければ、お召し上がり頂けませんか?」

「作ってくれたなら食うよ。机をくっつけるか」

 

 机をがっちゃんこすれば、一緒に食べる体勢が完成だ。普通なら他の子達と一緒に学食に向かうのかもしれないが、初日ぐらいは護堂とモグモグタイムを堪能したい。

 ごゆっくりね~なんて言いながら、ちょっと仲良くなった子らが手を振って教室を出ていく……んだけど、なんか廊下に人が多いね?

 

「どうされたのでしょうか? たくさん人がおられますが」

「お前を見学でもしに来たんじゃないか? 良くも悪くも、目立つ顔だから」

「私など凡神らしいありふれた顔つきだと思うのですが……」

「……どうしてこいつは、こう自己評価が高いのか低いのか分からん謙遜をするんだろうな」

 

 え~、僕凡神だもん。と頬を膨らますのもあれなので、お重の包装を解こうとしたところで、その人物はやってきた。

 

「申し訳ありません! ここに美殊様がおられると聞いたのですが!!」

「あら? 祐理さん。どうされたのですか?」

 

 僕たちがいるのは1年5組で、祐理さんは1年6組だと伺っていた。どうやら僕の噂を聞きつけたのか、急いでやって来たらしい。

 護堂がまだ入学して一か月なのと、学校での接点がないからあまり接触はしていないとは聞いていた。のだが、彼女はズンズンとこちらにやってきて、僕の前に立ちはだかった。

 それを見て、周囲はえ? あれ万理谷さん? なんで5組に? ひょっとして、万理谷さんも熊野さんのお知り合い? なんてひそひそ話をしている。

 

 それらには気づかずに、クベーラはちょっとお怒りだった。

 

「こ、このようなところで何をされておられるのですか!」

「何と申されましても……ここではなんですし、場所を変えてお話になられませんか? 皆の視線もありますから」

「え? ……あ!?」

 

 僕の言葉で気が付いたのか、祐理さんは顔をちょっと紅潮させていた。僕がお重を持って立ち上がると、なら屋上にでも行くかと護堂が助け船を出してくれる。

 そのまま三人で屋上にレッツゴー! 城楠学院は生徒にも屋上が解放されているらしく、僕ら以外にも数名だが生徒らがいた。彼らの邪魔にならないよう隅に移動し、こっそり転送させた茣蓙を敷く。その上に座れば準備完了だ。

 

「では……護堂~、何から食べたい? から揚げ、タコさんウインナー、卵焼き。なんでもござれだよ」

「おい待てよ。まずは説明から始めろ。ご飯よりも先にな」

「え~……了解でござるよ」

 

 敬礼しながら了承したら、護堂に頬を引っ張られた。これこれ! これがないと落ち着かないね!!

 僕がにこやか笑顔なのを見て、護堂と祐理さんはこの女神様は……みたいな反応をしていた。いっぱい悩むのは若人の特権だね。

 

「さっきまで大人しい口調だったと思えば、こいつ……」

「美殊様。どうして学校におられるのですか? いつもであれば、七尾の御社で祭神をされておられた筈です。それがなぜ、城楠学院に?」

「どうしてと聞かれたら、僕も高校生活がしたかったからだね」

「高校生活を?」

「うん。祭神をするなんて言えば聞こえはいいけれど、結局暇なんだよね、あれ。七尾神社は参拝客も少ないから」

「暇だから神社を抜け出す祭神とか駄目だろ」

「そ、そうです! それに美殊様の、その、実年齢だと高校は……」

「何を言ってるのさ、祐理さんは。高校には年齢制限はないんだよ? 入学可能な知識と知能、それらがあれば高校は誰でもウェルカム。世の中には中卒で起業して、家業を息子についでから高校と大学に入る人だっているんだ。それを思えば、外見年齢がJKで通る僕はまだ馴染みやすいのさ!」

 

 えっへんと胸を張ってみれば、祐理さんはそう言う事でしたら……と渋々納得はしてくれた。祐理さんは。

 

「それは分かったが、なんだあの愛人とかなんたらは! 俺の評価と評判、めちゃくちゃじゃないか!?」

「女子生徒からは凄く受けが良かったよ? それに人じゃなくて神と書いて愛神。ニュアンスがちょい違うのさ」

「漢字で書かないと伝わらないやつを口にするのはやめろ。大体、高校に行きたいとは言え、どうしてこの学校なんだ? ……認めるのは癪だが、お前は知識とかその辺はすごく頭がいいだろ? もっと上の学校を狙えたんじゃないのか?」

「それはそうだけど──」

 

 これでも宇宙兵器を権能込とは言え作成できるのだ。そこそこ頭が良いとは自負している。もっと偏差値の高い学校にも、入校しようと思えば可能だっただろう。だがここがいいのだ。だって──

 

「……ここには護堂がいるんだもの。高校に行きたい理由だって、大半は護堂だから」

「俺が理由?」

「うん……これから先、護堂とは一緒にいられる時間はたくさんあるよ。でも、こんな青春! な時期を一緒に過ごせるのはいましかない。高校生活の三年間は、僕や護堂の長い長い一生のうちに、いましかないんだ。それなのに、御社で一人ポツンといるのは……寂しいな」

 

 それと祐理さんがいるから言えないが、僕には前世で一つの夢があったのを思い出す。それは好きな人と一緒に、なんてことのない学生生活を送る。そんな淡い夢だ。

 ま、そんな夢は叶わず、野郎と一緒にペットボトルロケットを飛ばしてた気がする。彼女なんていなかった。過ぎ去った夢は夢でしかない。

 

 それが叶う機会が目の前にあるのだ。今は彼女側になってしまったが、護堂(好きな人)と一緒に三年間を過ごす。命を助けてくれた彼と、共に歩める小さな時間。

 それを舌の上で『言霊』()として転がしてみれば、なんと甘美な味だろうか。

 

 そんな感情は言葉に出さずとも、僕はただ寂しいと護堂の袖を掴む。この手が離れたら、また一人に──幽世での誰もいない日々に戻ってしまうのではないか。

 そんな気がして。

 

「……女神様は我儘だな。そう思わないか、万理谷も」

「もう…………最初からご相談していてくれれば、驚かずにいられましたのに。美殊様は突飛な行動が多すぎるんです」

 

 二人とも困った神様だと言うが、拒絶するような気配はしない。護堂なんて袖口を掴んでいた僕の手を握り、グッと引き寄せる。

 

「これで寂しくないだろ」

「護堂さん! ……もう。今回だけですからね! 学び舎で不純なことをしたら、お説教です!」

 

 なんて祐理さんは言うが、余っている片方の手を自分の手で握ってくれる。ごめんねぇ……寂しんぼな女神で。

 

「…………二人ともありがと……よし。この話はここでおしまい! ご飯にしよう、ご飯に」

 

 このままのんびりしていると、お昼休みが終わってしまう。護堂の腕からがばりと起きて、お重を並べて食べやすくする。

 卵焼きを箸で掴み、手を皿代わりにして護堂の前まで持っていく。

 

「はい。あーん」

「おい。色々とおい」

「美殊様? 学び舎でするような行動ではないと思われますが?」

「え? そう? ……あーん」

「そこでどうして私の方に来られるのですか!?」

「実地でやって、本当に学び舎でしちゃ駄目なのか確かめようと……」

「やらなくても分かる行為です!」

「じゃあ仕方ない。一回卵焼きを置いて、お箸を護堂に握らせて──うん。美味しい」

「こいつ、人の手を使って飯を食ってやがる」

 

 好きな人にあーんするのとあーんさせて貰うのも夢だったんだよ。前世で思い描いていた相手は彼女だが、今世は彼ぴっぴだ。それに先にこうやって食べてから──

 

「ちゅ」

「うぉ」

「ひゃ!!」

 

 護堂にキスをする。

 

「どう? 卵焼きの味がするキス」

「……分かった分かった。素直にあーんで食べさせてもらうよ……万理谷。この女神様はこんなんだから、乗ってあげないとより酷くなるぞ」

「………………はい」

 

 もはや諦めたのか、渋々祐理さんは僕のあーんに付き合ってくれた。なぜか僕にあーんされる二人を見て、屋上の生徒達はびっくりしている。

 時折僕もおにぎりなどを口に運びながら、一つ思ったことがある。

 

「そう言えば護堂と祐理さん、間接キスだね」

「ぶうっ!!」

「あ……あああ!!」

 

 それを指摘したら、護堂の鼻から米が出た。祐理さんは耳まで真っ赤になっちゃった。うんうん、祐理さんはむっつりさんだねぇ……

 ここで一句。

 

「若人や、ひとつの箸で、縁結ぶ」

 

 護堂に頭を叩かれた。




熊野美殊

・ヒロインとしての攻略難度は激高。好感度と愛情度が明確に分かれてるタイプで、好感度は上がりやすいが愛情度は上がりにくい
・女性として生まれてから間近にいて守ってくれた男性が父親である大黒天(高身長イケメンヒンドゥー最強神)だったせいか、美殊当人も気づいていないが異性に求める基準は激高。せめてパパに勝てるぐらいの気概と度量は欲しい
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